読売の投手陣が崩壊しつつあることは昨日、書いた。その救世主として期待されているのが木佐貫である。ちょうど、読売と広島のオープン戦が昨夜TVで放送されていて、しかも、木佐貫が登板していたのだ。 木佐貫が活躍できないと私が予想する根拠は、彼の投球フォームにある。俗に「腕(肘)が下がっている」というやつだ。右投手の場合、下半身の体重移動は、右足を軸足にして左足を上げ、体重が左足に移ったところでそれを軸足として右足を蹴り上げる。しかし、ボールを投げるのはもちろん上半身なので、下半身の横と上下の動きによって生じた力をいかに上半身に伝えるかがポイントになる。上半身は肩を基点に肘から指先までの変化が打者を惑わすが、基本的には下半身の水平の移動とボールが離れる瞬間までの軸足(右投手の場合は左足)と蹴り上げた右足の反動で生じた上下の力をいかにボールに伝えるかで投げられたボールの威力が決まる。通常は、いわゆる「投げおろし」が最も効率的だ。腕(肘)が下がるのは、「抜ける」と呼ばれるもので、力がアームに十分蓄積されないので、ボールの威力が減退し、ボールをもつ時間が短い。これを「球離れが速い」とも言う。 もちろんこれは、人間の動きを機械にたとえた場合に言えることで、人間にはいろいろな癖があるし、効率の悪いフォームを補う体力によって、効率的なフォーム以上の威力を発揮できることもある。だから、理想のフォームで投げても大成しない投手もいる。逆に、ランディ・ジョンソンのように左腕が下がっていることで、とてつもないスライダーが投げられ、しかも、たぶん彼の天性の肩の強さだと思うが、「投げおろし」以上の速いボールを投げられる。ジョンソンは変則フォームで、メジャー屈指の左腕として君臨している投手の1人だ。 さて、木佐貫の場合、体力的(筋力)に彼の効率の悪いフォームをカバーするパワーがない。下がった腕のぶん、ボールをはなすポイントが近いため、コントロールはいいようだ。だから、せいぜい中継ぎ、それもセットアッパーではなく先発が降板した後の1〜2イニングだろう。きのう木佐貫の後に投げた真田のほうがフォームがいい(結果は両方とも悪かったようだが)。真田の方がボールをもつ時間が長く感じられ、ボールに力が加わっているようにみえる。 木佐貫とフォームは違うが、下半身の力を無視した投手に、元読売の江川がいた。江川は上半身、しかも肩と肘に負担をかけたフォームでかなり速いボールを投げたが、活躍の期間は短かった。肩に故障をしていたとも言われているが、いつごろからかは不明である。一方、読売の桑田は、肘の故障後、下半身の力をうまくボールにのせることがうまくなった。もともと腕が下がらない投手ではあったが、昨年は肘の調子も良くなったのか、威力のあるボールを投げていた。 もちろん、ピッチングはボールの威力だけではなく、タイミング、緩急などもあるので、木佐貫がそのあたりに活路を求めることもできるかもしれないが、それでも、彼の投手寿命は短いだろう。
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