人生事件
−日々是ストレス:とりとめのない話 【文体が定まっていないのはご愛嬌ということで】
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2002年08月24日(土) |
何でこんな切ない気持ちにならなければいけないんだろう |
母子健康手帳を手渡しながら、悲しくて泣きたくなった。
婚外性交渉が罪になり、判決が死刑になるという法がある。イスラム法(シャリア)だ。婚外性交くらいで、なにも死刑にまでするようなことではないと思うが、様々な経緯からそういった判決をその法ではすることになったのであろう。ナイジェリアで今、ひとりの女性が死刑判決を受けているらしい。このことは新聞の片隅の記事で読んだだけなので、法成立の文化についての詳しいことは分からなかったが、そういう国もあることだけは理解した。
他国と比べても文化が違うから仕方がないってことはわかっている。また、世界中で婚外性交で死刑実行していたら、大部分の人が生命を失われるだろうってことも分かっている。 だけど、私が職場で出会った人たちを思い出すと気持ちが乱れ、何もかもがどうしていいのだかわからくなるときがある。
「結婚はしてないけど、母子手帳ってもらえるんですかー?」 「はい、今ご用意しますね。そちらのテーブルで、こちらの紙の太枠内をご記入してください」 母子健康手帳を交付する場合、うちでは本人の氏名・相手の氏名・住所・電話番号・職業・妊娠判定してもらった病院名・妊娠週数などを書いてもらう。 彼女のを見ると、本人と相手の苗字が異なっていた。 「婚約中かしら?」 「いいえー。もしかしたらするかもしれないけど、まだわかんないんですよー」 妊娠8週の10代の学生さんに明るく言われ、溜め息を押し殺す。 「彼には妊娠のことは?」 「言いましたよー。喜んでましたー」 「あなたのご両親は妊娠について知ってるの?」 「それなんですよねー。まだ言ってないの。でも親に言ったら絶対おろせって言われちゃうからなあ・・・」 「・・・彼は、例え結婚しなかったとしても、一緒に育ててくれるのかな?」 「お金ない人だから無理だと思うんですよねー。赤ちゃん喜んでくれたし、私の身体の心配もしてくれてたけど。でも、堕ろすことになるかもしれないから、この手帳も要らなくなっちゃうかもなあ」 「・・・」
それも、ひとりやふたりではなくて。
不幸な人を増やすのは嫌。子どものうちに殺されたりすることも、心身傷ついたまま大人になることも、とても悲しいことだから。 人工妊娠中絶もよほどの理由がなきゃ嫌。母体も傷つくし、種の保存の面から不自然な行為だから。
『おめでた』なんて言われる妊娠なのに、何で切ない気持ちにならなければいけないんだろう。 幸せそうな相手のことを祝福し、笑顔で心の底から「おめでとうございます」と言えない母子健康手帳交付が、今一番つらい。
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