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2010年06月26日(土) グループリーグを総括する

(1)日本、予選リーグ突破――筆者の予想外れる

W杯グループリーグE組、日本はカメルーンには勝てる可能性があると予言した筆者だが、デンマークには負けると確信していた。ところが、結果は3−1というこれまた想定外のスコアで日本がデンマークに勝ち、決勝トーナメント(決勝T)に進んだ。

デンマークといえば、欧州予選を無敗で突破した強豪。その中には、本大会で北朝鮮に7−0で大勝したポルトガルから奪った勝利も含まれる。E組では、ご存知のとおり、初戦、オランダに0−2で負け、第2戦、カメルーンに2−1で勝っている。そんなデンマークを撃破して、岡田ジャパンは海外開催W杯で初の決勝トーナメント進出を果たした。

本大会前、日本のトレーニングマッチ(セルビア〜韓国〜イングランド〜コートジボワール)を見る限り、日本の予選突破を予想することは困難だった。日本代表に何が起きたのか。

決勝Tに進めた主因は、初戦のカメルーンに、なにはともあれ、勝ったことだ。日本があの試合に勝てた内部的要因は、本田のワントップ及び阿部のアンカー起用という配置換え、GK川島の先発起用ということになる。戦術的には、前からプレスをかけ相手ボールを奪う“積極的守備”を放棄し、自陣に守備ブロックを形成する戦術を徹底したことによる。

そのことと並行してだが、第二は、岡田監督が本田と“心中”を決めたことだ。カメルーン戦で本田がゴールを決めて勝利し、それが、決戦のデンマーク戦にも引き継がれ、本田がフリーキックからのゴール、直後の遠藤のフリーキックの成功、さらに、デンマークの焦りを誘い、心理的に追い込んで、岡崎の3点目に結びついた。本田こそが「ラッキーボーイ」だ。

カメルーン戦勝利の外部要因は、前に書いたとおりなので詳述は避けるが、おそらく、チームの内紛だろう。


(2)欧州勢の不調

本大会予選リーグでは、欧州勢――フランス(A組)、ギリシア(B組)、スロベニア(C組)、セルビア(D組)、デンマーク(E組)、イタリア(F組)、スイス(H組)の7ヵ国が敗退した。前回優勝国(イタリア)、同準優勝国(フランス)がともにグループ予選で敗退したわけで、南ア大会はまさに、意外性の大会だった。また、オランダ(E組)、ポルトガル(G組)を除く欧州勢――イングランド(C組)、ドイツ(D組)、スロバキア(F組)、スペイン(H組)も、予選突破を果たしたものの、かなり苦戦した。

(3)ホーム、アフリカ勢の不振

アフリカ勢もガーナ以外の予選敗退が決定した。アフリカで開催されるW杯だから、アフリカチームはほぼホームだという見方もあったが、筆者はアフリカ勢の活躍はないと予言しておいたが、そのとおりとなった。ガーナがどこまで勝ち上がるか。

(4)南北アメリカ大陸勢の好調

ウルグアイ(A組)、メキシコ(同)、アルゼンチン(B組)、米国(C組)、パラグアイ(F組)、ブラジル(G組)、チリ(H組)の南北アメリカ大陸勢が勝ち上がっている。参加国中、予選敗退したのはホンジュラスだけとなり、南米勢に限れば、突破率は100%になる。いずれにしても、北中南米勢は調子がいい。

タレント兼サッカー評論家で、パラグアイ・リーグでプレー経験をもつ武田修宏氏は、欧州勢の苦戦、南米勢の好調の傾向について、「南米勢は環境適応能力が高い」と某TV番組で分析している。適正な指摘だと思う。W杯南ア大会は、試合が開催されるそれぞれの地域の自然環境(温度差、標高差等)に著しい差異がある。広大な南北アメリカ大陸も緯度の差が大きく、開催都市も低地、高地さまざまである。また、移動距離も長い。北中米、南米ともに、南アに劣らず過酷な自然環境にある。そんな風土で予選等の試合を経験している北中南米勢は、狭くて平坦な欧州で試合をする欧州勢よりも環境適応力は高くなる。

(5)アジア勢も健闘

アジア勢では、北朝鮮(G組)、オーストラリア(D組)が敗退し、韓国(B組)、日本(E組)が突破を果たしている。オーストラリアはドイツに、また、北朝鮮はポルトガルに、ともに大敗したが、それはアジア勢の戦術的未熟さを体現したものといえる。オーストラリアは2位ガーナと勝ち点差で並んでいるわけで、W杯の戦い方が課題として残った。

(6)地域別の突破率

グループリーグ突破率を地域別参加国数でみると、欧州は13カ国中6カ国(46%)、北中南米(アジアとのプレーオフで勝ちあがったウルグアイを含む)は8カ国中7カ国(88%)、南米に限れば100%だ。アジア・オセアニアは5カ国中2カ国(40%)、アフリカは6カ国中1カ国(17%)。開催国の南アも敗退している。強いフィジカル、高い個人技、優れた身体能力といわれるアフリカ勢だが、とりわけブラックアフリカ諸国においては、ナショナルチームの強化方法に大きな課題を残している。戦術、組織、規律といった面を鍛錬しないと、W杯では勝てない。

(7)その他――いまのところ新星の登場なし

データはとっていないものの、シュートがバー、ポストに当たるシーンがやたら目に付いた。GKのハンブル、ハンドの反則、退場者も多いような気がするが・・・この当たりは、公式データの発表を待ちたい。

グループリーグ48試合消化した時点だが、衝撃的なニュースターは不在。プロのスカウトはだれに注目しているのだろうか。強いてあげれば、パク チュヨン(韓国)、本田圭佑(日本)、メスト エジル(ドイツ)か。3人ともちょっと、スケールが小さいかも。

グループリーグ全試合を通じて、最も印象に残った選手を1人選べば、米国のランドン ドノバン。運動量、闘争心、リーダーシップ、チームへの献身・・・地味だけど尊敬したい選手の1人。チームでは、マルセロ ビエルサ率いるチリ。日本の次期代表監督は、ビエルサに決まり。


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