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2011年10月16日(日) トップ下中村憲、Jリーグで機能せず

W杯アジア3次予選タジキスタン戦、8−0で大勝した日本代表。なかで、この大勝に最も貢献した選手の1人として注目されたのがMF中村憲豪(以下「中村憲」と略記)だった。タジキスタン戦、中村憲はトップ下で先発したのだが、スポーツマスコミの中には、故障で欠場した本田圭佑の代役以上の活躍と絶賛したところもあった。

タジキスタン戦の前、筆者は、当コラムにおいて、阿部勇樹と中村憲は代表に呼ばないほうがいいと書いた。そこまで書いておきながら、中村憲が代表戦で大活躍。筆者の見立ては大間違いと言われても仕方がないのだが、タジキスタン戦後、筆者は“この試合は日本代表の実力を論ずるに値しない”という趣旨のことを当コラムにて書いた。中村憲の活躍は、相手が相手だったから可能だったと筆者は言いたかったのだ。

中村憲についての筆者の見立てが正しいか正しくないかは、彼がリーグ戦でどれくらい活躍できるかを見ればいい。そんなわけで、本日(10月16日、等々力)の川崎―新潟で中村憲の実力を検証することにした。

もちろん、スポーツ選手には日によってコンディションの良し悪しはあるし、モチベーションもパフォーマンスに影響する。だから、1試合をもって実力を判断するのは危険なことは言うまでもない。代表選手を選ぶというのは、選手の総合的パワーを計ることなのだ。弱い相手に大暴れしたからと言って、そのことが代表に値するとは限らないし、強い相手に点は取れなくとも、光るものがあればそこに注目すればよい。その光が代表チームに必要ならば、代表メンバーというパズルに入れ込めばよい。

さて、新潟戦、中村憲は2列目の攻撃的MFでの先発。川崎は4−4−2、4−2−3−1の日本代表とは異なる。中村憲は、タジキスタン戦(日本代表)ではトップ下で、川崎では2列目。とはいえ、中村憲に課せられた役割は、タジキスタン戦と基本的には変わらない。攻撃の要として、得点も求められるし、決定的パスもださなければならない。

この試合を観た人にとって、中村憲の印象は深くなかったように思う。両チーム合わせて3得点が入ったが、内訳は、新潟のブルーノロペス2、川崎のジュニーニョ1といずれもブラジル人選手によるもの。前者の2得点にはミシュウがいずれにもからんでいるし、後者はジュニーニョの個人の力によるもの。両チームとも、ブラジル人ばかりが得点に絡み、日本人選手の得点に係る構成力が不足している。このあたりがJリーグの課題であろうか。それはそれとして、注目の中村憲が得点どころか、自軍の攻撃を組み立てる場面すら見られなかったのは残念だった。

新潟が中村憲に特別なマークをつけたというわけではない。新潟の試合運びは、アウエーを十分意識したもので、ブルーノロペスとミシュウの2人を前線に残し、自陣にブロックを敷くというスタイル。ハーフラインを越えたあたりからプレスがかかり、そこでボールを奪えたら、ロングフィードでペトロとミシュウに預けるというパターンの繰り返し。このカウンター攻撃がうまくはまり、けっきょく川崎を退けた。

新潟の守備は、もちろん、タジキスタンよりは厳しかった。といっても、格別なものではない。あたりまえの守備だ。この試合の主審(西村雄一)は接触プレーに厳しく、イエローカードが両チーム併せて5枚、うち、新潟の菊地直哉が80分に2枚目をもらい退場になっている。川崎の得点は、相手が1人少なくなった90分に前出のとおり、ジュニーニョの個人技で上げたもの。中村憲が得点をあげるシーンはもちろん、得点機会に絡むようなプレーすら見られなかった。

中村憲は後半、稲本潤一に代わって楠神順平が入ったところで、ボランチの位置に下がった。このことは、川崎の相馬直樹監督が中村憲の攻撃性を見切ったといえる。ポジションが下がった中村憲はボールに触る機会が増えたが、それでも、決定機を演出するに至らなかった。

相手が“厳しい”というよりも“普通に”守備をすれば、サッカーで大量得点が入ることは少ない。タジキスタン・ナショナルチームより、Jリーグクラブの新潟のほうがまともに守備をしたまでの話なのだ。相手の守備を上回るようなパフォーマンスが出なければ、代表のトップ下、すなわち、攻撃の核に値しない。選手を評価するということは、とても難しい。


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