Sports Enthusiast_1

2003年10月10日(金) 組織的?

最近、ジーコジャパンの内実がだんだん、報道されるようになってきた。チュニジア戦の前後、「このチームには、なんの約束ごともない」といったのは、代表に復帰したあるDFの選手の言葉。監督の指示なし状態の下、選手が勝手にというか自主的に話し合って、戦術を決めているらしい。しばらく前、日本代表が急造代表チームのアルジェリアの三軍に勝った後、(このコラムでも取り上げたが)、有名なスポーツジャーナリスト氏が「ジーコジャパン」批判の論文をA新聞に掲載した。その論文の内容は、代表監督の「策なし」=「創造性」を選手が否定して、自主的に「組織性」を回復したことをもって、ジーコの監督能力に疑問を呈したのだ。その結果かどうかしらないが、日本代表はアルジェリアに勝った。
こうした断片的な「ジーコへの疑問」を1つの結論に導く発言があった。チュニジア戦後のルメール(チュニジア監督)の日本評だ。ルメールは言うまでもなく、日韓W杯のときのフランス代表監督。彼は予選敗退した代表監督だからたいしたことはない、という評価もあるかもしれないが、世界最強の代表チームを率いた指導者だ。素人の言葉よりは重みがある。
さて、ルメールは何といったのかといえば、「日本は組織的だった」と評したのだ。ジーコ監督が日本代表に求めたものは、「組織」に縛られない「自由」なサッカーだった。「組織」よりも「個人」、「規律」よりも「創造性」だったはずだ。ところが、監督の抽象的なチームコンセプトでは相手に対処できなくなった代表選手たちは、先のジャーナリスト氏が報告したように、監督の方向性から逸脱した「組織性」を「自主的」に構築し始めたのだ。
だが、自由だとか創造性とかの言辞は(何度も繰り返すが)、ジーコの言葉を信じる日本のサッカー関係者(とりわけ、A新聞のサッカー担当者が熱烈なジーコ信者)の錯覚だ。このことは何度もここに書いたので、繰り返さない。神様を信ずる自由は、憲法で保障されている。
日本のチュニジア戦の戦い方が組織的だったかどうかといえば、ルメールのいうように、組織的だった。世界レベルのサッカーが組織的でないことなどあり得ない。少なくとも、日本の方がチュニジアよりは組織の質が上だったから、チュニジアは得点を上げられなかった。
組織性はとりわけ、守備において発揮される。守備のリーダーシップを取ったのは中沢だった。私見では、この試合のMVPは間違いなく中沢であって、得点を上げた柳沢ではない。中沢はトルシエ時代、何度も代表合宿に参加し代表に選ばれた選手。私の評価では、日韓W杯大会に出場すべき人材だったが、最終選考で秋田に代表の座を譲った。その理由も前にここに書いたので繰り返さないが、読売(ヴェルディ)をW杯から排除するサッカー協会=A新聞の方針の犠牲者の1人だ。
余談だが、代表監督の犠牲者は、現・名古屋監督のネルシーニョ。98年フランス大会予選を控えた当時、代表監督だったファルカン解任後、協会内に設置された読売系(ヴェルディ)技術委員会がネルシーニョ(当時ヴェルディ監督)を代表監督に推した。が、協会幹部の意向で代表監督に選出されなかった。ネルシーニョに代わって協会が代表監督に推したのはK氏だった。素人監督のK氏は予選途中で解任された。中東勢の自滅でアジア予選は突破できたものの、後任のO氏がカズ、北澤を代表から落とすなどのドタバタガ続いた。日本代表はフランス大会前後、迷走を続けたことは記憶に新しい。
横道にそれたが、チュニジア戦でその中沢がDFのリーダーシップをとったということは、いまの日本代表は残念ながら、トルシエの遺産で戦っているということだ。それをジーコが認めることは100%死んでもあり得ないだろうが、現実はそうだ。
私が日本代表に期待するものはないというのも、そのことが理由だ。遺産で戦っている以上、トルシエ時代のよくて現状維持、自然の成り行きにまかせれば劣化する。06年ドイツ大会アジア予選で勝ち残っても、本大会ベスト16以上に上がることはない。アウエーの大会だから予選リーグ敗退もあり得る。なによりも、アジア予選が危ない。私は中田が元気なうちはアジア予選はだいじょうぶだといったが、このまま日本代表が遺産を食いつぶし自然劣化するならば、予選敗退の可能性の方が高くなりそうだ。
サッカーをやるのは選手だ、という「正論」ほど愚かなものはない。ジーコの求心力は認めるが、いまの日本代表が監督の求心力だけで勝ち上がれるチームでないことは、いうまでもない。日本選手のレベルが上がったというが、リーガエスパニヨール、プレミア、セリエAなどの試合を見れば、いまの日本の実力がどの程度かは一目瞭然。ホームのW杯、組み合わせに恵まれ予選突破したくらいで、その実力を見誤ってはいけない。ホームのAマッチ(国際親善試合)で稼いだ、世界24位ランキングなど、信用してはいけない。アウエーでチュニジアを破ったくらいで、日本代表の現状への悲観的見方が変わることなどない。


 < 過去  INDEX  未来 >


tram