妄言読書日記
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2003年12月15日(月) 『暗い宿』(小)

【有栖川有栖 角川文庫】

“宿”にまつわる短編集。
一番好きな短編集かもしれません。
最近の有栖川有栖の短編は実験的なものが多かったようので、本来の正統なミステリとして書かれた四つの作品はどれも改めて、ミステリって面白いなと思いました。

はい、真面目な感想はここまでです。
(短い)

「暗い宿」
表題作です。アリスうっかり旅先で無茶して体調崩す編。
火村せんせーが一緒じゃないんだから気をつけないと〜と妙にハラハラします。
忙しい忙しいと言いながらしっかり出てくる火村先生が相変わらず素敵です。
有栖川有栖のミステリは犯人指摘に色々と趣向が凝らされていて、全てが分った最後まで楽しませてくれるところも好きなところ。
さて、どうして火村先生はなにがなんでも帰りたかったんでしょうね。
そんなの気にかけるのは私くらいでしょうが。

「ホテル・ラフレシア」
ヴァカンスの似合わない火村先生編。
お馴染みの片桐君は、結局何があったのか全く知らないままなんでしょうね。
南国に来て、少々開放的になっているのかいつもより口調が崩れているような。
「え、マジ?」って、ねぇ・・・。担当作家に向かって。
せっかく素敵なホテルに来ているのに部屋に引き篭もりっ放し、たまに外に出たらトラブルという火村先生。ミステリの主役の定めですな。
不思議な感じのミステリでした。
推理すべきポイントはないんですけれど、なんとも切なく悲しいオチが用意されてました。
解説にもある通り、一番素敵でありながら、一番妖しいホテル。

「異形の客」
アリスやっぱり事件に遭遇しちゃう編。
事件発生後、即行で火村を呼ぶアリスに感心するやらにやけるやら・・・。
頼られてますよ、プロフェッサー。
その割に事件現場でもアリスをからかう事に余念がない先生。しかもいつだってさり気ない。
「俺は腹を立てたぞ。お前が推理作家をからかいの対象にしたことに対して」
「その抗議は受け付けない。俺は、世の中のすべての推理作家諸氏をからかったわけじゃない」

可愛いお二人だ。
正統なトリックはやっぱりある程度わかっちゃいますが、「自首なんてしなくていい」ってのが火村先生らしい冷徹さです。

「201号室の災厄」
漫画に収録されてました。
私、これ既に読んでいたと思い込んでましたが読んでいませんでした。
火村先生の危機編。
殺人犯(かもしれない男)に突然監禁された火村先生。
これがときめかずにいられようか。
大ピンチながらさりげなく驚きの事実が。
十代の一時期、グローブをつけてリングに上がった時の感覚が甦る
先生、そんなことしてたんですか。前にもどこかに書いてましたっけ?私は覚えがないのですが。
なんだか似合わないなぁ。火村先生とスポーツが。
なんだよーもう。かっこいいんだから。
先生はこんな時でもクールでした。
30分くらいのミステリードラマにしたら面白いかもしれませんよ。動きがあるから。
ミステリーとしてはなかなか意表をつかれるものがありました。
明らかに犯人である状況であり、そしてやっぱり犯人だったなんて。
うまい話だなぁと素直に感心してます。ときめいてばかりではありません。
でもきっと、火村先生はこんなことならアリスと一緒に泊まれば良かったと思ったに違いない。
しかしこの事件がアリスだったら、生還できた可能性はかなり低そうです。

火村&アリスはやっぱりいいですなぁ。
ミステリーとしても小説としても妄想としても・・・



蒼子 |MAILHomePage

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