妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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2002年04月20日(土) |
『21世紀本格』(小) |
【島田荘司責任編集 光文社カッパノベルス】
この本、本屋で買った直後に古本屋で見つけた苦い思い出があります。
島田さんが責任編集、麻耶雄嵩・森博嗣が名を列ねているのなら読まないわけにはいきますまい。
新時代の本格は、最新科学の薀蓄満載となる模様です。 研究者のミステリー作家デビューが増えたせいもあるのかどうか。 このアンソロジーで感じたのは、薀蓄結構。設定が近未来なのも結構。でも、ミステリーの本質であるトリック的なものは今までと何も変わっていないのではということ。 複雑化しただけなのでは。
「神の手」響堂新 まさにこのアンソロジーの目的を体現した内容。 現代でモルグ街の殺人を起こしたらどうなるか。 モルグ街そのまま過ぎて、ひねりがないんじゃないのかという気もしますが…。
「へルター・スケルター」島田荘司 島田さんはキャラクター作りが上手いので、すらすら読めますね。 オチの予想は出来ましたが、主人公の脳の故障具合が興味深かったのでさほどそれは気になりませんでした。
「メンツェルのチェスプレイヤー」瀬名秀明 よくよく考えてみると、この方の本読んだことないんですよねぇ。 こんなことなら『八月の博物館』ちゃんと読めばよかったなぁ。図書館で借りたけれど読まないで返しちゃったんですよ。 面白かったですよ。ミステリーとしてというより、物語として。 生物学的なネタでくるかと思ったら、工学分野でした。
「百匹めの猿」柄刀一 この人も読もう読もうと思いつつ、まだ読んでないんですよねぇ。 面白かったんですけど、どうにもオチがいまいちなんですよ。 他の作家にも言えるんですが、言葉でオチをつけようとするのは少々せこいと思います。
「AUジョー」氷川透 AUと英雄をかけているんだろうなぁ、と思ったらやっぱりかけてるんですね。 一ページ目からこのペースで話しが進むのはちょっときついと思っていたんですが、最後まであのペースでした…。やれやれ。 同じ近未来なら森さんの方がよい出来です。
「原子を裁く核酸」松尾詩朗 この人の話し初めて読んだんですが、面白かったですね。 なんつー大掛かりなダイイングメッセージなんでしょう。 ミステリーにおいて、ダイイングメッセージは読者へのヒントと言うよりも、事件をおどろおどろしくするための小道具に過ぎないと言う一例。 名探偵くんの名前知りたいので他の著作も読んでみましょう。
「交換殺人」麻耶雄嵩 麻耶雄嵩です。 出ました。木更津探偵。 出たな食わせ者、香月。 第一級警戒警報です。この人の作品は全てを疑えです。 (『翼ある闇』で香月にやられて以来要注意人物なのです) 翼ある〜以後のお話なのですね。 香月やはりムカツク男です。 要するに彼は木更津さんが名探偵として活躍するのを見るのが好きなので、例え自分がとっとと真相に辿り着いても、木更津さんが華麗な謎解きをするまで静観するということなのですか。 麻耶氏の作品はどうしてこうも、性悪な人間ばかりなのでしょう。 でも好きです。 あえて、21世紀を感じさせない古い手法。自分のスタイルを変えず、かつ斬新。 読後感最悪なのに好きです。
「トロイの木馬」森博嗣 理系ミステリーのさきがけなのに、誰よりも文学的な文章を書く人だと思います。 今回もやはりあまり理解できず。 森さんの短編は理解出来ないものが多々含まれていて困ります。 でも好きなんですねぇ。
島田氏はやはりさすがに、良い人選をなさっていると思いました。 で、古臭かろうと名探偵がいないと物足りないのです。
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