Sports Enthusiast_1

2006年01月28日(土) 柳沢問題

セリエAで塩漬けになっている柳沢が鹿島に復帰できないまま、宙ぶらりんになっている。柳沢の場合、所属クラブでのレギュラーはいうに及ばず、ベンチにすら入れない。セリエAの某クラブは、柳沢となぜ契約したのか。そこのところを、スポーツジャーナリズムははっきり報道しなければいけない。断片的な報道によると、柳沢の契約とセットになって、放映権が設定されていたことが大きいようだ。日本人選手と契約すると、テレビ放映権料が獲得できるし、日本企業がスポンサーになってくれる。さらに副産物として、日本人観光客の誘致推進、グッズの売上増加等々が期待できる。日本人選手が「広告塔」といわれる所以だ。
柳沢にとって、世界でトップといわれるセリエAのクラブに移籍できたことはステップアップであることは間違いない。プロサッカー選手ならば、レベルの高いところを目指すのは当然のことだ。だが、プロ選手ならば、自分の実力を見極めることも必要だ。海外クラブの評価基準が自分の実力なのかジャパンマネーなのか――そこを誤ると、塩漬けの悲劇に陥る。
筆者はプロスポーツ選手ではないので、控え選手の心情を理解することはできないのだが、自分がチームの中でレギュラーを取れるか取れないのかは、わかるのではないか。
というのも、サッカー大国ブラジルから日本にやってきたサッカー選手が何人いるかしらないが、そのなかで、ラモス、ロペス、アレックス(三都主)、トゥーリオらが日本国籍をとった。ラモスはW杯出場寸前で予選敗退の憂き目を見たが、ロペス、アレックスはW杯出場を果たした。トゥーリオも2010年大会に出場する可能性を秘めている。彼らがブラジル国籍のままだったら、プロサッカー選手の最大の夢といわれるW杯出場が叶ったであろうか。彼らは日本国籍を選択することで、成功を勝ち得た。彼らの選択は賢かった。
プロサッカー選手ならば、試合に出てヒーローにならなければ意味がない。「広告塔」に甘んじている自分を惨めだと感じるだろう、いや、惨めだと感じなければいけない。世界のサッカー市場にはカネが渦巻いているけれども(そのことについての議論はいまはしない)、それゆえに、選手にとっては、グローバルに流動性が確保されている。そうした利点を大いに利用して、自分の夢を実現していただきたい。
柳沢の「塩漬け」は、日本サッカー未成熟の象徴だ。海外移籍に飛びついて、スポーツ選手の本分を置き忘れた。このような錯誤は自己責任であって、だれのせいにもできない。柳沢に限らず、塩漬けの選手たちは、早いところそこから脱却してほしい。サッカー選手の寿命は短いのだから。


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