妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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2002年05月11日(土) |
『僧正殺人事件』(小) |
【ヴァン・ダイン 訳:井上勇 創元推理文庫】
「これを読まずに推理小説は語れない」 といわれる本書ですが、私は読んだのか読んでないのか思い出せなく、結局読んでも思い出せませんでした。 古い、外国のミステリではままあることです。
マザーグースの歌になぞらえて起こる殺人、というのが興味をそそられますね。 「誰が駒鳥殺したの」を筆頭に次々と。 私は、アーネッソンが出てきた瞬間に、「お前だろ!」って思ったんですが、ラストにヴァンスがアーネッソンが犯人であるようなことを仄めかし始めてからは、「ああ、違うのかー」と正しい犯人に辿り着きました。 推理小説でまともに推理したことは無く。どちらかというと、作家の書き方から推理する方が多いです。 ほら、よく「一番怪しい奴は犯人ではない」とか「女が怪しい」とか推理小説のお約束があるでしょう。そういうのから推理します。
しかしこの本、読むのに時間がかかってしまいましたよ。 とても日本語訳が読みづらいんです。直訳じゃないのか?これ、と。
全ての事件が終わってから、犯人に辿り着いても遅いと思うのですが…。 まあ、モファットちゃんはかろうじて助かりましたがね。 でも、最後の最後でヒース部長が「どうしてグラスを取り替えたんだ?」と追求するシーン好きです。そりゃあ、ヴァンスやったらあかんだようよ・・。探偵が犯人裁く権利はないのよ。 部長は堅物なだけではなかったのね。
これ、多くのミステリと同様に「私」視点なのですが、「私」は一言の言葉も発しないまま終わったのですが…。回想録と言う形式を取っているにしても、「私」ことヴァンくんは、あらゆるシーンで何もしないうえに、なんの感想も考えもないんです。まさに、黒子! ヴァンスが、作中二回、「ヴァン」と呼びかけたっきり、ヴァンがその場にいないかのように進むのです。 その現象が終始気になりまして……。客観的立場にたつにもほどがある。 そんなヴァンくんが唯一、感想らしき感想を述べるシーンは、後半の強行に家捜しをするシーン。 無許可の家捜しを、ヴァンスがヒース部長に、「いっしょにやってくれるか?」と尋ね、「とことんまでやっつけますよ」と答えた部長に対し、 (私はこの時ほどヒースが好きになったことはない) と、わざわざ括弧書きで述べてるんです。 そしてそのすぐ後のシーンで、屋根裏へ続くドアが開かない時、やはりヴァンスが「部長、この扉を開けたまえ」と言うと、いっこくの躊躇いもなく、扉を叩き開けたヒース部長に、 またもや、私はヒースが好きでたまらなくなった。 と感想を述べてるのです。 作中、こんなに積極的におのれの感想を述べているシーンはここだけなんですよ! だからどうだってことは、言いませんがね・…。ふふ。 (結局そこなんだ……)
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