妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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2003年08月13日(水) |
『陰摩羅鬼の瑕』(小) |
【京極夏彦 講談社】
お久しぶりです。妖怪シリーズ。 私は京極堂と呼ぶ方がしっくりくるのですが。 待ってました。とてもとても待っていました。 今回も厚い。 次こそ直方体になるんじゃないかと思っていましたが、厚さは歴代3番目です。 はっきり言って読みづらいです。カバーがびらびらします。本屋でつけてもらったカバーなんて、紙がもう少しで足りなくなりそうでした。 しかし読み応えは充分なので文句は言いません。それがこのシリーズの魅力(いやもっとあるだろ)。
帯「凄い!京極小説」。 投げ遣りなのか手放しの称賛なのか悩むところです。 次辺り「厚い!京極小説」になっていたらどうしましょうか。期待しましょう。
シリーズも1年が経過しました。 ようやく1年です。作中の時間ですよ。 再び夏が巡ってきました。宴で再起不能になったんじゃないかと思われた関くんも、なんとか持ち直しておりほっとします。 とは言っても、『百鬼徒然袋 雨』でその後の様子はわかってはいましたが。 徒然袋でちらほらと、榎さんが病気になったという話題に触れていたので、陰摩羅鬼はその辺の話なんだろうな、と予想はしてました。 榎さん、関くんコンビはなかなか面白いです。 でも、目が見えなかったせいなのか、榎さんが最初から出ていたわりには、あまり暴れてませんでした。 それにしても、榎さんが関くんの下の名前をちゃんと覚えていたのにびっくりします。 「タツミ」を連呼する榎さんに、関くん共々違和感です。
本シリーズは夏に読むのがいいですね。 本作を読んでの感想を率直に述べますと、少々こじんまりしちゃったかな、と思います。 姑獲鳥の時の、あの濃密な夏がなかったです。私は姑獲鳥の、冒頭の眩暈坂や関くんの記憶の生々しさなんかが非常に好きです。 今回はあまり夏を感じませんでした。 室内にずっといたからもあるんでしょうけれど。
おそらく、シリーズ中で最も分り易い事件だったと思います。 関くんが途中で真相に至るくらいだから。 ミステリー読みなら、最初からわかるかと思います。 でも、このシリーズは犯人がどうとか、トリックがどうのとかがメインじゃないから。 そもそも、他の作品はわかりようがない、とも言えますけれど。
陰摩羅鬼について、あまり京極堂は説明してませんでした。 むしろ、姑獲鳥の話をしていました。 珍しいです。タイトルになった妖怪にあまり触れないなんて。 儒教、死、存在についてが今回のメインテーマだったようです。 京極堂に幽霊はいない、ときっぱり説明されてしまいました。 お盆前なのにな。 私もいないと思ってるんですけど。もちろん、京極堂のように理路整然と考えた末、というわけではないです。 しかし逆に整然と説明されると、騙されているような気がしてしまうのは、京極堂だからでしょうか。
今回は関くん、がんばる、と言った感じでした。 がんばるというか、必死というか、決死というか。がんばった甲斐もなく、薫子さんは死んでしまい、京極堂が乗り込んできて(と言うと違うんですが)伯爵の世界は崩れてしまう。 関くん視点の時はいつも、関くんと一緒になんとも不安な気持ちになってしまいます。 関くんは、京極堂の写真でも持って歩けばいいんじゃないでしょうか。
榎さんは、いつもと変わらないようでいて、やはり目が見えないのが枷だったのかもしれません。 「面白くねぇ」なんて言葉を吐く榎さん。 初めてじゃないかな。
家族・夫婦というのもテーマにあったみたいで、関くんが雪絵さんを思い出すシーンが時々あって、少し安心しました。 この夫婦どうなってるんだろう、と毎回思うので。 最後に、二人でお買い物に出かけていて、さらにほっとします。 京極堂、千鶴さん夫婦も見たかった。この夫婦好きです。京極堂はいい夫だと思うのですが。
ところで伊庭(元)刑事が出てきましたが、思い出すのに一苦労です。 『今昔続百鬼 雲』に出てたのか。あれは、時系列に並べると随分と前になるらしいです。 伊庭さんが今回は一番素敵だったと思います。
鳥口くんや、あっちゃんや、伊佐間さんなどが出ていなくて寂しかったのですが、思いもよらない人が出ていました。 横溝正史ですよ。 関くん、凄い人と邂逅してます。一緒になって慌ててしまいました。
次回は『邪魅の雫』だそうです。 邪魅、さっぱりわかりません。どんな妖怪なのでしょうか。 そして次はいつになるのか。 徒然袋でもいいですよ。あれ、大好きです。
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