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2010年06月05日(土) 内容乏しい練習試合

どちらのチームからも内容を感じさせない、凡庸な練習試合だった。日本は開始13分、セットプレーからイングランド戦に続く闘莉王のオウンゴール(OG)で失点。その直後、コートジボワールのスーパースター・ドログバが闘莉王と接触して負傷退場。右腕骨折の重傷らしい。チェルシーではおなじみの彼の動きだが、代表チームではどんな動きをするのか――期待が大きかっただけに誠に残念。ドログバの予想外の負傷交代で、興味半減といったところ。

■「死のグループ」に属する両国

W杯グループリーグE組の日本からすれば、相手のコートジボワールは仮想・カメルーンに当たり、G組のコートジボワールからすれば、日本は仮想・北朝鮮に当たる。お互い、本番前に、アジアとアフリカのサッカーの質の違いを確認することが第一義であることは言うまでもない。

ちなみに、E組とG組はよく似た構成になっている。まず、グループ内1位通過、すなわち最強国はE組がオランダ、G組がブラジルと考えられる。どちらも優勝候補の呼び声が高い。2位候補はどちらも欧州勢だと考えられ、E組がデンマーク、G組はポルトガルとなろう。FIFAランキングではポルトガルのほうがデンマークより上だが、欧州予選では両国は同じグループに属していて、デンマークがポルトガルをおさえて1位通過した。ポルトガルはどうにか2位を確保し、プレーオフにまわってW杯行きを決めた。その意味で、両国は欧州予選の因縁を引きずっている。

残念ながら予選敗退となる可能性が高いのが、E組のカメルーン、G組のコートジボワールのアフリカの強豪。そして、グループ最下位候補がアジア勢の日本(E組)と北朝鮮(G組)であろう。E組、G組はともに強豪国揃いの、いわゆる「死のグループ」。日本が南アフリカ大会の目標として掲げるには、せいぜい、ベスト16がいいところだと思うのだが・・・

■コートジボワールのほうがカメルーンよりチーム状態は良い

結果は0−2でコートジボワールが日本に勝った。この時期の練習試合であるから、結果も内容もあれこれいうに及ばない。両国とも、アフリカ⇔アジア、双方のサッカーの感触を実感するという最低限の目標は達成したとは思うものの、コートジボワールにしてみれば、エースのドログバのケガは予想外であろう。高すぎる代償である。

先般、ポルトガルが仮想・コートジボワールとして練習相手に選んだカメルーン――日本の本番の対戦相手――をコートジボワールと比較すると、守備の完成度という面で、コートジボワールのほうが上である。現段階では、日本の対戦相手・カメルーンよりも、コートジボワールのほうがいいサッカーをしている。両者に共通するのが組織力の弱さと、個々のプレーヤーの力量の高さ。ブラック・アフリカ勢に対する一般的評価、すなわち、組織力は劣るが、個の力は強い――に誤りはない。

コートジボワールの場合、現代表監督のエリクソンが監督に就任したのがおよそ2ヶ月前。規律や組織をチームに浸透させる時間としては短すぎる。それでも、コートジボワールのほうが、カメルーンよりは組織的であり、日本ボールのときの寄せが早く、圧力もあった。本番でカメルーンがコートジボワール並みのプレッシャーを日本にかけてきたとしたら、日本は苦しい。

なお、コートジボワールが日本から奪った2点は、いずれもセットプレーから。ブラック・アフリカ勢が本大会で得点を奪うとしたら、早いカウンターからか、もしくは、セットプレーからとなる確率は高い。どちらも連携というよりは、個の運動能力に依存した形である。

■相変わらず、攻撃の形が見えない日本

日本の課題である攻撃=得点機会はどうであったか。チャンスが皆無だったわけではないが、得点が取れる空気を感じさせないままで終わった。この試合、日本の両SBの上がりが乏しく、サイドからのクロスがゴール前に入る場面が見られなかった。長身のディフェンダーが守備ブロックを敷く前にサイドに基点をつくり、ゴール前で勝負する形がほしかった。

ロングボールを蹴って、岡崎を裏に走らせる、点で合わせる日本の攻撃の狙いは、成功する確率が奇跡に近いほど低いように思う。FWが疲労するだけだろう。ここにきて、守備重視の岡田ジャパン、ドリブルで突破を図ろうとしてボール奪われた場合のカウンター警戒が優先されているようだが、本番では、日本は初戦のカメルーンに勝つしか予選突破の可能性はないと思ったほうがいい。ならば、練習試合でリードを奪われた局面ならば、リスクを負って、失敗を恐れず、ゴールに迫るトライをしなければならなかったはずだ。岡田ジャパンは、まるで、“惜敗”を狙っているかのようにさえ思えてしまう。カウンターで何点取られようと、この段階で日本がほしいのは得点であるはず。攻撃の選手は、勝負にいってほしかった。蛇足だが、岡田監督に、大久保を選んだ根拠を聞きただしたい。彼は攻撃の駒として、まったく機能していない。

■守備重視の配置転換か

日本の陣形を見てみよう。この試合、日本はこれまでずっとボランチで起用してきた長谷部をトップ下に上げ、阿部と遠藤をボランチで組ませた。また、急造左SBの今野を右SBに回して、長友を左SBにした。この配置転換が何を意味するのかは不明だが、相手の強力選手に対し、長谷部、長友をぶつける作戦かもしれないが、ちょっとわからない。

W杯南アフリカ大会において、日本がベスト16入りを果たすには、カメルーンに勝つしか道はない。勝つためには、得点が必要。失うものなど何もない練習試合なのだから、とにかく、得点を追及したプレーを見せてほしかった。そうしなければ、チームの力は上がらない。そういう意味で、残念な試合だった。


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