妄言読書日記
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2012年03月05日(月) 『信長あるいは戴冠せるアンドロギュヌス』(小)

【宇月原晴明 新潮文庫】

タイトルから察せられるように『ヘリオガバルス または戴冠せるアナーキスト』と密接な関係にある小説。
なぜなら、ヘリオガバルスの作者アントナン・アルトーが登場人物の一人として登場するから。
アントナンの元を一人の日本人が訪れ、ヘリオガバルスと信長の共通点を語っていくという、近代の物語と、信長の物語が並行して進む。
作中、信長は両性具有として登場し、さらに、ヘリオガバルスとの比較で、ダブルという言葉が強調されるが、小説の構造もまた信長の時代と、二十世紀が重なりあの独裁者も登場してくる。

信長にまつわる様々なできごとを神秘的に解き明かすことだけなら、他の小説にもよくあるのだけれど、なにしろ美しかった。
信長もそうなのだけれど、信玄も謙信もその死が美しかった。
その中にあって、秀吉の存在が引き立っていて、珍しくいい秀吉だなぁと思った。

楽しかったな。

でも、武田の忍は軒猿じゃない。
なんか意味があって軒猿にしたのかな。



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