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2006年03月15日(水) WBCを見習うべし

「疑惑」の判定で日本人のナショナリズムに火がついた。それまでは、公式戦開幕前の親善試合だと受け止めていた日本の野球ファンが一気に、WBCに関心を持ち出した。
日本代表は1次予選(アジア地区)を2位で通過。2次予選は米国、韓国、メキシコと同じグループに入り、初戦の米国戦を落とした。
この試合、日本は同点で迎えた8回一死満塁、岩村のレフトフライでタッチアップした3塁ランナー西岡がホームを踏み、決勝点を上げた。そのとき、米国のキャッチャーが西岡の離塁が早いとクレームをつけ3塁に送球するが2塁審判は大きくセーフのジャッジを見せた。しかし、こんな形式的なプレーに関心を寄せる選手、観客はいない。西岡の生還はだれがみても明らかだった。ところが、米国監督の抗議を受けた主審が西岡にアウト(併殺)のコール、日本は併殺でチャンスをつぶした。
再現ビデオで見る限り、西岡の離塁は早くない。塁審の判定を主審が覆すのも不思議な話だ。審判団のお粗末さを露呈したシーンだった。
だが、問題はそんなところにはない。まずもって、国際試合を戦う一方の国の国籍をもつ人間が審判を務めることが異常だ。五輪、W杯、大陸、地域別の大会・・・諸々の国際試合であり得ないことだ。WBCが公式国際試合とはいえない所以の1つだ。
二番目は、西岡のアクションだ。彼はベースに足を付けながら、あたかも走り出したかのような動きを見せた。あのようなアクションは疑いを誘発するに十分だ。たとえば、サッカーにおいて、ボックスの中で攻撃側の選手が手を上げた行為に似ている。ハンドではなくとも、ハンドと判定される可能性がある。中国には、“李下に冠を正さず”という諺がある。
西岡はタッチアップ後、初速のスピードを高めるためそのようなアクションをとったのだと思うが、WBCはローカル大会だから、相手が米国で米国の審判ならば、西岡のアクションは離塁が早いと判定される要素となりかねない。
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さて、ローカル大会のWBCではあるが、日本の野球界が見習うべきレギュレーションがある。投手の投球数制限だ。1次リーグ65球、2次リーグ80球だと記憶している。投球数制限により、投手の健康管理、選手の機会均等の確保などが配慮されている。世界標準(米国標準)では、プロ野球の親善試合ですら、投手の肩・肘等が保護されている。リトルリーグ、高校生、大学生であれば、50球、中3日は絶対にキープしなければいけない。ところが、日本の高校野球では、「エース」と呼ばれる一人の投手が、県予選から甲子園の決勝までの数試合を投げぬくことが「常識」になっている。エースの累積投球数が1,000球近くに達することもあり得る。
先日、日本の高校野球において、ある代表校が選手の非行で失格となった。日本の高校野球の「退廃」については当コラムで何度も書いた。もはや、日本人のだれもが高校野球を純粋なものと受け止めていない。にもかかわらず、高校野球を神聖なものとして扱うマスコミがいる。筆者は甲子園大会の即刻中止を希望する。
それが叶わない「夢」――このまま高校野球が続くもの――ならば、高野連及び主催者マスコミ企業は、高校生の健康管理について、はっきりとした方針を示すべきだ。試合前の健康診断程度でお茶を濁してはいけない。最低でも、WBC程度の投手の投球数制限を規定すべきだ。日本の中学生たちが高校野球を拒否して、卒業とともに米国のマイナーに挑戦する機運が高まればいい。
なお、WBC日本代表に「巨人」の選手が選ばれていないのはなぜ?


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