◆日々の事イロイロ◆

2007年01月15日(月)

「ねぇ、聞いた?」
優希が、後ろから聞いてきた。
「おはよ、優希。何?なんの話?」
「やっぱり聞いてなかった?蓮、やっぱり知らないみたい」
「優希、情報源どこよ?」
なんの話だかわからない。美伽はきょとんと優希と蓮の顔を見る。
「だから、なんの話?全然わからないよ?」
風にあおられた髪を押さえる。上を見上げると桜の花びらがひらひら舞っていた。
「それがね、転入生が来るらしいんだよね」
「転入生?つい先週入学式だったのに?」
「入学式にどうしても間に合わなくて、1週間遅れなんだって」
「そう、本当なら今日から来るらしいぜ」
落ちてきた花びらを手に取る。薄いピンク。白に近い。
「間に合わなかったって事は、帰国子女?」
普通の入学なら、遅れる理由はないだろう。ふと、海音のことが浮かんだ。
「そうかもね。学校行ったらわかる人いるかも!」
優希はうれしそうに美伽の手を取る。
「美伽とかが違うから悲しいな。今日も教室にお昼に行くね」
蓮は美伽の頭に手を置く。あおられた髪が、蓮の手でさらにくしゃくしゃになる。
「蓮、やめてよ・・・」
「話せるヤツ、できたか?」
「兄貴面しないでよ。・・・大丈夫。心配しなくても」
「美伽人見知りするから心配なんだよ。優希と俺と離れる事なんてないしさ」
身長20センチ差の蓮の顔を見るために見上げる。
「・・・・やっぱり普通科にするんだったな・・・。それならここまで心配しないでしょ?」
「いや、それはもったいないから」
「そうそう!美伽は頭いいんだし!あたしや蓮とは比べものにならない位ねぇ」
優希が顔を近づけてきて、にっこり笑う。
「そうだなぁ。優希には絶対無理だよな、英文科・・・」
「はぁ!?なにそれ!!!蓮にだって無理じゃん!!棚上げしないでよね」
蓮がくすくす笑いながら先に歩いていく。それを優希が追いかけていく。
いつもの光景。変わらない、子どもの時から。

3人は幼なじみ。
小学校も、中学校も、高校も。
高校は、美伽は英文科、優希と蓮は普通科だ。2人は、クラスまで同じ。
学校は同じでも、科で制服も違い、校舎も違う。同じ学校なのに、違う学校のような感覚。

風が強くなって、花びらが強く舞っている。
「・・・・美伽?」
花びらの先、男が立っている。
「・・・・やっぱり。美伽、久しぶり」
美伽は顔を見た。
見たことがある。
でも、それは最近じゃない。
ずっと昔、夢の中とは全然違う。
成長した、高校1年生の姿で立っている。
「・・・・海音・・・・?」
つぶやくように。
確かめるように。
夢の中とは違う。
子どもの海音じゃない。
「美伽?どうした?誰か知ってるヤツ?」
「何々?美伽、どうしたの、何か言われた?」
蓮と優希が、突然立ち止まった美伽のところに近寄ってきた。
しっかり守るように立っている。
「あれ?蓮に優希?こんなところであえるとは思わなかった」
「・・・・え?海音!?おまえ、何でこんなところいるんだよ!」
「海音くん?海外じゃないの・・・・?」
美伽と同じように、蓮と優希がビックリしてる。
「ふたりとも、変わってない」
くすくすと笑う声が聞こえる。海音の、顔が笑ってる。


『ふたりは美伽のことが大好きなんだね。でも、それよりも僕の方が美伽のこと好きだよ。優しくて、かわいいところが』
笑顔の海音。優しく、守るような笑顔。


前に見た、海音の顔だ。
止まっていた足が動き出した。
「海音、久しぶり。どうしたの、こんなところで・・・。ビックリしたよ」
「親父の海外勤務が終わったから、日本に帰ってきたんだ。本当は入学式に合わせるはずだったんだけど、忙しくて来れなかったんだ」
「海音、同じ学校だね。英文科・・・私と同じだ」
「うん、せっかくアメリカで何年も過ごしたし」
なんにも変わってない。
アメリカにいて、離れていたなんて嘘のよう。


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比紗乃 [MAIL]

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