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2009年05月27日(水) 黄昏の総合格闘技

「DREAM.9」をTV観戦した。いっとき盛り上がった総合格闘技だが、今回のTV中継を見る限りでは、日本の総合格闘技は末期症状を呈しているように思える。まさに「黄昏の総合格闘技」である。

「DREAM.9」の目玉は、512日ぶりの復帰戦となった山本“KID”徳郁(KRAZY BEE)の登場だが、ジョー・ウォーレン(米国)に1−2でまさかの判定負けを喫した。

筆者は、“KID”については、あまり好きなタイプのレスラーではない。しばらく前、彼がアマチュアレスリングの大会に出場したとき、日本のメダリストに巻投げをくらって腕を脱臼したシーンを見た。以来、“KID”の実力に疑いを抱いてきたのだ。もちろん、レギュレーションの異なるアマレスと総合では力の出しようも違うのだから、敗戦は仕方がない。でも、巻き投げで脱臼となると、あれれ…である。

復帰戦の相手ジョー・ウォーレン(米国)は、レスリングの元世界王者。筆者は“KID”の苦戦を予感していたが、案の定であった。この日の“KID”は打撃にスピードがない。とりわけ、レスラーの弱点であるローキックへの攻めが出せない。おそらく、膝の大手術の後遺症であろう。出したくても恐怖心がキックを抑制したのだと思う。敗因は、レスリングの技術の差もあるが、後遺症=恐怖心だと考えたい。

日本格闘技界の「黄昏」を最も象徴するのが、“世界超人選手権”スーパーハルクトーナメント。翌日(27日)のトーナメントの試合結果を報ずるスポーツジャーナリズムによると、「秒殺」が連続し、4試合いずれもが1R決着――と、威勢がいいが、TV中継のあった2試合は、いずれも、「金返せ」の大ブーイングものだった。日本の格闘技ファンは、こんないい加減な試合に大金をつぎ込むお人好しなのか。

敵前逃亡で「永久追放」となったはずのサップが登場したのだが、この日もサップは簡単に負けた。筆者からみれば、ボブ・サップを、総合格闘技から本当に永久追放すべきだと思う。この試合は、56キロも体重の軽い相手のミノワマンに足をとられて、あっさりとタップ。サップは、総合格闘技に出場できるレベルの選手ではない。威勢のいいのは、登場シーンだけ。演技はうまいのかもしれないが…

元メジャーリーグのスーパースター、ホセ・カンセコが総合格闘技デビュー戦でホンマンに挑戦したが、これも無謀なマッチメークである。実力、経験、技術、体格…すべてに大差があるうえ、カンセコは、恐怖心が先に立っていて、闘う姿勢がうかがえない。名声だけをセールスポイントにしてリングに上がり、恥をかいてファイトマネーをいただくという、“せこさ”が我慢ならない。

総合格闘技の底辺には、1試合5000円のファイトマネーで命をかけて闘う、下積みの若者がいくらでもいる。そういう選手たちの夢と希望を奪うのが、サップやカンセコといった、日本の格闘技にわく蛆虫どもである。こうした害虫を一掃しなければ、日本の格闘技は堕落する、いや、もう十分、堕落しているのである。所の応援にかけつけた前田日明よ、こうした日本の総合格闘技の現状をどう考えるのか。

そのほかの試合では、連敗中の所英男が、敗者復活からフェザー級GP決勝ラウンドへ勝ち進んだ。終始攻め続けた所の復活は、黄昏の日本総合格闘技界にあって、後述の川尻と並んで数少ない希望的存在である。“闘うフリーター”と異名を取る所こそ、5000円ファイターの頂点に君臨するスターである。所の今後の健闘を祈念したい。

第5試合では、川尻達也が“キング・オブ・HERO’S”J.Z.カルバンに判定勝ち。金星である。勝った川尻が、K−1・魔裟斗との対戦を希望したというが、こうしたマッチメークこそ、格闘技の本筋であり、ファンが待ち望む試合というものだ。

なお、そのK−1も魔裟斗が引退すれば、その後を継ぐスターがいないのが現実。選手層の厚いといわれる中量級においても、若手が台頭していない。ましてや重量級となると、大会に出場する外国人選手が固定化し、新鮮な試合が組めない。K−1の将来は総合以上に苦しくなっている。


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