妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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| 2003年09月27日(土) |
『ヨリックの饗宴』(小) |
【五條瑛 文藝春秋】
出版社を股にかける五條瑛。今回は文藝春秋だからなのか、渋い表紙。かっこいいです。 帯「長年にわたって隠しつづけてきた日本政府の機密とは何か?」 読み終わっても機密の内容はわかりませんよ。 ま、それは重要なことじゃないですからいいのですが。
五條瑛にしては、歯切れが悪かったかもしれません。 兄・栄一と息子の裕之の間の確執がいまいち納得できなかったせいでしょうかねぇ。 それは酷いよ、兄さん…と言う感じです。愛といわれましても…。
五條氏は確かにハードボイルド系の作家ですけれど、テーマはいつも一貫して家族です。 その辺、誰か言及してくれれば読者層も広がるんじゃないかしら、と思うのですが、私が言ってもね。 五條小説は「ハードボイルドにおける男の美学」にうんざりしている読者にお薦めしたい。
今回の主人公は、それほどへたれてません。そのせいか、印象が薄いです。 じゃあ、その兄はどうかと言いますと、完璧な男前はすでに五條氏にはエディにサーシャという二枚岩があるので、こちらもあまり印象がなく。 兄がもう少し、家族への愛を示してくれればよかったのでしょうが、いまいち説得力が無い兄。 それに素直に言いくるめられる、和久田さん。 結局、どうしようもないブラコン兄弟だった、というオチらしい。
キャラの動きがばらばらで収束していかなかったなぁ、という印象。 伏線が生かされてないのかな。
ちょっと今回は精彩を欠く出来栄えでした。
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