5/21(火) 嫌な世界。
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例えば、の話。
とある電気店の店頭、「ご自由にプレイしてください」とゲーム機が置いてある。 そこにやってきたAくんとBくんが対戦プレイを始める。 二人のゲームの腕前はずば抜けていて、難しいテクニックも難なくこなす。 気付けば彼らの後ろには人垣が出来ており、 みんなが彼らのプレイに唸っている。 「あそこで凄い対戦が行われてるぞ」 「なんでも攻略本にも載っていないスーパープレイの連続らしい」 噂が噂を呼び、ますます人垣は膨れあがる。 その噂を聞いたテレビ局が駆け付け、彼らをニュースに取り上げる。 放送直後、ニュースを見た視聴者から電話が殺到。 「彼らは誰なんだ?」 「もっと彼らのことを知りたい」 「彼らの試合を放送しろ」 反響に驚いたテレビ局は、彼らの全試合をテレビ放映することを決定。 視聴率は驚異的な数字を叩き出し、世間は彼らの話題で持ちきりになる。 「昨日のAのプレイ、凄かったよなあ。あの神がかり的な連打の速さったら・・・」 「いやいや、Bも負けちゃいないぜ。なんでも、見つけた裏技の数は優に百を越すとか・・・」 学校でも職場でも、二人が話題に上らない日はなく、 みな一様に生き生きと、彼らについて侃々諤々と意見を交わす。 そうなると、他のメディアも放っておかない。 新聞、雑誌、ラジオも彼らのことを取り上げ、 さらには彼らについての専門誌までが発売される。 そのうち、熱狂的なファンは彼らがゲームを行っている場所まで出向き、 二人の後ろで力いっぱいの声援を送るようになる。 「A! そこだ、キックだ! そこで右! よし、決まった!」 「頑張れB! 危ない! そのパンチをよけてから必殺技だ!」 いつしか二人の後ろには数千人、数万人のファンが集まり、 それぞれの応援コールを我を忘れて叫んでいる。 試合に勝った側のファンは、自分のことであるかのように狂喜し、 負けた側のファンは、こちらもまた自分のことであるかのように意気消沈する。 がっくりと肩を落としている者もいれば、悔しくて涙する者までいる。 これほどにまで国民的エンターテイメントと化した彼らの対戦だが、 不思議なことに、彼らを見て自分もゲームを始めようとする者はあまりいない。 あるニュース番組で、街頭インタビューが行われている。 「どうしてあなたはゲームをしないんですか?」 「面倒だし、するより見ている方が楽でいいんだよ」 「彼らのゲームはあなたにどう影響していますか?」 「応援してる側が勝つと、自分も勝った気になれるんだ」 「では、彼らのゲームを見て、何になるんですか?」 「何になるって・・・変なことを聞く人だなあ」 ・・・変なのはどっちだ?
・・・さて、例えが長くなったけど、これ読んでどう思った? ま、一言でいうとオタク的で気持ち悪いわな、こんな世界。 みんなゲームの行方ばっか気にしちゃってさ、でも自分はやらないの。 ゲームなんて自分でやってなんぼなのにねぇ。受動的すぎ。 しかも「応援してる側が勝つと、自分も勝った気になれる」って、 おいおい、あんたは何もしてないし偉くもないっつーの。 人のことで騒いでる暇がありゃ、もっと自分で何かしろってのな。 あー、嫌だ嫌だ、こんな世界。
で、何の例えかというと、サッカーの話。 いや、別に野球でもゴルフでもフットボールでもいいんだけどね。 以前から何度もしつこく書いてるように、オレは大のスポーツ嫌い。 自分がプレイするっていうんならまだ話はわかる。 オレは面倒だしやらないけど、ああ、楽しいんだろうなと。 でもスポーツ観戦が趣味なんてヤツの気持ちはこれっぽっちもわからない。 あんたとまったく関係ない赤の他人のプレイを見て何が楽しい? しかも、どっちが勝ったとか負けたとか、それがあんたにとって何になる? でも世間のメインストリームはやはりスポーツを見る側であって、 オレのスポーツ嫌いなんて誰にもわかってもらえない。 言ったところで、へぇ、変わってるね、程度のもんで。 で、こんな例え話にしてみたわけ。
でも実際、これと何ら変わらないと思うんだけどなあ。 ゲームカフェなんてのが出来て、大画面で人のプレイしてるゲーム画面が流れてて、 そこに集まってる客がそれを見て大歓声を上げてる映像がニュースで流れたら、 「何これ? 気持ち悪い集団だなあ」なんて笑っちゃうでしょ。 でもそれがスポーツカフェだとみんな普通に捉えてるのが不思議でならない。 それどころか、ちょっとかっこいいスポットみたいに扱われたりして。 あと、ゲームをやってるヤツの後ろで数人が円陣組んで 「♪オ〜レ〜オレオレ〜」なんて大合唱やってりゃ、 どうした、何かの宗教か !? ってなもんで警察沙汰間違いなしだけど、 それもサッカーだとまったく問題にならないもんなあ。 みんな、冷静になってみなよ。どう考えても変だよ、こりゃ。 あー、嫌だ嫌だ、こんな世界。
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