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2010年09月08日(水) 顔見世興行でいいのか

FIFAランク32位の日本が同119位のグアテマラの挑戦を2−1で退けた。日本の2得点は、FW森本貴幸(22=カターニア)があげたもの。アタッカー不在の日本にとって、森本の活躍は明るい兆しだといえるのかどうか。

W杯南アフリカ大会終了後、パラグアイ、グアテマラが親善試合として組まれたけれど、強化目的ならば、ユーロ予選が始まった欧州に出向いて、W杯南アフリカ大会に出場できなかった欧州中堅国以上(たとえば、トルコ、アイルランド、ハンガリー等々)と試合をしたほうが効果的だろう。とはいえ、日本国民、代表ファン、同サポーターへの凱旋挨拶も重要。一戦目のパラグアイ戦は、リベンジマッチと銘打たれたお祭り的興行、二戦目のグアテマラ戦は、「かませ犬」相手に2014年に向けた、景気づけといった位置づけか。

この親善試合に間に合う形で代表監督が決定、しかも新監督の就任を祝うかのように、日本代表が2試合とも勝利して、まずは順調な船出をしたかのように見える。しかし、筆者には、日本サッカー協会が描いたシナリオが場当たり的修正によって、なんとか、ぼろを出さず上演され、結果オーライ、スポーツマスコミ及び代表サポーターから喝采を浴びたかのように見える。その理由は、以下のとおり。

その第一に、代表監督招聘のテーマ(意図)と結果の食い違いを挙げたい。次期代表監督招聘を進めた原博実日本サッカー協会技術委員長(強化担当)は、交渉について、スペインリーグ関係者に絞って、候補者をリストアップしたといっていた。ところが、決まったのは、セリエAの複数クラブ監督を経験したザッケローニだった。原技術委員長が、「スペインサッカー」から「イタリアサッカー」に乗り換えた理由がはっきりしない。日本代表の進むべき方向性が、“南アフリカ大会で構築した「守備力」を基盤としつつ「攻撃力」を加えること”、ならば、原技術委員長は、監督探しにあたって、“攻撃力強化に資する人材”というテーマを掲げなければいけなかった。そうであったならば、ザッケローニ就任にも納得できる。

筆者は、ザッケローニという選択が誤りだ、といっているのではない。代表監督候補者の選択肢は柔軟に設定すべきであり、スペインリーグ関係者というテーマ設定そのものが窮屈すぎた。また、そうでないことを祈りたいが、意図に反して、どうしようもなく、ザッケローニと契約したのであれば、ザッケローニ及び日本サッカー界の双方にとって、最大の不幸の1つとなろう。

この時期、代行もしくは暫定監督という肩書きで、原博実が親善試合の指揮をしたとしても、なんの問題もない。焦って意図に反する人材と無理矢理契約することのほうが大きな問題だ。代表監督が決まっていないのは日本と北朝鮮だけ、という報道も意味がない。世界のサッカー界においては、暫定的な意味合いで代表監督の座に着いた人が、筆者の想像では、かなり多いものと思う。

代表監督に関する考え方として、一度契約したら4年間は不変という考え方も固すぎる。就任した監督に適正がなければ、更迭をすればいい。そのとき、オズワルド・オリヴェイラ(鹿島)、レヴィー・クルピ(C大阪)、西野朗(G大阪)、ミハイロ・ペトロヴィッチ(広島)らのJリーグ監督も、かりにザッケローニ体制が挫折した場合の代表監督候補者リストに入れておくべきだ。

筆者は、4年後のブラジル大会に向けた日本代表監督候補として、まずブラジル人を考えた。なかでも、次期代表監督の最適任者の1人として、ドゥンガ(前ブラジル監督)を挙げたい。ドゥンガは南アフリカにおける失敗により、ブラジルでは評判が悪いし、守備的だという評価があるようだが、筆者はそうは思わない。4年後、彼が日本代表を率いて、ブラジルに逆上陸するというストーリーは痛快である。

第二に、グアテマラ戦を中2日で組み、しかも、召集された22名の代表選手のうち、遠藤、今野は2試合とも欠場し、さらに、グアテマラ戦では、遠藤、今野に加えて、中澤、栗原、松井の計5名がベンチから外れた。ケガだから仕方がないという見方もあるかもしれないが、2戦目欠場者のなかには、ロシアリーグに戻ることが日程上わかっていたといわれる松井が含まれていたことは驚きだった。

このたびの親善試合のレギュレーションでは、1試合の交代が6名まで認められる。だが、グアテマラ戦では、交代選手を4名しか使っていない。ベンチ入り選手の数が足りないため、新戦力のテストができなかったのだ。2試合目、ターンオーバーでいくのであっても、1試合目(パラグアイ戦)に出場した選手は、2試合目(グアテマラ戦)もベンチ入りしなければいけない。

そもそも、2試合欠場の2選手、2試合目欠場の1選手が代表に召集されたままであることが間違っている。2014年に向けた強化試合ならば、当然のことながら、出場できない選手に代わる新戦力を事前に登録すべきなのだ。ケガをすれば、代表の座は危うくなるのが道理。このたびの代表選手選考及び起用については、納得がいかない。W杯南アフリカ大会で活躍した選手を外すな、という、スポンサーからの要求に屈したのか。

キリンチャレンジ杯については、何度も当該コラムにおいて疑問を呈してきた。大会のあり方に再考を加えないと、「意味のない試合」「集客優先の試合」となりかねない。W杯南アフリカ大会における日本代表の成功にともない、代表試合が優良なコンテンツとして、復活した。そのこと自体は結構なことだけれど、無駄、無意味、無内容を重ねていると、後で大きな代償を払わなければならなくなることもある。


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