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2010年09月15日(水) Jリーガー残酷物語

Jリーグ第22節(2日目/9月12日)、東京−浦和は悲惨なものだった。前半20分、東京の羽生直剛が今野泰幸と交代、37分には同じく高橋秀人が石川直宏と交代。後半56分、今度は浦和の山田暢久が坪井慶介と交代、78分、同じくエジミウソンが堀之内聖と交代。

ここまでの4人の交代は戦術的なものではなく、選手たちの故障によるものだ。その後、東京は戦術的交代で、67分にリカルジーニョを退けて平山相太を投入したため、残り10分ころから動けなくなった鈴木達也をピッチの外に出し、10人で戦った。

つまり、この試合、羽生直剛、高橋秀人、山田暢久、エジミウソン、鈴木達也の5選手が故障のため、交代を余儀なくされたのだ。このような異常現象を選手の自己管理能力、チームの健康管理の問題にしてはならない。明らかに、常軌を逸した、Jリーグの強行日程が原因なのだから。

2010年シーズンはW杯開催年に当たるため、変則日程のうえ、8月〜9月前半にかけて、異常高温の日々が続いた中、ナビスコ杯、代表戦が重なり、Jリーグの試合が中2日、3日で組まれた。運動量の多さを持ち味とする選手が脚の筋肉等を痛め、試合途中で退場したり、欠場したりしている。選手という大切な資産を消耗品のように扱ってはいけない。

さて、話し変わるが、長友佑都が移籍したセリエA、チェゼーナ−ACミランの録画中継を観た。この試合は格下チェゼーナが、エルヨン・ボグダニ(前半31分)、エマヌエレ・ジャッケリーニ(前半44分)のゴールで、強豪ACミランに完勝した。ホームのチェゼーナの全選手が90分間エネルギッシュに動き回り、スーパースター揃いのACミランの反撃を食い止めた。チェゼーナの交替選手は、後半36分、得点したFWエルヨン・ボグダニに代わって、FWドミニク・マロンガが入っただけ。つまり、勝利したチェゼーナの交替選手はたった一人。

この試合を見る限り、イタリア・サッカーが「カテナチオ」だけというわけではないことがわかる。先制したチェゼーナは、前線の選手が守備をして相手のパスを封じ、中盤より後ろは守備ブロックをつくり、スペースを与えない。W杯南アフリカ大会でお馴染みの戦術だ。先制点は、アルバニア代表の長身選手エルヨン・ボグダニの高さを生かしたもの、2点目は完璧なカウンター。

サッカーでは、格下といえども、選手全員が共通の戦術理解に基づき、規律をもって組織力、運動量で格上の相手を上回り、さらに、幸運が重なれば、勝てるのである。

一方、2点とられたACミランは、反撃のため、当然のことながら、きわめて攻撃的だ。ポゼッションを高めたACミランの猛攻、それに耐えるチェゼーナという形はスリル満点。両軍選手のフィジカルが充実し、汚いファウルもない。組織のチェゼーナ、個人のACミラン−−見ごたえのある、いい試合だった。こういうコンテンツの高さが重要であり、そのために、リーグ事務局は、あらゆる事項を整理・調整し、観客に良質な試合を提供すべきなのだ。

強豪ACミランにはベテラン選手が多い。主力有名選手をみると、ジェナロ・ガットゥーゾ(32歳)、アンドレア・ピルロ(31歳)、マッシモ・アンブロジーニ(33歳)、ロナウジーニョ(30歳)、フィリッポ・インザーギ(37歳)。この試合には出なかったクラレンス・セードルフは34歳。若手と呼べるのは、チアゴ・シウヴァ(25歳)、パト(21歳)、ロビーニョ(26歳)のブラジル代表トリオくらい。ズラタン・イブラヒモヴィッチも28歳になった。スーパースターは自己管理能力が高い、といってしまえばそれまでだが、優良な資産をクラブが大事に取り扱っている証拠だろう。

セリエAに限らず、欧州のビッグクラブは、UEFAチャンピオンズリーグの試合があり、さらに各国代表選手はヨーロッパ選手権の予選を控えている。日程もJリーグ以上に厳しいかもしれない。重要なのは、サッカーシーズンが高温の春夏を避け、秋冬に設定され、各クラブは、選手層を厚く手当てし、ベテランスター選手を大事に扱っていることだ。その結果、白熱した、高い技術の試合内容が維持され、お客が集まる。

Jリーグの春夏シーズンと試合日程のあり方が、このままでいいはずがない。良質のサッカーを見せるにはどうしたらいいのか、Jリーグ関係者が再考を要することは明らか。試合を消化すればいい、というものではないはずだ。そういえば、西欧、日本以上に冬が厳しいはずのロシアが、ヨーロッパと同じ秋冬シーズン制度に変更するというニュースが流れた。


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