冒険記録日誌
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2006年02月14日(火) ブラッドソード3 悪魔の爪を折れ!(デイヴ・モリス オリバ−・ジョンソン/富士見書房) その6

(ネタバレ満載です。ブラッドソードをプレイ予定の方は読まないで下さい)

 2日間小さな無人島で、生えている果物などを取りながら過ごしていると、目的のハンガックの船が現れた。さっそく魔法の木馬に乗って、海面すれすれを音もなく滑りながら、船に接近を試みる。近づくと、壁のようにそびえるかのような巨大な船体が、目前にせまって、思わず身震いをする。
 間違っても、伝説的な海賊であるハンガックに見つかって、一戦を交えるのはごめんこうむりたいものだ。
 木馬を上昇させて甲板に降り立つと、やせこけた男が船の舵を握り締めて前方を見据えているのが見えた。
 不思議に敵意は感じられない。モリスが、あんたがハンガックかと話しかけると、男はこちらを見てかすかに笑った。手には舵を握り締めたままだ。
「違う。俺の名はシャンビア。ハンガックの忠実な舵取りさ。ハンガックに仕えて寿命を延ばした男。それが俺だ」
 忠実な部下なら宝石を盗みにきたと言うわけにはいくまい。ハンガックがどこにいるのかも気にはなったが、この船はどこに行くんだ?と聞いてみた。すると、シャンビアは恐ろしいことを聞かれたかのように顔をしかめ、遠くを見つめた。
「どこに行くかだと?この船の進路は、もはや運命の神みぞ知ることだ。あと5分で再びこの船は、別世界へと旅立つ。お前達も早く出て行かないと、永遠の航海へ同行することになるぞ」
 行こう、とバーガンが2人を引っ張った。シャンビアの話しが正しいなら、宝石を捜す時間はわずかしかないようだ。
 リー・チェンが予言の魔法を使い、宝石を見つける瞬間のイメージを浮かべようと試みる。
「宝石はどこか狭いが豪勢な部屋だ。…恐らく船長室だろう」
 船首の方に向かうと、船長室はすぐに見つかった。3人は目当ての宝石を見つけ、ハンガックが登場しないうちに、急いで船を脱出しようと甲板へ飛び出した。そのまま魔法の木馬を置いていた場所へ走る。
 船は不気味な音をたてて、次の次元へと移動する気配を見せていた。3人は木馬がなくなっているのに、目を疑う。
「誰だ。誰が盗んだんだ」
 そのときリー・チェンの予言の魔法が、船の未来をイメージする。得体の知れない海に、はるか虚空を見つめるハンガックの影もチラリと見える。彼と一緒に永遠の航海に乗り出す運命。おそるべき運命だ。
「木馬をとりかえす暇はない!早く海へ飛び込め!」
 リー・チェンは叫ぶと、すぐに船から飛び降りた。あとの2人もそれにならう。
 必死で小島に泳ぎ着いて、振り返るとハンガックの船は、すでに跡形もなかった。


続く


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 今回は登場しませんでしたが、船で宝石の捜索に手間取っているとハンガックが登場します。
 英雄にふさわしい強さで死闘は避けられませんが、万が一、こちらが勝ったときのハンガックの態度が格好良んだな。これが。


2006年02月13日(月) ブラッドソード3 悪魔の爪を折れ!(デイヴ・モリス オリバ−・ジョンソン/富士見書房) その5

(ネタバレ満載です。ブラッドソードをプレイ予定の方は読まないで下さい)

 ササリアンの家を出て、チラリと振り返るとやつは窓からこちらを見て笑っていた。
 きびすを返して、船を調達するために海沿いの村に入っていった。
 村に入ると痩せこけた子供達がたちまち物乞いに集まってくるので、モリスが金貨一枚を指ではじいて投げてやる。
 金貨を掴み取った子供は、それが金貨だとわかると信じられないという顔をした。まわりの子供も一緒に静まり返ってこちらを見る。
「おじさん…いいの?」
「ああ、とっておけ」
 モリスの言葉を聞いて、子供達が歓声をあげて道を下っていった。子供達が去っていったあとは、老婆が一人たたずんでいた。
「神は親切な人に、必ず褒美をくださいますよ。私の家で休憩をしませんか」

 老婆の小屋に入って、苦いコーヒーをご馳走になる。何気なく部屋の中を見回すと、黒檀の木馬が中央に据えられているのが目に入った。リー・チェンがバーガンを突っつく。
「おい、あれを見ろよ。昨日のじじい(老水夫)が話していた木馬にそっくりだぜ」
「本当だ。おい、モリス。あのハンドルをまだ持っているか?ちょっと差し込んでみようや」
 木製のハンドルを木馬に差し込むと、なんと木馬は動き出して、少し浮き上がった!あの老人の話しはまんざら嘘ばかりだけでもなかたようだ!
 この馬があれば、海などひとっとびで飛んでいけるだろう。無理を承知で老婆に馬を売ってくれるように頼む。
「いいですよ。乗ってお行きなさい。でも、あなた方から代金をもらうつもりはありません。この年になると、いい人と悪い人の区別がつくものなのですよ」
「え?しかし、この木馬はお婆さんの宝物ではないのですか?」
「ええ、でも私は今後、あなた方がこの馬で飛んでいく顛末を、近所の者に話して聞かせることができるのです。そうすれば彼らは私にお金を払ってくれるのですよ。ですから馬を持っていかれても、私は素晴らしい楽しみが残るわけです。ご安心なさい」
 なんともわからない理屈だ。これがターシム人特有の文化というものなのか。しかし有難いことだ。
 改めて老婆に厚く礼を言ってから、木のハンドルを押して空高く飛び上がった。そして海のほうへ向かって、勢いよく木馬を滑らせた。
 町も港も砂糖菓子のように眼下に小さく見える。景色はすぐに海上の姿になった。風が服をはためかせて少々寒いが快適だ。
「おい、もう少し前へ体を動かせよ」
「無理だ。これ以上動いたら俺が落ちてしまう」
「こらこら、動くな。バランスを崩したら真っ先に私が落っこちそうじゃないか!」
 木馬に大の大人が3人も乗っているのは少々窮屈だったが。
 ほどなくマラジット湾が見えてきたので、少しだけ方向転換をする。そしてハンガックの船が現れるといわれる海上の近くに小さな島を発見すると、木馬を着陸させた。
 あとは、ハンガックの船がやってくるのを待つだけだ。


続く


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 マラジット湾に向かう方法はいつくもあるのですが、唐突に空飛ぶ子馬なんて小道具が登場するこの方法はその中でも特にユニークです。
 この巻はそんな唐突で楽しい仕掛けや展開が、まだまだ沢山登場してかなりワクワクさせてくれます。


2006年02月12日(日) ブラッドソード3 悪魔の爪を折れ!(デイヴ・モリス オリバ−・ジョンソン/富士見書房) その4

(ネタバレ満載です。ブラッドソードをプレイ予定の方は読まないで下さい)

 エメリタスの家の玄関に訪問して、エメリタスにブラッドソードの柄と鞘を見せると、彼は驚きのあまり息を呑んだ。
「生命の剣!失われたものとばかり聞いていたが!」
「まだ刀身が見つからないのです」
 リー・チェンが簡単に事情を説明すると、エメリタスは3人を家の中に招き入れた。
「あなた方には、ブラッドソードの由来からお話ししたほうがいいでしょうね」
 この世の生と死を切り離したとき、天使長のアブデルが鍛えた2本の剣。それが悪魔の爪とも言われる“死の剣”。そしてもう一本が生命の剣、つまり“ブラッドソード”であることをエメリタスは教えてくれた。そして、ブラッドソードの刀身を探すなら、ササリアンという人物を尋ねることを勧めてくれる。そして、次の言葉で締めくくった。
「ササリアンは油断のならない人物ですが、死の剣を探しています。ですから、ブラッドソードについても知っているかもしれません。2本の剣は引き離すことのできない強い絆で結ばれていますから」

 エメリタスに丁重に礼を言って別れ、ササリアンが住むという町外れに向かう。途中でターシムの女が、2人の下品な男達に絡まれていたので助けてやろうとする。
 2ラウンドも戦っていると、いきなり閃光がひらめいて男達の姿が消えた。
 ターシムの女を振り返ると、2匹のネズミを尻尾から捕まえながら女が微笑んでいた。
「助けていただいてありがとうございます。私はファティマ。お礼に私の庭園に入る鍵を差し上げましょう。隠れ家が必要になったときにご利用ください」
 警戒をしながらも、彼女の差し出した銀の鍵をリー・チェンが受け取る。
「今のは変身の術か。ターシム人も魔法の使い手がいるとは驚きだ」
「そのようなことは別に良いではありませんか。ファティマの庭園には一匹の猿がご案内することでしょう。どうぞご無事で」
 ファティマはお辞儀をすると、静かに立ち去った。
「変な女だ」
 肩をすくめて、ササリアンの家へ急ぐ。

 ササリアンの住処は肉屋だった。大きな肉のかたまりに包丁をおろしているひげ面の男に、尋ねるとやつは黙って二階をあごで指した。
 二階に駆け上がると、扉をノックする。
「入りたまえ。お前達がくるのは、わかっていた」
 扉を開けると質素な部屋に、窓際で水煙管を吸っている男。おそらく、こいつがササリアンだろう。
 バーガンが前に進み出ると、ササリアンは厳しい視線をこちらに向けた。
「そちらは生命の剣を探している。俺は死の剣を探している。力を合わせればお互いに欲しいものが手に入るというわけだ」
「そのとおりだ、ササリアン。だが、お前はどんな力を貸すことができるのだ」
「知識だ。お前達は実行する役を頼みたい」
 すかさずササリアンが答えて、木を彫って作った小さな人形を差し出した。
「これはハチュリという。偉大な魔法使いサークナールの遺品さ。動けば、こいつが魔法の剣を探してくれる。だが、そのためにはエメラルドで出来た両目が必要なのだ。その2つのエメラルドは、はるか昔に海賊王ハンガックが、サークナールの住処から盗み出したと伝えられている」
「それでどうしろというのだ。海賊王ハンガックは5百年も前に死んだはずだ…」
「ハンガックは死んでも生きてもいない。彼の船、デビルスランナー号は、この世の終わりまで海をさまよっているのだ」
 ササリアンはしばらく沈黙をしてこちらを見つめた。そして羊皮紙に描かれた海図をテーブルにひろげる。
「俺は天体観測を重ねた結果、デビルスランナー号が現れる位置を知っている。二日後、マラジット湾から100キロほど沖の海域だ。エメラルドを取り戻したら、ハクバットの町にある“砂漠の微風館”で落ち合おう。どの道、魔法の剣達はハクバットの町にあるんだ」
「ちょっと待て。マラジット湾はここからはるか遠い。二日ではとてもたどり着けないではないか。どうやっていけばいいのだ」
 ササリアンはまたしても厳しい目を向けて言った。
「私に聞くな。それはそちらが考える問題だ」


続く


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 ブラッドソードの逸話がもっともよくわかるシーンですが、ゲーム的には特に何もなし。
 大きな選択肢も特にないしね。ただ、ここではターシムの女を助けておかないと後でクリアが不可能になりますが。


2006年02月11日(土) ブラッドソード3 悪魔の爪を折れ!(デイヴ・モリス オリバ−・ジョンソン/富士見書房) その3

(ネタバレ満載です。ブラッドソードをプレイ予定の方は読まないで下さい)

 ジャブロに教えてもらった宿へ向かい、大きな扉を押し開ける。
 大勢の波止場人足たちがサイコロ賭博をして遊んでいる。灰色の外套を着た男がその様子を熱心に見ていたが、バーガンたちに気がつくとあわててカウンターに走け戻った。
「紫の玉座の塔へようこそ!私が主人のアレクシスです。料金表をお見せしましょうか。そんなことは品位にかかわるといわれるなら、あれこれ申し上げずに最高級の部屋にご案内いたします」
 料金料を見せてくれと頼むと、アレクシスはどこかの読めない言葉で書かれた一枚の板を指し示した。
「料金表はイエザン書体で書かれています。洒落た雰囲気を出そうという女房の馬鹿げた考えでして。お題はお一人様金貨2枚、お食事は別に金貨1枚です」
 バーガンは胡散臭そうな目で、愛想笑いを振りまくアレクシスを眺めた。どうもこの主人は信用できない。翌朝、聞いてもいない高額を要求され、文句をいえば衛兵に突き出されるという寸法かもしれない。ここはひとつ、カマをかけてやろう。
「どういうつもりだ!料金表にはもっと高い金額が書いてあるじゃないか。それともお前はあれが読めないのか」
 バーガンの思惑通り、アレクシスは真っ青になり、視線をそらしながら、もごもごと言い訳をはじめた。
「あの料金表は女房が書いたもので、私も読めないのです。おはずかしいかぎりです。お一人様、金貨一枚で相部屋に泊まることもできますから」
「そっちが間違えたのだから、いっそ、タダにしたらどうだ」
 すかさずモリスが剣の柄を見せながらドスの聞いた声で凄むと、アレクシスは目を白黒させながらうなずく。冒険者の3人は互いに目を合わせてニヤリと笑った。
 
 案内された相部屋は、乞食や金のない巡礼者、飲んだくれた行商人といった最下層の人間であふれかえっていた。
 その中にパイプを吹かしているターシムの老水夫を見つけ、ジャブロの言ったとおりに、話しかけてみる。
「俺の話しを聞きたいのか。なら金貨をめぐんでくれ!俺にはこの1オンスの煙草しか財産がないんだ」
 せがむ老人に金貨を一掴み握らせてやると、老人は自分の半生記を長々と語り始めた。沈みかけた船から空とぶ木馬にのって飛び出したこと、遠く離れた島で美しい王女との結婚、人食い鬼の巣から脱出したなど、妄想ともつかぬ話しばかりが驚くべきスタミナで老人の口から一晩中、たっぷりと語られ続けた。バーガンとリー・チェンはうつらうつらとする中、夜明けの光が窓から差し込んできた。
 やれやれ、徹夜で老人の法螺話につき合ってしまったようだ。
 長い長い話しがやっと終わると、老人は最後まで律儀に話しにつきあっていたモリスの手をつかんで、木製のハンドルを押し付けた。
「これは話しに出てきた、空を飛ぶ木馬のハンドルだよ。あの時は、こいつのおかげで助かったが、いっそ溺れ死んだ方がよかった思うこともあるな。こいつをやるから、もしあの木馬を発見することがあったら、元通りにはめておいてくれ。きっとお前達の役にも立つだろうさ」
 捨てちまえよ、とバーガンが小声で言ったが、老人には敬意を示すのが礼儀なのさとモリス。老人に礼を言いながらそのハンドルを受け取った。

 アレクシスの運んできた朝食のまずい粥を食べ終えると、宿の前の泉で口をすすぐ。ふと見ると一軒の家の前に病人や貧乏人が並んでいるのが見えた。
「あれは医者のエミリタスの家です。この町で一番賢い男の家ですよ」
 アレクシスにそれだけを教えてもらうと、3人はぶらぶらとその家に近づいた。ブラッドソードの刀身のありかを知っているかもしれない人物に出会えたのだ。


続く


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 3巻は、どこで宿を決めるかによって、序盤の展開が大きくかわります。
 その中でも僧侶は医者のエミリタスと親友という設定なので、僧侶がいれば最初からエミリタスに会えるんですよね。これが一番で安全で楽な展開なのですけど、物語としては物足りないかも。


2006年02月10日(金) ブラッドソード3 悪魔の爪を折れ!(デイヴ・モリス オリバ−・ジョンソン/富士見書房) その2

(ネタバレ満載です。ブラッドソードをプレイ予定の方は読まないで下さい)

 ジャブロの住む宝石市場の方へ、ぶらぶらと移動した。
「ところで、今でもそいつはそこに住んでいるんだろうな」
 モリスがバーガンに尋ねると、バーガンは肩をすくめた。
「俺も細かい住所は知らないんだ。まあ、そこらの子供にでも尋ねたらわかるだろう」
「おいおい、いい加減だな。しょうがない。おい、そこの坊や、ジャブロって奴の家を知らないか?」
 声をかけられた少年はニタリと笑って「ただじゃ、教えないよ」とのたまった。
 しぶしぶ金貨を取り出そうとするモリスを制止して、バーガンが真面目くさった顔で少年に話しかける。
「じつは、これは特別な任務なのだ。君は秘密を守ることができるか」
「秘密任務なの」
 少年はびっくりした様子で、バーガンの顔を見つめた。
「そうだ、君をフェロメーヌ同盟の特別工作員として命じる。ジャブロの家に案内するのだ。ただし、町の人間に悟られないようにな」
 少年ははじかれたように、道を飛び出して案内をはじめた。
 唖然とするモリスに、リー・チェンがくっくっと笑う。

 少年と別れた3人は、その建物の扉をノックした。
 年をとったターシム人が出てきたが、「ジャブロなら、二階の部屋さ」といってすぐに扉を閉める。二階に上がってみたが、ノックして反応がない。留守のようだ。
 ノブにさわると、鍵はかかっていなかった。そっと開けてみると部屋の中は、美しい絹のカーテンに、ベルベットのクッションが品よく設置してあり、香水の香りがかすかに漂ってきた。
「なんじゃこりゃ、ジャブロってのは女なのかい」
 あきれるモリスを無視して、バーガンはものすごい勢いで階下に降りると、外出しようとしていたさっきのターシム人の老人を捕まえた。
「ちょっと、待て。ジャブロ。古い友人が尋ねてきたのに冷たいじゃないか」
 ジャブロは、老人の変装をときながら、苦しそうにバーガンの手を振り払う。
「すまんかった。ちょっと今から総督の家で一仕事があるんだ。まさかお前を連れて行くわけにはいかんからな」
「わかったよ、行くがいい。だがな、そうやって古い友人に冷たくすれば、お前が死んだとき悪魔がお前の罪を数え上げて、大喜びするだろうよ」
「そういうなよ。昔のよしみで近くの宿を紹介してやるから。紫の玉座の塔という名前だ。もう一つ、いいことを教えてやる。そこで寝ているターシム人の老水夫の話しを聞くといい。最後まで聞けば、神様はお前の忍耐に答えてくださるだろうよ」
 バーガンはジャブロから宿屋の位置を教えてもらう。
「礼をいうぜ、ジャブロ。今夜の仕事がうまくいくように祈っているよ」
「お前も達者でな」
 ジャブロは立ち去っていった。
 バーガンはすぐに宿に向かわず、しばらくぐずぐずしていたが、噴水で水を飲んで休んでいる市民兵を見つけ出すと走り寄った。市民兵達は怪訝そうにこっちをみる。
「なんだ?道でも迷ったのか」
「うんにゃあ、違いますだよ。旦那様方。さっき、おっかねえ連中が、総督の屋敷を襲うのなんのと言っていたのを聞いてしまったんですが、大事にならなきゃいいと思いまして」
 奴らは水を拭きだした。
「な!いくぞ、腰抜けども!そんな奴らにやられてたまるか」
 市民兵達が慌ただしく走り去ると、夕方になった町は人気がなくなって見えた。
「いいのか?あんなことを言って」
「なーに。奴の仕事に花を添えてやったのさ。ジャブロはいつも多少の邪魔があった方がやりがいがあると行っていたからな」
 バーガンは笑うと、教えてもらった紫の玉座の塔の方へ歩きはじめた。


続く


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 冒険の中ではたわいもないエピソードですが、盗賊の魅力が現れている私のお気に入りの話しです。
 こうゆうゲーム性以外の魅力にも、小説のように読ませる力ももっているのが、ブラッドソードの魅力なんですねぇ。


2006年02月09日(木) ブラッドソード3 悪魔の爪を折れ!(デイヴ・モリス オリバ−・ジョンソン/富士見書房) その1

(ネタバレ満載です。ブラッドソードをプレイ予定の方は読まないで下さい)

 前回の冒険から二年以上の月日が経過した。(ブラッドソード2 魔術王をたおせ!の冒険記録日誌を参照のこと)
 ブラッドソードの鞘と柄を手に入れた3人の冒険者は、残るブラッドソードの刀身を探して旅を続けていた。
 そしてたどり着いたのが、北の女賢者が教えてくれた十字軍の地オトレメールなのだ。他に明確な根拠があるわけではなかったのだが、今はそれを信じる以外にあてがないのも事実だ。オトレメールの中でも十字軍の前哨地として名高いクレサンチウムの町に目安をつけると、その町の中に入っていった。
 もうすぐ、日が暮れる。今夜の宿を決めなくては……。

*冒険者のパーティ構成と、そのキャラクターの名前*
戦士(レベル3)───モリス
盗賊(レベル5)───バーガン
魔術師(レベル5)──リー・チェン

 宿の心当たりは3人ともあった。まず、モリスがクレサンチウムの町に駐在する、カペラーズ騎士団の総司令官にあてた紹介状を取り出した。
「この紹介状があれば、騎士団の宿舎に泊めてもらえるだろう」
「よしてくれよ。盗賊の俺に、そんな怖いところへ行けっていうのかい?」
 バーガンが唾を地面に吐きながら言った。今度はリー・チェンが、提案する。
「町はずれに、魔女プシュケの館がある。直接の知り合いではないが、魔法使い同士の礼儀として、俺が頼めば一夜の宿くらいは提供してくれるはずだ」
「善き魔法使いなら……だろ。プシュケという奴がどんな魔女がわからない以上、無用な危険は冒さないほうがいい」
 またしても、バーガンが欠伸をして髪をかきながら反対した。
「俺の知人を訪ねよう。ジャブロ・ザ・ナイフという古い馴染みが、この町にに住んでいるんだ。俺と同じ穴のムジナさ。ついてきな」
 モリスとリー・チェンは、それこそ一番胡散臭い話しではないかという風に顔を見合わせていたが、しぶしぶバーガンの跡をついていった。


続く


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 3巻の冒険は僧侶を失ったままのスタートです。2巻のときのように、レベル2の僧侶を追加してもよかったのですが、3人で冒険を続けた場合、第4巻の終了時に盗賊と魔術師が、強者の目安にみえるレベル8になれるので、控えました。
 敵が強くなる終盤の冒険には、少しでもレベルを上げて、キャラクターのヒットポイントを高めたいところなのです。


2006年02月08日(水) 暗黒教団の陰謀 輝くトラペゾヘドロン(大瀧啓裕/創元推理文庫)

 H・P・ラヴクラフトの恐怖小説、クトゥルー神話の世界をベースにしたゲームブックです。
 私は創元推理文庫のゲームブックは大好きですが、ホラーものは苦手だったので、今まで敬遠していました。初めて挑戦してみましたが、うむむむ。とにかくよく死にますね。
 原作はよく知らないのですが、この作品は現代アメリカっぽい社会に、神話の邪神やそのしもべが実在する世界が舞台です。
 主人公は邪神の復活をふせごうとする、叔父の頼みを聞き、協力を誓うところから物語が始まります。その叔父は物語開始直後に何者かにさらわれてしまうので、主人公一人で怪しげな住民と事件の多発している田舎の町を訪問することになるのです。
 続いてゲームのルールを紹介。大まかなルール部分は、FFシリーズのような一般的なゲームと似ているので、遊びにくくはないと思います。
 気力ポイントと生命ポイントがFFシリーズでいう、技術点と体力点と思えばわかりやすいでしょう。戦闘ルールも似ています。他には、文献などを読む場合に必要な知性ポイントに、消費することで一時的に他の能力を強化できる経験ポイント、ゲーム中に加算していき10ポイントを越えた時点で主人公が発狂してしまう狂気ポイント、これら全部で5つの能力とわずかな所持品管理が必要です。

 それでこのゲームブックのどこがそんなに死にやすいかというと、大きく2つの理由があるのです。
 まずはクリアが可能な選択肢が、結構限られていること。ノーヒントでほぼ一本道の正解ルートの展開を踏み外すと、一見まだまだ先に進めるように見えても、唐突に現れた車から銃撃されたり、主人公が絶対に勝てない化け物に襲われたりして、すべて遅かれ早かれゲームオーバーになってしまうのです。
 まあ、これはホラーがテーマの作品だから、ある程度は仕方がないと思います。不条理な難しさも演出の一種ともいえますし、中盤でシュリュズベリィ博士にさえ出会うことさえできれば、半分はクリアできたも同然ですから。
 問題はもう一つの理由、クリアの成否に関わるような重大な選択肢の一部が、読者の意思とは関係なくサイコロで決められてしまうという点です。(本書のルール説明では、これは“ギャンブル”という立派なオリジナルルールだそうです)
 これは、かなりストレスがたまります。
 運試しや、ある行動の成否判定や戦闘などでサイコロ運が影響するならわかります。
 しかしこの作品ではそれだけではないのです。例えば、見知らぬ老人が二人の男に襲われている所に遭遇した場面。ここでは老人を助けるか、見て見ぬふりをするかの行動の分岐が、サイコロを振って7以上がでるかどうかで決まってしまうのです。普通なら、ここは読者の意思で選ぶところでしょう。
 「モンスター誕生」のように演出に利用している例外的な作品はともかく、これはゲームブックの最も基本の面白さを捨てているとしか思えません。
 クリアに必須なルートに、こういった場面が数箇所あるので、最善の選択肢を選んでいてもクリアできるかはサイコロ運で決まってしまいます。おかげで真面目にサイコロを振って遊ぶ気が失せたので、途中から分岐小説のように読むことにしました。

 こういったゲーム性の問題点は別とすると、両生類のような顔をした“インスマス面の住民”の存在や、怪物は絶対に勝てない強さの生き物ばかりという設定など、面白い描写が多い作品ではあります。巨大な水槽から魚人間のような化け物が登場したときは、チェンソフトから発売されたSFCの「弟切草」を連想してしまいました。
 ウォーロックの書評では、クトゥルー神話をベースにしているなら、ゲームオーバーにいたる描写に、もっと力を入れて欲しかったとか書かれていましたが、私は先程も書いたように原作のクトゥルー神話を読んだことがないのでよくわかりません。
 エンディングは尻切れトンボというか、なんとも奇妙な展開でしたが、クトゥルー神話を読んでいる人ならどう感じるのでしょうかね。


2006年02月07日(火) トラブルくらぶ事件ファイル 放課後のキス泥棒(沙藤いつき/双葉文庫)

 ゲームブックといっても、内容は千差万別。例えば鈴木直人の作品と、ブレナンの作品はどちらも名作でも、その内容はまったく別のシステム、別の面白さに包まれています。
 一般の小説でもそう、良くできた純愛小説と怖いと評判のホラー小説、その面白さに優劣をつけることは困難です。それはまったくジャンルが違うからです。もしかすると怖がりな人なら、純愛小説に満点の評価をしても、ホラー小説には0点の評価を下すかもしれません。まっとうな比較は不可能でしょう。
 ただし、同じジャンル、同じ冒険小説というジャンル同士ならある程度は、比較して評価できると思います。鈴木直人は双方向性などのゲームシステムの妙で、ブレナンはゲームブックという形態を生かしたユーモアの妙で、それぞれトップクラスの作品になっているといっていいと思います。

 そしてゲームブックには、少女小説をベースにしたゲームブックレーベルがありました。双葉文庫のペパーミントゲームブックシリーズです。
 今回紹介する「放課後のキス泥棒」は、「オリーブたちの危ない放課後」(2003年02月25日の冒険記録日誌を参照)の続編となる作品。
 私立中学校を舞台にトラブル解消研究会、略してトラ研のメンバーたちが、学園で起こった事件を解決するというお話しです。
 今回の事件は、女子学生にキスをする謎の仮面男を捕まえるという、なんとも気恥ずかしい事件なのですが、完璧な男の葵様をはじめ、ちょっとやんちゃな森下君、男勝りの天王寺桜子、大食いの小林などなど、前作で登場した個性的な登場人物たちが今回もバンバン活躍してくれます。
 しかもここは重要なのですが、ゲームバランスが非常にいいのです。ストーリーは大まかには一本道ですが、中規模程度の別々のイベントに分岐することは結構多く、フラグの管理が徹底されています。選択肢に理不尽なものはないので、考えて攻略すれば一度目の挑戦でもクリアは可能です。だけど考えなしで進めると、ゲームオーバーになっちゃいます。
 SOSチェックなるものがあって、ソーサリーのリーブラのように、追い詰められても一度だけ救済処置をしてくれるシステムになっているのが、また親切です。

 ネタバレをすると面白くないのでストーリーの詳細は書きませんが、前回はただの脇役だったあの彼女が終盤でヒロイン格に急上昇するのはびっくり。前作はちょっと後味の悪いところもあったけれど、今回はとてもさわやかで少し切ない、まさに青春小説といったラストが待っています。
 もちろん、峰不二子なみにしたたかな橘雅は、あいかわらず男子学生を手玉にとっていて笑わせる。展開しだいでは意外な人物が、女装したりと笑える要素も入っています。つまりストーリーの面白さも合わせて、小説としても普通の少女小説以上のクオリティがあり、読ませる力をもっているのです。

 私の中ではこの「トラブルくらぶ事件ファイルシリーズ」は、ペパーミントゲームブック界のソーサリーと心で呼ばせてもらっています。
 ただ、少女小説なんてジャンルそのものに興味がない人には、この作品を見ても表紙だけ見て鼻で笑って終わりかもしれません。実際、発売当時からペパーミントゲームブックは、ゲームブックの衰退期と重なっており、あまり本屋で見かけることがなかったそうで、お世辞にも有名な作品とは思えません。
 TVゲームや映画でもよくありますよね。購買層が合わなかったとか何かのタイミングを逃してしまったとかで、あまり人に知られることのなかった不遇の名作って。
 でも、せめて私だけは「放課後のキス泥棒」は名作として確かに存在したんだよ、ということを記憶に残すために、ここに書いてみました。


2006年02月06日(月) 犬のプチ厄年(奥谷道草/白夜書房)

 クロスワードランドのはみ出しゲーム、2006年3月号の作品です。
 主人公は迷子のワンちゃん。町の中をさまよいながら、目的はずばり家に帰り着くことです。う〜ん、実にシンプルだ。
 シンプルな方が遊びやすいので、私は好きですね。双方向システムで、町中の道路を歩いてヒントを求めていくスタイルは、はみ出しゲームではお馴染みです。
 それで遊んでみた実感ですが、丹念に町の地図を書きながらゲームを進めていくと、割と簡単にクリアできました。逆に今回の謎解きは、完成した地図を見て考えないと解けない謎が2つもあるので、地図なしではクリアは不可能とも言えますが。
 この町の構造もわかりやすく、地図は簡単に作成できると思いますし、今回は特に謎解きにつまる箇所もありませんでした。クリアまでに30分くらいかかったかな。
 町にはいろんな匂いが漂っていたけど、あまり通行人もいなくて少々寂しい雰囲気。最後のあたりの展開は、何かせつないような気持ちにさせられます。そっか、主人公は捨て犬だったんだってね。
 全体にさっくり進められる普通の作品ですが、クロスワードランドの購買層を考えると、これくらいがみんなが楽しめる丁度良い作品なのかもしれませんね。


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