人生事件  −日々是ストレス:とりとめのない話  【文体が定まっていないのはご愛嬌ということで】

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2002年04月14日(日) 胎児虐殺

正直なところ、現段階では明日からの本格的出勤が憂鬱です。念願の市町村保健師になったというのに、この気持ちの重さはかなりのものです。
保健師が対象とする人は、乳幼児(ある意味胎児も)から高齢者まで、さまざまな年齢層の人です。健康の度合いもちがいます。発症の有無を問わず疾病を抱えた人から予防すべき人までです。ようするに、生きているすべての人が対象なのです。

私の就職した市の某保健センター(保健所は都道府県や政令市などの管轄なので、市の職員になった私が配属になるのは保健センターというところです)は市内4箇所にあります。仮にその4箇所のセンターをA・B・C・Dとしたら、私が辞令を受けたAセンターは、市内で一番地域住民数および職員数の少ないところでした。
ところが、高齢者の多い農村部で、かつ、虐待対策が大問題となっている地域でした。

被害者は先天的身体障害者や寝たきりになってしまった高齢者、精神障害者、児童・乳幼児などで、加害者はその身内や近所の人、通りすがりの人などです。
中でも、乳幼児・児童虐待が多いそうで、過去をさかのぼっていくと、最悪な事例がかなりあるそうです。

私、昔どこかの美術館で、邦題が『胎児虐殺』という絵画を見たことがあります。赤と黒で埋め尽くされた大きなその絵を目にし、私は衝撃を受けました。
恐怖、悲しみ。
はじめて絵を見て、涙が出ました。今でもそのときのことを思い出すと、心臓の後ろに爪を立てられたような感覚を覚えます。

私は子ども好きなのに、抱えた疾病のお蔭で自分では生めるか生めないかの瀬戸際にいる女です。その為、妊娠・中絶・乳幼児虐待などのキーワードにはひどく敏感です。
今は子育てに関わるいくつもの事項が、社会問題のひとつになっています。特に虐待については、死に至らしめてしまう事件が多く、憂う日々が多いです。虐待をしてしまう親やその子どもの間に、保健師は介入できる立場の人間です。だから、そのうち保健師としてあちこちにネットワークを作ったあかつきには、きちんとそれらについての勉強し、それを仕事に活かしていきたいと思っていました。
保健師としても人間としても未熟な間は、そんなへヴィーな問題は、できればまだ避けたかったのです。

なのに、よりによって、保健師生活初っ端から私は乳幼児虐待の対応係に任命されてしまいました。市に保健師を増やす予算がなく、人手が足りない中で働いていかなければならないので、新人でも難問に取り組んでもらわないと仕事が進まないとのことでした。同僚である先輩方もできるかぎり一緒に考えてくれるとのことですが、数週間経ったら大部分は私が対処していかなければいけなくなると思われます。

とても不安です。仕事が仕事なだけに、悲しい出来事に遭遇すると分かっています。自分のほうが参ってしまわないかと、心配になってしまいます。
だけど、頑張りたいです。
自分に何ができるだろうかなんて考えてばかりでなく、具体的な力を出して。
少しでも、不幸な出来事がなくなるように。


佐々木奎佐 |手紙はこちら ||日常茶話 2023/1/2




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