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2005年03月13日(日) 育てる

名古屋が磐田を3−0で粉砕した。名古屋には全然注目していなかったけれど、若い力が台頭していることに驚いた。さすが、ネルシーニョ監督だ、しっかり若い才能を伸ばしている。この試合では、新人の杉本がゴールしたし、本田も落ち着いて自信たっぷりのプレーを見せた。DF、MFにも新顔が多い。杉本のスピード、本田の全体を見通せるスキルは共に魅力的だ。
さて、一方の磐田は、先発予定のゴンが試合開始前に異常を訴えてカレンが急遽先発した。詳しいことは分からない。重ねて、村井に不幸があってべンチに入れず、藤田が左サイドという異常事態。磐田には不運だったかもしれない。
いずれにしても磐田は心配だ。以前指摘したとおり、FWのグラウ、ゴン、チェの使い方がまとまっていない。この試合の急造コンビ、グラウ、カレンはまったく機能せず、カレンは前半で退いたが、とにかく、アタック陣が固まらないから、攻撃の形も定まらない。その試合に出場した3人のうちの2人の個人技頼みで、それ以外の攻撃パターンといえば、ボランチ名波が供給する、精度の高いロビングを頭で合わせる形しか選択肢がない。名古屋のように、相手DFに高さがあり、しかも、中盤から出所・名波にプレッシャーがかかれば、この攻撃の威力も半減する。西、川口(途中出場)のサイド攻撃にもキレがない。チーム全体に活力がないのだ。
繰り返しになるけれど、磐田は切り替えに失敗した。クラブ運営の戦略的誤りだ。きょうの相手の名古屋、東京V、FC東京、千葉、横浜、鹿島と、若手を我慢して育て上げ、そろって地力をつけてきた。苦しいシーズンもあっただろうが、クラブとしてフレッシュなパワーが出てきた。10連覇などできないのだから、いつかは下位に退き、建て直しを選ばなければならない時期もある。にもかかわらず、その時期にあるはずの磐田は、才能ある若手がいながら、市原(千葉)から選手を引っ張ってきて、若手の台頭にふたをかぶせた。山本監督に育てながら戦う度胸がなかったからではないか。任期中に、強豪・磐田が下位に沈むのが恐かったのか。クラブが元五輪監督のキャリアに期待したものは、あふれている若い才能の開花を助けることではなかったのか。
東京Vの場合、アルディレス監督が就任してすぐに結果は出なかった。しかし、2年目、相馬、平本といった若手が代表に選ばれてもおかしくないくらい力をつけてきた。オシム監督の千葉(市原)も阿部を筆頭に、巻、水野が育っている。そして先述したネルシーニョ監督の名古屋、トニーニョセレーゾ監督の鹿島もそうだ。こうみると、原監督率いるFC東京、けが人続出で若手を起用せざるを得なくなった横浜の岡田監督の2人は別格として、若手を積極的に登用する監督に外国人が多いことがわかる。磐田もそうあってほしかったけれど、元五輪代表監督は、目先の順位にこだわったか。
これも繰り返しになるけれど、元・五輪監督はJリーグの監督経験がない。長いシーズン中、選手を育てながら戦った経験がない。五輪代表では、うまい選手が自然に集まったけれど、クラブチームではそうはいかない。五輪代表監督なんて肩書きは、リーグ戦では何の足しにもならない。新米監督にはまだまだ、経験が必要ということだ。日本サッカー界、監督も育てなければいけないのだから。


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