横浜が現監督の解任を決めたようだ。当然である。この監督については何度も批判してきたので繰り返さない。 かつて、読売のV9という歪んだ時代があった。それがドラフト制度で崩れ、読売はその崩壊を逆指名とFAでくい止めようと画策した。しかし、1チームの常勝などいう異常現象を、プロ野球というスポーツで繰り返してはいけない。ONが活躍したプロ野球とは、その歴史の1ページにすぎないのである。V9=ONは、イチローによって、乗り越えられたのだ。 いうまでもなく、イチロー以前と以降では、野球のあり方が違う。イチローは打撃がうまく、日本ではパワーもある。肩が強く足が速い。彼は送りバントがうまいのでもなければ、ノーアウト2塁でセカンドゴロを打つのがうまいわけでもない。スポーツ選手としての高い能力に魅力を感じるのだ。 いまは、狭い球場でホームランを量産する選手がヒーローとなる時代ではない。それは過去のことだ。セリーグにはいまだに狭い球場が残っているが、それでもON時代に比べれば相対的に広い。広い球場になれば、ホームランを量産する選手を集めたところで、勝率は高くならない。まず、ディフェンスをしっかり固めることだ。先発ローテーションを決め、セットアッパー、クローザーに適した人材を集めなければいけない。強打者に頼った打線は理想だが、それだけで勝率が上がるように、野球はできていない。打線には波があるのだ。打線の下降期には、走塁で相手バッテリーを苦しめたり、足で2塁打、3塁打を稼いだり、内野ゴロで生還するなど、リズムあふれた試合運びをしなければ、長いリーグ戦は戦えない。先に述べたように、スポーツ選手には調子の波があるのであって、主力が調子を落としたときのための豊富な交代要員も必要だ。 日本ではそれに送りバントが加わる。しかし、これも繰り返すが、私は送りバントが嫌いである。アウトを増やして走者を進めるという発想がガマンできない。 それだけではない。バンド失敗ほど、スポーツと遠い光景を私は知らない。犠牲バント失敗が攻撃側に与えるダメージは計り知れないのだ。読売の打撃好調の2番打者が、一度の送りバンドの失敗で調子を崩した。思い切り打って併殺をくらったとしても、送りバントの失敗よりは、はるかにすがすがしい。 優勝した読売の原監督は、前監督の野球スタイルから、多少進化をなし遂げたが、送りバントの多さが気に入らない。横浜の解任が決まった監督はもっとひどい。犠牲バントを最低限にとどめ、日本の「野球」を“スポーツ”に戻してほしい、というのが私の願いだ。
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