妄言読書日記
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2003年11月11日(火) 『李陵・山月記』(小)

この頃ゲームに明け暮れ・・・ているほどでもないんですが。
FF7、MOTHER1+2ときて、さてさてといったところです。
ラインナップが古い。
秋も終わりですけど、むしろ読書の季節はこれからだろ?
外は寒いぜ、と思うのですが。暑くても読むんですけどね。

【中島敦 角川文庫】

きわめてつまらない理由で長年読まなかった中島敦。
高校生の時に『山月記』を読み、面白いなあと思ったのですが、嫌いな国語教師が中島敦が好きだという。
これは今読んでも、素直に楽しめそうもないな、と当時の私は思いまして、記憶も薄れた今、読んだ次第です。

「李陵」
三国志を読み漁ったおかげで、中国史ものはかなりすんなりと読めるようになりました。
中島敦なので、英雄伝、というわけにはいきません。
英雄、偉人になりたくてなれなかった人々。
他の話もです。
私はこの話し、李陵よりも司馬遷の苦悩の方が興味深かったです。

「弟子」
孔子の話だったのか。
孔子というのは引用としてはよく出てくるけれど、人物としてはよく知りません。
井上靖でも読みますか。あれは孔子の話だと思うのけれど違うのか?だって題が『孔子』だから…。
孔子と子路の関係がよいです。いえ、邪まな意味ではなく…こんな断りを入れなければならない自分が悲しい。

「名人伝」
こういう故事の類がとても好きです。
故事も中島敦が書くと、何か別の意味合いを持つような気がします。
解説に書いてあった「狼疾」とやらが表されているように思います。
……あまり深い読みを私に期待しないで下さい。

「山月記」
格調高いと言うのかわかりませんが、この漢文調の一見、硬く読み辛い感じのする文章が、実はとても読みやすい。
けして持って回った言い方をしないから、かもしれません。
私はこれを読むといつも「臆病な自尊心と、尊大な羞恥心」という一文に心臓をちくりと刺される思いがします。

「悟浄出世」
私は西遊記をちゃんと読んだことがないので、悟浄がどういうキャラなのか実際は分らないのですが、とても面白かった。

「悟浄歎異 −沙門悟浄の手記−」
を読むと、また更に面白い。
このまま中島敦の西遊記を全部読みたい、と思う。ないんですけど。
え、ないですよね・・・?
悟浄の三蔵の観察がとてもよい。

三蔵法師は不思議な方である。実に弱い。驚くほど弱い。〜略〜途で妖怪に襲われれば、すぐに掴まってしまう。弱いというよりも、まるで自己防衛の本能がないのだ。

ああ、まったくその通りだ。
実に真っ当な指摘です。

この後、悟浄がどうやって悟空に学んで行くのか、がとても気になるのですが、ないんですよね・・・。
中島敦、あまりにも亡くなるのが早い。



蒼子 |MAILHomePage

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