冒険記録日誌
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2009年12月27日(日) 初夢トラの穴(奥谷道草/白夜書房)

 パズル雑誌クロスワードランドの2010年2月号に掲載されているはみだしゲーム(ミニゲームブック)です。2月号といっても、この雑誌はしばらく前から隔月発行になっていますから、実質新年号ですよ。
 今回の冒険は、来年の寅年にちなんで、初夢の中で貴重な「トラの子」を求めて何匹ものトラが待ち受ける危険な洞窟に潜入するというものでした。
 トラの穴というとタイガーマスクを連想した私は、おっさんでしょうか。同人誌やコミックの販売店の名前としての方が今は有名なのかね。

 さて、洞窟内は、はみ出しゲーム定番の迷路状になっていますが、ところどころトラがうろついているので、そこを通り抜けるにはトラを倒さないといけません。
 今回は、はみ出しゲームでは久しぶりに戦闘システムが採用されていますが、そのルールはいたって簡単。主人公は<行き当たりバッタリ拳>という必殺技を持っており、トラと戦うことになると、例えば1から3までの数字の中から一つ選べという指示があるので、選んで次のパラグラフに進みます。その先にある数字と一致していれば、トラに勝利。数字が違っていれば負けてどこか離れた場所まで逃走する羽目になります。3度戦闘に負ければゲームオーバーです。
 登場するトラは場所によって強さが違い、弱いトラなら1から3の数字の中から選ぶので、3分の1の確率で勝利できますが、強いトラだと1から5など選択する数字の幅が増えてゆき、巨大なトラにいたっては1から10の中から選ぶため勝率1割という事態になっています。

 私が挑戦したところ、危なげなく初回でクリアできました。状況があまりわからない序盤で幸運にもトラに無傷で2連勝できたことと、マッピングが進んだ中盤からは迷路状の地形を利用して、ある程度トラとの戦闘を回避して進めたのがよかったようです。
 粉じんが目に入って何パラグラフの移動以内に治療できないとゲームオーバーだとか、ダメージを回復する泉があるとか、いつもよりも正統派な冒険ゲームっぽい仕掛けが多い印象でしたが、肖像権の都合で洞窟に隠れて暮らしているというトラエモンとか、はみ出しゲームらしいふざけたキャラもいい味だしています。
 パズル要素はそんなにないけど、薬を使用する箇所はちょっとだけ発想の転換が必要かもね。最初、パラグラフに100加えたらページ数足りないじゃん!とか勘違いしていました。(汗)

 あと、ラスボスというか最後に立ちふさがるトラは10から100の数字から選ぶ必要があり、負けたら即ゲームオーバーという化け物でして、冒険中に収集したヒントを使って倒せる数字を見つけ出すようになっています。
 これは逆にいうと、いくつかの謎解き作業をすっとばしても、91分の1の勝率でクリアできるともいえるのですが、そんな想定外の方法でクリアした人がいたら面白いなー。


2009年12月24日(木) ベッキーと魔法の扉(原作:氷川へきる/スクウェア・エニックス)

 この「ベッキーと魔法の扉」は、「ぱにぽに」っていう漫画のコミック13巻に初回限定特典としてついていた、いわゆる付録扱いのゲームブックのタイトルです。
 ゲームブックの付録につられて本を買ったのは、「ながされて藍蘭島 パーフェクトガイドブック」以来ですよ。
 私はこの作品の存在は、コミック発売前からネットの情報で知っていたのですが、肝心の「ぱにぽに」って漫画をアニメ版も含めてまったく知らなかったので、当初はスルーしていました。
 ところが、ぱにぽにの作者が氷川へきると知って、「あー、なーんとなく絵柄とかたまに見かける漫画家さんだなぁ」「そういえはこの前の“ハヤテのごとく”のゲームブックの執筆陣の一人に加わっていたなぁ」と思って、まあ買ってもいいかなぁ、とか思いながら本屋に行ってみると、時すでに遅し。
 すでに、ぱにぽに13巻は通常版しか店頭に置いておらず、どこの本屋にいってもないし、じゃあネットショップと思っても、初回限定版は「お取り寄せ」扱いとか不安な表示しかされておらず、結局ヤフオクを利用して新品を定価購入することに。
 振り込み手数料と郵送料がかかった分、損しちまったなぁ。

 というわけで、なんとか手元に入ったぱにぽに13巻の初回限定版。
 そこそこの厚みのある冊子がゲームブック部分として独立しており、付録にしては立派な印象でして、少し意外でした。
 ともかく、原作を少しは知らなきゃ、ゲームブックを遊んでも意味がわかるまいと、まずは本編のコミックの方から読んでみました。
 もっともその本編にせよ、いきなり13巻から予備知識なしで読むわけで、いろいろ登場しているキャラの相関図とかわかるはずもなく。しかもこの巻のストーリーは、主人公が失踪中というか主人公の存在が抹消されたパラレルワールドという、ぱにぽにの中でも特にややこしい状況になっていまして、ますます収集がつかなくなったのですが。

 おもしろいじゃん。

 ぱにぽには、1ページくらいでオチがある短い漫画が積み重なって、ストーリーが進行するタイプの漫画だったようです。
 もともと四コマ漫画雑誌とかが好きな私には、細かい設定はわからなくても気にせず読む性質なので、十分楽しめました。
 この巻はストーリー的には世界が破滅するかの瀬戸際で、パラレルワールドが混じりあっていろいろ大混乱という非常事態なのに、そんな設定はどこを吹く風な登場人物達の独特なゆるゆるテンポがなんともいいねぇ。
 思いがけず、ぱにぽにファンになるかも。
 とりあえず、今は6巻の小学校編も買って読んでいます。1巻から買えよって説もありそうですが、読み手だってゆるゆるでいいじゃんってことで。


 話しがだいぶそれましたが、ゲームブック版の方の感想は、あんまりないかなぁ。ゲームブックファンの立場で購入したのに、むしろ本編の方が楽しめたような気がします。
 ゲームブック版の方のストーリーは本編とは独立した番外編です。
 主人公のレベッカ宮本(通称ベッキー)が目覚めたとき、見知らぬ部屋に連れてこられており、その部屋にはただ3つの扉があるだけだった、という状況からゲームは始まります。レベッカは3つの先に待ち構えてある冒険をそれぞれクリアしなければなりません。
 早い話しがパラグラフ数172のゲームブックの中に3つのミニ作品が、収録してあるといったほうが早いかも。異次元に通じる扉の先は、ファンタジーRPG編、SF編、魔法少女編の3つのアドベンチャーならぬパニベンチャーとなっています。
 ゲーム性の方は、基本は単純な分岐小説タイプ。大したヒントもないのに、選択肢を誤るといきなりバッドエンドになることが多い感じですが、短編ゲームブックだからこれは許容範囲かな。
 あと、本編では存在の希薄なメソウサ(主人公が連れているいつも泣いてるウサギ)が、こちらでは妙に活躍しています。ただメソウサが協力してくれる回数には制限があるので、使用のタイミングを考えるのがこのゲームをクリアする一番のポイントです。
 付録のゲームブックとしては変に戦闘ルールとかを採用するより、これくらいの方が丁度いいと思います。
 問題はストーリーの方で、あまり締りがなく、なんとなく進めていればなんとなく終わってしまうような味気がない印象ですが、これは原作がゆるゆるだからいいのか?
 でもこっちは漫画じゃないので、あの独特の間がゲームブック版にはないのですよ。レギュラーキャラ達の行動も本編に比べると真っ当な様子で、地味な印象を受けました。もっとギャグを盛り込むとか、超展開なストーリーに変貌するとか、本編に負けないくらいに暴れてほしかったところです。

 まあ、ゲームブックとしては無難な出来ですが、あくまでおまけってことで割り切りましょう。お買い得かどうかでいうと、コミックの付録でこれだけやってるのはかなり優秀だと思います。今ならまだ初回限定版を購入できる可能性は高いでしょう。
 なにはともあれ、本編の方も楽しめる方が買うことが吉です。クセがある漫画なので、ご購入は計画的に。


(追記)
 初回限定版13巻を本屋で発見しました。なんで買った後に……。orz
 それから、ぱにぽにのスピンオフ作品の「新感覚癒し系魔法少女ベホイミちゃん」も読んだのですが、こいつが相当におもしれーです。
 ゲームブックの企画をやるなら、ベッキーよりベホイミちゃんが主人公の方がゲームブック的に向いていたかも?魔法少女万歳ッス!!


2009年12月16日(水) 今年を振り返るのはチト早いけど

 まだ年末というには少々早いですが、今年を振り返ったゲームブック業界の感想でもつらづらと書いてみます。
 まず今年発売されたゲームブックは自分の知る限り次の4冊でした。某対戦ゲームブックシリーズは除いています。なんとなく。

・ 夢幻の双刃(創土社)
・ サムライ・ソード(HJG文庫)
・ 名探偵コナン 「嗤う黒猫」殺人事件(メディアファクトリー)
・ ハヤテのごとく!SS 超アンソロジー大作戦!!(ガガガ文庫)

 創土社出現前のゲームブック氷河期に比べれば、4冊でも十分沢山でたという印象です。
 最近の近況を聞かない創土社ですが、「夢幻の双刃」って今年の発売だったのですね。もう2年くらい出ていない気分になってました。ドルアーガの塔の最終巻が待ち遠しい!
 旧来のファンに賛否のあった、ラノベ化ファイティングファンタジーは、「サムライ・ソード」で今のところ打ち止め状態ですが、もともとHJG文庫の出版頻度自体が少ないので気長に待ちましょう。
 私としてはこのシリーズは、本来のファイティングファンタジーとは別物として楽しんでいます。なので仮に「サソリ沼のメイド」や「モンスターたん誕生」が出てもそれはそれで嬉しいのですが、本音をいうと、萌えの概念とは程遠いファイティングファンタジーシリーズを無理矢理リメイクしなくてもいいのでは?という疑問も持っています。むしろ、HJ文庫で出ている日本人の書いたライトノベル作品を、番外編と称してゲームブック化した方が自然な気がするのですが、どんなもんでしょ。
 「名探偵コナン」と「ハヤテのごとく!」は、まったく違うアプローチですが、どちらも人気作品をゲームブック化したもので、これからもこの手のものはポツポツと忘れた頃に出てきそうな感じです。こういったタイアップものは、ゲームブックがブームの頃から定番でしたから、案外こういった作品達がゲームブックの血脈を残していくのかもしれませんね。
 他にも把握しきれないのであえて除いていましたが、洋書と同人誌と携帯アプリ系だってゲームブック的なものが次々と登場しています。
 FT書房のようなしっかりとした製作集団の出版物も徐々に目立ってきていますし、低空飛行ながらゲームブックという存在は生き残っていきそうだと安心感は残る一年でした。

 それから自分自身の今年のゲームブック戦歴はというと、今年の冒険記録日誌に書いてきたとおりです。
 日記に書いていない作品だと、「ティーンズパンタクル」を最低能力値で挑戦とか、エニックス文庫版「ドラゴンクエスト1」で竹槍担いで冒険とか、ちょこまか数作品をやっていましたが、いずれもクリアまで行ってません。
 実は今年の私は、萌えの概念やら最近の人気作品を理解するために、元旦に「ライトノベルを10シリーズ読破しよう」なる目標をたてて、それを実践していたので、そちらの方に重点がいっていました。(駄目人間ぶりがわかる新年の抱負ですね)
 ライトノベルって難点をいいだせばキリがないですが、その設定はありえねーだろとか脳内でつっこみを入れたり、何も考えずに笑ったり、時には予想外の面白い展開に引き込まれたり、純粋に本を楽しむにはいいですね。
 ただ、当たり外れも多いので、一巻だけ購入して放置状態になるパターンも多かったので、本屋で吟味する時間が増えました。ライトノベルに限らないですが、数多くの作品の中から、自力で当たりを引き当てると嬉しいものですよ。

 さて、これからしばらくの間は、年末に予定している数年ぶりのHP更新に向けての作業に入りますので、また冒険記録日誌の更新が控えめになります。
 ネタはいくつか考えていますが、例えばアニメ化されるほど大人気の某対戦ゲームブックシリーズを「エロゲームブックを語ろう」のコーナーで取り上げようかと考えています。
 他には以前mixi日記の方でやってた罰当たりなソーサリーネタとか、某氏から提供していただいたオリジナルゲームブックの掲載とかです。余裕があればゲームブックの入門編になるようなコーナーも作りたいところ。
 作業ペースが遅いのとネットする時間が足りないせいで、予告する割にあんまり大したことはできないかもですが、あまり期待せずにお待ちください。


2009年12月15日(火) ブラッドソード ネタプレイ

(一部攻略のネタバレあり。プレイ予定の人は注意して下さい)

 ゲームブックは浅く広く楽しんでいる私にとって、好きなゲームブックは?と聞かれると軽く300冊くらい出てきます。(ファミ通のゲームレビューに例えて10点満点でいうと6点以上)
 かなり好きなゲームブック、という風に絞ると100冊くらいかな。(8点以上)
 しかし最も好きな、と形容するくらいの作品になると、ほんの数作しかありません。(10点満点)
 このうちの一つが、富士見文庫から出ていたブラッドソードシリーズです。
 ゲームシステムといいゲームバランスといい世界観といいストーリーといい細かな作り込みといい、どれをとっても最高です。
 最終巻の5巻が未訳というのは、英語がまったくできない私にとってかなりの悲劇ですが、もし今後も翻訳されることがなくても、死ぬまでにこの5巻だけは自力で読むつもりです。
 もう少し英語力がついたらプレイを再開して、このHPで何年も中断している「英語なんて大嫌い」コーナーも更新したいものです。

 ところでこのシリーズは、主人公のパーティ構成と選択肢によって、非常に幅のある展開になるので、一度クリアした後も1〜4巻は相当繰り返して遊んでました。
 しかし、さすがに今では大体の内容がわかってしまっているので、最近はちょっと違った目標設定で遊ぶようにしています。
 もともと私はやりこみプレイが好きなんですよ。
 過去の冒険記録日誌でも、ソーサリーで「神々の頭を持つヒドラ」に勝つ方法を探ったり、FFシリーズで最低能力値でのクリアを目指したり、「パンタクル」で魔法の最少使用クリアや「スーパーブラックオニキス」で最速日数プレイをした、なんてものを書いているのがいい例です。TVゲームのRPGでも「店で一切買い物をしないプレイ」とか制限つきで遊んでいたこともありました。
 ブラッドソードの場合、たとえば魔法使い1人で冒険をスタートし、1巻で登場するイムラガーンを、そのまま強引にレベル2の戦士扱いで仲間にし続けるプレイをしたことがあります。
 魔法使いとレベル6差の凸凹コンビで冒険を続けることになり、最初はまるで役立たずでただの荷物持ちだったイムラガーンが、巻を追うごとにレベルアップして頼もしくなってくるという、「イムラガーン成長物語」っぽい展開に脳内でなっていたので、結構楽しめました。
 他に挑戦しているのは、次のとおりです。
 そんな展開になったことあるよ、という凄腕のプレイヤーの方がもしいらっしゃいましたら、是非体験談をお聞かせ下さい。


・1巻「勝利の紋章を奪え!」で巨人スクリミールを通常の戦闘で倒す。

 これは結構きついです。スクリミールはシリーズの後半に登場する強敵達に比べれば、ありえない強さのモンスターではないですが、1巻の時点での主人公のレベルではかなり不利な戦いでしょう。
 純粋な戦闘力の高い戦士一人で挑戦してみたり、「盲目的服従」の魔法を狙ってみたり、魔法の笏を温存して使ったりしてみたものの、今のところ成功していません。
 しかし、うまくいけば成功しそうな感じのバランスがなんとも挑戦意欲を掻き立てます。


・2巻「魔術王を倒せ!」で悪い方のエンディングを目指す。

 悪い方のエンディングとは、対ワーロック王戦で鉄の鈴を使用せずに最後まで戦い続けるやり方です。
 報酬の経験値が800点しかもらえないくせに、1000点もらえるパターンより余計な戦闘が加わるぶん、はるかに難しいです。
 特にクモの巣でワーロック王が繰り出す衝撃波がかなりの曲者。空中浮遊で衝撃波を回避できる僧侶と、丈夫な戦士のコンビがいいだろうかと考えていますが、なかなかうまくいきません。


・3巻「悪魔の爪を折れ!」でジニーに金持ちにしてもらう。

 魔人のジニーにお願いできる3つの願い事。これで余分な願い事を一つでもすると、生命の若木を奪回するイベントに進めなくなり、終盤に登場する強敵セブン・イン・ワンとまともに戦う羽目になります。
 神々の影ほどじゃあないですが、こいつはまず勝てない敵です。唯一の勝てる望みは、前巻で入手できる火の球をここで使用することですが、そうすると前巻でのクラーケン戦が厳しい。クラーケンから逃げるには、透明になれる薬を使用すればいいですが、薬がどこで手に入るかわからない(わかる人がいたら教えて下さい)、などという面倒くさい事態になります。
 これは戦士のみが進めるルートを使うことで、クラーケンとの遭遇を回避して火の球を温存することができ、成功しました。余裕のできた2つ分の願いで、ジミーに大金持ちにしてもらったうえ、能力値も大幅増強してもらいます。
 これなら4巻の冒険が終わっても無一文にはならないし、能力増強は5巻でも役に立つはずです。ただ、生命の若木を奪還していたかどうかの有無が、5巻のストーリーに絡んでいないか心配ですが……。


・4巻「死者の国から還れ!」でトビアスを叩きのめす。

 カペラーズ騎士団の総司令官であるトビアス。邪悪な人間ではないが、法を全ての正義として、異教徒を弾圧する狂信者という、ゲームブックには珍しいキャラです。
 主人公の冒険の目的と直接関係する人間ではないので、展開によっては登場すらしないし、出会っても敵対する可能性は低いのですが、一旦敵にまわってしまうとかなりの強敵のうえ嫌な奴になります。
 本筋からは脱線するストーリーですが、トビアス絡みのエピソードは好きですねー。こいつに投獄されたときは、戦闘で叩きのめしてスカッとしたいと思ったものですが、逆に叩きのめされたことしかありません。
 黄泉の国で、さらにもう一度再戦してトドメを刺したプレイヤーなんているのでしょうか?


2009年12月06日(日) たけたろうの冒険 ──FF23・仮面の破壊者編 その2──

(ネタバレ注意!プレイ予定の人は読まないでください)

 結局、死の湖のほとりを遠回りして歩くことにしました。
 だって、確かに筏を作って渡るのは楽ですけど、もし湖上でモンスターが登場したら逃げ場がないじゃないですか。
 湖の西側をまわって欺きの森をぬけるコースを選んで、慎重に歩いていきます。
 夜になったので湖のほとりで野宿しようと、焚き火をおこしてから横になっていると、なにやら湖の方が小さく泡立ってきました。(運試し……成功)
 幸いにも、でっかいイカの化け物クラーケンが、こっちに向かって触手を伸ばしてくる直前に飛び起きることができます。
 慌てて焚き火から燃える薪を一本引き抜くと(サイコロを振って……出目は3で成功)、剣との二刀流で応戦します。逃げる選択肢もありましたが、こんな奴、八幡國ならただの刺身のネタです。逃げませんよ!

第一の触手 技術点6 体力点6
第二の触手 技術点6 体力点6
第三の触手 技術点6 体力点6
第四の触手 技術点6 体力点6
第五の触手 技術点6 体力点6
*一本ずつ順に戦う。今回は燃え盛る薪を武器に持っているので、触手に3点のダメージを与えられる。

 触手を3本斬ったところで、こちらの残り体力が4まで低下してしまいました。逃げましょう!
 逃げる時に追加ダメージを2点受けたうえ、食料を2食分落してしまいます。
 湖から離れ、真っ暗な森の中を歩き続けているうちに、睡眠不足でさらに体力が1点減ってしまい、残り体力1に。
 なんだか散々な目にあいました。適当な木の根にうずくまって休息をとると、食料を3食分食べて体力を回復させておきます。

 翌朝になると森エルフに遭遇しました。
 誰何してくる森エルフたちに、おとなしく従うと、エルフの村に連れてこられましたが、幸いにも彼らは友好的でした。旅の助言をもらうと(運点1回復)、魔法で村から遠くに飛ばされます。
 もやが立ち込めている中をしばらくじっとしていると(寒さで体力点を2減らす)もやが晴れ、鉱山の跡地らしきものと2件の小屋が見えてきました。

 うーん。
 ここは常識的には無視をして旅を進めるべきと思うのです。
 でも、この作者のR.ウォーターフィールドさんって、結構寄り道ルートに重要アイテムを落しているんですよね。
 というわけで小屋に入って見ると、頭のおかしい世捨て人が登場して、なにやら立派な笏をくれましたよ。案の定です。
 調子にのって一件の小屋も探索してみると、腐った床が抜けて地下室に落ちてしまいました。地下室に住んでいた巨大なネズミやムカデがゾロゾロ体に圧し掛かってきます。うげぇ。

害獣・害虫 技術点5 体力点6

 ダメージも追いましたが、なんとかこの悪夢の地下室から這い上がります。やはり調べるものが複数あれば、一つはトラップというパターンでしたか。今の騒ぎで食欲などまったく湧きませんが、体力回復のため食事をします。
 最後に立坑を調査してみると、この洞窟は思ったより長く延びていまして、当然ながら坑内は暗く、歩き進めるうちに入口に戻れるか少々不安になってきました。
 やがて岩をくりぬいた部屋の中に突然抜け出ます。騒々しい音がしたかと思うと、ランプの明かりがついて、ドラガー族の一家が登場しました。どうやらここの一家の寝室に飛び込んでしまったようです!
 すいません、邪魔する気はなかったのですー。と呟きながら逃げようとしましたが、お父さんドラガーが斧を振りかざして襲いかかってきて逃げられません。

ドラガー 技術点9 体力点10

 斧の一撃が見事に脳天に命中して、地味に任務失敗してしまいました。
 やっぱり、最初から裏切者を倒しておけばよかったです……。


 END


2009年12月05日(土) たけたろうの冒険 ──FF23・仮面の破壊者編 その1──

(ネタバレ注意!プレイ予定の人は読まないでください)

 私ことたけたろうは、クール大陸の北東にある都市アリオンを治める、大変公正で立派な領主様ですよ。
 今回は領主なんて、私にしては珍しくいい役どころじゃあないですか。これで事件さえ起らなければ文句なしですがねぇ。
 でもこの束の間の優雅な生活も、魔術師アイフォー・ティニンから緊急の会見の申し出があるまででした。
 「アイ、フォーティ!ニン様が見えられました」
 妙なアクセントで名前を呼ばれるこの魔術師は、まるで敗北が決まって国家の滅亡を憂いる軍師のような表情を顔に浮かべながら、せかせかと私のいる広間に入ってきました。そして、一刻も惜しいとでも言いたそうに、いきなり用件をきりだしてきます。
 「もちろんお主も聞いたことがあるであろうな。北部山脈のなかのクリル・ガーナッツの5つの峰に住んでいる魔女モルガーナのことを」
 「いや、まったく知りません」
 「わしはモルガーナの邪悪な計画をさぐるために、霊体となって彼女の隠れ家まで行ってきたのだ。12種類の魔法の印があれば、あらゆるものを支配する力を呼び出すことができる。モルガーナはすでにこの知識を手に入れているのだ」
 「えっと、私は魔法の知識なんてありませんよ。12種類の魔法ってなんですか?」
 「彼女は11種類の印をつけた仮面をそれぞれ作り、石でできた不死身の怪人ゴーレムたちにかぶせた。あとは12番目の印さえできれば万物を支配する力はモルガーナのものとなり、彼女はすべてを思いのままにできる」
 「いきなりそんな超展開な話しをされても困るのですけど……。もっとわかりやすく説明をしてください」
 「モルガーナはお主が倒さねばならん。この国一番の立派な領主であり、一番の豪傑であるからな。お主しか成し遂げられぬものはおらんのだ」
 「人の話しを聞いてください!」
 結局アイフォー・ティニンに熱っぽくいわれ続けて、あれよあれよという間に冒険に旅立つことになってしまいました。


技術点  7
体力点 14
運点   7
持ち物:剣、皮鎧、食料(10食分)、ツキ薬


 旅立ちの日。信頼する武具師のケヴィンに装備を整えてもらうと出発します。
 「兄貴、いってらっしゃい」
 ともみが、ニコヤカに旅立つ私を見送ってくれましたが、私としてはジト目で見返すしかありません。
 「なによ。その視線は?」
 あいかわらず調子のいい妹です。勝ち目のない冒険と見て今回は自分だけ逃げたのではないでしょうか?
 「見損なわないで兄貴。私なら今回の冒険でも使命を達成できるわよ」
 「へー、正しいルートを知っているのですか?」
 「んとね。パラグラフ1から裏切りの者のいるパラグラフに直接移動して倒せば
 「ギャアア、やめなさい!それ思いっきり反則ですから!ポートピア連続殺人事件で、捜査開始直後からいきなり犯人を逮捕するようなものですから!」

 私はため息を一つつくと、ともみとも別れ、城の北にある髑髏門をくぐり、アリオンのはるか北へ歩きはじめました。
 地図によると、まずは死の湖を目指し、枯葉の谷をこえ、矛槍草の大草原をつっきって、瘴気の沼を横目に進めばクリル・ガーナッツに到着します。なんでもいいですけど、気の滅入る地名ばっかりですね。
 出発してからのしばらくの間は、狩りをして食料を節約しながら、のんびりと旅ができました。
 数日後、私は死の湖に到着しました。
 文明の果てとも、誰も帰ってきたものがいないとも、化け物が湖の底に棲むとも、さまざまな言い伝えで恐れられている未知の湖を前にしばし悩みます。
 筏を作って湖を渡るべきか、遠回りになるけど湖のほとりを歩いていくべきか。うーん。どうしよう…。


続く 


2009年12月04日(金) 学研の「学習」と「科学」が休刊

 mixiニュースで見つけたタイトルのニュースですが、mixi日記の方は休止宣言をしたばかりなのでこちらに書きます。
 あんまりゲームブックの話題とは関係ないけど、最後の方はちょっと関係します。

 とにかく残念なニュースです。私は「科学」の方を読んでいましたが、学校より身近に、理科の面白さを知らせてくれた素晴らしい雑誌だったと思うだけに、休刊は信じられません。
 理系離れっていわれてるこのご時世に拍車がかかりそう。いい教育雑誌だし、mixiのコメントも惜しむ声ばかりなのになぜ売れないんだ。
 この雑誌は親が買ってくれるイメージなので、子どもが変わったというより、最近の親が変わったのかな。もちろん少子化という理由も大きいでしょうが。
 いつかは形を変えて復活することを希望したいですね。もし全年齢対象の雑誌として復活したら定期購読したっていい。もちろん付録は「科学」のタイプで!(「科学」の付録は組み立てて動かしたり、実験をしたりできるものが多く、「学習」の付録は勾玉のレプリカや、開発されたばかりの新素材の見本など完成品が多かった)

 ちなみに私は「科学」の方を買ってもらっていましたが、漫画も付録も楽しみでした。
 どれも好きだけど特に宇宙関係の漫画や小説が大好きで、今のSF好きにつながっていったんだよな。
 タイトルは忘れたけど、太陽系の各惑星を舞台に大泥棒と主人公が宝を取り合うドタバタ(でもしっかり毎回その惑星の特徴が勝敗に影響する)シリーズとか、爺ちゃんは宇宙人でハレー彗星と一緒に宇宙に帰っていったという幻想と交じり合いながら少年が家族の死と向き合うハートフルフトーリーとか、宇宙事故かなにかから2人だけ生き残った少年少女が謎の無人宇宙船に救助されたはいいが実は肉体乗っ取りを企てる異星人の船だったというSFホラーとか、もう一度読んでみたい。
 付録は、ぶちっきょだったので機械系のものはよく製作を失敗していたけど大好きだった。カブトエビの卵は孵して結構長い間育てたし、中には食べられるミニハンバーガー製作セット、嘘発見機なんてのもあった。

 ゲームブックがブームになったときも、しっかり影響されていて、ページを切りとってホッチキスで止めると、パラグラフ数33くらいのミニゲームブックが完成するようになる特集コーナーが記憶に残っている。
 内容はタイムマシンパトローラーが主人公で、歴史の改ざんをたくらむ悪党を捕まえるお話し。この悪党はリンゴの木に潜んで、ニュートンが万有引力を発見する瞬間を邪魔しようとしていたけど、今考えるとまるで動機がわからない。(笑)
 主人公が古代のローマ風呂に入っている間に、服を盗まれて風呂から出られなくなってENDというコミカルな展開があったかと思えば、自分の母親が事故死する直前の現場に出くわして、助けるか葛藤するシビアな選択肢もある。ちなみに母親を助ける選択肢を選ぶとパラドックスで主人公が消滅するのでせつない。
 いずれ、東京にいく機会があれば、国立国会館でこの号を借りてコピーしてもいいなと思っているので、何年の何月号か特定できる方がいらっしゃったら、是非ご一報を!

 さらに私よりもう少し後の学年の話しだが、高野富士雄ゲームブックでお馴染みだった、デブ猫こと“ねこまんまのポチ”がレギュラーで登場していた時期があったらしい。
 ただ、ゲームブックでは自由奔放だったポチも、学研ではいたずらをしては怒られ反省する役どころでキャラが発揮しにくかったみたい。
 これは是非見てみたかったが、未確認情報なので見たことある人はこちらも様子を教えて下さると嬉しいです。


2009年12月03日(木) 魔界の呼び声 呪いの首塚村(文:森下紀彦、絵:佐藤惟史/学習研究社)

 しばらく前に捨てる予定の荷物を整理していたら、一冊見覚えのないゲームブックが出てきました。それがタイトルの本です。
 小さい頃に遊んだ覚えもないけど、身近な人間でこんな怪しげな古本を買う人間が自分以外にいるとは思えないので、10年くらい前に盛んに古本屋めぐりをした頃の戦利品がはぐれてしまったのでしょう。
 しかし学習研究社とは懐かしい。
 前に冒険記録日誌で、学習研究社のゲームブックの話題を出したのは、「名探偵ホームズ 鬼岩城の謎」で日付は2002年3月13日。これは冒険記録日誌最初のネタですよ。(ちなみに3月1〜12日は後日追記したもの)

 まあ、そんなことはどうでもいいとして、「魔界の呼び声 呪いの首塚村」。
 いかにもおどろおどろしさが感じられる良いタイトルですね!
 プロローグあたりを読むと、由起と慎一という2人の少年少女が、謎の原因によって廃村となった首塚村を探索するという、ありがちな内容なんですが、それからが凄い。
 呪いの首塚村に住む未知の住民どもは、一瞬だけ姿を見せて怯えさせるとか、異様な雰囲気だけ匂わすとかいった、日本的な奥ゆかしい恐怖演出をしようなどとは欠片も考えていないようです。ゲームが始まったとたん化け物の姿を表し、スプラッタ映画のごとく、次々と主人公たちに襲いかかってきました。
 登場した妖怪の名前をざっとあげるだけでも、舞い首、首なし観音、二口女、死人返り、亀坊主、四ッ手頭、妖鳥、濡れ髪、火炎車、蛇少女、などなど盛りだくさん。(このゲームブックは1パラグラフ毎に1ページを割いて文章とイラストを載せているタイプなので、全ての化け物の姿を拝むことができます)
 非力な少年少女では、どうにもならない化け物ばかりなので、大抵の場合はひたすら逃げるしかありません。そして逃げた先では、当然のように新たな妖怪が待ち構えているので、妖怪が登場しないパラグラフの方が珍しいほど、気を休める箇所がありません。ゲーム中に一度でも選択ミスをしたら即座にデットエンドという厳しい二択が当然のように続きます。
 何ですって?片方がデットエンドの2択続きじゃ、ずっと一本道の展開じゃないかって?

 喝!

 シナリオの分岐なんていうのは贅沢の極み!
 ただ、生き残ったことを泣いて喜ぶべきです。
 生きてさえいればいずれ数か所くらいは分岐する機会があるので、欲しがりません勝つまでは!くらいに気合いを入れてそれまで耐え抜きましょう。
 これは序盤のうちから容赦がなく、ゲームオーバーになると、謎のナレーションが、ごく簡単な忠告とともに励ましてくれます。

───まだ村へも入らないうちから、こんなことになるとは。キミの軽率さには、妖怪もビックリしていることだろう。もっと慎重になれ!
───運が悪かったのだといえば、それまでだがこれから面白くなるという時に、まったく残念なことだ。冒険はまだ続く。キミの再チャレンジをのぞむ。

 このゲームにランダム性がないのが、救いといえば救い。総パラグラフ数178の作品ですし、諦めずに繰り返していれば、ズルなしでもいずれは先に進めます。
 物語も中盤にさしかかると、プロローグで伏線程度の情報があった京子という女が仲間になり、村がこうなった原因とその解決策を教えてくれます。
 何か含むところがありそうな女ですが、この狂った展開よりは理性があるぶん、しがみつきたくなる気分ではあります。どのみち疑って別行動をとろうものなら、次のパラグラフで唐突に登場した妖怪に踏みつぶされてデットエンドですから、選択の余地があろうはずもなく。
 妖怪どもの攻撃はあいらわず厳しく、ゲームオーバーの都度に見る、主人公の少年少女の殺害された死体イラストがちとグロイ。もちろん謎のナレーションも引き続き叱咤激励をしてくれます。

───キミは妖怪にわざと負けているのか?そうでなければよっぽど運のないヤツだということになる。もう少し頭を使ってほしい!
───慎一を失った由起と京子に妖怪を倒す力はない。こうなったのも、元はといえば、キミがゲームで失敗してしまったせいだ。反省をのぞむ!

 終盤はこの呪いの首塚村のラスボス魔猿との戦いが中心ですが、斬妖剣や魔照鏡なるアイテムを入手した由起と慎一も、真っ向から立ち向かいます。
 他の妖怪たちのように一回の選択肢では勝敗が決まらず、盛り上がってまいります。デットエンドにいくと謎のナレーションにも一段と気合が入ります。

───由紀と魔照鏡を失ったキミに再起する気力はない。もちろん恐ろしい魔猿に勝てるわけはない。おとなしく家に帰って、イイ子にしていたほうがいい。
───最後までたどりついたと思ったら、結局キミは魔猿に負けてしまった。緊張の連続で頭がボケてしまったんじゃないか?顔を洗って1から出直しだ!

 魔猿が崩れ落ちると、ついにエピローグ。これは4種類に分かれていて、仲間も含めて全員生き残ることができた場合は、一番良い結末に到達することができます。


 本書はなかなかインパクトが残る内容と思いますね。本書の読者対象年齢と思われる小さい子なんかにとっては特に。
 実際、Webを調べてみるとマイナーそうな作品にもかかわらず、小学生の時に読んだというコメントと合わせて、この作品を細かく解説した専用コンテンツを載せているページを発見しましたし。
 たまにはこんなゲームブックもいいもんです。


2009年12月02日(水) 激走!バトル・ロード(スティーブ・ジャクソン/ボビージャパン)

 この作品はアメリカ側のスティーブ・ジャクソンの書いたゲームブックですが、ファイティングファンタジーシリーズの一つではありません。「カーウォーズ」という作品の世界とルールを使った、TRPGのソロシナリオなのです。
 カーウォーズとはアメリカのスティーブジャクソンが製作したTRPGの一種で、近未来を舞台に武装した車を乗りまわす、カーバイオレンスアクションというのが売りになっています。
 映画マッドマックスのような、と表現してもいいですが、よくリビングストンの「フリーウェイの戦士」(2002年4月8日の日記に紹介済)がマッドマックス風のゲームブックといわれます。
 カーウォーズの世界では全人類の文明が崩壊するような核戦争も大天災も未知の伝染病も発生しておらず、現代とは文明が多少進歩している(例えばこの世界では電気自動車が標準)くらいの違いしかありません。
 いってしまえば、カーウォーズがマッドマックス1で、「フリーウェイの戦士」がマッドマックス2というところでしょうか。

 そんなわけで「激走!バトル・ロード」の主人公は、世紀末覇者というわけでもなく、高額の報酬と引き換えに危険な任務を引き受ける仕事をしているようです。
 そして今回の依頼は、陰謀によって監禁にあい、明日にも強制結婚をさせられる運命にある大統領の娘を救出すること。
 こうして主人公は前金5千ドルを受け取り、標準武装したピラニヤという車に乗って出発するところからゲームははじまり、冒険の大半は、出発時点から結婚式予定会場であるツーイーグル農場までの移動シーンに割かれていました。当然ながら街を一歩離れた道中は、悪質な暴走族が日夜問わずに出没する危険地帯です。

 こう書くと、前述で触れた「フリーウェイの戦士」と大まかな内容が似ている気はしますが、あちらにあった慢性的な燃料不足問題が、ここではあまりないので、難易度的にはかなり楽な冒険になっています。
 基本的にどの道のルートを通っても問題はなく、敵と戦おうが逃亡を優先しようが、道端に不自然に停車している車を無視しようが、多少は先の展開に有利不利の影響が出るものの、クリアに致命的な問題とはなりません。受ける影響も納得できる内容ばかりなので、不条理な気分にはならないでしょう。
 自分の思い通りに選択肢を選んで遊べるのが気分がよく、この辺はさすがアメリカのスティーブ・ジャクソンの作品と思います。

 それから本作品には時間経過の概念があり、冒険中は行動のたびにこれが加算されていきます。
 時間経過の要素としては、街で情報収集など人との交渉、車の装備やメンテナンス、敵との戦闘などなど。車で走っているときも、危険を冒して速度をあげるほど時間を節約できるかわり、もし運転技能の判定に失敗すれば事故になり、却って時間がかかってしまいます。
 もちろん寄り道がすぎると、結婚式がおこなわてしまい任務失敗。このあたりの判定はシビアなので、戦闘の次に警戒する要素です。

 もう一つのこの作品の特徴はカーウォーズらしく、敵からバイクを奪ったり街で車を購入するなどの手段で、車を乗り換えながら冒険を続行することも可能ということ。すでに乗っている車にも、街で各種の武器を装着することでカスタマイズが可能です。
 ただ自分の場合は、このへんの楽しみは味わえませんでした。というのも、このゲームは自分の任意で能力を割り振りできたため、運転技能に全てのポイントを集中させる作戦に出ていたのですが、これが当たったのか情報収集を重視した進行が良かったのか、なんと一度も戦闘に突入することなく、クリアできてしまったからです。
 そうゆう意味ではもっと難易度があっても良かったかもしれませんが、暴走族どもをなぎ倒せば、立ち寄る街で住民たちから拍手喝采を受けるという気分のいい展開も味わえるので、バイオレンスな展開にしたい人は逆に射撃技能と財産にポイントを割り振って、重装備の車でわざと敵地に突っ込むのも一興かもしれません。

 蛇足ながら、「フリーウェイの戦士」も各種演出が秀逸な、屈指の名作と思っていますので、遊び比べると両作者の書くゲームブック作品の特徴がよくわかって面白いのではないでしょうか。


2009年12月01日(火) ウィザード家の秘宝(下村家惠子/アニメージュ文庫)

 このゲームブックは、アニメ「名探偵ホームズ」を原作としています。
 ページ頭のカラー口絵を見る限り、その中でも第16話「魔城!ホームズ生か死か」というエピソードを土台に使った内容のようです。
 昔からゲームブックをご存じの世代なら、このアニメは知っているかもしれませんね。
 有名なシャーロック・ホームズシリーズのパスティーシュ作品の一種ですが、登場人物は全員擬人化した犬たちであったり、家主のハドソンさんがうら若い美人のヒロイン役だったり、モリアーティ教授がタイムボカンの悪役のような憎めないやられ役だったり、いい意味で普通のホームズものとは別の世界観を出していました。
 私も好きなアニメで放送当時は時々見ていました。ただ残念なことに、「魔城!ホームズ生か死か」の回はみそびれたようで記憶がありません。

 さて、このゲームブック版はどんな内容かというと、ホームズとワトスンの2人が地下ダンションに潜入して宝物を探し出すというもの。
 ゲームブックとしては極めてオーソドックスすぎるというか。
 このアニメを取り上げるならロンドンの街での捜査を中心にしたストーリーにしてほしかったところで、どうも作者が安易にゲームブックにしやすい題材だからこのエピソードを選んだのじゃないか?という穿った見かたをしてしましました。
 なぜなら、ゲームそのものは双方向システムで作られた迷宮に罠とアイテムを配置しただけという単調な作りだったからです。
 最初は自分も真面目にマッピングをしながらゲームを進めていたのですが、地下2階部分(ゲーム全体の舞台は地下1〜3階の迷宮構造で、地下2階からゲームスタート)のマッピングが終わったあたりで、我慢できなくなって投げ出してしまいました。
 もともとマッピングは苦手というのもありますが、イベントシーン以外は「三叉路についた。北へ行くか?東へ行くか?西へ行くか?」というパラグラフがずっと続くだけではさすがに飽きてきてしまいますよ。
 何よりモリアーティ教授が登場しないのがおかしい。
 このアニメでモリアーティ教授がいないなんて、ドロンジョ様がいないヤッターマンに近いものがあります。
 元にしたエピソードにも登場しなかったのかもしれませんが、そこはゲームブックですから登場してくる展開を一つくらい加えても良かったんじゃないかと思いますがね。

 そんなわけで、悪い感想しか出てこない作品でしたが、作中に度々みられるホームズとワトスンのやりとりは、上手にアニメの雰囲気を再現しているんじゃないかと思います。
 何気ない会話や、お互いに負傷を気遣いあうところなどは2人の温かい友情を感じて心地よいし、バットエンドが決定したパラグラフで2人が一本のパイプを交互にふかしあって最期を待つシーンは印象的でした。
 問題は地下迷宮で飛んでくる槍を避け鍵を集め蛇やヒルと戦い……といった内容だけで、パラグラフ400のゲームブックにしたのは、無理があったのじゃないかということで。圧縮してはみ出しゲームシリーズのサイズにしたぐらいが丁度良かったでしょう。


山口プリン |HomePage

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