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2015年02月03日(火) アギーレ更迭、代表強化に抜本的改革必要

アジア杯は拙コラム(2015/01/15付「アジア杯、日本はベスト8どまりか」)にて筆者が予想した通り、オーストラリアが優勝した。開催国が優勝したのは、92年の日本開催・日本優勝以来、なんと23年ぶりだという。

◎オーストラリアがアジアで一番強い

決勝戦(韓国−オーストラリア)は壮絶な戦いだった。互いにフィジカル及び闘争心全開で120分を戦い抜いた。アジアのチームを代表して、ブラジル大会以降世界のトレンドとなったフィジカル重視のサッカーを両チームが忠実に身に着け、それを一番の舞台で反映したのだから、観客を楽しませるに十分な内容となった。試合は延長前半、オーストラリア途中交代選手の決勝ゴールで決着。オーストラリアの2−1勝利という接戦の末だった。

◎ロンドン組はどこに行った?

決勝戦を見て、筆者はショックを受けた。決勝で戦うオーストラリア及び韓国がブラジルW杯の経験を踏まえて、世界のサッカートレンド(フィジカル・サッカー)を自らのものとしている――にもかかわらず、わが日本はまったく相変わらずのポゼッション・サッカーにとどまっている――日本はアジアのトップレベルから明らかに脱落しつつある、と。

日本サッカーの凋落については、すでに何度も書いてきた。だから、これまで挙げてこなかった事例を紹介しておく。直近のロンドン五輪(2012年)を思い出してほしい。ロンドン五輪の代表選手(23歳以下)で今回のアジア杯代表に選ばれたのは、酒井高徳(DF)、清武弘嗣(FA)の2人だけ。吉田麻也はオーバーエージ枠での選出だった。酒井はアジア杯で先発起用されたが、内田がケガで選出されなかったまで。本来なら控えの格付けである。清武も途中出場で乾の控え。つまり、ロンドン組は1人として、フル代表のレギュラーの座を奪っていない。五輪組が順調に成長して、アジア杯、W杯の代表選手として活躍していくのがあるべき姿だろう。ロンドンで活躍した永井謙佑(FW)、斎藤学(FW)、山口蛍(MF)、扇原貴宏(MF)らは、Jリーグでレギュラーの座を維持するのがやっとという状況である。

◎代理店と協会が仕組む「代表ビジネスモデル」はもうすぐ崩壊する

日本代表はいまのところ、ビジネスとしては安定しているものの、“お先真っ暗”である。有力代表スポンサーA社の意向により、日本の10番・香川は不調でも外せない。香川がA社と契約しているからだ。代表ビジネスを仕切る大手広告代理店が代表選考、選手起用について圧力をかける。JFA、代表監督はそれに忖度して、自由な選手起用ができない。親善試合ならば「世界」相手に勝てる日本代表だが、公式戦になると力が出せない。そのことは、ブラジルで証明済みのこと。

今後、W杯のアジア枠は4.5から4に減らされる可能性が高い。オセアニアとのプレーオフという保険もなくなるわけだ。アジア地区は2018年に向けて、オーストラリアを頂点にして、今大会驚異的な勝負強さを見せた韓国、身体能力の高いイラン、ウズベキスタン、そしてクラブチームのようなUAEを5強として、年々弱体化する日本が続くという状況になりそうだ。日本がアジア地区予選を勝ち抜けない予選がすぐに始まる。

◎アギーレを更迭しないと手遅れになる

アジア杯の結果を見るまでもなく、アギーレについては「八百長疑惑」以上に代表監督の能力のほうが心配だ。就任前は強い意志を持つ監督だというイメージだったが、どうもそうではない。協会、スポンサー、広告代理店、メディア等の意向を忖度して、安直に結果を求めるタイプのようだ。

“アジア杯優勝”というノルマを課されると、プレッシャーに負けて代表選手をブラジル組で構成し勝利を優先した。にもかかわらず、大会ではそれが裏目に出て、ベスト8どまり。優勝も育成も逃した。勝利を優先したつもりが、結果として栄冠もつかめなかったばかりか、若手に経験を積ませる機会も逃した。結果として、日本代表が得た果実はゼロだ。

選手の起用及び交代もリスクを避ける素人采配。就任当時は若手を「発掘」して話題をさらったが、オーストラリアでは、アギーレに「発掘」された代表選手の影すら見えなかった。彼らはいま、どこで何をしているのか。

アギーレは思い付きばかりで、論理性・一貫性がない。協会、スポンサー、世論、メディアのプレッシャーに弱く、リスクをとらない。就任からW杯までの期間を分割して仕事の重要度を図り試合をする戦略的思考がない。

そんな性格だから、目先の利益に目を奪われ、スポーツマンが絶対にしてはいけないことをした、とは言わないが。

※本日(2月3日午後5時ころ)、JFA はアギーレの解任を発表した。


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