妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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2003年07月03日(木) |
『黄金を抱いて翔べ』(小) |
【高村薫 新潮文庫】
古本で買ったから、細かい傷がついているのかと思ったら、基板の柄なんだね。表紙の黒地。
さすが女王高村だな、という感じ。 なんの女王なのか知りませんが、巷でそう呼ばれているのもわかります。 高村の小説は、後半のカタストロフィーに向けての盛り上げ方がうまく、いつも一気に最後の行まで読まされます。 今回もそうでした。 そして読み終わったあとの、なんとも言えない気分。 感動ともちょっと違う感慨があります。
ところで高村作品のちょっと気になる共通点。 『神の火』 島田 『李歐』 吉田 『マークスの山』合田 そして今回。 幸田 主人公の名前に"田"をつけるという、マイルールでもあるんでしょうか。 他の作品も気になります。
デビュー作ですが、昨今の作品にも見劣りすることのない勢いがありました。 一つ一つのエピソードの繋がりが薄いような気もしますが、高村って周到に伏線張り巡らせていくタイプではないからな。
高村さんの書く、男同士の絆(というのもちょっと違う)って独特のものがあって、どうしようかと思います(李歐なんて特に)。 今回の幸田とモモは、いつになくわかり易いんですが、幸田と北川は・・・・。 北川、幸田に惚れてたんだろ?と言いたくなります。 あと、春樹と幸田もなんだろう。
このもやもや感が好きですが。
モモと幸田には二人で幸せになってもらいたかったなーと思います。 ところでこのラスト、幸田ってやっぱり・・・? 高村はハッピーエンドにならないイメージがありますが、更に強まったような。 悲劇的とも違うし、切ないというのも違うんですが。
金塊強奪というネタなのに、痛快さや爽快さはなく、今回も高村独特の淡々とした悲愴感が漂っていました。 高村小説に漂う、この熱さとドライさをなんと表現したらよいものか。
関西圏において、豆腐屋でのバイトはポピュラーなのでしょうか。 『マークスの山』でも豆腐屋が出てきたし、今回もモモが最初働いていたので、ちょっと気になりました。
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