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2006年01月18日(水) 復帰組をつぶせ

W杯開催の年初、大げさに言えば、Jリーグに不穏な空気が漂っている。Jリーグの今後の発展に係る問題なだけに、見過ごすわけにいかないので、敢えて書く。
●ヴェルディ、大崩壊
J2に降格した東京ヴェルディが更なる大崩壊を始めた。当コラムで東京Vの「崩壊」を報じたのち、MF(兼DF)林健太郎の甲府入り、平野孝の欧州行きが決まりそうだ。ということは、筆者が把握している限りで東京Vに留まる可能性の高い主力選手といえば、FW平本一樹、森本貴幸、MF・戸川健太、柳沢将之、町田忠道、根占真伍、玉乃淳、DF上村健一、GK高木義成くらいか。ラモス新監督の補充も管見の限りでは、たいしたことはない。このままでは、東京Vの「一年でJ1復帰」の公約は果たされまい。

●Jリーガーは意地を示せ
当コラムで海外遊学組のJ1復帰について書いた。小野の浦和復帰が決定し、中田(浩)、柳沢の鹿島復帰が有力視されている。高原も流動的だ。筆者は、彼らを迎えるJリーガーがJリーガーのプライドと意地を賭けて復帰組を迎えることを望んでいる。
海外遊学組のJ復帰は、彼らが海外リーグで通用しなかった結果である。Jに復帰して彼らが大活躍をしたのならば、Jリーグのレベルの低さが証明されてしまう。
まず、復帰クラブでのポジション争い。彼らにやすやすとレギュラーの座を渡してはならない。練習から厳しく当たってほしい。クラブの監督も、名前ではなく、練習をみて起用を決めてほしい。
彼らがレギュラーとして試合に出たとしても、相手チームは彼らの活躍を許してはならない。“日本代表なのだから、怪我をさせてはいけない”などと、ユメユメ考えてはいけない。日本代表というのは結果であって、代表の座を保証された選手など一人もいないはずだ。いまの日本代表監督は代表選手を固定する傾向をもっているが、Jリーガーはそんな傾向は無視して、海外遊学組がJリーグで活躍することを断固阻止しなければいけない。FIFAランキング15位がバブルでないことを証明してほしい。試合ではガンガン、当たって厳しい試練を与えてほしい。
とはいうものの、削ってはいけない。悪質なファウルで潰してはならない。正々堂々、遠慮や気兼ねなく、復帰組と戦ってほしい。柳沢や中田(浩)には失礼だが、彼らは欧州で塩漬けだった選手。ベンチにすら入れなかった。塩漬けがJリーグに復帰した途端、生き生きと大活躍したのでは、Jリーグは笑われる対象だ。
中田(浩)がイスラエルリーグ入りを拒否したことは、残念である。中田浩は最大のチャンスを逃した。イスラエルは昨年のW杯欧州予選グループ3位でPO進出を逃したものの、上は1位フランス、2位スイスだ。スイスはトルコをPOで破っている。イスラエルは、筆者が応援しているアイルランドより上位なのだ。しかも、フランス、スイス、アイルランドに対して、ホーム・アウエーを問わず負けていない。結果(W杯出場)は、時の運。
イスラエルの実力は、W杯出場国とほぼ同程度。俊輔が「活躍」するスコットランドリーグより上なのだ(FIFAランキングでは、イスラエル44位、スコットランド60位)。中田(浩)に残された場所と時間はもうなくなったに等しい。中田浩はラストチャンスを逃してのJリーグ復帰だから、Jリーガーは中田浩に対して、Jリーグの厳しさをきっちりと味あわせてやってほしい。

●新しいチャレンジを歓迎する
さびしい話ばかりをしたので、最後は喜ばしい話題にふれておく。まず、大黒(G大阪)のフランス二部移籍だ。渡仏して2〜3日目で試合に出場したらしい(もちろん無得点)。いい傾向である。監督が試合に出したいと思うことは、その理由がなんであれ、望ましいことだ。
平野(東京V)のクロアチア移籍、鈴木(鹿島)のセルビア=モンテネグロ移籍も歓迎する。鈴木が移籍するレッドスターは欧州の名門だ。旧ユーゴスラビア時代、レッドスターは、欧州で最も強いクラブの1つだった。
彼らは(平野はフランス大会出場、鈴木は日韓大会出場)ともにW杯出場経験者。だから、「いまさらW杯出場など・・・」というわけではあるまいが、ただ欧州にいたいと願う柳沢、中田浩をブランド志向の子供レベルにたとえるならば、平野・鈴木の動きは、子供を越えた大人のレベルの雰囲気を感じ取ることができる。平野・鈴木の移籍は、日本サッカー界における海外移籍が、成熟期に入りつつある兆候に思える。残された課題は、二人が試合に出ること、そして、結果を残すことだ。
Jリーグから海外リーグへ、そして、海外リーグからJリーグへ・・・自由に移籍が繰り返されることで、選手の意地とプライドのぶつかり合いが生まれる。今年のJリーグはもっとおもしろくなる。Jで鍛えられることの方が、遊学・塩漬けよりも、選手個人及び日本サッカーの強化にまちがいなく、つながるだろう。


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