Sports Enthusiast_1

2005年05月27日(金) 末期症状

これまでツキで奇跡的な勝利を上げてきたサッカー日本代表だが、そのツキが完全に落ちてきた。このことは当コラムで幾度となく指摘してきた。筆者は、04〜05年前半のジーコジャパンを麻雀の一人勝ち状態に喩えてきた。麻雀の経験者ならば、ツキという概念を理解できる。ジーコ監督はおそらく、麻雀を知らないだろうが、勝負の世界に生きてきた男だから、ツキがわからないことは絶対にない。
もちろん、ツキだけでは勝てない。団体ゲームの勝負は、各人の技術・訓練・調整等、指導者の起用法・規律等、そして、コーチらによる選手のコンディションのつくり方等等でレベルの差が出てくる。それらを総合して、「地力」だとか「実力」だとか、あるいは「格」と言っている。
キリン杯の2試合は、建前はともかく、バーレーン戦の調整という位置づけだった。つまり、相手のペルー、UAEに負けることはない。ただ、勝ち方はどうなのか、それがポイントのはずだった。というのは、ペルーもUAEも「代表」とは名ばかりで、ペルーの場合、代表控え以下のチームだし、UAEの場合、若手中心で彼等の目標は2010年というのが一般的な見方だった。勝負の流れの中で、大事な一番の前の調整試合に負けてしまうのは、いいわけがない。調整試合に強豪を呼んで、けちょんけちょんに負ければ、自信喪失につながりかねない。そういうショック療法もあるかもしれないが、あまり使わない。ペルー、UAEは、どちらも日本代表が負ける相手ではないはずだった。
さて、結果としてはどちらも同じような展開で負けた。相手の狙いどおりに負けた。得点の取られ方までもが同じだった。相手のスルーパスに反応できなかったのは、両試合とも、DFの同じ選手だった。長らくケガでJリーグに出場できなかったこの選手が代表であることを不思議に思って当コラムで書いたことがあるが、レギュラー中澤のアナを埋められなかったことが証明された。
ところで、キリン杯はバーレーン戦の調整試合という位置づけだが、実は調整試合=シミュレーションになり得なかった。キリン杯の相手のペルー、UAEは、アウエーの典型的な戦い方をしたことは、だれの目にも明らかだろう。引き気味で、ポゼッションにはこだわらず、致命的なスルーパスや得点につながりやすいクロスを上げさせない。中央からの攻撃には人数をかけてはねかえす。そんな戦い方だった。しかし、来月のバーレーン戦はそうはならない。アウエーで日本に惜敗したバーレーンは、ホームでは勝ちにくる。日本が引いてくれば、必ずや押し込んでくる。日本はキリン杯では体験しなかった強い圧力を経験するはずだ。つまり、日本の立場はキリン杯とは逆転する。
そこで、ジーコ監督の采配が見所となる。日本がアウエーの戦いをする(できるかどうかが問題だが)のか、それともリスクを賭して攻め合うのか。前者ならば、日本代表にアウエーの規律があるのか。私見では、ジーコジャパンにアウエーの規律はない。せいぜい、両ボランチが守備にまわるくらなものだ。そうなれば、最終ラインに中盤が吸収されて、相手の創造的スペースを広げる結果になり、日本は試合の主導権を失う。その状態のまま90分間耐え続けることは不可能だ。ということは、攻め合ってイラン戦のように玉砕するのか。筆者のバーレーン戦の予想は、攻め合って、日本が負ける??と出た。


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