滅多に体の繋がりを持とうとしない嫁が、珍しいことに
白昼堂々僕に腕を回してベタベタと体を摺り寄せてきた。
何か悪いものでも食べたのだろか。
訝しがる僕をよそに嫁は不敵な笑みを浮かべ、
「よいしょ、よいしょ」
更には胸を寄せて上げようとしているではないか。
いよいよ黄色い救急車を呼ぼうかと思った。
娘・R(1才)を産んだことによる「出産特需」により
劇的にたわわになった嫁の胸ではあるが、現在は
Rに吸い尽くされ、どんどん元の小さな胸に戻ろうと
している。
それでも絞るように胸の肉を集める嫁の姿は、まるで
空になったハミガキのチューブをぎゅうぎゅうに
絞ってもやはり出てこなかった時の虚しさに似た、
絶望的な光景であった。
これ以上見てることが辛くなり、たまりかねて
嫁に声をかけた。
「何だ。一体どうしたというのだ」
「うふふ。今年もよろ乳首」
「…」
「…」
このギャグの為に何と長い前フリであったことよ。今年の干支は
ニワトリだと思っていたが、どうやらトリはトリでも
しらけ鳥だったようだ。
せめてハト年だったらそれにあやかって嫁の胸も
ハト胸ぐらいにはなろうと志したものを…。
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