冒険記録日誌
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2005年02月28日(月) シャーロックゲームズ─死を呼ぶ音楽─(奥谷道草/白夜書房)

 2001年3月号のクロースワードランドに掲載されたはみ出しゲーム、シャーロックゲームズ編です。
 知らない人に説明するとシャーロックゲームズとは、名探偵シャーロックゲームズとして、事件を解決すべく活躍する推理ゲームブックとなっています。以前は3ヶ月に1回の割合で、このゲームズ編が掲載されていました。
 ゲームズはゲームの舞台のマップを見ながら、その場所に対応するパラグラフに進んでは情報を収集するのがゲームの基本。
 よくあるパラグラフ総当りで進行していると、ゲーム中の登場人物が推理して勝手に事件が解決してしまうようなゲームブックとは違って、読者が自力で推理しないと永遠に解決しません。みかけによらず本格派なのです。
 最近のクロスワードランドはこのゲームズの掲載がなくなって、少々寂しいですね。
 
 さて、本題に入りましょう。
 この事件は真新しい音楽ホールで、コンテストの練習中に優勝候補の一人がステージの傍の準備室の中で銃撃されて殺されるという事件が発生したのです。音楽ホールは緊急封鎖され、名探偵ゲームズが登場するというところからスタートします。
 容疑者は同じように練習をしていたコンテストの出場予定者達。
 彼らの大半は、殺人の時間は控え室やらにいたために、狭い空間にもかかわらず捜索しても聞き込みしても目撃者がいません。
 数少ない証言は、ゲームズに依頼した山田氏が客席にいて、銃撃がしたとき、ステージに降りていた幕の中央付近で女性の悲鳴があがったこと。
 そして、そのステージにいた2人の響姉妹の証言「顔は見えなかったが、男が走り去っていった」ということくらいです。
 さらに調べると、コーヒーに睡眠薬が混入されていたことと、事件の前後に音楽ホールを出入りした人間は、いなかったことが判明します。それから容疑者の中には怪しい言動をする人間もいますが、いずれも決定的な証拠がありません。
 怪しいのは、響姉妹の証言に登場する男が見つからないこと。響姉妹が犯人で嘘をついているという可能性もあるが、今のところ「銃撃がしたときステージ中央から女性の悲鳴があがった」という山田氏の証言が、響姉妹のアリバイになっています。被害者はステージ端の準備室で殺されていましたから。
 うーむ。
 なにかのトリックがこの殺人事件には、仕掛けられている気がします。
 もう一度調べると壊れたラジオという、場違いなものが意味ありげに転がっていました。いかにも「ヒントですよー」といいたげです。

 うーむ。

 ・・・。

 降参。


 答えを見ると、うわっ、そんなトリックがあるの?!という内容でした。
 動機や犯人の目星はかなり序盤から出来ていたので、惜しいと言えば惜しいですが、トリックを見破るほどの発想が出来なかったので探偵失格です。
 犯人を追い詰めるには、たった一つのトリックに気がつくかどうかにかかっている。この作品はそれが全てという感じでした。


2005年02月27日(日) 朝のアドベンチャー(奥谷道草/白夜書房)

 クロスワードランド2005年3月号のはみ出しゲームです。
 酔っ払って家に帰った翌朝、ゴミを外に出しに行くというのが今回の冒険の目的です。
 すんごく日常的な内容ですね。しかし立派に冒険になっているところが面白い。
 まず冒険の日はとても寒い日らしく、主人公が家を移動するたびに寒さポイントというのが、加算されていくようになっています。この寒さポイントには、限界点というのが設定されており、ポイントが超えると我慢できずに電気毛布のあるスタート地点に戻ってしまうのです。
 最初はこの限界点が少ないため、行動できる範囲が非常に狭いのですが、主人公が服を着替えたり、顔を洗ったりすることで、少しずつ限界点が増えていきます。
 このあたりは、まるでコンピュータRPGで経験値を貯めて成長させていくような感じで、やがてゴミ袋と鍵を装備した主人公は、いざ玄関へ突き進むという流れになっているわけです。
 しかし私の場合、謎解きが解けなくて玄関のカギが入手できず(玄関はオートロックだそうです)。ウロウロするうちにゴミ収拾車の到着に間に合わないというバットエンドでした。残念。
 このゲームにあえて注文をつければ、「南に玄関があって、廊下の西に扉がある──」という表現だけでは感覚がわかないので、エンディングに書いてあった家の見取り図くらいは最初から見せて欲しかったですね。何といっても自分の家なんだし。まあ、ゲームブックというのは遊び方が自由だから、読者の判断で最初に地図を見てから遊んでも別に良いわけですが。
 とはいえ、主人公は泥酔した後のために自分の家の中がどうなっているのかよく思い出せない、という設定はお見事でした。これだけ辻褄をあわせて冒険の舞台を整えてしまうのは素晴らしいや。


 余談ですが、以前に私は「酔っ払って帰宅したら家は真っ暗。家族を起さないように、忍び足で暗闇で足元に転がる玩具を回避し、豆電球をつけ、着替えて布団にもぐりこめるか」というミニゲームブックを作っていたのですが、いつか時間ができたら最後まで完成させてみたくなりました。ゲームブックとパズルは作成するのも案外楽しいですからね。


2005年02月26日(土) お年玉の神事(奥谷道草/白夜書房)

 クロスワードランド2005年2月号のはみ出しゲームです。

 時はお正月。白夜神社で恒例のお年玉の神事が執り行われました。
 それは巨大な円柱によじ登って、あちらこちらにぶら下がっているお年玉を手に入れるというもので、かなり体力が要りそうな神事です。
 今回の仕掛けはゲームを始めてからページを20回めくったら、手が疲れてズルズルと柱の根元まで降りて終了してしまうようになっているので、1回のプレイ時間が非常に短いことです。気軽に遊ぶにはいいですね。
 柱にぶら下がっているお年玉の中身は、宝くじやおモチというオーソドックスなものだけでなく、香水やらブランドもののバックもあります。クロスワードランドのメイン読者が女性だということを、久しぶりに再認識しましたよ。
 お年玉には品物によって、それぞれお年玉ポイントというものが設定されています。一度に全てのお年玉を手に入れることは不可能なので、いかにして価値の高いお年玉を拾っていくかが勝負となるわけです。
 ゲームが終了したら、お年玉ポイントの合計によって、今年の吉凶が判断されます。最初の挑戦でも“吉”ランクくらいなら達成できるかもしれませんが、それ以上を求めるなら、何度か挑戦してお年玉の配置を覚えたうえ、ちょっとした謎かけを解かないと最高のお年玉が手に入れられません。
 「入り口は簡単に、やり込む人には難しく」というのはゲームブックに限らない、良いゲームの条件ですね。
 私は4回目のプレイで、もっとも凄い“超吉”となりました。コメントは「インチキしてしまったか、奇跡の起せる神様です」とのこと。
 ばれたか!


2005年02月25日(金) サンタ苦労す(奥谷道草/白夜書房)

 クロスワードランド2005年1月号のページ欄外に掲載されているはみだしゲームです。
 1月号といっても発売時期は昨年末だけに、クリスマスを舞台にしたお話しとなっています。サンタクロースのお手伝いとして、トナカイが曳くソリで移動しながら、子供たちの家々にプレゼントを配るのが今回の使命なのです。
 さてさて、もちろんこの作品にも仕掛けがあります。ソリを曳くトナカイは2頭おりまして、それぞれトーナとカイという名前がついています。言葉をしゃべることが出来る賢いトナカイなのですが、トーナが「南にいこう」と言えばカイが「いいや、東に行くべきだよ」といつも仲たがいをするのです。
 片方のトナカイの言うことばかりを三回続けて聞くと、もう片方のトナカイが拗ねて仕事を放棄しようとするので思うように進めない、つまり迷路パズルになっているのですね。昔のはみ出しゲーム「酔っ払ってゴー!」に内容が近いかな。ちなみにサンタのソリなのに、空は飛べないようです。
 そんなわけでトーナとカイのそれぞれが勧める進路まで記録しながらマッピングをしないと、なかなか全ての家にたどり着くのは困難だと思います。逆にあまり凝った謎かけは無かったので、丹念にマッピングさえしていけば必ずクリアできるはずです。
 最後はクリアまでにかかった時間によって、ご褒美がもらえます。私は50分以内にクリアできたので、幸運10%アップだそうです。ありがたいですね。

 ああ、現世でも幸せがほしいな。


2005年02月24日(木) 聖神伝記エクステリア(高野富士雄脚本・・・と思う/ポニーキャニオン)

 以前の冒険記録日誌でも紹介した、地底階層王国のゲームブック風CDと同じシリーズです。こちらの方が第一弾ですね。トラック番号をパラグラフ番号代わりに、サーチ機能を使ってCDドラマを聞いて行く作品なのです。
 聖神伝記エクステリアというのは、たぶん完全オリジナルのストーリーじゃないかと思います。原作者や脚本家の名前がどこにも記載されておらず、双葉ゲームブックと関連があるのかも一見したところではわからないのですが、中身を聞いてみると高野富士雄作品の代表的キャラクター“ねこまんまのポチ”が、チョイ役でしっかり登場していました。
 パッケージをみると、なにやら見知らぬ若い男の写真がデン!と載っていて、「草尾毅主演、オリジナル・ストーリーCD」と書かれた帯がついています。
 写真の人が草尾毅らしいのですが、このパッケージだとこの声優さんのファン以外は誰も買わないような気がして、商売としてよく成り立ったなと思えてしまいます。

 物語の内容ですが、いわゆるドラゴンクエストにでも出てきそうな一般的なファンタジーの世界が舞台で、兄2人(ローブ、ロルファ)と妹(ルーファ)の3人の兄弟が旅立ち、長い眠りから復活した魔物ディバーンを退治するというストーリーです。
 ゲームとしては、第二弾の地底階層王国CDより分岐の幅が多いみたいです。ルーファも可愛い妹タイプでヒロインとしては申し分ないし、全体的には悪くないのです。しかし、物語や設定がステレオタイプなのが物足りません。
 地底階層王国CDでは魔王ルシファにも人間を痛めつけるだけの事情があって、考えさせられる所があったのですが、こちらの魔王ディバーンは単なる悪役です。狡猾ではありますが結局は退治される為だけのキャラでしかないので、存在感が薄いのです。
 他に妹のルーファは、兄達と血がつながっていないことが途中で判明するのですが、兄2人と妹の3人兄弟という設定ではこの展開が一番ありそうなパターンに思えますしね。
 いいのか悪いのか、意表をつくところとしては、こちらの作品は基本的にシリアスなのに所々ギャグみたいになる展開が結構多いことです。例えば魔王の部屋まであと一歩というときに、扉を開けるとなぜかラーメン屋だったりするシーン。


ラーメン屋「へいらっしゃい!」
ロルファ「ズズーーーーーーーッズズッズーーーーー。あーーーー美味かった」
ナレーション「(冷静な声で)扉の先はラーメン屋だった。残念ながらこの選択は間違っていました。もう一度最初からやり直してください」
ローブ「チェーシューはあげないよ」

END



って、言われてもなぁ・・・。


2005年02月23日(水) 暗殺ゲーム(スーパー頭脳集団アイデアファクトリー/桐原文庫)

<プロローグより要約>
 主人公はどこの組織にも属さない超A級の一匹狼スナイパー。
 CIA (アメリカ中央情報局)だろうが、KGB(ソ連国家保安委員会)だろうが暗殺と秘密工作の依頼があれば、確実に仕事を果たしてきたのだ。
 ある大仕事を果たしたばかりの君は、エーゲ海に浮かぶ小島にある秘密のアジトで、休暇を楽しんでいた。シャワーを浴びてサッパリした後、前の仕事で持ち帰って謎の手帳を見ていた君は、いきなり何者かに狙撃された。
 辛くも危機から逃れた君だが、休暇は中止だ。なにかとんでもない陰謀に巻き込まれたらしい。まずは敵の正体をつきとめなくてはならないだろう。
 

 本作品はジェームズ・ボンドばりのハードボイルドな活躍が楽しめる作品です。
 ルールは、体力点、所持金、武器の弾薬数、特殊装備の4つが基本。今回は一つずつ説明してみます。
 体力点は敵の攻撃に耐えられる力で、結果的に戦闘の強さとなります。戦闘ルールは敵、自分それぞれにサイコロを振ってあげます。そして出た目をダーツ表という結果表に照らし合わせて、そこで多い数字が出たほうが相手にダメージを与えることができるというものです。(素直に「振ったサイコロの目が多いほうが勝ち」の方が簡単で良いと思うのですが・・・)
 所持金は持っている現金の額。主人公はすでにスイス銀行に巨万の富を預けている身分ですが、裏社会では現金が一番信用されています。また、正体不明の敵から逃亡中の身なので、銀行からお金を引き出す機会が限られているために使用できる額には限度があるようです。もちろん金の用途は、ワイロや武器の補給、傷の治療などいろいろです。
 武器の弾薬数。まあこれはあんまり意識しなくても大丈夫だったような。ただ、足元を見られているのか、弾丸一セットに数万ドルとかバカみたいに高い値段が平気でします。
 特殊装備は、毒物発射万年筆とか、極細ピアノ線を仕込んだ腕時計、矢の飛び出すカメラなど、面白い10種類の小道具の中から冒険の始めに3つを選んで持っていけます。(でも総パラグラフ数が202しかないゲームブックだけあって、まったく使用する機会のない小道具もあるみたい)

 さて、スーパー頭脳集団アイデアファクトリー特有のそっけない文章も、この世界に合うのか今回は気になりません。
 夜のバーに入って、カウンターでドライマティーニを一杯。そこに擦り寄ってくる情報屋。二言三言会話をすると、札を置いて立ち去っていく。スナイパーとは、このように寡黙に渋く決める存在でなくてはならないのです。もちろんトレンチコートは必需品です。
 ホテルの部屋にガス爆弾を仕掛けられたり、ヒットマンが襲ってきたり、主人公はかなり本気で狙われているよう。ならばこちらもと、情報屋から情報を集め、待ち伏せする黒づくめのスーツ姿の男どもを瞬殺し、敵の本拠地の一つになっているカジノに大胆にも堂々とのりこんでいきます。敵のゴリラみたいな用心棒に頭をぶっとばされるとか、なかなか展開も厳しくなったのですが、何度か再挑戦していると、事件の背景がだんだんわかってきました。
 どうやら主人公はCIA、KGB、MI6、などを始めとする世界でも主だった全て(6つ)の裏組織から狙われているようです。その理由も説明されていましたが、それでもかなり無茶な事態ですよね。
 第一、そんなに事件が大掛かりになってしまったら、総パラグラフ数が202しかないゲームブックでどう収拾をつけるつもりでしょうか。
 
 そう思いつつ先に進めると、なんと6つの組織のリーダーが一同に集合しているところに、予め用意した仲間と武器を使って襲い掛かる展開になったのです。
 6人のボスは主人公自らが戦って順番に暗殺していきます。いや、もう暗殺じゃないだろ、これ。(連戦でクリアが厳しそうだが、今回は全て戦闘に勝利したことにして遊んでいたので、ゲームバランスは未確認)
 主人公を殺そうとした組織のボスがいなくなったから、これで万事解決。すべてが終わった主人公はエーゲ海に浮かぶアジトの小島に戻って、事件のことを報道しているニューヨークタイムズを読みながら、マティーニを飲み干します。
 うーん。最高に力技なエンディングです。さすがはスーパー頭脳集団アイデアファクトリーですね。素晴らしい。


2005年02月22日(火) 2002年暗黒霊の復讐(スーパー頭脳集団アイデアファクトリー/桐原文庫)

 またまたスーパー頭脳集団アイデアファクトリーですが、彼らが本領を遺憾なく発揮したというべきか、とにかく設定を読むだけでクラクラしてきそうな作品です。
 カバー裏にストーリーが載っているので、抜粋してみましょう。


 暗黒霊の復讐がはじまった!!銀河戦士である君に、その野望をことごとく打ち破られた恐怖の邪神〈暗黒霊〉は、復讐の機会を密かに狙っていた。そして、またしても地獄の底から悪魔を復活させた。
 蒼き狼の子チンギス・ハーンだ!! 大草原を疾駆し、その生涯に「国を滅ぼすこと40、朽木を抜く」がごとく 大帝国を倒し、数百万の人間を殺し、チンギスの行く所、殺戮と破壊の荒野が残るのみ… といわれたチンギス・ハーンとその配下の遊牧騎馬軍が、君の愛するレイアを誘拐した。 緑の瞳輝くレイアが君の助けを待っている!!さ、銀河戦士たる君よ!! いよいよ最後の決戦の時が近づいた。君はチンギス・ハーンを倒し、レイアを 助け出したのち、暗黒霊の息の根を止めることができるか!? 今、光と闇の交差する最後の戦いがはじまる。


 ・・・・・・。
 宇宙を舞台にしたSFっぽい世界に、なんで草原を馬で駆っていたチンギス・ハーンが登場するのだろうか。この関連性が私のような凡人にはまったく理解できないのですが。
 思わずチンギス・ハーンが宇宙戦艦に乗船して攻撃してくる様子を連想したのですが、いや実際に巨大宇宙戦艦にチンギス・ハーン軍の本拠地があって戦闘になったりもしますが、地上では馬(のロボット?)に乗って勇敢に戦う騎馬民族のようです。
 しかし、彼ら騎馬族はチンギス・ハーンも含めて最初から最後までまったく喋らない非人間ぶりで、非常に味気ないです。せめて捨て台詞の一言くらい言ってくれてもいいのに。
 そもそもその彼らを蘇えらせた暗黒霊って、一体何者でしょうか?もしかしたら前作にあたる作品があるのかもしれませんが、私は所有していないので謎です。
 とにかく説明によると暗黒霊は、異次元空間の反宇宙という、とんでもないところに生息しているそうです。反宇宙は、反陽子、反中性子、陽電子で構成されている空間のため主人公が無防備に入ろうものなら、一瞬で消滅してしまう恐ろしいところらしいですが、聖杯の水を飲めば大丈夫というあたり、まったく理解に苦しむ物理学が働いているようです。
 それで極めつけはエンディングです。「宇宙が光に満ち溢れ、星々の間を五月の風が吹き抜ける」という想像できない光景もさることながら、恋人のレイアを救い出した主人公は、「宇宙のアダムとイブとなって新しい世界を築く一歩を踏み出した」となっています。
 宇宙は別の次元空間に変わってしまったのでしょうか?ともかく宇宙にまで影響を与えるスケールのでかさと、誘拐された恋人を救い出すという伝統的な冒険を同レベルで融合させる、スーパー頭脳集団アイデアファクトリーの素晴らしさに拍手を贈りたいと思います。


2005年02月21日(月) 大魔女の秘宝(スーパー頭脳集団アイデアファクトリー/桐原書店)

 えっと、主人公は旅好き冒険好きフシギ大好きの少年だそうですが、何の因果か、大魔女の秘宝を捜す旅にでるという内容のゲームブックです。
 そして、この秘宝は邪悪な大悪魔も狙っていたのです。というのもよくある展開。主人公は冒険中に四人の魔女に会って、精霊の力を増幅させていき、悪魔に対抗していくというのも、まあありがちです。
 しかし最終的には大悪魔ひきいる本物の悪魔の軍団を相手に、たった一人で三日三晩も戦い続けるという、デビルマンも真っ青のクライマックスは只事でありません。いくら精霊力の助けがあるとはいえ、ハルマゲドンみたいな戦いに一人で勝ってしまうのだから、もはや主人公も人間とはいえませんな。

 このあまりにも壮絶な展開の前には、ゲーム性もなにも語ることは無いような気もしますが、一つだけ特筆すべきキャラクターにメフィストという悪魔がいます。
 彼は冒険開始早々から主人公につきまとって、死んだら魂を譲る事と引き換えに冒険を手助けしようと申し出てきます。この誘いを断る事も可能ですが、契約をした方が実に面白いのです。ひょうきんで憎めない性格のうえ、大抵のピンチには登場して助けてくれるなど、実に甲斐甲斐しく主人公に尽くしてくれます。ただ冒険は楽になるのですが魂を売り渡しているのは確か。善の魔女などから悪魔と契約したことを非難されると、このままで大丈夫かなー。と不安になりました。
 このメフィストとの契約の結末は「ああ、そうきたか!」という感じで結構好きです。興味があれば、本書を入手して確認してみてください。
 でも本書で私が面白いと思ったのは、このメフィストの存在だけですけどね。


2005年02月20日(日) 君はエスパー(スーパー頭脳集団アイデアファクトリー/桐原書店)

<プロローグより要約>
気がつくと君はただっぴろい大聖堂にいた。
「エスパーの大聖堂へようこそ!」
静かな、だが重々しく体に響く「声」が響いてきた。
そしてその“声”は、君はエスパーなのだ。と告げたのだ。
水の世界、砂の世界、地底世界、エーテル世界、の四つの世界に赴いて、四つの霊宝の封印を解くこと。それが君に与えられた使命なのだ・・・。


 まあ、こんなプロローグで始まるゲームなのですが謎の声によると、なぜ四つの霊宝の封印を解く必要があるのか気にしてはいけないそうです。それは使命が達成された時に明らかになるだろう、とのこと。ずいぶん気をもたせますね。
 次にルールを読んでみますが、デカンが位置する座を知る12星座表だとか、デカンの基本サイパワーと座の影響など、難しそうなものを見ながらプレイする必要があるようで、取っ付きが悪い内容です。守護星のことをデカンって書いたり、雰囲気を出そうとして、説明文もわけがわからくなっています。「本来の座は衰退の座を打ち消し、増幅の座に転化させる。また、対立の座と相殺される」とか、熟読しないと暗号のようです。
 とにかく冒険を始めましょう。この作品はプロローグに名前の出た、四つの世界のどれでも好きな世界から始められるのですが、どの世界も非人間的な生き物ばかりが生活する、妙に現実感に欠けた不思議な世界という感じ。文章のそっけなさもその印象を強めていますが、単に表現力が足りないせいなのか、作者の意図によるものかは微妙なところです。
 そんなこんなでゲームを続けたのですが、クリアするのは結構大変で苦労します。繰り返してプレイするほど熱中できず、さりとて謎の使命の結末は気になるので、しばらくもんもんとした後、今回はエンディングだけ読むことにしました。
 すると──。(ネタバレが嫌な人は下を読まないで下さい)














主人公「幻覚!じっさいにぼくは水の世界や、砂の世界に・・・あれが全部幻覚だったって・・・」
謎の声「そうだ。本当の使命は、君の超能力を自覚し、磨き、開発することにあったのだ。君はこの大聖堂から一歩も出ていない。全ては幻覚だったのだ」
主人公「なぜ・・・」
謎の声「まさにそのことだ。君はすっかり超能力を自分のものにした。さあ、目の前に扉がある。君の真の使命は、その扉の外にあるのだ・・・・・・」

 さすがは、スーパー頭脳集団アイデアファクトリー。
 あれだけ大変な冒険が、全て夢オチですか。
 ふ・ざ・け・る・な・って思わない、心に余裕がある人だけが楽しむべき作品ですね。


2005年02月19日(土) バルデガードのお守り(マドリーン・サイモン/世界文化社)

 ハーレクインなゲームブック。愛のアドベンチャーシリーズの一つです。
 今回の主人公はドルイドの修行をしている少女、グウィンです。ドルイドの最高位だった父は、主人公が幼い頃に戦争を指揮し、その時受けた傷が元で死んでしまいました。今は同じくドルイドの叔母さんと妹の3人で、質素ながら静かな生活をしていました。
 ある日、廃墟で妹が怪物にさらわれてしまいます。叔母さんはあなたに家に待っているように言い含めると、妹を救出に出かけましたが帰ってきません。そしてあなたは・・・というお話です。

 ハーレクインなだけあって、今回は美しい吟遊詩人の男が途中から味方として登場。いつの間にか主人公が恋にときめいてしまっているのは、このシリーズの基本ですね。
 でもドルイドの修行をしただけ主人公の自制心が強かったのか、他のハーレクインゲームブック「運命の巻物」や「幻影の島」に比べると、恋愛要素がちょっと薄いかな。
 初めて遊んだときは、吟遊詩人の男とは序盤ですれ違っただけで、後は終盤まで彼と再会しない展開だったので、エンディングで妙に仲良くなっているのが不自然に思えてしまいました。別の一緒に冒険をするルートの場合でも、キスをせまられたりと、ハーレクインっぽい展開はいくつかあるものの、情熱的な恋に酔ってしまうようでもありません。
 全体的に不もなく可もなく、オーソドックスなファンタジー小説みたいな内容でまとまっています。分岐のみで難しいルールは一切ありません。選択によってストーリーはいろいろ変化しますが、一回のプレイ時間はその分だけ短く、割とあっさり目かも。
 あえて言えば地味な“ドルイド”という存在に焦点が当たっているストーリーは興味深いのですが、このシリーズに期待するのはやはり恋愛要素、それもとびきりロマンティックで素敵な恋のドキドキ嬉し恥ずかし物語だと思うので、やっぱり物足りません。
 妹の命が危ないのにそれどころじゃないだろ、ありえねー。って突っ込みながら読むのを楽しみにしていたのに。(笑)

 しかしよく考えたら、作品に突っ込むところがないからケチをつけるというのも、私の方が無茶なこと言ってますね。
 最近は歪んだ楽しみ方をするようになってきた山口プリンでした。 


2005年02月18日(金) 魅惑のすし博物館(奥谷道草/白夜書房)

 クロスワードランド2004年12月号のページ欄外に掲載されていましたミニゲームブック(通称、はみだしゲーム)です。
 はみ出しゲームの感想なんて随分久しぶりで、何月号まで感想を書いていたか忘れちゃっていたよ。この作品も遊んだのはかなり前だしなぁ。今回は簡単に感想を書こう。うん。
 えーと、このゲームの内容は回転すし屋にいって食べること。目的はなるべく沢山の寿司を食べることです。ルールとして同じ寿司ネタは一度しか食べられません。沢山食べられると満足します。ああ、美味しかった。

 以上。

















 あ、いてて、石を投げないで。
 いや、こういっちゃうと簡単なのですが、必ずとんでもない仕掛けがあるのが奥谷作品ってなもんで、この回転すし屋は普通じゃありません。
 なんんとこの店では、タコ専門、タマゴ専門と寿司ネタごとに、握りの専門を雇って、寿司が回らずに寿司職人が「へい、らっしゃい!アナゴだよ!」「イカはいかがっすか」「煮ハマグリです。江戸前の定番だよ」などと言いながら、カウンターごとくるくる回転しているのです。想像するとかなり笑えますな。
 寿司職人に頼んで握ってもらった寿司を食べている間にも、カウンターは3人分、5人分と回転して寿司職人が通過していきます。先程も言ったように、同じ寿司ネタは食べてはいけないルールで、目の前の寿司職人をパスするのは3回までという制限つきです。つまりなるべく多くの寿司を食べるため、パスするタイミングを見つけ出すパズルゲームになっているわけです。
 攻略法はまず、どんなタイミングがいいかなんてヒントがないものですから、一回目の挑戦は勝負を捨てて、寿司職人の並びをメモすることが重要です。二回目以降のプレイでメモを頼りに寿司の王様を極めましょう。

 実のところ、なにも考えずに寿司を食べていても18貫近くもの寿司を食べられます。正直言って私の場合は、1回遊ぶと寿司の王様を目指すことなんて、もうどうでもよくなりましたね。
 いや、この寿司の食べる描写がいかにも美味そうに書かれているんですよ。奥谷氏って雁屋哲(美味しんぼの作者)なんかより、味のコメントが自然でボキャブラリーが豊かじゃないだろうか。二回目を遊ぶより、思わず本物の寿司を食べに行きたくなったりして。
 私の財力じゃ、やっぱり回転すし屋なんですがね。(ーー;


2005年02月17日(木) 所さんのまもるもせめるも アクアク大冒険(所ジョージ/双葉文庫)

 有名タレントの所ジョージが主人公となっているゲームブックです。
 当時は流行だったらしく、有名人が主人公というファミコンゲームなんかは、結構多かったです。例えば「ラサール石井のチャイルズクエスト」や「田代まさしのプリンセスがいっぱい」なんて今じゃ想像もできない企画ですね。
 それにつられるようにゲームブックにも「プロ野球?殺人事件!」や「さんまの名探偵」なんて有名人ものが登場したわけですが、そんな中でも本書はすごいですよ。なんといっても著書が所ジョージその人ですからね。表紙カバーでは所さんの写真がおどけたポーズで写っています。全て一人で製作したとは思えませんが、作家以外の有名人が製作に携わったなんて、ゲームブック界では唯一の作品かもしれません。ファミコンなら「たけしの挑戦状」みたいなもんでしょうか。

 ストーリーとルールを紹介しましょう。
 主人公の所さんは、ゲームの中でも現実と同じく芸能人をやっています。ある日、南国のアクアク島から3人の人間がやってきました。所さんが自分の荷物と間違えて持って帰ってしまったアクアク島の秘宝を取り返しにきたのです。
 その秘宝の名前は「火吹き山の目覚まし時計」。(うーむ。ゲームブックファンなら、ピクッと反応してしまいそうな名前だ)
 この秘宝は7つのパーツで構成されていて、それを知らなかった所さんはお友達達にバラバラにプレゼントしてしまっていました。こうして所さんは、秘宝を回収する為に東京中をイヤイヤ駆け回るハメになるわけです。しかも「火吹き山の目覚まし時計」を奪って悪用しようとDr.ジョンなる悪い科学者も邪魔をしてきます。
 ルールとしてメモが必要なのは、視聴率、アイテム、所持金、記号チェックの4つです。面白いのは視聴率の数値で、とにかく傍から見ていて絵になるような格好良い行動をすることで、視聴率がアップします。これが高ければ警備員のいる立ち入り禁止区域も、顔パスで通れるようになるなどゲーム進行が有利になるので何気に重要です。

 私が所さんらしいと思ったのは、この作品の文体。まるで読者に語り掛けるような調子で、所さん独特の話し言葉がそのまま文章になっています。例えばパラグラフ1の一部を抜粋すると「もーお、アタマにくるじゃありませんか。ウチのマネージャーが、どっか行っちゃったんすよ。平田っつうの。このわたしがまじめに働いているというのにっ。まっーたく、どこほっつき歩いてんだか。帰ってきたらしかってやりましょ。所さんはいそがしいんだ。うん。いそがしいといえば、次の予定はえーと・・・・・・。」という感じ。所さんがゲームマスターをしてRPGをやっているような気分に少しなったかな。
 設定や文章がそうだけに、すごく明るくて軽い内容なので(もちろんゲーム性も)、そのつもりで読むと吉。ストーリー的にもどーって、ことはないのですが、愛娘のさやかちゃんがDr.ジョンに誘拐されたところだけは所さん、急に真剣になって「さやかーーー!!!」と叫びながら救出のために車でぶっ飛ばしています。所さんの溺愛ぶりが表現されていますね。
 所さんが好きな人ならコレクターアイテムとしてオススメかな。


2005年02月16日(水) さんまの名探偵 桂文珍殺人事件(三原 治/双葉文庫)

 人気芸能人の明石家さんまが、殺人事件の探偵として活躍するというゲームブックです。原作のファミコンゲームも、当時はそこそこ有名だった記憶があります。
 発売当時のお笑い芸能界の人気者達が実名で次々と登場します。設定の方は少し現実と違っていて、さんまが大物芸能人と喧嘩をしたあげく芸能界から干されてしまい、泣く泣く探偵事務所を開く事にしたというものです。
 主人公はさんま本人ではなく、今井万次郎というアシスタント役です。さんまからはまんちゃんと呼ばれて信頼されているようですが、あてにならないさんまを誘導しつつ、探偵として事件を解決しなくてはならないという可哀想な役柄です。
 ルールは情報やアイテムのチェックと捜査費用の管理くらいで簡単ですが、メモくらいは必要でしょう。

 この作品も「プロ野球?殺人事件!」と同じように、主人公側(というより、さんま)のリアクションが面白いのですが、推理ゲームとしては全然印象に残らない。(^^;
 聞き込み相手も芸能人だから、さんまは脱線し放題。お笑い芸能人らしく、芸で勝負するシーンもありますが、鹿のフン踊りやアミダばばあでバトルってのが、らしいというか脱力するというか・・・。
 事件の方は容疑者の島田紳助も殺され、連続殺人事件へと発展するのですが、そのころには捜査状況なんてどうでも良くなって、その場のシーンだけを楽しむ感じになってしまいましたね。
 イラストは内容とマッチしている絵柄で良いです。
 難易度は超簡単!まではいかず、何度か捜査費用がなくなってゲームオーバーになってしまいました。その場合もゲーム途中からの復活が認められているので、苦労するわけではありませんが。
 でも終盤の展開は不満が残るなぁ。一応ネタバレになるので書かないけど、ギャグだかシリアスだか判断に苦しむ内容で納得できない。笑うところは笑うが、ストーリーはシリアスに、というのが格好良いと思うのだけど。このへんは原作もあるから難しいのでしょうかね。


2005年02月15日(火) プロ野球?殺人事件!30番のドタバタ逃亡レース(勝沼紳一/双葉文庫)

 人気スポーツコメンテイターが、偽札事件&殺人事件の探偵として活躍するというゲームブックです。
 認可をとらなかったらしく、作品中の名前が井川になっていますが、どう考えても、主人公はあの元巨人軍の江川卓です。(そんなわけで日記では主人公のことを江川と書きます)
 それにしても、なぜ江川卓を主人公にして探偵ものなんでしょうか。謎です。

 ともかくプロローグは江川邸の中からスタートです。江川は予定のつまったスケジュール帳をめくりながら、うれっこコメンテイターぶりをぼやいています。しかし何気に自慢になっているという、現実の江川さながらの嫌らしさを発揮していますね。
 そこに家に訪ねてきたのはガイアンツの主砲、タツ(原辰徳のことだね)。彼がもちこんだ謎のトランクから大量の偽札を発見した江川。そこにタイミング良く家に踏み込んできた警察。江川も落ち着けばいいものを慌てて逃げ出してしまい、哀れ警察に追われる身になってしまうのでした。

 かくして江川は、警察につかまらないように身を潜めながら、身の潔白を証明するために情報を知っているプロ野球関係者達の間を、かけまわるのがゲーム本編です。
 この作品の特徴としては、主人公の心理描写が非常によく書かれているのが特徴でしょうか。
 警察から走って逃げるシーンでは「選手時代は適当に手を抜いていたから体力がもたないぜ」とか、聞き込みをしては「やはり、あ・の・ガイアンツの元エースという肩書きが効いたな」とか、追い詰められては「落ち着け、あの空白の1日事件では記者団に対して“みなさん、そう興奮しないで”といった俺じゃないか」とか、江川はいつも身も蓋も無いことばかり考えているようです。
 エイズ患者の話題がでれば「うつったりしませんよね」と顰蹙もののセリフを言うし、情報収集のため女装してオカマバーに潜入するとか、怪しすぎるぞ、あんた。警察に見つかると追いかけっこがはじまって、警棒をビュンビュン投げつけられて体力が減ってしまうし、エンディングではなぜかガイアンツに現役復帰して投げているし、変だよ変。
 面白いんだけど、推理ゲームとしては全然印象に残らない内容だ。(^^;
 
 後書きの作者のコメントを読むと、作者は大洋ファンのアンチ巨人だそうで、あーなるほど。と納得してしまいました。
 しかしネットで検索してみると、原作となるファミコンゲームがちゃんとあるようで、しかも紹介してあったサイトを調べた限りでは、こちらもゲームブック版に負けず劣らず毒をたっぷり含む内容のようです。
 うーむ。こんなのが発売されていたとは、ゲームブックもファミコンもバブリーな時代だったんだなぁ。


2005年02月14日(月) ゲゲゲの鬼太郎(清田充規・吉岡平/講談社X文庫)

 説明不要の有名漫画のゲームブック化作品。
 なんと本書の挿絵は、原作者の水木しげる氏が直々に書き下ろしのイラストを書いています。文体にも微妙にとぼけた感じがして、とてもゲゲゲの鬼太郎らしさが出ていて、雰囲気はバッチリです。
 プロローグでは、ある孤島の村から仙太という少年が街にやってきています。西洋妖怪が襲ってくるので助けを求めに来たのだとか。劇場版アニメにも西洋妖怪が襲ってくる設定ってなかったかなぁ。
 とにかく鬼太郎は、砂かけ婆や子泣き爺、一反もめん、塗りカベなどの仲間達とこの島へ旅立つことになるわけです。選択できる仲間は、当時のアニメ版で活躍していた“つるべ火”を選んでみました。そのせいもあるのかわかりませんが、とにかく一発クリアです。(そういえば“丸毛”を選んでも役に立つシーンがない気がするが、どうなんだろう?それになんで仲間に猫娘がいないのだ?)
 原作でもそうですが注目すべきはネズミ男でしょう。基本的には味方で役に立つシーンもありますが、油断すると金塊を持ち逃げされたり、劣勢となると敵に寝返ったりと、ろくでもありません。ほんとに。そこがネズミ男らしくて良いとはいえ、こいつのせいでゲームオーバーになるとトホホ感が倍増です。
 ルールと難易度はそんなに難しくもなく、大まかなストーリーは一本道。読み物として軽く楽しむくらいが適当かもしれません。ただし、仲間の有無や戦略によって細かい違いは結構あり、バットエンドも多く用意されているので、ゲームとしてもちゃんと楽しめます。

 あえて注文をつけるとすれば、もっと忍び寄る妖怪の恐怖が味わいたかったな、と思いました。日常生活に妖怪が巣食う不気味さとかね。主人公が鬼太郎ではなく、少年の仙太だったら恐怖感が湧いてきたかも。
 もっとも今回の敵は西洋妖怪達だったし、2度目に作られたあの明るいアニメシリーズの方が下敷きのよう(ぬらりひょんが登場したり、会話の中だけですがユメコちゃんの名前が出る)なのでケチをつけることではないかな。
 子泣き爺が敵にタックルしたまま玉砕覚悟の崖にダイビングとか、闘志むき出しで戦う鬼太郎達もなかなかに面白かったので、まあ良しとします。


2005年02月13日(日) 甦る妖術使い(I・リビングストン/社会思想社)

(少しネタバレしているので、遊ぶ予定の人は読まないほうがいいかもしれません)

 究極の理不尽ゲームブック。FFシリーズ第26作目であります。
 何が理不尽って、クリアできないからっす。
 死んで覚えろ的にノーヒントでバットエンド確定の選択肢。技術点7・8は冒険者にあらずってスタンスは、初期を除くリビングストン作品にはよくある話しですが、こいつはさらにひでえです。
 難しさだけならジャクソン作品の“地獄の館”や“モンスター誕生”もありえない難易度なのですがね。この作品はタイトルにも登場する甦った妖術使いさんが凶悪すぎるんです。「ラザック・技術点12・体力点20・特殊能力として2回連続で妖術使いの攻撃が成功したら主人公即死」ってアホかい。特別な対処方法もないし、技術点12・体力点24・運点12の冒険者でも勝てないじゃんよ。こういうのは難易度が高いってより、ゲーム性が破綻しているっていうんだよなぁ。ゲームバランスもへったくれもない。
 ゲームブックブーム当時は、この作品を読んで後期のFFシリーズは難しすぎるなぁと、続いて“奈落の帝王”を読んで変な設定(謎かけ盗賊の存在とか)が多くてもうついていけないや、とFFシリーズを読まなくなったんだよな。うん。

 まあ、そう厳しいことを思ってしまう作品ですが、フォローしておくと世界観はいいです。
 ストーリーこそ、封印が解かれ世界を滅ぼさんとする妖術使いラザックを倒すべし、というオーソドックスな内容ですが、善の魔術師ヤズトロモもしっかり登場するし、途中で出会って冒険を共にするエルフとドワーフの仲間も明るくて会話シーンが楽しくていい。FFシリーズには、ドワーフのキャラと主人公の同行者キャラは、大概悲惨な目にあうというジンクスがありますが、見事にこれを破っていますね。
 それに、かつてラザックを倒した伝説の剣を、骸骨となって湖畔を彷徨っている昔の英雄が今も握っているという設定は、映画のように格好いいです。剣を受け取る場面なんか特にね。
 先日久しぶりに再プレイをしてみたのですが、技術点10の主人公でかなり終盤まで進むことができました。ラザックとの戦闘さえ考えなければ、この作品も「死の罠の地下迷宮」と同じくらいの難しさでしょうか。
 ティラノサウルスみたいな「ガーガンティス・技術点12・体力点24」という無茶な敵が登場しますが、これはアイテムによっては戦闘を避けられます。クリアできる選択の幅も狭いのですが、基本的に一本道のストーリーなので、ジャクソン作品のようにどこの選択肢が間違ったかわからない!ということもないので、何度か挑戦していれば、必ず最善の道がわかるようになります。
 リビングストンらしく、世界の広がりを感じさせる箇所も随所に見受けられます。“運命の森”で登場したドワーフの町、ストーンブリッジが登場するのもそうですが、パラグラフ167番で登場する盲目の老人との会話ではポートブラックサンドの話題が出てきます。彼はアズール卿の怒りを買って目をえぐられてしまったものの、魔法使いニコデマスの計らいで放免されたそうです。
 以前に“マーリンの呼び声”の管理人のセプタングエースさんからメールで教えていただいたことですが、盲目の老人の「古い友人の、治癒師のところへ赴くのです」というセリフは、“雪の魔女の洞窟”に登場した魔法使い「癒し手」を指しているそうで、そうなると本書は3人の善の魔法使いが全て話題にあがった貴重な作品といえますね。
 リビングストン作品ってゲーム性はダメダメですが、こうゆう小説的な魅力を考えるとなにか憎めないんですよね。


2005年02月12日(土) 真夜中の盗賊(G・ディヴィス/社会思想社)

 FFシリーズ第29巻。
 本書は一般的なFFシリーズとは違って、主人公が戦士ではなく盗賊です。そして冒険の舞台は、あのリビングストンの作品「盗賊都市」に登場した港町、ポートブラックサンドなのです。私は「盗賊都市」はあまりやりこんでいないのですが、それでも懐かしいですね。選択肢によっては、善の魔法使いニコデマスもちょっぴり登場して、「運命の森」で主人公をカエルにしていたヤズトロモに対抗したのか、主人公をイモリに変えてくれるというファンサービス?をしてくれていますよ。
 冒険の目的は盗賊ギルドが、主人公にギルド加入の試験として“バジリスクの瞳”を盗み出すという任務を課すというもの。
 ネタバレ防止の為に多くは書けませんが、実際に冒険をしてみると登場する怪物や用意されたトラップなどは凶悪で非常に危険な任務だと言えます。まあ、盗賊なんて掃いて捨てるほどいる危険なポートブラックサンドなら、盗賊ギルドはそのくらいの加入試験が必要なほどエリート中のエリート達で組織しないと成り立たないのだろうなと想像できますね。さすがに勝手知ったる自分の町だけ合って「盗賊都市」の主人公のように、道を歩いているだけで矢を射掛けられたりするようなヘマなシーンはありませんでした。

 本作品の特殊ルールとして、盗賊の技能というのがあります。すり、錠破り、壁登り、忍び足、姿隠し、罠感知、秘密の印の目利き、の中から3つを選んで冒険を始めるのです。不足している技能も“鍵束”などのアイテムを入手することで、ある程度は補足できるようになっています。
 私の初プレイは、技術点12、体力点17、運点7で特殊技能は、忍び足、姿隠し、罠感知を選択しましたが、なんとこれで一発クリア。終盤の戦闘で、最後は息もたえだえといった風でしたが、やっぱり技術点12は強かった。
 しかし技術点9くらいでもカンが良ければ一発クリアできそうな感じでした。
 危険な罠や敵はあっても、いじわるな仕掛け(ノーヒントで後でクリア不能になる分岐など)はなく、強敵もアイテムや特殊能力で避けられるケースも多いので、他のFFシリーズほどには、高い技術点や死んで覚えるプレイは必要ないようです。

 ゲームが始まると、主人公は“バジリスクの瞳”の在りかを捜すために、酒場や乞食達に情報を求めたり、商人の屋敷に忍び込んだりします。家人の寝ている寝室をそっと物色したり、金庫の鍵を開けようと捜索するのは、なかなか緊張感があってワクワクします。いくらポートブラックサンドとはいえ、衛兵も巡回する町の中ですから、野外の冒険のように、見つかったら戦闘で勝てば良いというわけではないからです。
 冒険は途中から、“バジリスクの瞳”が隠されたダンションを探検することになります。このあたりはいつものFFシリーズのような雰囲気になっていて、正直やや拍子抜けしました。最後まで街中を舞台にすれば良かったのに。しかもダンションはほぼ一本道なので簡単ではありますが、繰り返しプレイには不向きです。

 ケチをつけてしまいましたが、総じてこの作品は非常にプレイが楽な作りになって好感がもてます。
 例えばある選択肢を選ぶ時、「井戸の中を降りるなら、壁登りの特殊能力があったら××へ、なかったら××へ」という風に、先に能力の有無を尋ねてくれるところが親切です。井戸を降りるを選んだ後で「ところで君は壁登りの技能を持っているか?もっていなければ手が滑って君は一気に落下してしまう××へ」などと後で尋ねられるのは、判断がつきにくくて非常に困りますからね。細かいところですが、こんな部分がゲームの快適さを決める要素だと思います。
 盗賊らしく、隠し通路を発見したり、機転や技能を要求される要素が多いので、この冒険独特の雰囲気をうまく表現できていることは確かです。盗賊を主人公にしたゲームブックとしては、富士見の「クォーラス城からの脱出」と並ぶ名作だと思います。


*オリジナルルールの提案*
 すり、錠破り、壁登り、忍び足、姿隠し、罠感知、秘密の印の目利き、を全て使えるようにしてみるのはどうでしょうか。
 その代わり技術点と同じく、各技能毎に6+サイコロ1個で数値を決めておきます。冒険中に能力が必要なシーンになったら、サイコロを2個振って出た目が能力値と同じかそれ以下なら、「その技能を持っている」選択肢へ、能力値より多かったら「その技能を持っていない」選択肢へ進むのです。(合鍵やマントなどのアイテムを持っている場合は、サイコロにマイナス2点の修正を加える)
 このルールだと個性的な盗賊が出来上がると思うのですが・・・どなたか試してみません?


2005年02月11日(金) 悪霊の洞窟(L・シャープ/社会思想社)

 FFシリーズ30作目の作品。
 ストーリーは、ゴラク王国のオルガスを封じ込めていた封印が何者かに破壊され、真の盾が失われててしまったので、真の盾を取り戻し再び封印せよ、というお話しです。
 主人公はお城の厨房で、ウサギの皮剥ぎ見習い職人として働いていたのですが、宮廷魔術師に「偉大なるタンクレッド」とやらの由緒正しい子孫であり、真の盾を奪回できる唯一の人間であるとか、いろいろ言われて嫌も応もなく冒険に出かける羽目になっています。
 設定からするに、剣の訓練もろくに受けていない青二才のはずですが、冒険が始まると他のFFシリーズの勇者と同じ強さでした。謎です。
 冒険中は洞窟だかなんだかわかりませんが、とにかく暗い中を彷徨って進んでいきます。もちろんオークや闇エルフのような敵もいますが、酒場もあれば、味方の住む居住空間もあり、洞窟というより地底世界のような舞台ですね。
 ドワーフ達を従える人間の女リーダーが手助けしてくれたり、敵のオルガスのしもべにクッダムという7匹の魔物が冒険中に登場したりと、少々地味目ではありますが登場キャラクターと設定はなかなか魅力的です。
 特に主人公に同行する“自慢たらたらのタバシャ”という猫が一番気に入りました。“自慢たらたらのタバシャ”は猫らしく行動は気まぐれですが、主人公のために餌をもってきてくれたり(滋養のある毛虫とか・・・)、ネズミの大群などと果敢に戦ったり(後で死体を口にくわえてついてきますが・・・)、なかなから愛らしくて役にたちます。何より名前がいいや。
 しかし、ゲームとしては気になるところがあります。この作品には落石や雷などが襲ってくると「サイコロを一つ振れ。出た目が君が立っている位置だ。続いてサイコロをもう一度振れ。出た目が○○の位置(つまり危険なものが直撃する位置)だ。同じ数字だったら君は死ぬ」という指示が非常に多いのです。いくら好調であっても終盤まで行っていても、一発で死亡するのでもう嫌になります。せめて通常の運試しで凶だから死亡というならまだ我慢できるのですが、私的にはこれだけでせっかくの作品が台無しになった気がしますね。残念。

 結論。ゲームブックファンで猫好きならオススメ。
 ただし“自慢たらたらのタバシャ”の肉球をもみもみするシーンはないので、肉球フェチの方はあしからず、です。


2005年02月10日(木) 阪神タイガース優勝記念!!トラトラ優勝ゲームブック(サン出版)

 阪神タイガース優勝記念!!といっても、一昨年前の優勝のことではありません。史上最強の助っ人伝説を作ったバースがホームラン打って、ミスタータイガースの掛布がホームラン打って、今の阪神監督の岡田がホームラン打っていた85年の優勝記念本です。
 発売日が1985年の11月5日ですから、日本シリーズが終わって間もなく発売したというところでしょうか。カバーなし、雑誌のような紙質、いしいひさいち画の表紙デザインと、まるで雑誌の付録のような雰囲気がただよう本ではあります。
 しかし阪神タイガースとゲームブックを合体させるとは、私にとって夢のような企画です。これだけで、もう内容が少々あれだろうが許してしまえそうです。

 内容は85年ペナントレースの開幕戦から優勝決定戦までを再現しており、表紙に負けずおとらず内容も雑誌のノリで作られたような軽い感じです。とはいえ、試合や選手の成績のデータは現実のものを使用し、白黒ながら写真も多用していて、ペナントレースの雰囲気を疑似体験することができました。
 この本の表紙には「あんた吉田はん やりなはれ!」とコメントが書いてありますが、読者は吉田監督だけでなく、バースになったり、掛布になったり、岡田になったり、ゲイル投手になったり、土井コーチになったり、といろんな立場になって考えなければなりません。
 具体的には実際にあった試合の重要なシーンを取り上げては、2択の質問が出るのが基本。次のページにはそれぞれの選択誌の結果がスポーツ新聞風に書かれています。
 例をあげますと「第68試合。対広島戦15回戦。あなたは吉田監督です。3対1とウチがリードしてむかえた2回表の攻撃。7番ルーキー和田がレフト前ヒットや。次はおまんじゅう顔の平田。後ろにピッチャー中田がひかえてんねんけど、どないしょ。トップの真弓に望みかけて平田は送りバントにするか、ここはヒットエンドランでおせおせというのもええなぁ」という感じで出題されます。決断のために、その試合時点での各選手の打率やピッチャーの成績が参考に添えられているのがいい感じです。結果が良くて試合に勝てば1勝プラス。現実には負けた試合も取り上げているので、必ずしも現実と同じ選択誌を選べば良いとは限りません。
 ただ、これだとゲームブックというより、クイズブックという印象かも。
 
 終盤だけは今までの勝ち数などによりストーリーが分岐して、多少ゲームブックらしくなっています。
 現実と同じように進行すれば、現実と同じく神宮球場で胴上げができますが、他のルートで出現する本書オリジナルの試合では「神だ!宗教だ!バース、7打席連続本塁打!」とか「空前絶後!9者連続本塁打!」という無茶な展開で優勝してしまうのが笑えます。メタメタにされた相手は、もちろん王監督率いる栄光の巨人軍です。

 正直、私は85年の優勝のことはあまり憶えていないのです。幼かったもので。
 そういう意味では、この本から当時の阪神がどんな強さのチームで、どんな風にペナントレースを戦っていったのかを、とてもよく知ることができました。
 他にもコラムがいくつかあって、週刊誌の阪神の扱いぶりを紹介したり、ペントレース全体の流れについて解説されたりしていて、当時の様子を知る資料としての価値はあると思います。


2005年02月09日(水) 熱闘甲子園(スーパー頭脳集団アイデアファクトリー/桐原文庫)

 部員がわずか9名の弱小高校野球部が、幸運に幸運が重なって甲子園に初出場決定!あなたは監督として、優勝旗を手に入れることができるか!という、明快なストーリーのゲームブックです。
 百球で威力が落ちるがシップを貼ると三球だけ球威が復活するという変なピッチャーを初め、喧嘩好きの奴、こっそり酒を飲んでいる奴、ドジでノロマな亀な奴、と部員はかなり個性的ですが、文章がややそっけないのが全体的に味気ない印象を与えていて残念です。あのスーパー頭脳集団アイデアファクトリーの作品の中では、まだ良いほうなのですが・・・。(彼らの他の作品は、ストーリーや設定ともに凄すぎる作品が多いのですが、これはまた日を改めて紹介します)
 第一試合から試合に勝ちつづける限りは、決勝戦まで遊べますが、実際に遊ぶシーンの多くは試合の序盤(1回)と終盤(9回)の攻防のみです。相手ピッチャーを初回からどうやって打ち崩すかとか、9回裏一打逆転サヨナラのチャンス!とか、一点を死守すれば勝ちは目前なのにエラーで出塁された!とかそんなシュチェーションの中を監督がどう動くかを悩むわけです。もっとも、部員が9人なので代打やリリーフは考える必要はありません。選手達にどう声をかけるべきか、励ますべきか、叱るべきか、はたまた冷やかしてリラックスさせるべきか、などと主にメンタル面の問題になるわけです。高校野球らしい雰囲気を出すのには良いアイデアかもしれません。変な魔球が飛び出すということもなく、真っ当な高校野球が楽しめます。
 決勝戦ではPLO学園と言う地元の競合チームが相手で、桑田や清原というどこかで聞いたような連中と対決。こいつらはかなり強いです。最善の選択肢を選んでも試合の結果は運次第という厳しさですが、1回のゲーム時間が短く、繰り返して遊ぶことが苦にならないので、私的にはOKです。
 しかし優勝したときのエンディングがあっさりとしか書かれてないのに、決勝戦で負けて甲子園の砂を持って帰るバッドエンドの方が書き込まれていて印象的なのは、この舞台ならではでしょうねぇ。


2005年02月08日(火) ドラゴンクエスト5 青年時代後半(安藤夏・小橋啓/エニックス文庫)

 石像にされたまま、主人公は金持ちの家に引き取られ、庭に飾られていました。 なす術もないまま十年が過ぎてしまいます。ところがある日、大きくなった双子のクリスとフィラが主人公の前に現れたのです。助け出された主人公は、親子で妻を捜し母さんを助けるために旅に向かいます。
 くぅーー。いいですねぇ。燃えてきますね。こうゆう展開。ゲームとしては相変わらずヌルくて、あっさりクリアできてしまうのですが。
 ストーリーの難点は、ラスボスが誰だったか思い出せないほど、敵の印象が薄かったことでしょうか。中ボスが「○○様〜」と絶叫しながら息絶えるのですが、○○と倒すとそいつは「△△様〜」と言いながら息絶える。△△を倒すと「□□様〜」って感じなんで。会社に苦情を言って、だんだん上の上司を呼び出していくクレーマーじゃないんですから、もうちょっと考えて欲しかったですね。まあ、ラスボスの印象の薄さは原作でも同じらしいのでしょうがないか。
 後、10歳の子供が勇者様という設定には、ちょっと迫力不足の感はありました。が、なんというのでしょうか。家族愛ってのが、伝わるストーリーでしたね。エンディングの舞踏会で、妻にダンスを申し込むシーンが特にいいです。しんみりした感動がありました。
 
 この作品は原作の雰囲気を出すために「ゲームブック風の演出をした小説」なのでしょう。
 良いゲームブックではなく、良いライトノベルとして読んだほうがきっと楽しめると思います。


2005年02月07日(月) ドラゴンクエスト5 青年時代前半2(安藤夏・小橋啓/エニックス文庫)

 選択肢の重要度が低い作品ですが、この巻で初めて重要な選択が登場します。そう、結婚です!
 おさななじみで快活なビアンカと、心やさしいお嬢様のフローラ。二人の内、どちらかを結婚相手に選ばなくてはなりません。
 本当の事を言えばこれも原作と同じく、どちらを選んでもゲーム進行には影響はないのです。でも、しかし、しかし!小説志向の強いゲームブックだけあって、奥様との会話シーンなどが変化するのは重要です。読んでいる気分が変わります。
 原作ではビアンカを選んだので、ゲームブックではフローラにしてみました。新婚生活にほんのちょっとだけ萌え。

 さて、原作のプレイではここでバックアップがぶっ飛んでしまい、遊べなかった思い出しかないので、ここから先は私にとって未知のストーリーとなります。(涙)
 主人公のお父さんが治めていた国に到着。みんな主人公をあっさり王子様と信じて歓迎してくれて、大丈夫か?と思うほど人の良い国みたいでした。
 妻が双子を出産。と、思ったら魔物に妻がさらわれてビックリ。さらに追かけた主人公まで石化してしまうという展開にさらにビックリ。
 この作品、先のストーリーを知らない方が楽しめますね。いったいどうなってしまうのでしょうか。

続く


2005年02月06日(日) ドラゴンクエスト5 青年時代前半1(安藤夏・小橋啓/エニックス文庫)

 さて、前巻のラストで魔物に父を殺されるという、衝撃のラストから10年が経過していました。(まあ、原作を遊んでいたので本当は衝撃でもないのですけどね)
 主人公はヘンリー王子共々、奴隷となって城の建築現場で働かされていましたが、ある兵士の手引きで10年ぶりに所持品も返してもらい(普通、10年前の奴隷の荷物なんて残っているのかなぁ)、脱出に成功した主人公とヘンリー王子。という、知っている人にはお馴染みの話しが始まります。まあ、わかっていてもヘンリー王との友情は熱いです。
 この巻から原作と同じく魔物を仲間にすることも可能です。どの魔物を仲間にするかはある程度自由ですが、やはりゲーム進行には大きな違いがありません。
 ヘンリー王子と分かれたところで、この巻は終了。せっかく仲間にした魔物たちもそれぞれの道へと去っていきます。

続く


2005年02月05日(土) ドラゴンクエスト5 幼年時代(安藤夏・小橋啓/エニックス文庫)

 いわずとしれた超有名RPGゲーム、ドラゴンクエストのゲームブック版の感想です。
 そして、エニックス文庫のドラゴンクエストゲームブックは六作目まで作られていたのですが、今回は5作目に挑戦してみました。
 え、なんで5作目なのかって?それは電車の中で読んでいたからルールの凝っている1〜3作目は遊べないし、4作目は原作を遊んでいないので思い入れがないし、6作目は原作がク○ゲーだったし(夢の世界を描くなら、ウォーターフィールドを見習えってんだい!)・・・おっとっと、不穏なことを書いてしまいました。いや、5作目は原作でも最もストーリーが良いと評判ですからね。

 それでは本題に入りましょう。さすがに超有名タイトルだけあって、ドラゴンクエスト5のゲームブックは「幼年時代」「青年時代前半1」「青年時代前半2」「青年時代後半」の4冊にもわたる大作となっています。無理矢理1冊にまとめられた「天地創造」とはエライ違いです。
 とりあえず幼年時代から読み始めましたが、お父さんに連れられてある町にやってきた主人公の子供が、ビアンカと幽霊屋敷を探索しています。そして妖精の国の冒険。わがまま王子ヘンリーに振り回される主人公。そんな感じで原作のエピソードが余すところなく再現されていたので、原作を知っていても違和感はありませんでした。
 ただどんな選択誌を選んでも、アイテム入手の有無くらいでストーリー進行が変わらないような・・・?そして戦闘でそのアイテムが無くても「傷を負い苦戦しながらも倒した」か「あっけなく倒した」の文章の違いしかないような・・・?、それ以前にゲームオーバーが存在しないような・・・?
 つまり、小説を読むのとほとんど変わらないような簡単さなのです。
 私、いわゆる「死んで覚える洋ゲー」とかは嫌いなんですが、それ以上に「なんにも考えなくてもクリアできますよー」というヌルイ和ゲーもいただけません。
 果たしてこんな調子で最後まで楽しめるのでしょうか。

続く


2005年02月04日(金) 恐怖の幻影(ウォーターフィールド/社会思想社)

 久しぶりにFFシリーズの感想です。
 ウォーターフィールドの書いた前ニ作品(電脳破壊作戦と仮面の破壊者)は、登場人物や世界観が魅力的で気に入っていたので、本書はぜひとも読みたいと思っていた一冊です。そして内容は期待を裏切らない出来でした。
 主人公は森エルフ。魔王子イシュトラに犯されつつある森を救うため、枯死した森の中心にある穴へ向かうという冒険なのですが、まず最初のパラグラフは、予知夢の中から始まります。森の分かれ道に立った主人公が、どちらの道へに向かうか迷うわけですが、分かれ道の中心に立つ女神の像の動きや、それぞれの道の先に漂う生と死の暗示が入念に書き込まれて描写されており、どちらの道を選ぼうかと、導入から読者を冒険の世界へと惹きつけるのです。
 夢から覚めた主人公は、イシュトラが潜む穴を捜して森の中を彷徨うことになるわけですが、人間との遭遇シーンやピクシー達に逆さ釣りにされるシーンなどが特にいいですなー。展開次第では、魔術師ヤズトロモや、高層ビルの立ち並ぶ現代社会(サイボーグを倒せ!のタイタンシティ?)を垣間見ることができるシーンまであってニヤリ。遊び心も忘れていません。
 夢と言う要素が巧みに生かされているのは「穴」に入った冒険の後半部分です。一見、「火吹山の魔法使い」のような普通のダンジョン探索なのですが、このダンションからはパラレルワールド的に夢の世界が存在していて、読者はこの2つの世界を任意で行き来できるのです。もっと噛み砕いていうと、大まかな構造こそ一緒だし同じ道なのですが、雰囲気も敵やトラップも違う現実の世界のダンジョンと夢の世界のダンジョンの二つが存在しています。そして、そのどちらのルートを通るか、いつもう一つのルートに切り替わるかは読者がある程度自由に動けるということです。ウォーターフィールドの巧みな筆力のおかげもあって、なんとも不思議ながら、本書でしか体験できない面白さが味わえます。
 最後にゲームバランスの方ですが、後期FFシリーズにしては無茶苦茶厳しいわけではありません。ただ自由度は高いのですが、「火吹山の魔法使い」の鍵集めと同じく、クリアに必要なアイテムを収集するルートはかなり限られています。(穴に入る前の入手ルートはすぐわかったのですが、その後がなぁ。氷を入手するときなんてサイコロ運も必要そうだし・・・)
 能力値についていえば高い技術点もそれなりに必要(特に闇エルフとの戦闘シーン)ですが、それ以上に魔力点の初期値が低い場合はアイテムの入手が難しい箇所がありクリアは困難になります。逆に魔力点が高ければアイテムに頼らずに、強引に戦闘でイシュトラを倒すことも可能になっていて、私の場合は深く考えずともこの方法でクリアできてしまいました。
 英語力のない私にとって、日本語で読めるウォーターフィールドの作品がこれで最後と言うのはとても寂しいです。いつの日か後期FFシリーズの何作かが翻訳されるという話しがあれば、真っ先に彼の作品を推薦したいと思っています。もっとも他にどんな作品を書いているのかは知らないのですけどね。(^^;


2005年02月03日(木) かいだん(奥谷道草/白夜書房)

 パズル雑誌クロスワードランドの2004年11月号に載っているはみ出しゲームです。
 どこともしれぬ場所で開かずの扉を開こうとする少年が、階段と踊り場ばかりで作られた立体的な迷路を彷徨う話しです。怪談とひっかけたタイトルのとおり、暗く重々しい雰囲気が漂います。びしょぬれの傘や、古びた機械仕掛けの人形(大阪の食い倒れ人形の姿しか連想できない想像力貧困な私・・・)など、所々に意味ありげに配置された品々が不気味です。
 最初は「うわっ、立体迷路だよ。地図を書くのがつらそうだな」と思ってしまったのですが、やって見るとサクサクと快適にマッピングができました。階段の横板に隠しメッセージがあって、階段を登っているときにしか気づかないという仕掛けは、謎解きとしては簡単でしたがアイデアですね。
 今回、もっとも秀逸だったし、同時に惜しいと思ったのは、エンディングです。冒険中に見たものと全ての記憶がつながって、余韻の残るなんともいえぬ怖さを作り出していました。今までのはみ出しゲームの中で1番印象的です。そして惜しいと思ったのは、オープニングに夏休みの宿題をしなきゃという、日常的な動機からスタートしていたのに、エンディングでは少年が外国航路の船旅の最中だったというあまり庶民的でない設定だったため、現実感が薄れてしまったこと。近所の廃ビルの非常階段で遊んでいて・・・とかの方が、より身近な恐怖感を読者に与えられたような気がします。ただ今回のエンディングに漂っていた、ある種の美しさは減滅するかもしれないので、この辺は好き好きかな。
 いずれにせよ、最初から最後までグイグイと読者をこの世界に引き込むだけの魅力はあった作品でした。


2005年02月02日(水) 熱血硬派くにおくん 番長連合をぶっとばせ!(上原尚子/双葉文庫)

 主人公は熱血高校で一匹狼のツッパリをやっている、くにお君。番長連合の連中にさらわれた親友を救い出しに行くという話しです。
 私は未プレイですが、原作は割と人気のあった横スクロール格闘アクションゲーム。この作品以降もいろんな続編が発売されていたため、くにお君シリーズは独特の世界観が出来上がっていたようです。
 そんな訳でツッパリの世界というゲームブックでは珍しい題材の作品が楽しめる、と期待したのですが、読んでみると良くも悪くもとっても原作に忠実な作品でした。港で暴走族と戦ったり、繁華街でスケ番どもと喧嘩するのも、ゲームのステージ構成と一緒。終盤ではヤクザの事務所に単身殴りこむシーンも同じですが、ゲームブックとして読むと単なる自殺行為に見えます。(笑)
 ゲーム内容は、不良やヤクザどもを相手にひたすらサイコロを使った戦闘、戦闘、戦闘、戦闘です。選択肢による分岐の違いも少なく、戦闘バランスは終盤になると割と厳しいので、結局はクリアできるかはサイコロ運で決まってしまうような印象です。
 しかしくにお君の世界は個性の強そうな不良たちが多いのに、無機質な戦闘だけであっさり描写が終わって勿体無い感じです。ゲームブックで格闘アクションの忠実な移植なんてものがそもそも無理なのですから、原作ゲームにこだわらずに登場人物と世界観だけを生かしてもっと自由に作った作品にして欲しかったなと思いました。


2005年02月01日(火) 地底階層王国 〜まぼろばの壁をこえて〜(高野富士雄原作/ポニーキャニオン)

 双葉の人気(?)ゲームブックシリーズの地底階層王国の世界を、普通の音楽用CDへゲームブック風に収録したドラマCD。
 ゲームブック風というのはドラマがトラック毎にバラバラに分岐していて、まるでゲームブックのような構造になっているからです。 「…入ってきたのは魔族だった。逃げるならトラック番号27へ、戦うならトラック番号8へ進んでください」というメッセージが出ると、サーチボタンを操作して行き先のトラック番号に進むという流れになっています。家でアニメ声のドラマを聞くのも気恥ずかしいので、ためしに車の運転中に聞いてみました。(サーチボタンを押しながら聞くので、運転中は危ないから良い子は真似しちゃだめだよ)
 ストーリーは魔族に人間が支配されている広大な地底世界が舞台で、魔族に抵抗する反乱軍のエースパイロット、ルーイが主人公。敵の攻撃で飛行機を打ち落とされたあと、少女のチェルトと魔族のゼロが彼の命を助けるところから話しは始まります。しばらく3人で旅をしますが、そのあとはいろいろあって、魔族の王ルシファーの后にされそうになるチェルトを、ルーイとゼロが救い出しにいくという展開。それに誇り高い義賊の海賊王ドレイクも絡んできて・・・なんというか一昔前の週間少年ジャンプにある王道ものみたいな話しでした。
 総パラグラフ数は33で選択肢は二択のものばかり。片方が即バッドエンドになるものか、どちらでも同じ結果になるかのものばかりで完全に一本道のお話しです。ゲームとしてはかなり単純化されています。ドラマCDとしてみれば、声優さんの演技といい、ベタだけど燃えるストーリーといい、爽やかなエンディングといい、良作と思いますけどね。
 ただゲームブックとのタイアップというのは、今の感覚では購買ターゲットの狭そうな商品です。それだけ当時の双葉ゲームブックに勢いがあったのか、はたまたバブル時代が生み出した産物だったのか。いずれにせよ、今となっては珍品扱いしかされそうにないのが、悲しいところです。

 一応原作ゲームブックとの比較もしてみましょう。私は原作の第一巻しか持っていませんが、ストーリーはたぶんCD版オリジナルのものです。原作のルーイは抵抗軍でなく、国家と国家の戦争に参加する一兵士という立場。他にもチェルトの姿も原作のイラストでは黒髪のお嬢様風、CD版のパッケージイラストでは田舎の金髪少女風、などと設定がいろいろ違います。でも一番の違いは3人目の仲間、猫耳の少年の姿をした「魔族のゼロ」の存在。原作ではゼロではなく、猫の着ぐるみみたいな姿をした「ねこまんまのポチ」というキャラが仲間になるのですが、この違いが大きいのです。ポチはやる気なしの食い気ばかりのふざけた性格なのですが、高野作品には頻繁に登場する、ある意味象徴的なキャラクターだったので、これが真面目な性格のゼロというキャラになったことで、冒険中の雰囲気がガラリと変わってしまった気がしますね。
 ただ、CD版のトラック27番のチェルトの家のシーンで、BGMになにげなく流れているラジオ放送をよーく聞いてみると、なんとラジオのパーソナリティとしてポチが登場していることが判明しました。なんと喋っているのか音量を大きくしてさらによーく聞いてみると・・・。

 「ニャース!こんにちは、お昼の時間はねこまんまのポチがお贈りするにゃ。今日の話題は(ルーイたちの会話でよく聞き取れず)です。かたい話題ですね。さて(ルーイたちの会話でよく聞き取れず)産業廃棄物で汚染されたキャットフード!(ルーイたちの会話でよく聞き取れず)のです!・・・今日の最初の一曲。セカンドラブ・・・(慌てて口を塞ぐ音)は言ってはいけなかった。中森・・・(慌てて口を塞ぐ音)も言ってはいけない・・・。最近のアイドル曲は一曲もかけられないのです。ああ、困った。どうしよう・・・」

 これよ、これこれっ。この微妙な楽屋ネタ。これこそ双葉のゲームブックよ。と思うのは私だけでしょうか。


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