職業婦人通信
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2005年06月03日(金) 隣の王子様

私の住居は会社所有の単身者用マンション。

したがって住人の入替りは激しく
隣近所のつきあいは非常に薄弱である。

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4月、
千代子の隣に新しい住人がやってきたことは
引越しの気配で察していたが
その顔がわかったのはつい最近のこと。

(似・・・似てる!・・あれは・・・監禁王子!!)

監禁王子にそっくりな彼は
いびきがひどい。

壁が異常に薄い(会社が経費を極限まで節約した結果と思われる)
わがマンションでは
隣人の生活音は筒抜けに近いのだが
それにしたって王子のいびきは凄まじく
ふと夜中に目を覚ますと

「グォォォ・・・ゴォォ・・・グォォォ・・・」

という、王子なルックスにそぐわない
超重低音のいびきが壁を震わせているのだ。

それだけならまだいい(いいか?)。

王子のいびきは時々止まるので
壁のコッチ側で私も勝手に緊迫してしまうんである。

「グォォォ・・・ゴォォ・・・グォォォ・・・」といういびきの合間に
突然いびきが停止し

10秒後ぐらいに、

「グハッゲホッ」

という苦しげな咳が聞こえてきたりするのだ。

これは明らかに、
「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」ではないかと
私は勝手に踏んでいるのだが
それを本人に教えることもできない。

突然、面識もロクにない、
隣に住む女(千代子のこと)が
「あなた、睡眠時無呼吸症よ、まちがいない」
などと言ってきたら
王子だって感謝する以前に
気味悪いに違いあるまい。

・・・しかし、

いつの日か、ホントにいびきが止まりっぱなしになっちゃったりしたら
私はどうしたらいいのだろう?

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昨日の深夜も、ひとり晩酌をしていた千代子は
隣のいびきが止まった瞬間、
酒を注ぐ手を止めてしまったくらい
勝手に心配する日々を送っていたのだが

彼の本当の恐ろしさを知ってしまったのは
今日、つい先ほどのことである。

その事実は
いびきもSASも吹っ飛ぶほどの破壊力で
千代子を打ちのめし、

あまりの衝撃に
今はもう引っ越したい気持ちでいっぱいなのだが
現状の家賃(1万5千円)以下で
東京23区内に住めるところなどない。あるわけもない。

どうしよう・・・(慟哭)

(つづく)


千代子 |MAIL
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