人生事件  −日々是ストレス:とりとめのない話  【文体が定まっていないのはご愛嬌ということで】

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2002年05月24日(金) もう二度と、伝えられない

伝えられなかった想いがあります。



3年前、あの人の姿を最後に確認したのは、バックミラーでだった。
大学進学決定報告と正月の挨拶を兼ねて家族と共に訪ねた私を、あの人はとても歓迎してくれた。
自身の孫を抱くあの人の隣りに私は座り、乾杯をした。
なぜあのとき、私はあの人のことを「こんなに小さかったっけ?」と思ったのだろう? 生まれたばかりの小さな命をやさしく抱いていたから、そんな印象になったのかもしれないと、そんな推理までして。
帰り際、あの人は見送ってくれた。安全運転でな、また来いよ、と手を振ってくれた。

私はバックミラーであの人の姿を確認したとき、「今日こそ言おうと思っていたのに、また好きだって言うの忘れちゃった。まあ、今度会ったときに言えばいいか」。そう思った。後ろ髪をひかれながらも、そう思った。「今度」があると、思いこんでいた。
その「今度」は、別れた一週間後にはもう2度とないものとなったのだけれど。

私はあの人に、脳出血で急に逝かれてしまった。



伝えられなかった言葉は、今も喉もとに刺さっていて。
時折あの人との思い出に触れる出来事に遭遇しては、鈍く重い痛みを訴える。

今日はそう、あの人の好きだったキャラメルコーンで。


佐々木奎佐 |手紙はこちら ||日常茶話 2023/1/2




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