2009年10月07日(水) |
A Good Loser or a Bad Loser? |
2016年の夏季五輪開催都市に選ばれたブラジル・リオデジャネイロ招致委員会は5日、リオによる裏取引を示唆したともとれる石●慎●郎東京都知事の発言をめぐり、「遺憾で国際オリンピック委員会(IOC)の規則に反する」と非難し、IOCに抗議文を6日に送付すると発表した。
石●都知事は帰国後の4日の記者会見で、「ブラジルの大統領が、聞くところ、アフリカの人にかなり思い切った約束をしたというようです」などと語った。リオ招致委は「発言は不適切で下品。リオは技術プロジェクトを評価され、大多数の委員の賛成によって選ばれた」と強調した。
この発言をネットで読んだとき、2008年北京五輪の野球でメダルを逃したH野代表監督のコメントを思い出した。H野は野球日本代表がメダルを逃した理由について、国際審判の技術不足のせいにして、国民から顰蹙を買ったものだ。彼は、国際審判が下手だから、日本は五輪で負けた、という意味の発言をしたのだ。この発言はメダルを獲得した3チーム、とりわけ、金メダルをとった韓国チームの偉業に敬意を欠く不適切なものだった。
筆者は、H野と石●が嫌いである。二人とも、上から目線で、威張っていて、人を馬鹿にしたような態度をとるように見える。筆者の目には、よく似たタイプの人間のようにうつっていた。成功・成果は自分の手柄、失敗は他人のせいにして、責任を回避しようとする。五輪がらみで、2人の日本の責任者が不適切な発言を重ねるとは、なんともいやな感じである。
だが、北京五輪野球代表のH野は、当時、国民から高い支持を得ていた。たとえば、サラリーマンの間では、「理想の上司」ナンバーワンだとか、筆者の記憶違いかもしれないが、女性の間では、「寝たい男性?」の第1位にも選ばれたような気がする。
石●都知事も東京都の知事の職を3期重ねていて、3度の選挙では圧倒的な強さを誇っていた。しかし、ここにきて、築地市場移転問題、新銀行東京問題でも非難を浴びているし、先の都議選で自民党が敗退し、足許が危うくなってきた。そんな中、ここで、東京に五輪を招致すれば・・・と考えるのは自然であろう。東京への五輪招致の動機は、石●都知事自身の政治的な劣勢をばん回したいがためではないか、とだれもが考えるのだが、招致の目的は、次世代に夢を等々の美辞麗句で粉飾されていた。であるから、都民・国民の関心は低く、“五輪をやる暇があったら、自分たちに職をくれ”といった気分が支配的だった。
「環境」五輪というのも意味不明で、そもそも、スポーツというのはノッパラ等でやるものだから、「環境」負荷が低いはずである。それを日本のプロ野球がドーム球場を建設したりするから、エネルギーを浪費するわけで、日本のスポーツ界が「環境」を優先するつもりならば、ドーム球場を一掃するところから始めればよい。
さて、話が横道にそれてしまったけれど、石●都知事が、リオが五輪開催地に決まったことを、なぜ、すなおに祝福できなかったのかといえば、H野代表監督と同様に、負けを素直に認められなかったからだろう。言い古された言葉だけれど、スポーツ文化を支えるのは、常に“A Good Loser=良き敗者”が存在するからである。スポーツの素晴らしさは、勝敗は必ずつくものだけれど、負けた者も勝った者も、互いを讃えあえることにある。
もちろん、筆者は、IOCの五輪招致の裏側を知らない。決定の裏にどんな取引やら不正やらがあるのかはわからない。かりに、石●が、IOCの開催地決定に不正がある、と確信するのならば、不正を暴けばよい。IOC改革に向かえばよい。不正のもとで開催地が決定されるような五輪を否定すればよい。“俺は、政治家として、二度と五輪招致などしない”と宣言すればよい。それほどの覚悟があるのかを問いたい。
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