2015年09月09日(水) |
意外と早く訪れた、ハリルホジッチ体制の危機 |
2018年ロシアW杯アジア2次予選、E組第3戦、アフガニスタン―日本は9月8日、イラン・テヘラン アザディスタジアムで行われ、日本が6―0で勝った。この試合は、得点数、試合内容のどちらにおいても、前回(カンボジア戦)、前々回(シンガポール戦)をはるかに上回る結果だったので、日本代表が不調を脱したとする報道が散見された。はて、このマスメディア報道についてはどうなのか。アウエーとはいえ、相手が弱かっただけの話ではないのだろうか。
そもそも、先のW杯ブラジル大会の出場が決まった時、本戦で優勝を狙うんだ、と豪語していた日本代表である。その舌の根も乾かぬうち、本戦で惨敗を喫して早々と帰国。さらに、次大会(ロシア)の2次予選のレベルで苦戦しているようでは、どうにもならないのである。
そんな日本代表であるが、アギーレ「八百長疑惑」のドタバタを経て就任したハリルホジッチ体制。出だしは好循環がみられるかなと思ったこともあったが、それは筆者の幻覚だった。ハリルホジッチ監督は、予選開始後になっても、代表チームの方向付けを定めていない。アジアサッカーの特殊性を理解していないと換言してもいい。
それだけではない。彼は日本の代表監督に就任したのにすぎないのだが、日本サッカー総体のトップに君臨したかのような錯覚に陥っているように見える。確かに日本サッカーの現状は突っ込みどころ満載の状態。あまたの問題を抱えている。基盤となるJリーグが改革ならぬ改悪を断行してしまい、ガラパゴス化を促進している。リーグを構成する各クラブに緊縮財政が定着して、いい選手が集まらない。結果として、世界との差を一層拡大させている。
プレーオフ制度の導入で、日程がきつくなり、代表合宿に思うような時間が避けない。テストマッチ(親善試合)の相手は弱いところばかり・・・
しかも、代表選手の切り替え時にあたる今年、来年というこの時期、ブラジル大会出場組を上回るような新人が台頭してこない。新戦力というと、柴崎岳、武藤嘉紀が思い浮かぶ程度。その2人も、ブラジル組を差し置いてレギュラーを取る力がない。相変わらずの本田圭佑、香川真司、岡崎慎司・・・頼み。さらに深刻なのがDF陣。ブラジル惨敗の主因となったCBの人材難は解消されず、これまた、欠陥CBの吉田麻也に依存せざるを得ない。
このような状況下、ハリルホジッチに重要な決断が迫られている。彼が決断すべき道とは3つあり、その第一の道とは、ジーコ、ザッケローニが選択した、代表チームの「クラブチーム化」。レギュラー選手を固定し、固定した選手間のコンビネーションを熟達させ、組織力を向上させる方法。当然、代表チームのレギュラー選手は固定化されるので、新しい力は加味されない。洗練されたチームが出来上がるが、たとえば、ワールドクラスのパワーサッカーに遭遇すると、あっさり簡単に、崩壊してしまう確率が高い。日本がブラジル大会予選リーグ初戦でコートジボワールに逆転負けをしたようなケースが起こり得る。先行しながら、粘れない、フィジカルで競り勝てない、走れない・・・ような、ひ弱なチームに仕上がる。ブラジル大会では、スペイン、日本がその代表だった。
第二の道は、常に調子のよい選手を引き上げて、短期間にチームを完成させ、フィジカル的に強いチームをつくりあげるスタイル。新しいスターが出現する可能性が高まるし、体力的に充実した代表チームとなる。ブラジル大会では、コスタリカ、コロンビアがその代表。勢いのあるチームとなって、「大化け」することもある。
日本がやりたくてもできないのが第三の道。新旧戦力をバランスよく配置し、代表チームでありながらクラブチームのようであり、しかも、クラブチームにない個の力も併せ持つ。ドイツ、オランダ、アルゼンチンなどが思い浮かぶ。ブラジル大会では、ドイツがその典型だった。
しかし、現状の日本代表がドイツのようなチームをつくれる可能性は、いまのところ無理。そのドイツであっても、次回大会までブラジル大会の好調状態を維持できるとは限らない。
そんななか、ハリルホジッチはいずれの道を選択するのだろうか。ここまでのところ、なんとか第二の道を模索してきたものの、この2次予選を通じて、第一の道、すなわち、「クラブチーム化」に舵を切るような気がする。そのほうが、W杯出場の可能性が高まるからだ。
ハリルホジッチがアジア予選通過を果たすことに失敗すれば、彼の日本でのロシア大会以降の仕事はなくなる。その反対に、ロシア大会出場を果たせば、彼はヒーローとして、永遠に日本で歓迎される存在となり、カネも栄誉も思いのままとなる。
ハリルホジッチの「ジーコ化」「ザッケローニ化」が進めば、日本代表もそれまで。よくてロシア大会出場。本大会ではおそらく、グループリーグで敗退する。そんな日本代表の姿が3回も繰り返されれば、日本にサッカー・ファンはいなくなる。その前に、ハリルホジッチが弱いクラブチームをつくってしまう可能性だってある。そうなれば、日本サッカーの灯(ひ)は、ロシア大会の前に消えてしまう可能性もなくはない。
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