冒険記録日誌
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2013年09月24日(火) 完全犯罪ゲーム(桜井一/西東社)  その2

※警告!今日の日記にはネタバレがあります!プレイ予定の人は絶対に読まないでください!※



※今日の日記には完全犯罪となる殺人のトリックを解説しています。くれぐれも現実に応用しようなどと考えないでください!山口プリンはゲームブックファンの良心を信じます!※




 さて、昨日の続きです。主人公の考えた憎むべき完全犯罪のトリックとは以下のとおりです。

1.まずは舞台は郊外にある別荘地帯。金持ち(名前は金田)の別荘の近くに、借金の抵当に入っているとはいえ偶然にも主人公にも両親が残した別荘があります。

2.40cmは積もった雪の日の夜。借金を返すので自分の別荘に来てほしいと、金田をおびき出し酒を飲ませて眠らし、翌朝首を絞めて殺害。

3.殺害時刻はAM7:00。殺害の後にアリバイ作りの為、主人公は窓を開けて道行く通行人に挨拶。
 ついでに金田の荷物から小切手を取り出し、合計一億円分の小切手を3枚ほど自分あてに作成する。

4.AM9:00。遺体をあらかじめ金田の家から盗んでおいた毛布に包む。そして徒歩30分の山道を歩いて遺体を金田の別荘に運び込む。
 あとしまつを終えたら、金田の家から警察に通報し、自分が訪問したら死体を発見したと説明する。

5.いずれ遺体を調べれば死亡推定時刻はわかるが、その時刻には主人公は自分の屋敷にいてアリバイがある。
 また、金田の家には主人公がやってきた時の足跡しか残っていないので、犯行自体が誰にも実行不可能。よってこの事件は自殺として処理されるか、謎の密室殺人となり迷宮入り。

6.ほとぼりが冷めたら小切手を換金して再び裕福な生活に戻る。


 シンプルイズベストを地で行く、なんと大胆な計画でしょうか!捻りすぎてかえって墓穴を掘るいかにもミステリー小説的なトリックよりも現実味があるので恐ろしいと思います。
 金田がその夜の予定や訪問先を誰にも喋っていないこと。別荘に監視カメラなどがつけられてないこと。アイバイ作りのタイミングでは道に運よく通行人がいること。逆に遺体を運ぶ間は運よく通行人がいないこと。警察が「この人、他の場所で殺されたんじゃね?」などとは夢にも思いつかないこと。
 これらの些細な点さえうまくいけば、確かに完全犯罪は達成できそうです。

 しかし、ゲームが始まってから主人公はこのトリックの致命的なミスに気づきます。
 暖かい主人公の別荘から運んできたので、冷たい屋敷で倒れていた遺体にしては暖かいのです。(ただし、展開により事前にこのミスを防ぐ選択肢はある)
 ここは気合の迷路ゲームで正解のルートを選び出し、警察が遺体に触わらないように祈るしかありません。
 ここを切り抜けると続いて、遺体を担いで雪道を歩けば、普通の人の足跡より深く雪にめり込むという至極当然な事実に思い当ります!主人公はこの点を警察に気づかれないかと内心焦っています。読者もつられて思わず、警察の現場検証中にもかかわらず「ホウキで足跡を消す」という斬新な選択肢を選んで、証拠隠滅をはかりそうになってしまいます。
 しかし、主人公が墓穴を掘らない限り、警察は今回もこの数少ないトリックの穴には気づきません。
 こうして優秀な日本の警察をだましきった主人公。確かに犯罪を自慢したくて名探偵を呼ぶ気持ちが出るのも無理ないことかもしれません。

 そして主人公の敵は警察や名探偵だけではありません。それはナレーションです。
 どうも作者は正義感にあふれる方のようで、警察につかまるバッドエンドでは「殺人犯が逮捕されたということは社会的にはハッピーエンドだね」とか「なんとも素晴らしいことだ。正義が勝利し、悪が敗北したのだ。君の刑務所暮らしにカンパイ!」とか散々ないわれようです。主人公が死んでしまうエンドでは「それが犯罪者にはお似合いだ」とまで言われてますし。
 たとえ完全犯罪を達成しても、「犯した罪に自らさいなまれ、一生眠れない日々が続くことだろう。君の暗い、心安まらぬ一生にカンパイ!」とのナレーションとともに、被害者の顔を背景に主人公が頭を抱えるという暗いイラストが出ています。つまり全部バッドエンド?
 ハッピーエンドにする気がない程なら、こんな企画で書くなって気もしますが、ここまで嫌われると、逆に意地でも完全犯罪を成立させてやろうという気になってきます。「どうせ周りが信じてくれないなら、そのとおりにしてやらぁ!」と叫ぶ不良少年の気持ちが良くわかる本です。
 実際、復讐ものみたいな中途半端に犯人に同情する展開の方がモヤモヤしますもんね!
 
 余談ですが、完全犯罪を成立させても、その後に一億円も小切手を使ったら自分が犯人ですって名乗っているようなもんじゃない?という気もしましたが、賢明な主人公のことなので、きっとなんとか乗り越えられるのだと思います。

 主人公の幸多き未来にカンパイ!


2013年09月23日(月) 完全犯罪ゲーム(桜井一/西東社)  その1

 引き続き西東社のゲームブックから紹介。
 本書は殺人犯の青年が主人公で、警察や名探偵の捜査からいかに逃げ切るかを目的にしている非常に珍しいゲームブックです。
 探偵側から犯人を追いつめる推理物ゲームブックならよくあるし、冤罪で追われる主人公が警察に捕まる前に真犯人を見つけ出す、というのもよくあります。
 しかしこの主人公は、追い詰められた青年として紹介されてはいますが、要するに働かずに親の遺産を食いつぶしながら遊びほうけ、さらに悪どい金貸しから多額の借金して返済を迫られた挙句、金貸しを殺して借金を有耶無耶にしようと考えつくという、どうしようもない奴で一種のピカレスクゲームブックと言ってもいいでしょう。
 犯人視点というのはミステリー小説ではたまにありますが、ゲームではあまりなく、TVゲームではセガサターンのソフトで「金田一少年の事件簿 星見島 悲しみの復讐鬼」を思い出すくらいです。ゲームブックでこのタイプのものは、これが唯一かもしれません。

 ゲーム的な所を説明すると、総パラグラフ数は146ですが、分岐せずに話しが続くパラグラフや、結末の似たようなエンディングパラグラフが多いなどで、実質のボリューム感はあまりありません。
 西東社のゲームブックに多い切り取って使うカード類は存在せず、ポイント制も一切ありません。
 わずかに警察が証拠を見つけるかどうかなどの乱数処理として、簡単な迷路ゲーム(AとBどちらの出口かで分岐)があるくらいで、単純な分岐小説となっています。
 1ページに1パラグラフでイラストつきで、ストーリー志向が強い内容なので、変にルールに凝るよりこの方がいいでしょうね。

 プロローグでは主人公のダメっぷりな境遇について説明があり、続いてこの殺人の為に主人公が考えた完全犯罪の計画と、この犯罪は一種の密室殺人との事でトリックの内容が一緒に書かれています。
 主人公が計画どおりに金貸しを殺害し、遺体の傍から警察への通報電話をかけるところからゲーム開始。
 現場検証シーンあたりまでは、この選択肢が証拠隠滅につながるのか、余計な行動でボロを出してしまうのかと悩んだかと思えば、警察が主人公に致命的な証拠を見つけるのかが乱数処理になっているわで、ヒヤヒヤ展開。一旦、警察から解放された後は、謎の脅迫電話がかかってくるなど、サスペンスドラマ風な展開になっています。
 とはいえ、初回プレイであっさりクリア。開始10分くらいでエンディングまでいってしまいました。
 イラスト入りで文章も少ないうえ、いろんな展開が用意されているマルチシナリオだからです。短いかわりにまったく新しい展開で再挑戦が楽しめます。
 そうやって何度か遊んでいると、ちょっと古めかしくて暗めのイラストの雰囲気とかもあって、なんだか高度成長期の昭和の時代に書かれた探偵小説の世界に入り込んだような気分になってきます。(※1)
 特に、ゆすりをしてきた脅迫者を自分の車に乗せて自宅に向かうシーンで、相手をスパナで殺すべきか──という選択肢なんかは、江戸川乱歩の小説「十字路」(※2)の一場面そのものです。

 それからゲームクリアより苦労したのが、ペラペラをページをめくると他パラグラフでチラチラ目に入ってくる名探偵らしき人物を登場させること。
 4・5度目のプレイになっても、警官相手にやりあっているだけでエンディングを迎えてしまい、どうしてもこの人が登場しないのです。
 選択肢を一つ一つ潰していきながらの10回目かのプレイで、やっと会えました。
 なんとこの主人公は「事件に巻き込まれたので助けてほしい」と、わざわざ自分が依頼人となって名探偵“陳田一珍助”(※3)を呼び出したのです。
 「自分の完璧な犯罪を誰かに自慢したい」なんて選択肢は、次のパラグラフで即バレて刑務所行きENDと思ってましたよ。気づかないはずです!
 どうもこの主人公の心情が理解できませんが、名探偵もので依頼者が犯人というシナリオは、アニメやドラマなどで稀にあります。主人公は自分のトリックに絶大な自信を持っているのでしょうね。
 ぼさぼさ髪で人懐っこい笑顔をした陳田一探偵は、なかなかいい味だしてましたが、勝負がすぐついてしまうのが残念。
 マルチシナリオより、もっと本格的にこの対決をメインにした一本で堪能させてほしかったという感じでした。

 自分はこの作品のコンセプトを知っただけで本書が読みたくなり、ワクワクして入手しました。実際、遊んでみてもこの点については満足できる内容だと思います。
 最後に主人公のトリックはこのゲームの最重要ポイントですから、プロローグに書かれていた内容とはいえ、これから本書を入手して遊ぶという人の楽しみの為にここまでは伏せて感想を書きました。
 このゲームブックを遊ぶことは生涯において絶対にない、気になるから教えろ、という人の為にトリックやエンディングも含めた感想を「その2」に書いておきますので、ネタバレ上等!と思う方のみ読んでください。



※1 西東社のゲームブックシリーズそのものに、発売当時から既に古いセンスを感じていたのは私だけでしょうか。貸本時代・巨人大鵬卵焼き・戦後復興なんて言葉を連想する時代に発売された方が違和感ないと思います。

※2 「十字路」は同じく殺人を犯した犯人視点のサスペンス小説。本作も恐らくこの小説の影響を受けていると思います。

※3 名前だけで元ネタが想像つくと思います。格好も着物と羽織によれよれの袴ですし。厳密には彼は某有名探偵そのものではなく、腕は確かだがその探偵小説に憧れてコフプレをしている奇人探偵という設定です。


2013年09月19日(木) サッカー・ゲーム(高橋義宏/西東社)

 わかりやすいタイトルどおり、サッカーを題材にしたゲームブックです。
 野球のゲームブックは数社から出ていますが、サッカーは意外にないです。発売当時はワールドカップ初出場はおろか、まだJリーグも発足していない時期ですから、野球人気に劣るのはしかたないとはいえます。でも、アニメではキャプテン翼がヒットしていましたし、そこそこの人気スポーツだったと思ったのですがね。

 さて、西東社のサッカーゲームですが、舞台はFIFAワールドカップ。
 日本代表チームとして、最終予選(VSフランス)、準決勝(VS西ドイツ)、決勝(VSアルゼンチン)の3試合を全て勝利すれば優勝という、シンプルな構成です。

 これが野球ゲームブックなら、高校野球かプロ野球がせいぜいですが、こちらは派手な世界大会です。
 
 サッカー界では無名の日本が、ここでは世界を凌駕するのです!

 すごいぞ、侍ジャパン!

 ………。

 遊んでみたのですが、こんな派手な大舞台なのに、とても静かな雰囲気がしてしまうのはなぜでしょう?試合会場の歓声が読者まで伝わってこないというか。
 1パラグラフに1ページでイラストと文章がついているタイプのゲームブックなので、臨場感を出そうと思えば出来たはずと思うのですが、なんだかとてもたんたんとした感じでゲームが進行していくのです。
 ゲームには特定の主人公はおろか、監督や選手などでも名前のある登場人物が一切登場しないので、人間ドラマ的な要素はまったくありません。まあ、人間ドラマは無理に入れなくてもいいのですが、架空の選手でも実在選手の名前をもじったものでもいいから、西ドイツには伝説的なキーパーがいるとか、アルゼンチンは○○と○○選手のコンビネーションが要注意だ。と、相手チームの驚異点を具体的に出すと雰囲気がでたのにと思います。

 ゲームルールの方は、能力値などのポイントは一切なく、試合中の得点を記録するだけでいいので簡単です。
 乱数の要素があり、これはサイコロではなく数字を書き込んだサッカーボール型とゴールポスト型の半透明の用紙を使います。このため古本で本書を入手してもカードが切り離された状態だと遊べないことがあるのは難点です。実際はわざわざカードを切り離さなくても、想像でページにカードを当てはめるだけで十分遊べるのですがね。

 ゲーム中は、この状況でどこにパスすべきか?などと、サッカーのセオリーを問うような選択肢が多いです。自分としてはセオリーを重視するなら、個々のプレーだけでなく、チームとしてどんな戦術でいくのかを問うような選択肢もあってほしかったと思います。
 それはそれとして選択肢の結果がうまくいけば、次はシュートのシーンで選択肢、失敗すれば次はカウンターアタックでピンチを迎えての選択肢など、得点を取ったり取られたり防いだりして、また次のシーンに写る感じです。
 しかしなんといいますか。選択肢を間違えばスローイングのやり方を間違えて無様に反則を取られる、なんてこともあり、世界一レベルのサッカーとしてはどうにもレベルが低い気がします。
 派手なスーパーシュートの一つも出せればいいのですが、地味な展開が多いというか。これがもしプロローグで舞台は高校サッカーの大会だと設定されていても違和感がなかったのじゃないだろうか、という気になってきます。

 あと、先ほど書いたように乱数要素があるので、正解の選択肢でシュートしてもゴールを阻止されたり、まずい選択肢でも低確率でシュートが決まったということもあり。
 どの試合も同点なら試合が延長してPK戦のシーンに突入。負けたらゲームオーバー、勝てば次の試合です。
 ちなみにどの試合にもきっちりハーフタイムになるシーンが設定されており、ハーフタイム中のパラグラフでは、ワールドカップの概要やらマラドーナなど実在の有名選手の紹介など、サッカーにまつわる薀蓄を教えてくれます。
 一人用ボードゲームみたいな気分で、サッカーの入門的な内容と思って遊べばいいのかな。そうなるともう、スポーツ少年団の試合か町内会のサッカー大会レベルの感覚になってしまうのですが。

 同社の野球ゲームブック「ベースボール・ゲーム」(2002年08月15日の冒険記録日誌で紹介済)と比べると、ゲーム性はあきらかにこちらが良いと思えるし、そう悪い作品ではないとは思うのですが、なぜか感想を書けば書くほど、大会のスケール感が縮まってしまいました。このへんにしておきます。(汗)


2013年09月18日(水) メタルギア(一本橋 わたる/コナミ出版)

 タイトルでわかる人はわかるでしょうが、有名TVゲームシリーズのゲームブックです。
 一言でいえば、潜入を主体としたミリタリーものアクションゲームでしょうか。
 もう何作でているのかよくわからないのですが、3作目となるプレイステーション(PS)版「メタルギアソリッド」のみ自分も遊んでいました。一歩外れると中二病になりかねないシリアスなストーリーや世界観も含めて、結構面白かったですね。
 ただ、ゲームが進行するにつれ、主人公のスネークの強さがどんどんレベルアップしていって、終盤の敵の最終兵器「メタルギア」との戦闘では、生身の体で飯を食いながら(回復アイテムのレーションを使用しながら)真正面から撃ち合うだけで勝ててしまいました。
 そんだけ強けりゃ、潜入とかわざわざ隠れる必要ないだろ。と、つっこんだのも良い思い出です。

 さてさて、ゲームブック版は当然そんなPS版より前の発売です。プロローグを読むと原作となるTVゲーム版1作目のミッション(アウターヘブン蜂起)が終わった2年後の話しとなっています。
 主人公は原作と同じソリッド・スネイク(原作ではソリッド・スネーク)です。非番の時は、売れないイラストレーターをしていると紹介されていますが、ゲームブック版だけの設定でしょうか?原作のスネークのイメージと合わないというか、どんなイラストを描くのか興味あるなー。
 さて、前の戦いで完全に破壊されたはずの兵器メタルギアが、謎のテロリスト組織より送られてきたフィルムに写っていたこと、そしてメタルギアの設計を知る唯一の博士が消息不明になっていることから、テロリストの本拠地に潜入して再びメタルギアを破壊するという内容です。ゲームが原作ということと装丁の感じから、双葉社のファミコン冒険ゲームブックに似た印象です。
 
 ゲームが始まると目星のつけた3ヶ所のテロリストのアジトのうち、どこか一つを選んで潜入。残った他の拠点もいずれまわることになります。
 原作どおり、基本的には敵に見つからないように進むのを重視しつつ、双眼鏡やガスマスクなどを入手したりしながら、敵の情報を集めていき、時には数に制限のある爆弾を設置したり、IDカード狙いで敵を襲ったりもします。
 ゲームとしては一方向システム(終盤の一部のみ双方向システム)ながらも行動の自由度が高く、まずい選択肢でも、戦闘で勝つとかサイコロ運が良ければ切り抜けられ、ある情報やアイテムがなければ不利にはなっても即バットエンド決定ということはあまりありません。もちろん判断がよければ楽に進めます。多少単調なシーンが続くこともありましたが、私としては一番好きなタイプのゲーム性です。
 それにダンボールの中に隠れるという、原作ゲームのお約束のシュチエーションも用意されているのには、原作ファンならニヤリとするでしょう。その格好のまま野生熊に襲われてENDという展開もありますが、もはやギャグですな。(もちろんいい意味で)

 中盤の敵は、アウターヘブンでスネイクの起こした破壊に巻き込まれ、その後サイボーグと蘇ったゴメスという司令官です。
 「メタルギアソリッド」に登場していたサイボーグ忍者を思い出す設定ですね。というより、死亡したと思ったらサイボーグ化でパワーアップして復活のパターンは、昔の少年漫画で妙に多かったよね。
 ゴメスはサイボーグ忍者とは性格と戦闘スタイルが正反対で、捕虜を嬲り殺すのが好きな下衆な悪党タイプ。怪力と不死身な防御力で復讐の為スネイクを殺そうと追い詰める役です。
 最初のプレイは普通の警備兵に射殺で終了でしたが、その後はゴメスとの戦闘で死亡のパターンが続きました。こいつが強いというより、こいつに会うまでのルートで経験値が貯まらなかったり、武器を入手できなかった事によるせいでもありますが。
 終盤のメタルギアに乗って以降では急に双方向システムになった為、ただっぴろい戦場を右往左往する羽目になりました。ゲームのテンポはガタ落ちでしたがおかげで経験値は稼げたので、ラスボスの戦いは楽だったかな。

 不満としては、本文イラストがややコメディタッチなのですが、ストーリー的にはシリアスな内容なので、もうちょっとハードに描いて欲しかったところ。おかげでノーテンキなイメージがこびりついたうえ、文章がハードボイルドというわけでもないことも相まって、雑兵の小粋なセリフや黒幕のセリフにスネイクが動揺するシーンや、ラストでヒロインが返事をするシーンに浸りきれません。
 これから挑戦する方は、本家ゲーム版の渋いソリッド・スネークのイラストを鑑賞してたっぷり脳内保管してから挑戦してみてください。
 それにしても、400パラグラフのゲームブックに挑戦したのはずいぶん久しぶりだった気がします。
 能力値やアイテム、サイコロを使用した戦闘などもあり、ゲームブックはやっぱりこれだよ。と、ちょっと古巣に戻ったような心地よさを感じましたYO。


2013年09月14日(土) 癌の雄叫び  メディカルアドベンチャー(若菜大輔/金芳堂)

 メディカルアドベンチャーシリーズの一冊「癌の雄叫び」を読みました。 以前、ミクシィでこの本を読んでみたいといったら、「このシリーズは医学知識がない人には意味がわからない内容ですよ」と、コメントをもらったのですがまさにそのとおりの内容でした。
 主人公が医師で患者を治療する経過をゲームブック風味に表現しているものの、かなり専門的な学習本なので、医療関係者か医学生でもないとわからないような医療用語が次々とでてきます。
 本書では主に子宮頸がんを扱っている関係上、女性器の構造について長々と解説が続くくだりがあるのですが、これがまた完全に医学書風で色気のイの字も湧いてこない雰囲気でした。
 医学的内容については、1991年とゲームブックブームの末期に発売されたとはいえ、もう20年以上前の作品ですから、おそらく現在とは違っている部分も多いでしょうね。子宮頸がんをテーマにしながら予防ワクチンの存在に一切触れていない点もそうですし、がんの告知についてが作品中でかなり重要視されている作りに社会的論争になっていた当時の世相を思い出します。

 
 ゲーム自体は君はこの症状をみてどう判断する?などといった問題と回答ばかりで、ゲームブック的なストーリー分岐の選択肢はかなり少ないですが、そのたまにある選択肢が、例えば患者にがんの告知をするべきかとか、患者に諦めずに治療をすすめるべきか緩和ケアに方針を変えるべきかとか、内容が重いです。
  序盤こそ上手に進めば完治する軽度の患者が相手ですが、終盤は末期癌、しかも主人公の恩師が患者でどうやっても最後は死んでしまうという、容赦のない展開です。
 しかし、苦しい思いをしながらも恩師の葬式に出席し、故人を前に医療の道への研鑽を誓う主人公というエンディングは、ブラックジャックのような奇跡は存在しない医学界に咲いた小さな希望という感じで私的にはよかったです。
 その主人公とは、君自身。つまり誓っているのは、本書の読者対象である医学生自身の姿なのだ!という解釈は深読みしすぎでしょうか。

 
 それにしても、こんなに真面目な内容なのに、「癌の雄叫び」ってタイトルのインパクトが凄い。正直それだけで買っちゃった本です。最強の出オチゲームブックです。
 このシリーズは他も「鮮血の瀝り」だの「恐怖の痙攣」だのいいセンスした名前がついてます。
 表紙は乱暴な字でタイトルが書いてあるだけというシンプルなものです。昔見た記憶では人面疽みたいなやつが声をあげてるようなイラストが表紙を飾っていた気がしていたのですが、勘違いだったのかな。「2002年暗黒霊の復讐」(桐原書店)や「悪夢の幽霊都市」(祥伝社)あたりの表紙と混同したのかもしれません。
 でも、どうせならそこまで突き抜けてほしかった気もするなぁ。


2013年09月02日(月) バニラのお菓子配達便!〜スイーツデリバリー〜(藤浪智之/角川つばさ文庫)

 今回も藤浪智之さんのゲームブックの紹介です。(後書きによれば、イラスト担当の佐々木さんとアイデアを出し合って考えたので、ある意味共作のようなものらしい)
 最近発売されたゲームブックという認識でしたが、2010年の発行だから3年もたってるのですねぇ。いや、ゲームブックブーム当時の本はもうすぐ発売30年を迎えるくらいですから、ゲームブックとしては新刊といっても良いのですが。
 本書は今でも普通に書店で見かけることができるし、続編も発売されていることからも、一定の人気を得ているようです。
 私自身は本書を発売当時にすぐ買ったはずなのに、読む気になるまでこんなに間が開いてしまいました。
 藤浪さんの作品なので、まあ作品自体がハズレとかの心配はしていなかったのですが、低年齢向けのうえ女の子向けの内容が、少年の心を持ってるとはいえ、おっさんには読むのが気恥ずかしかったわけです。
 双葉ゲームブックとか今でも読んでいて何を今更かもしれませんが、メルヘンっぽい世界観は、耽美系とダーク系と皮肉系(謎かけ盗賊とか)に続いて苦手でして。

 さて、ゲーム内容を紹介します。
 主人公はケーキ屋「パティスリー・エイル」を経営している3姉妹の末娘ばにらちゃん。小学生です。舞台設定こそ、日本の現実的な街ですが、ばにらちゃんには彼女にしか見えないティンカーベルのような姿の妖精、デコがついているのがメルヘン。
 2人のお姉ちゃんはケーキ作りや店の接客をしていますが、エイルではケーキの宅配もしているのが特徴で、その配達がばにらの仕事です。 
 本書には3つのショートゲームブック(パラグラフ数にして50〜80)が収録されており、どのストーリーも主な展開は、変わり者で悩みをかかえている依頼人にケーキの注文を受けるところからゲームが始まり、ばにらの笑顔と、デコと一緒に作った魔法のケーキで、問題を解決していくというもの。
 2話目の依頼人の性格と行動はいくらなんでも歪みすぎだろっと思った他は、ほのぼのした雰囲気で好印象。ベタな女の子向けアニメになりそうな感じなので、私の脳内でも30分TVアニメ風に場面が再現されてしまいました。
 皆様も本書はそんなノリで読むと楽しめるのではないでしょうか。ツンデレなデコを始め、登場人物もベタなキャラが多いので、アニメ好きなら声優さんまで指定できそうです。
 ゲームシステムの方はトランプを使用するルールですが、トランプがなくても遊べるようにフォローもされているので遊びやすいでしょう。
 マップを見て調査したい場所に表示されているパラグラフ番号を見ていくというタイプの双方向システムを交えながら、ストーリーが展開していきます。
 難易度でいれば2話目のエピソードにちょっと手こずったものの、クリアを目指すには易しい内容です。ハッピーエンドは何種類かあったり、1・2話の結末が3話に影響したりと、単純になりすぎないよう仕掛けも見られ、さすがにベテラン作者だけに手馴れているようです。
 ちなみに私は続編も発売当初に買ってますが、そのままになってます。せっかくなので、このまま4話目以降の続きを読む感覚で読んでみようかと思います。


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