2014年06月03日(火) |
コスタリカ戦から見えてきた不安要素 |
W杯開幕を間近にした国際親善試合、日本−コスタリカは3−1で日本が逆転勝利した。日本の得点は後半、遠藤保仁(24分)、香川真司(35分)、柿谷曜一郎(44分)があげたもの。結果は日本の快勝だったので、それはけっこうなことだけれど、内容的には貧しいものだった。
○本調子ではないコスタリカ
相手のコスタリカの調子が悪いように思えた。このチームはいまだ明らかに調整過程にある。その証拠に、試合時間の経過とともに選手の足が著しく重くなっていた。日本も過密スケジュールでコンディションは悪かったが、コスタリカはそれ以上だった。フィジカル面だけでなく、組織化が進んでいない。攻撃はルイスとキャンベルの個人技任せで、戦術は錬成されていない。寄せ集めの急造チームといった感じ。このままのコスタリカならば、「死のグループ」といわれるW杯Dグループ(ウルグアイ、イングランド、イタリア)における突破は難しい。
○不安要素いっぱいの日本の守備陣
肝心の日本だが、このチームの弱点はディフェンス(DF)であることがこの試合で再確認された。左SBで先発した今野泰幸だけれど、SBは無理。SBの大事な特性である上がり下がりのスピードが乏しい。しかも、肝心の守備では、マッチアップするルイスを止められなかった。コスタリカが仕掛ける右からの攻撃に対し、上手に対応したとは言いかねる。
空中戦が得意でない日本のDF陣を観察すれば、相手チームがサイド攻撃(もしくはサイドからの崩し)を選択する確率は極めて高い。この試合のようなパフォーマンスの今野ならば、彼をCB、SBで先発させることは日本にとってリスクが高い。酒井高徳の故障の回復状況はわからないが、左SBのレギュラー長友の控えが心配である。酒井高の負傷により、玉突き現象で守備陣が怪しくなってきた。
○故障明け3選手は本当に間に合うのか
故障明けの長谷部誠がこの試合にベンチに入らなかったことも懸念材料だ。W杯登録メンバー23人のうちGK3選手を除くフィールドプレーヤーは20人。そのうち日本のシステムならばDF陣は12枠だが、そのうち2選手が故障中(もしくは故障明け)で、さらに今野がSBの適性を著しく欠くとなると、9人でやりくりしなければならなくなる。手駒不足でグループリーグ3試合を戦い抜けるのかどうか。
しかも、その9枠のうち、セントラルミッドフィルダー遠藤のフィジカル面が気がかり。この試合も後半のみの出場にとどまった。親善試合ならばこの手は有効だが、交代枠3人の公式戦では使えない。森重真人、吉田麻也のCB、長友佑都の左SBはほぼ固定だが、セントラルミッドフィルダーの遠藤、長谷部が90分もつのかどうか。長谷部、山口蛍、青山敏弘のうちの2人が先発してなんとか前半をしのぎ、後半に遠藤投入という戦法が有効性をもつのかどうかは、長谷部のフィジカルの状態次第となる。長谷部、遠藤が45分しか持たないとなると、日本の交代枠は限りなく狭まってしまう。しかも、レギュラーの長友が怪我をした場合や、内田が90分もたないとなると、前出のとおり、日本のSBも崩壊する。
日本が豊富な選手層を誇ってきた左右SBおよび心臓部といわれるセントラルミッドフィルダーに陰りが見え出したのだ。つまり、W杯開幕直前にきて、日本のDF陣が危ない。その主因は、ザッケローニの代表メンバー選出にある。長谷部、内田篤人、吉田といったレギュラーシーズンを故障で欠場した選手を敢えて選んだことが裏目に出ている。
○本田はフィジカルに重大な欠陥があるのでは
攻撃陣ではやはり本田圭佑の不調だろう。原因は体調面だと思われる。スピード、そして体にキレがない。もともとスピードで勝負するタイプではないが、ここまで鈍重だと、相手にボールを奪われやすい。日本は本田にボールを集める傾向が高いだけに、相手のターゲットになって、へんなところでボールを奪われると失点につながってしまう。
日本での壮行試合で仮想「ギリシア」のキプロスに1−0で辛勝。そして合宿先のアメリカで仮想「コロンビア」のコスタリカに3−1で快勝と、結果からみると順調な仕上がりぶりのように見える。だが、▽エース本田の不調、▽故障明け3選手の回復状況が不可視、▽不安定かつ駒不足のDF陣――と、日本の開幕試合(対「コートジボワール」)まで2週間を切ったこの時点で、見通しの暗さばかりが目立ってはいないだろうか。
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