冒険記録日誌
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2002年12月31日(火) |
ソーサリーの魔法レッスン その9 |
(ソーサリーを知らない人には、意味不明です。ごめんなさい)
お知らせですが、1月の冒険記録日誌は基本的にお休みさせてもらいます。 これは“無理して書いてもろくなものは書けない”と言う考えから決めたことなので、ご理解下さい。 皆様、来年もよろしくお願いいたします。 それでは今年最後の問題になるソーサリーの魔法レッスンです。 次の例題で適切な呪文を選択して下さい。
問題9:年越し・ソーサリー
もう大晦日である。 君は年越しそばをズルズルと啜りながら、紅白歌合戦を見ていた。 すると 「ギャーーーー!!!ちょっと、あんた!あんたーーー!!!!」 背後の台所からただならぬ妻の声が聞こえてきた。 慌てて行ってみるとそこにはネズミがいた。そばで妻が凍り付いたように立っている。ヤレヤレ。 「笑ってないではやく追い出してよ!」 はいはい、なんとかしましょう。 そう言いながら、再びネズミに向き直った君の笑顔は凍り付いた。 一匹、ニ匹・・・・・・ネズミは三匹もいたのだ! これは大変だ。一度に三匹とも捕まえることなど不可能だろう。 ここは魔法で何とかするしかない。
JIG YAP DIM LAW HOP
一つ選択したら下で結果を確認しよう。
*JIG* 君は竹笛を取り出すと、呪文を唱えてから演奏を始めた。 するとネズミ達はまるで踊っているかのように、前足と後ろ足をバタバタ動かし始めた。 君は演奏を続けたまま家の外に出ていき、まるで昔話しの主人公のようにネズミ達を誘導する。 適当な距離で君はネズミ達を解放してやった。
*YAP* 緑のかつらをかぶって、呪文を唱えるとネズミと会話ができるようになった。 彼らに家から出ていくように言うと、ネズミ達は「ヤダ」と返事をした。
*DIM* 君が混乱の呪文ををネズミ達にかけると、速やかに効力が発揮された。 錯乱したネズミは、なんと家中をめちゃくちゃに走りまわり始めたではないか。 妻の悲鳴が家中に響いている。 そのころ夜空では除夜の鐘が鳴っていた。
*LAW* 呪文を唱え、君はネズミ達に家を出て行くように命令した。 ネズミ達は君の言うことを聞き、大人しく玄関から家を出ていった。
*HOP* 体力ポイントを5減らす。こんな呪文は存在しない。 ネズミ達は巣穴に逃げてしまった。 「もう、役立たずなんだから」 妻が怒ったように言う。また君の面目がなくなった。
2002年12月30日(月) |
ソーサリーの魔法レッスン その8 |
(ソーサリーを知らない人には、意味不明です。ごめんなさい)
さあ、続けましょう。ソーサリーの魔法レッスンを。 魔法の腕を錆びさせぬよう、ここで魔法の練習をしておきましょう。果たしてソーサリーが創土社の手で蘇るのはいつの日でしょうか。 次の例題で適切な呪文を選択して下さい。
問題8:オオソージ・ソーサリー
もう年末である。君の家は今日、台所を中心に大掃除をするのであった。 さっそく君は、妻と相談して掃除場所を担当分けする。 窓拭き→君の担当だ。 冷蔵庫→妻の担当だ。 レンジ→君の担当だ。 換気扇→君の担当だ。 洗面台→妻の担当だ。 お風呂→君の担当だ。 床拭き→君の担当だ。 結果を見て君は思わずうめいた。これでは共同作業というより、妻の奴隷ではないか。 君は猛然と抗議したが、 「あんたは当番の皿洗いもサボるし、買い物お願いしたらバカ高いもの買ってくるし、いつもトロトロしているし、私だって一生懸命なんだか・・・・・・」 君はおとなしく掃除をすることにした。 しかしこれでは大変だ。ここは呪文の力で楽ができないだろうか。
NIP SUD YOB SIX GOB
さあ、一つ選択したら下に進もう。
*NIP* 黄色い粉を吸い込み、呪文を唱えると、君は三倍もの速度で動けるようになった。 この間に君は目にも止まらぬ速さで掃除を始め、瞬く間にそれは完了した。 「すごいわ。見直したわ!」 妻も上機嫌だ。ま、本気を出せばこんなものよ。
*SUD* 呪文を唱えてもなにも起こらない。こんな呪文は存在しないからだ。 体力を5ポイントも消耗した君は、妻に休憩を申し出た。 「最初からバカ言ってないでよ。さ、まずはお風呂からやって」 今日は辛い一日になりそうだ。
*YOB* 君がジャイアントの歯を投げてから呪文を唱える。 たちまち巨大なジャイアントの姿が目の前に現れた・・・・・・のだが、天井に頭をぶつけ、床に倒れてのびてしまった。 「あんた家を壊さないでよ!まったく、ほんとにもう」 怒った妻が言い寄ってくる。面目ない・・・。
*SIX* 呪文を唱えると、君の体は六体に増えた。まるで分身の術だ。 しかし、残念ながら分身達は、本体の君と同じ動きしかできない。 つまるところ、掃除の力にはならなかった。 「あんたって、何人いても役に立たないのね」 妻が呆れ顔でそう一言。ウルセー。
*GOB* 君がコブリンの歯を投げてから呪文を唱えると、たちまち数匹のゴブリンが目の前に現れた。 君の指図によってコブリン達は、窓や換気扇に飛びつくと掃除を始めた。 「ふ〜ん。あんたの魔法も、たまには役にたつじゃない」 その様子を見た妻が感想を述べる。 “たまには”は余計だ。
2002年12月29日(日) |
ソーサリーの魔法レッスン その7 |
(ソーサリーを知らない人には、意味不明です。ごめんなさい)
お待たせしました。ソーサリーの魔法レッスンの時間です。 このゲームブックは戦士で旅するのも良いのですが、やはり最大の醍醐味は数々の魔法です。 創土社から復刊されたときに備えて、ここで魔法の練習をしておきましょう。 次の例題で適切な呪文を選択して下さい。
問題7:クリスマス・ソーサリー
夜になって君は愛する妻のいる我が家へ帰ってきた。 するとどうしたことだろう。今日は珍しく、愛らしい妻がちょこんと玄関に座って出迎えたではないか。 なんと暖かい家庭・・・これぞ理想の光景だ・・・。 妻は顔をあげていった。 「お帰りなさい。そしてメリークリスマスね」 そうか今日はクリスマスイブなのか、えっ。 「うふふ。待ってたのよ、プレゼント」 しまった!すっかり忘れていた! 「ちゃんと買ってきたわよね〜〜〜〜ぇぇぇええ!!どうなの?まさか忘れたんじゃないでしょうね!」 こまったピンチだ。次の呪文のどれかで誤魔化せないだろうか。
DUD GOD NAP DUM KIL
さあ、一つ選択したら勇気を出して下へ進め。
*DUD* こっそり君はハンカチに向かって呪文をかけ、宝石の幻影を作り出すと妻に手渡した。 妻は非常に喜んでくれた。 しかし翌朝になって、君はビリビリに裂かれたハンカチに気づく。 呪文の効力が切れたようだ。そして台所の方から怒りの包丁さばきの音が聞こえる。 絶体絶命。もはやリーブラ様にでも祈るしかない。
*GOD* 呪文が効力を発揮すると、般若のような妻の顔が急に温和になった。 「ま、いいわ。入って」 そうさ、そもそもクリスマスは神聖な日なんだ。プレゼントなんていらないさ。 心の中でそう言いつつ、君は安堵した。
*NAP* 君は真鍮の振り子を取り出すと、振り子を揺らしながら呪文を唱えた。 妻はプレゼントと関係あるのかと、最初まじまじと振り子を見つめていたが、やがて眠りこんでしまう。 よし、今のうちにプレゼントを買って枕元に置いておこう。助かった。
*DUM* 呪文を唱えている間に怒った妻は、皿を投げようとしたがこれを落としてしまう。 どうやら呪文が効果を発揮したようだ。 さらに猛り狂った妻は、ごみ箱、椅子、包丁を投げようとするがこれも失敗。 しかし、その様子を見ながら君は思った。 こ、これは、呪文の効果が切れたらお終いだ。ただじゃすまなくなったぞ、と。
*KIL* 体力ポイントを5減らす。こんな呪文は存在しない。 妻は冷たい目をすると、君を外に蹴り出して鍵を掛けてしまった。 可哀相だが自業自得だ。今夜は車の中で過ごして反省するといい。
2002年12月28日(土) |
ファイティング・ファンタジー(スティーブ・ジャクソン/創元推理文庫) その4 |
慣れてきたら“ファイティング・ファンタジー”をより深く楽しめるよう、以下の本にも手を出してはいかがでしょう。 これら関連書籍は社会思想社から発売されていました。
*タイタン −ファイティング・ファンタジーの世界−* “ファイティング・ファンタジー”の世界である“タイタン”を解説した本。 神話の時代からの歴史、住民達の習慣まで詳しく解説されています。 同シリーズのゲームブックに登場した人物や地域の紹介もあって、ゲームブックファンにも必須の一冊。
*モンスター事典* ファイティングファンタジーゲームブックに登場したモンスターをイラストつきで解説した本。 テーブルトークに必要な詳細なデーターも盛りこまれているので使える。 当然ソーサリーに登場する怪物も紹介されているが、出版社が違う為か怪物の名称が違う。“レッドアイ”を“赤目”と訳すのは個人的にちょっといただけない。
*アドヴァンスド・ファイティング・ファンタジー<上・下>* さらに詳細なルールを定めた上級ルールブック。さらに本格的なTRPGを楽しむことができます。 それにしてもTRPGを映画に例えて説明するのは、逆に読みにくいなぁ。ゲームマスターをディレクターと呼ぶのがなんか嫌だ。
*謎かけ盗賊* ファイティングファンタジーTRPGのシナリオを書いた本。 解説文には「ファンタスティックで奇怪な、ファンタジー世界と魅力的な登場人物が活躍する このテーブルトークのシナリオは、RPGを楽しむのに最適のシナリオです」と書いてあるが、あまりに不条理かつ奇想天外なシナリオに私はついていけませんでした。とは言え、一つの参考にはなる本。 あと、拡張ルールとして呪文と魔法使いのプレイヤーキャラに関する説明があります。
こんな感じかな。 でも、ファイティング・ファンタジーにせよ関連書籍にせよ、全部絶版になってるから古本屋とかで探すしかない・・・(涙)
2002年12月27日(金) |
ファイティング・ファンタジー(スティーブ・ジャクソン/創元推理文庫) その3 |
本書にはルールの説明のあとに、見本として2つのシナリオが収録されています。 これらはゲームマスターの手間を省くために、予め冒険の舞台の設定を定めたものでゲームマスターだけがこれを読んでゲームを進行するのに使うのです。 一つ一つの場所にイラストが添えられているので、この部分はまだゲームに慣れていないプレイヤーにも見せるのもいいでしょう。イメージを共有化するのに役立ちます。 内容はどちらも洞窟の中を探索して宝を発掘するという、割と典型的なもの。とにかくわかりやすさ重視と言った感じです。 面白いところでは、“ソーサリー”に登場した小道具(ボンバの実や氷でできた宝石など)が登場するので、元ネタを知っている人は度々ニヤリとさせられます。 ゲームブックファンでTRPGを知らない方、ちょっとこの“ファイティング・ファンタジー”を読んでみませんか?お勧めしますよ。
<雑記> この本には不満な点が一つあり。 それは後書きで訳者が「ゲームブックはTRPGの初心者向けの存在」と言う書き方をしていること。 確かにゲームブックは、ゲームマスターの役割を本に任せた「一人用TRPG」といった考えで誕生したと聞くけど、ゲームブックもTRPGには味わえない面白さがあるんだよ、と言いたい。
それから私が他のTRPGと違うなぁと思った部分が、ルール説明の部分で「ゲームマスターは、いわば神様の役なのですべて思いどおりに決めて良い」という説明があること。 見本のシナリオでも、ゾンビが次々と出現する地帯とか(どこからなぜ発生するの?)、いきなり赤ちゃんが寝ている部屋とか(誰がなんの為に?)不条理な展開が多くて、ゲーム中はかなりゲームマスターの権限が強い気がします。 実際はゲームマスターと言えども、ある程度の制限は存在するという考えが一般的と思います。新しいシナリオを自分で考えるゲームマスターは、プレイヤーも納得できるような内容を考えて欲しいものです。 ただ“ファイティング・ファンタジー”はルールが曖昧な分だけ、ゲームマスターの判断が多く求められるのも事実です。 そういう意味では神様のごとく設定を創造できる余地は確かにあります。慣れてきたゲームマスターは、ゲームバランスを考えながら、ソーサリーやバルサスの魔法システムを導入したり、新しい怪物を創造してみるのも楽しいと思います。
2002年12月26日(木) |
ファイティング・ファンタジー(スティーブ・ジャクソン/創元推理文庫) その2 |
TRPGと言ってもルールブックには、他にも“D&D”“T&T”“ソードワールド”などいくつもの種類があり、それぞれルールや世界観など内容が違うものです。 では“ファイティング・ファンタジー”とはどんなTRPGかと言うと、これがとんでもなく簡単かつアバウトなルールでデザインされているしろもの。 だいたい通常のTRPGでは、各キャラクターの能力値を6種類以上設定しています。これには、さらに魔法や鍵開け能力などの特殊技能、装備する武器の特徴まで細々とした説明が加わり、覚えることが非常に多くあるのです。これは自分の操るキャラクターに個性を出させる為で、力が弱いが手先が器用な奴とか、不器用だが魔法を使える奴など、特徴あるキャラクター達が、4〜5人程度の集団で冒険をするように計算している為でもあります。 他にも、剣一本が店ではいくらで売っているのか、何キロの荷物までなら持って移動できるかなど、冒険中に想定される実にいろんなシュチェーションに対応したルールが決められているのです。
それにくらべ“ファイティング・ファンタジー”は各キャラクターの能力値が、技量ポイント、体力ポイント、運勢ポイントの3つのみ。冒険者の職業も戦士のみで、魔法などの記述もありません。 キャラクターの所持品も初めから標準的な剣と鎧を備えている状態でスタート。他にわずか食料やランタンのみを携えている程度で、後は名前をつければキャラクター作りは完了してしまいます。 ゲーム中に使用するルールでも、戦闘の方法や運試しのシステム、食料を食べると体力が回復するとか、落下したときのダメージ計算などのみで、本当に少しだけしか書かれていません。 これは、このTRPGがソーサリーを始めとするゲームブックを発展させて作られたと言う背景にあります。言い方を変えれば、社会思想社や創元推理文庫などのゲームブックを読んだ経験がある人なら抵抗を感じずに楽しめる、最も易しいTRPG入門書とも言えるのです。
続く
2002年12月25日(水) |
ファイティング・ファンタジー(スティーブ・ジャクソン/創元推理文庫) その1 |
本書はゲームブックではなく、TRPGの入門書兼ルールブックです。 TRPGって知ってますか?知らない人のために軽く説明しましょう。 ゲームブックが「ストーリーを自分で選択できる本」という言い方をするなら、TRPGは「会話によって物語を作っていくゲーム」といった内容のものです。 ゲームブックと違って一人ではゲームが成り立ちません。遊ぶには3〜7人くらい必要です。 具体的にどうするかと言えば、まず集まった人の中の一人が物語の進行役となります。これを“ゲームマスター”と言います。この役の人が予め物語の設定や、おおまかな物語のシナリオ(例えば“町を襲う海賊を退治する”など)を考えておくのです。 そして残りの人間はその物語の主人公として、どう行動するかを決める役となります。この役割が“プレイヤー”です。 ゲーム中はこの“ゲームマスター”と“プレイヤー達”の会話を中心に進行します。 その会話とは一例をあげれば下のような感じです。
ゲームマスター>>君たちはいま、汚い港町にいる。東西にのびる道を歩いているのは船員らしき男達ばかりだ。その中には看板に“旅の宿”と書かれた居酒屋に入っていく人間もいる。 プレイヤー>>ねぇマスター。東西の道の先はどうなっているの? ゲームマスター>>東は船着き場。西は寂れた様子の住宅街が見えるね。 プレイヤー>>じゃあ、とりあえず僕らは“旅の宿”に入ってみるよ。 ゲームマスター>>OK。君たちは居酒屋に入った。まだ昼間だと言うのに、中は酔っ払いですごい喧燥だ。テーブルもカウンターも空きはあるよ。 プレイヤー>>カウンターに座る。店主に酒を注文するよ。 ゲームマスター>>店主が話しかけてきた。「お客さん。よそ者だね。一年前のあの事件以来じゃ、めずらしいよ」 プレイヤー>>「一年前になにがあったんだい?」 ゲームマスター>>「お客さん、知らんのかね!こりゃ驚いた。なら説明してあげるが・・・・・・」
これがゲームブックだと、道端のシーンで「西へ行く。東へ行く。店に入る」など用意された選択肢の中から選ぶのみです。しかしこれがTRPGとなると道ゆく人に話しかけたり、店をもっとよく観察したりと自分の思ったとおりに行動できます。 例をあげると、
プレイヤー>>俺は道端で裸踊りを始めるよ。 ゲームマスター>>おい、本気か?まあいいや、君が踊りだすと町の人たちは騒然となった。しばらくすると東から町の警備隊がやってきた。 プレイヤー>>やや、しまった。捕まったら厄介そうだな。 他のプレイヤー>>(裸踊りとすると言ったプレイヤーに)バカなことやってるからだよ。マスター、俺たちは西の方へ逃げるよ。
と、こんな展開もありなのです。(ちょっと極端かな) まあこのようにTRPGの主人公は、ゲームマスターが臨機応変に対応することでゲームブックよりさらに自由度の高い行動がとれるわけです。 だいたい、どんな感じで進めるゲームかわかってもらえましたか? そしてTRPGのルールブックとは、プレイヤーが警備隊と喧嘩になったときに勝敗を決める方法とか、建物の2階から飛び降りたらどの程度の怪我をするかなど、そういった判断基準をルール化したものなのです。
続く
2002年12月24日(火) |
王たちの冠(スティーブ・ジャクソン/創元推理文庫) 冒険15日目─5ページ目 |
俺は再び大魔王と対峙した。チュンスは今しかない! 先手必勝とばかりに奴に鋭い一突きをかませる。 運任せに大ダメージを狙ったが失敗。かすり傷しかあたえられない。 次の一振りは外してしまう。逆にこちらが傷を負ったが、興奮した俺は痛みも感じることなく、もう一度斬り付けた。 そのとき大魔王が息を吸い込んだ。何かしかけてくる! そう思った次の瞬間、俺の体は無意識に反射し奴の胸元に潜り込んで剣を食い込ませた。 相手の動きが鈍ったところを、すぐに剣を抜く。 あらん限りの力をこめた一撃を脳天にくらわすと、恐るべき大魔王はついに床に倒れた。 きわどい勝負だった。 あの時、あと一撃でもミスをしていれば、今ごろ死んでいただろう。 しかし俺は任務を達成したのだ。大魔王は死に、この背負い袋には“王たちの冠”が入っている。 俺はバードマンにつかまって空を飛び、マンパン砦を脱出した。 そのまま高地ザメンの山々を越え故郷へ向う。 ───アナランドの人々がお祭り騒ぎになるのが、今から目に浮かぶようだ。 そう思うと久しぶりに心からの笑いが出て止まらなかった。 旅は終わったのだ。今はゆっくり休むことにしよう。 END
(編集者より蛇足後記) 15日目の日記は、冒険者がアナランドに戻ってから書いたと言う説が有力である。 そのためなのかマンパン砦の構造や大魔王との戦いは、はっきりと書かれていない。 これらの真相を知るためには、どうやら我々自らがマンパン砦に赴く冒険に出るしかないと、チャウベリーの賢者達は一様に指摘している。 赤い背をした古文書の発掘、もしくはソードカンパニーの動きを待ち、ぜひこの偉大な冒険の全ての真相を解明したいものである。
2002年12月23日(月) |
王たちの冠(スティーブ・ジャクソン/創元推理文庫) 冒険15日目─4ページ目 |
小さな窓一つしかない牢の中で、俺はため息をついた。 はたして魔法使いならぬ身でここを脱獄し、大魔王の部屋へ再び向かうことが可能だろうか? 気持ちを落ち着けて、荷物整理をする。なぜか背負い袋は取られなかったのは幸いだった。 槍が壊れ、先程使用した両刃の剣は奪われたので、予備の剣を取り出す。 この旅に出たときに携えた剣だ。刃先が鈍っていた(技量−1)ままだが、武器があるのは心強い。
次にここから脱出する道具がないか調べて見る。 銀の呼び子を吹いてバードマンに助けを求めるべきだろうか。 そう思ったときシーサチュロスからもらった精霊の瓶が目に付いた。力をこめて栓を抜くと、真っ白な煙が湧きあがる。 「人間か!」精霊は驚いたようだ。そして一度だけ願いをかなえてくれると言う。 俺の願いは「大魔王のいる場所へ戻してくれ」だ。 「本当にそれでいいんだな!」精霊はそう言ってなにやら呪文を唱え始めた。 なんだか気になる言い方だ。しかしそれ以上考える余裕はこの時の俺にはなかった。 ふわふわした煙は大きくなり、俺の全身を包み込み、そして何も見えなくなったからだ。
2002年12月22日(日) |
王たちの冠(スティーブ・ジャクソン/創元推理文庫) 冒険15日目─3ページ目 |
ちくしょう!罠だ。くそっ、大魔王は目の前だと言うのに。 部屋の扉は閉まってびくともしない。床がせり上がって頭上の天井がみるみるせまって来る。 思えば部屋に入ったとき壁一面に細かい擦り傷があったのを、不審に思わなかったのはうかつだった。 だが後悔してももう遅い!あと十数秒でペシャンコになってしまう! 苦肉の策にコレタスに祝福してもらった槍を取り出して床に立ててみる。 衛兵など一撃で葬り去るような魔法の槍だ。これなら床を止められるかもしれない。 すぐに穂先が天井にガキッ、と当たった。 大丈夫か・・・・・・槍は大きくしなると、そのまま折れてしまった!もう駄目だ!
天井までもう数十センチ。観念して目をつむったとき、床の上昇は止まった。 目を開けると部屋は書斎のような一室に変わっていた。机に誰かいる。 「罠にかかったのは何者だ?そうか、アナランド人だな」 こちらに向って腰掛けている男が、嘲るような笑顔でそう言い放った。 こいつが大魔王だ。奴にからかわれたのだ。 頭に血がのぼった俺はすぐに剣を抜いて男にせまった。 「そんなバターナイフで俺を殺せると思うのか?」 男はそう言い放つと両腕を動かす。同時に俺の剣が手から勝手に飛び出すではないか。 「それ、次はロープだ」 ロープが蛇のように宙を浮き、こちらに飛び掛る。たちまち縛られてしまった。 惨めだ。大魔王の呼んだ衛兵に引っ立てられ、俺は牢の中に閉じ込められてしまったのだ。
2002年12月21日(土) |
王たちの冠(スティーブ・ジャクソン/創元推理文庫) 冒険15日目─2ページ目 |
人気を避けながら歩いていると、ある部屋でバードマン達に出会った。 まずい。バードマンと言えば“王たちの冠”をアナランドから盗み出した種族ではないか。 彼らは俺を見て「何者だ?」とでもいった表情をしていた。 ここは得意のギャクでも言ってその場をごまかすべきだろうか?だが、先程ギャグが滑ってブラックエルフといらぬ戦闘になった事を思い出した。さりげなく世間話でもすることに決める。 「や、やあ。こんにちは。君たちの母親は元気かい」 バードマンは唖然とした。しまった、全然さりげなくない!不自然すぎる! しかし意外にも彼らの機嫌は良かった。 実は彼らはバードマンの中でも、マンパンの大魔王に不満をもっている一派だったのだ。 彼らは“銀の呼び子”をプレゼントしてくれた。助けが欲しかったら、これを吹けばいいと言う。 思わぬ幸運な出会いを喜びながら、彼らと一旦別れを告げ先に進む。
第3のスローベンドアを通過し、暗闇回廊の罠もくぐり抜け、衛兵隊長とも斬りあって砦の深部へと踏み込んでいく。 次の部屋に入ると、広々としたホールの向こうに最後のスローベンドアが見えた。 薄暗いのでよく見えないが真ん中に大理石でできた羊の像がポツンとある。妙に不自然な光景だ。 そのとき頭の中に蘇るものがあった。 ──眠れぬラム(=羊)を眠らすためには、シャムを探し出すがよい── 像から距離をおきながら歩いていく。耳を澄ませているとかすかに像のあたりから物音がした。 いや気がついたら、すでに羊は恐るべき加速をつけ、こっちに向かって突進してくるではないか! 運良く突進をかわすと、羊は大音響をたてながら壁に激突した。そして、くるりとまた俺の方を向く。おいおい、あんな突進をまともにくらったら命はないぞ。 軽いパニックに襲われながらも、俺は必死にシャムにもらった小さなガラス瓶を羊に投げつけた。 瓶は羊に当たって砕け、中味が降りかかると羊はよろめいて次の突進を止める。 だが効果は一瞬だ。羊はすぐに体制を整え始める。急がなくては! 夢中でスローベンドアに飛びつき、扉をくぐるとバタンと閉める。助かった。
さあ、これで最後の障害も乗り越えた。大魔王はもう目の前だ。
2002年12月20日(金) |
王たちの冠(スティーブ・ジャクソン/創元推理文庫) 冒険15日目─1ページ目 |
俺は夜の明ける前に目をさました。 いよいよマンパン砦に侵入する瞬間がきたのだ。 砦の外は無人だったので、見上げるほどの大きさの門の前で立ち止まる。 さて、どうしよう。 考えた末に門のひさしの上によじ登った。この作戦が当たればよいが。 ひさしの上から靴の先で扉を叩く。しばらく待つと音を聞きつけた門番どもが、外に出てきてあたりを捜索しはじめた。 うまくいった。そのスキにひさしから飛び降りて門の中に潜り込む。
しかし、ここからはうまくない。 たちまちブラックエルフや衛兵達に見つかって戦闘になる。 奴らを切り伏せると鍵が見つかった。この鍵を使い、さらに奥の大きな扉を開く。 扉の先は中庭のようだ。奥にさっきと同じような大きな扉が見えた。この扉──スローベンドアと言う──を抜けていけば、砦の中心部にたどり着けるようだ。そしてどうやら扉を抜ける方法は、各扉ごとに違うらしい。 ひとまず俺は砦の中庭にいる住民達に、紛れ込んで身を潜めようと考えた。 しかしサイトマスター達に正体を見破られてしまい、速攻で奴らを切り倒す。“七匹の大蛇”の報告は、やはり届いていたのだ。わかっていた事だが用心せねばならない。 ぐずぐずしてはいられない。俺は目に付いた裕福そうな奴を絞めあげて、次の扉を開ける方法を聞き出す。 こうして俺は2枚目のスローベンドアを突破した。
2002年12月19日(木) |
王たちの冠(スティーブ・ジャクソン/創元推理文庫) 冒険14日目 |
シーサチュロスの集落に呼ばれた他は今日はずっと歩きつづけた。また彼らには精霊の入った瓶と樫の木の槍をもらった。 そのあと出会った、聖人コレタスなる人物から受けた数々の祝福と助言のおかげもあって、夕方には目的地のマンパン砦の前にたどり着いた。 黒々とはるかに聳え立つ、邪悪なマンパン砦を見上げると畏怖の念すら感じる。 夜の闇に紛れて忍び込んだ方がよい気もしたが、そんな選択肢はなかった。まあ砦に住む人ならぬ生き物達は、夜の方が活動的かもしれないので、潜入決行は明日の朝と決める。 緊張からか今晩はこれ以上日記をかけない。 無理矢理でも少し寝ることにしよう。
(この先は文字の乱れと意味不明な箇所が認められ、書き手が興奮していたことを窺わせる)
今のは夢か。 悪夢を見ていた夢時間は瞬時に消え去り、神が私の前にあらわれたのだ。 HUGO HALLではない、正義の女神リーブラだ。 女神はおだやかな顔でこれからの危険について忠告をしてくれた。 そしてマンパン砦は黄泉の神々の力が強く、もう私─リーブラ様─に頼ることは出来ないと告げられる。 いいだろう。もとより神の奇跡を期待して冒険をしていたわけではない。ハリーリンドからグーニーズのヒントメールが届いたなどといった奇跡はそうそう起こるものではないのだ。それにしても返事を書かねば。 女神は期待しているのだ。そう思うと俺は無償に嬉しくなった。
2002年12月18日(水) |
七匹の大蛇(スティーブ・ジャクソン/創元推理文庫) 冒険13日目─2ページ目 |
沼地を抜け出す頃、沼コブリンの集団と出会う。 彼らは何か話したそうだったのだが、俺とは言葉が通じず、結局戦闘になってしまった。 死体となった奴らからは金貨や食料、そして謎の巻き物をいただく。まるで俺が野盗になったようで、あまりいい気はしなかったのだが旅を続ける為だ。リーブラ様も許してくださるだろう。 そう思ったとき、あたりに誰もいないのに、低い女の声が聞こえてきた。 ひぇ、ごめんなさいリーブラ様! 「こわがることはない、あなたに忠告を与えにきたのだ」 そう謎の声は言い、時の蛇を倒すヒントを残して消えた。 果たしてその忠告は的確だった。おかげでその後登場した、七匹の大蛇でも最強と言われる時の蛇を撃退することが出来たのだ。 いったいあの声は誰だったのだろう。
そして再び歩き始め、やがて足元が固い地面に変わった。もう低地ザメンあたりだろう。 峠を登ると、今夜のねぐらになりそうな洞穴がいくつか見つかったので、適当に選んで寝転んだ。 マンパン砦まであともう少しだが、結局月の蛇、地の蛇、陽の蛇を取り逃がしてしまったようだ。 当然報告は届き、警戒が厳重になってるだろうと考えると気が滅入る。しかしここで臆するわけにもいかない。景気つけにお気に入りのギャグでも考えて笑っておこう。
<アナランドジョーク> Q.なぜコブリンのウェディングケーキはスカンクの糞でできているか知ってますか? A.花嫁に悪い虫がつかないようにするためですよ。
ひぃ、こりゃ可笑しい!ワッハッハッハッハッハッハッハ
2002年12月17日(火) |
七匹の大蛇(スティーブ・ジャクソン/創元推理文庫) 冒険13日目─1ページ目 |
朝一番でイルクララ湖のほとりに俺は立って呼び子を吹いた。 あれ?音がしない。何度も吹いてみたが同じだった。 「わかったわかった、そうせかしなさんなって」 声のした方を見ると、藪の中から見るからに不潔そうな渡し守がやってきた。 ちゃんと聞こえていたらしい。 それにしてもこの男、こんなところで商売をして、一体どこで金を使うのだろう?まあ俺にはどうでもよいことだが。 言い値どおりに金貨4枚を前金で払うと、渡し守は藪から船を引きずり出してきて水におろした。 「手伝わんかい、このドアホ!さっさと漕ぐんだ」 なぜか急に渡し守の態度は、けんか腰になっていた。 金を払って、この扱いはない。俺も少々腹が立ったので、脅してやろうと剣を手にかける。 そのとき渡し守の体が船に崩れ落ちた。びっくりして見ていると、ガスが体から抜け出していくのが見えた。 ガスは渦をまきながら翼の生えた蛇となっていく。気の蛇だ。 しかし次の瞬間、俺は落ち着きを取り戻す。シャドラックに気の蛇の対処法は聞いてあったのだ。 俺が蛇の抜け殻を見つけ出して、ビリビリに引き千切ると気の蛇は悲鳴をあげながら消えていった。これで2匹目だ。
俺は一人で船を出して、ゆっくりと湖の中ををこぎ進めた。 このときピンチが訪れた。水面が泡立ったかと思うと、湖の中から水でできた翼ある蛇が襲ってきたのだ。 このとき水の蛇の弱点である油を俺は持っていなかった。 そうなったら水の体に武器攻撃が有効であることを祈るしかない。 俺は剣を抜き放ち、大きく斬りつけていった。幸いにして七匹の大蛇の中では、水の蛇は弱い部類らしい。何度も体を分断するように叩き割ってやる。水の蛇は何度目かの攻撃で力を失ったのか、水しぶきとなって消滅し湖に戻っていった。
再び船をこぎ始めると、今度は何事もなく向こう岸についた。 今日は休む暇もない。このまま湖周辺の沼地を横断して先へ進まなければいけないのだ。
2002年12月16日(月) |
七匹の大蛇(スティーブ・ジャクソン/創元推理文庫) 冒険12日目 |
森の小道を横切る小さな赤い蛇に出会った。 蛇は俺の目の前でするすると一本の木を登っていく。 この蛇が妙に気になった俺は、この木に登ろうと枝に手をかける。するといきなり視界が黄色くなった。 思わずわめき声を上げながら、俺は木から転げ落ちた。唐突に発生した炎に包まれて火傷をしてしまったのだ。 木を見上げると、青々としていた木は黒焦げになっており、てっぺんには翼をもった大蛇が、こちらを見つめている。 ついに出たぞ。こいつは火の蛇だ。 しばらく睨み合う、俺と蛇。 まともに戦ったら強敵だ。なにか弱点はないだろうか。俺は視線を逸らさずに背負い袋の中をまさぐった。 あるものが手に触れる。これか。バクチだが奴に効くかどうか試してみよう。 そして俺はもう一度慎重に蛇の待ち構える木を登り出す。 火の蛇が跳ねて地面に落ちた。今度は木の下から俺をバーベキューにするつもりらしい。 俺も素早く飛び降りて再び睨み合う。焦れてきたのか蛇は翼を広げて威嚇してきた。 しかしそれこそ俺の狙った瞬間だった。カーレで手に入れた砂の入った瓶をとりだして、蛇に中味を振りまけたのだ。 悲鳴が聞こえ、蛇は最初の小さな姿に戻った。うまくいったぞ。 素早く躍り掛かった俺は、剣で蛇の体を真っ二つにした。まずは一匹目だ。
森の中を抜ける途中、フェネストラというブラックエルフの魔女に出会った。 縁があるのか今回の旅は本当に魔女とよく出会う。 彼女は警戒しているようだったが、七匹の大蛇の弱点を教えてくれた。 陽の蛇は水に弱く、水の蛇は油に弱い。 そしてやはり火の蛇は砂に弱かったらしい。俺のカンもたいしたものだ。 さらに彼女はこの先のイルクララ湖で渡し守を呼ぶ“呼び子”を俺にくれた。礼を言っていとまを告げる。 イルクララ湖はもう目の前だ。
2002年12月15日(日) |
七匹の大蛇(スティーブ・ジャクソン/創元推理文庫) 冒険11日目 |
シャムには今朝会うことができた。この混沌の地域では珍しく、彼女は邪悪な存在ではないようだ。 ちょっとした贈り物をすると、彼女から小さなガラス瓶をお礼にもらった。マンパンの砦で“眠れぬラム”に出会ったら使えという。中味はよくわからないが大事にとっておこう。
昼は原住民のようなクラッタマンの集落を通り過ぎ、そこで火であぶった肉とお茶のようなスープをごちそうになる。 食べ終わった後に、クラッタマンのチャンピオンから戦いを挑まれたが俺の敵ではない。倒した後は住民の雰囲気が怪しくなったので早々に立ち去った。 荒野を抜けスナッタの森までやってきたところで、空気が冷たくなる。もう夕方だ。 シャムとの別れ際に、すぐ先に地の蛇がいると警告してもらったが、結局今日は大蛇に会えなかった。もしかすると、とり逃がしたのかもしれない。 夜露のしのげる場所が見つかったので、腰をおろす。今日の寝場所はここにしよう。
2002年12月14日(土) |
七匹の大蛇(スティーブ・ジャクソン/創元推理文庫) 冒険10日目 |
朝になり俺はシャドラックに分かれを告げ、再びバクランドを歩き始めた。 今日はかなりの強行軍になると覚悟していたが、うまい具合にやってきた半人半馬のケンタウルス達を言いくるめて彼らの背に乗せてもらう。 奴らにはお礼に嘘っぱちの幸運の魔法をかけてやった。おめでたい奴らに幸運を!
やがてブラックエルフの隊商がいる付近まで移動したところで、俺は降ろしてもらう。 ブラックエルフと交渉をして、俺は商品を並べてある幌馬車の中に入れてもらった。 食料品などは是非買っておきたいが、今の手持ちの金貨は7枚しかない。 そこでかわりに旅の道中に入手した緑の毛のかつらや、疾風の角笛など、戦士の俺には使い道のない品物を売って次のものと交換してもらった。 ─ヴィトルという固い干し肉が入った小さな丸パンを4食分 ─鎖かたびら ─解毒剤 ─バクランド地方のことを書いた羊皮紙。
買い物を終え隊商から離れた俺は、しばらく歩いてからキャンプの支度を始めた。 ヴィトルをかじりながら、隊商で購入した品をチェックする。 鎖かたびらはなかなか質が良く掘り出し物と言えそうだ。 解毒剤は万一の備えの為だが、はたして七匹の大蛇達は毒を持っているのだろうか? そもそも七匹の大蛇は今どのあたりにいるのだろう? 羊皮紙の方はほとんど読み取れないが、助力を得られるかもしれないシャムと言う魔女の住処について書かれていた。明日になったらそこを尋ねてみよう。 いろいろ考えてもしかたがないので、今日はもう寝ることにする。
2002年12月13日(金) |
七匹の大蛇(スティーブ・ジャクソン/創元推理文庫) 冒険9日目─3ページ目 |
荒涼としたバクランドに入ってほどなく、俺はアナランドからの使者によって、俺の使命が敵の密偵にばれてしまったことを告げられた。 現在は“七匹の大蛇”が大魔王に報告すべく、ここバクランドを横断してマンパン砦へと向かっているという。 このままではマンパン砦の警戒は厳しくなり、使命の達成はさらに困難になる。なんとかして、これら使者達を退治しなければならない。
俺は使者からの助言にしたがい、魚尾岩に住むシャドラックなる老賢者に会いにいき七匹の大蛇についての助言を受けることになった。 七匹の大蛇とは、かつてマンパンの大魔王が強敵のヒドラを退治したときに、切り取った七つの首を黒魔術で蘇生させた生き物らしい。 大蛇達にはマンパンの神々の力の一部が与えられ、それぞれに火の蛇・水の蛇・地の蛇・気の蛇・陽の蛇・月の蛇・時の蛇と呼ばれているそうだ。 まるで神話のような話しだ。もちろんどの大蛇も強敵なのだろう。 しかし彼らはそれぞれ何かの弱点を持っているという。希望を失うのはまだ早い。
ありがたいことにシャドラックは夕食と今夜の寝床を提供してくれた。 思えばカーレの宿から、今日は長い一日だった。 明日からの強行軍にそなえ、今夜はぐっすり眠ることにしよう。
2002年12月12日(木) |
城塞都市カーレ(スティーブ・ジャクソン/創元推理文庫) 冒険9日目─2ページ目 |
無事に牢を脱出した俺は市場へと向かい、両刃の剣と銀の弓矢を購入した。 新しい剣は使いこなすのが少々難しそう(技量−1)だが、その分破壊力が大きい(ダメージ3)ようだ。切れ味の鈍った今の剣(技量−1、ダメージ2)よりは良いだろう。 また、銀の弓矢を選んだ理由は「銀の武器を見かけたら、あとで普通の武器では倒せない敵と遭遇する可能性がある」という“冒険者の鉄則”にしたがっている。 本当は、バクランドの旅に備えて食料品も仕入れたいのだが、1食分の食料が金貨3枚と恐ろしく値が高いので、あきらめざる得なかった。少々この先が心配になる。
そのあと町の外れにあった墓室に潜入し、出現した死霊を銀の弓矢で退治すると、老人が現れて開門の呪文を一行と謎の詩を教えてくれた。謎の詩の内容はこうだ。 ──眠れぬラムを眠らすためには、シャムを探し出すがよい── よくわからないが覚えておこう。 どうやら“冒険者の鉄則”「あきらかな罠を除き、用がなくてもなるべく寄り道をすること」はここでも通用したらしかった。 それから時間もたたずに、思いもかけぬ人物から残りの一行を教えてもらう。これで呪文は完成だ。
こうして夕方になるころ、俺はカーレの北門まで辿り着いたのだが、困ったことに気づいた。 ──集めた四行の呪文は、どんな順番に唱えるのだろうか?── 迷ったがもう時間もない。 今日はカンが冴えていることに期待して、それらしく呪文を並べ替えて唱えてみた。 すると、やった。分厚い扉がきしむような音をたてて開いたではないか。 俺はついにカーレの街を越え、バクランドへの道を踏み出したのだ。
2002年12月11日(水) |
城塞都市カーレ(スティーブ・ジャクソン/創元推理文庫) 冒険9日目─1ページ目 |
まだ午前中だが、また牢に入れられて暇だから日記を書く。 いやなに鍵は開いていてもういつでも脱走できるが、用心のため門番が眠るまで待っているのさ。
今朝、宿屋の一室で目が覚めると、頭の上にギロチンの刃が見えた。それに体はベットに皮紐で縛り付けられている。 そばで宿屋の主人が笑っていた。 見ると左手にロープが結わえてあり、そのロープはギアで作られた複雑な機械につながっている。 手首を抜くか引っ張るかのどちらかで、ギロチンが引き上げられるか落ちるかが、すなわち俺の生死が決まるようだ。 この危険過ぎるゲームになんとか勝った俺は、急いで宿屋を出て、ハーバーブリッジを渡る。 俺が、一瞬でもカーレをそう悪くない街だと思った昨日の自分を激しく呪ったのは、言うまでもない。
このあともひどい目にあった。レッドアイという種族が住む区画に入ったとき、奴等になんくせをつけられて牢に閉じ込められたのだ。 さらに先客の小さな妖精──シャムタンティの丘で迷惑した連中の種族だ──の話しによると、この牢に入れられると当分釈放は見込めそうにないという。 どうにも手詰まりだ。しかたがなく最後の手段として、俺はリーブラ様に祈った。 その願いは聞き届けられたらしく、カチッと音がして牢の鍵は開いたのだ。 やれやれ、これで当分女神の助力は仰げないだろうな。
2002年12月10日(火) |
城塞都市カーレ(スティーブ・ジャクソン/創元推理文庫) 冒険8日目 |
翌朝になって俺は釈放された。 カーレの権力者に会うと言っても特に行くあてがあるはずもない。 適当に道を選び、小さな小屋の並ぶ通りを歩いていくと、酔っ払いがどぶに頭を突っ込んで寝ていた。 起こしてやろうとしたら、驚いたことにその正体はゾンビだった。そして腐った体で襲い掛かってきたから、たまらない。 撃退すると、近所の人からお礼にと金貨5枚と玉石や砂入りの瓶(海の遠いカーレでは貴重な品らしい)をもらった。 それにしても何で街中にゾンビがいるんだよ。まったく。
やがてお祭り騒ぎをしている広場に辿り付く。ここで3日前に出合ったフランカーと再開する。 彼は学者であるロータグ長老の家へ案内してくれ、ここで開門の呪文を一行だけ知ることができた。 ありがたい。情けは人の為ならずとはよく言ったものだ。
屋敷を出て、再び通りを歩く。 このあと立ち寄った教会でも、呪文の一行を教えてもらえた。 ここの神父はユーモアのあるなかなかの好人物だ。そばにいた街の信者達も俺の無事を祈ってくれた。カーレの街もそう捨てたものではないな。 そんなことを思いながら、夕方になり旅の宿に落ち着くことにした。 注文した食事が出てくるまでの間に、この日記を書き終えることにしよう。 今夜は部屋をとってぐっすり眠ることにしようかな。
2002年12月09日(月) |
城塞都市カーレ(スティーブ・ジャクソン/創元推理文庫) 冒険7日目 |
今朝は村人に見送られながらスヴィンの村を出発したのだが(ジャンは、スヴィンの祈祷師が追い払ったのでもういない)、城塞都市カーレの入り口で門番に捕まってしまった。 そんなわけで今夜も牢屋のなかでこの日記を書いている。噂に「靴紐一本のために殺人が行なわれるような荒くれた港町」とは聞いていたがいきなりこれだ。 牢獄で先客にいた爺さんが「カーレに害のある人物でないとわかれば直ぐに釈放されるだろう」と慰めてくれ、さらに重要な情報を教えてくれた。 それはカーレの北門(バクランドへ向かう門)は外敵へのそなえの為に、魔法によって封印されているという事だ。 開門の呪文は、カーレの権力者達が一行ずつ記憶していると言う。つまり、先に進む為には権力者達に会い、その呪文を教えてもらう必要があるらしい。 面倒な話しだが、この先を横切る広大なジャバジ河を渡る橋は、カーレの中心部に建てられたハーバー・ブリッジだけだ。旅を続ける方法はそれしかないようだ。
ただ、この危険な街では油断が出来ない。たとえ、目の前の親切そうな爺さんでも同じだ。 警戒して今夜は夜通し起きておくことに決める。
2002年12月08日(日) |
魔法使いの丘(スティーブ・ジャクソン/創元推理文庫) 冒険6日目─2ページ目 |
マンティコアの恐るべき強さは、戦い始めて直ぐにわかった。 見たところマンティコアの技量は12ポイントで、さらに猛毒の尻尾による致命傷の可能性すらある。 対する俺の技量は、装備による修正を含めても10ポイントしかない。体力も万全ではない。 この世界に生きるものなら、いかに絶望的に不利な戦いであるかがわかるだろう。 しかし生き残る為には勝つしかないのだ。
俺は夢中で剣を2度3度と振り下ろす。力量の差にもかかわらず最初から2回連続でマンティコアを切り裂いた。 傷を深めようと運試しをするとこれも連続で成功。一気にマンティコアの体力を半分近く削り取った。 しかし、ここでマンティコアの尻尾が振りかぶって、かわす暇もなく2度も俺に突き刺さる。 幸い毒には侵されなかった。 これでこの戦いで4度目の幸運だが、少々運に頼りすぎたようだ。次からの幸運はもう期待できないだろう。
その後は、お互いに剣と爪で引っ掻きあう小競り合いが続く。だが、俺の攻撃がなかなか当たらないのに対して、マンティコアの方は確実に俺を傷つけてくる。 もうだめだ。俺は必死に正義の女神リーブラに祈った。 ───まだ負けられない。おれには使命があるんだ。リーブラ様、俺に助けを! そう心で叫ぶと同時に奇跡はおこった。疲れと傷が潮を引くように消えていったのだ。 女神が願いを聞き届けてくれたらしい。 おれは必死に戦った。毒を一度くらい、新たな傷を負いながらもマンティコアの体力を着実に削っていく。 それは、俺にも滅多に経験のない死闘となった。
そしてお互いの体力が1ポイントまで減って、あと一撃で勝敗が決まるとき。 マンティコアは恐ろしい勢い(サイコロの目が9)で突進してきた。 もう駄目だ!(こちらがサイコロで11以上の目を出さないと死亡だから) 俺は夢中で一撃を繰り出すと、(サイコロの目は、なんと12!)剣はマンティコアの顔を貫いた。 力の抜けたマンティコアの死体から、剣を抜いて俺はホッと安堵の息をついた。
娘と共にスヴィンの村に帰った俺は、村の大歓迎を受けた。 傷の手当てを受けながら、今日だけはゆっくり休もうと心に決める。 この先の冒険はさらに危険が待ち受けているのだから。
2002年12月07日(土) |
魔法使いの丘(スティーブ・ジャクソン/創元推理文庫) 冒険6日目─1ページ目 |
朝になると、俺の前にスヴィンの酋長がやってきてプロセウスと名乗った。 彼は俺を拘束した非礼を詫びながら、召し使いにパンとミルクを運び込ませた。 夢中で朝食をとっている俺に、プロセウスが事情を説明する。
「私の唯一の跡継ぎである、年端もいかぬ娘がさらわれてしまった。略奪者は娘を、洞窟に住む恐るべき悪鬼の生け贄にするつもりなのだ。旅の人、あなたこそ我々の闘志たるお方。どうか、わが跡継ぎを救出してほしい」
これを聞いて俺は思わず躊躇する。まだ体調が万全ではないのだ。 しかし、プロセウスのお願いは一見丁重ではあったが、どうにも選択の余地はないようだ。村人がまわりを固めていて逃げられそうにない。 しかたなく俺は、村人たちに悪鬼の住むと言う洞窟まで案内され──というより連行され──真っ暗な洞窟の中へ入っていった。 隣のジャンを見れば、奴も緊張しているのかすっかり無口になっている。 村人から火口箱と松明を受け取ると、明かりをつけそろそろと進み出す。
しばし洞窟の中を歩くとすすり泣きが聞こえてきた。 みるとスヴィンの娘ではないか。 思ったより簡単に見つかった。軽い驚きと安堵を感じながら、娘になぐさめの言葉をかけると、娘は俺にしがみついてきた。 そのとき、背後から轟音が聞こえてくる。 あわてて振り替えると、なんと土砂崩れだ。通ってきた出口への道が塞がれてしまった。 もはや他の出口を期待して、さらに洞窟の先に進むしかしかたがない。
幸いそれから時間もたたぬうちに、前方に出口らしき光が見えた。 だが良いことばかりでもない。村人の言っていた悪鬼もそこで待ち構えていたのだ。 巨大なライオンの体に老人の顔、猛毒のサソリの尻尾をもつ化け物。マンティコアだ。 迷う暇も選択の余地もない。俺は剣を振りかざしてマンティコアに突進していった。
2002年12月06日(金) |
魔法使いの丘(スティーブ・ジャクソン/創元推理文庫) 冒険5日目 |
どうなっているんだ。今晩は牢の中で過ごすなんて。 スヴィンの村で村人相手に、自分の冒険談をちょっと自慢したら、なぜか村人達に取り押さえられちまったよ。 しょうがない。明日になれば事情もわかるだろし、もう日記を書いたら寝てしまおう。
今日の道中は、一度追いはぎに襲われたくらいで、比較的平穏だった。 剣でねじ伏せ、殺さずに許してやると、追いはぎは──フランカーという名前だそうだ──ひざまついて感謝した。この先の城塞都市カーレで会った時は、味方になってくれるそうだ。 まあ、あてにはならないと思いつつ再会を誓って分かれた。 あとは、老婆からお茶の招待を受けたくらいだね。なんとその婆さん、旅の最初に老人から手に入れた“魔法の書の1ページ”の元の所有者だったのさ。 もう婆さんは大喜び。世間は意外と狭いね。 どうやらジャンは婆さんを嫌がっていたようだが、お陰でいい休憩になった。 そして辿り着いたのが、スヴィンの村なのだが、後は最初に書いた通りさ。 ちくしょぉ。昨日も何も食べてなかったのに、もう腹がペコペコだよ。 まだ戦いではたいした傷は負ってないのに、体力が落ちちまってるよ。
2002年12月05日(木) |
魔法使いの丘(スティーブ・ジャクソン/創元推理文庫) 冒険4日目 |
朝の間は、急な斜面を小休止をとりながら登っていく。 ようやく丘の頂上につくと、一望のもとにシャムタンティの美しい自然が見え、道の先にはほったて小屋の並んだ汚い小さな村が見えた。 伝染病の蔓延した村らしく、慌てて村を通りぬけ丘を下る。
夕方になったころ、親指くらいの大きさで透き通った羽を持つ、人間型の生き物がやってきた。 馴れ馴れしく自分はジャンだと名乗ってくる。俺と道中を共にしたいらしい。 話し相手には退屈しないだろうと思い、ジャンを肩にのせてシャムタンティで最大の村、ビリタンティに向かった。
辿り着いたビリタンティの村は子供たちがはしゃいで賑やかだった。 ジャンの説明によると、今日はちょうど年に一度の村のお祭りらしい。 まず俺は薬効のあるというこの村の名物“クリスタルの滝”に向かった。 鍾乳石のたれさがった景観を見ながら、滝にうたれていると疲労がすっかり回復する。 しかし観光地のようなこの村では、宿代が金貨5枚、食事代が金貨4枚と物価が高い。 しかたなく、また村の外れで野宿にすることにした。 腹は減ったがこの村は治安が良いので、今夜は安眠できそうだ。 日記を書きながら見ると、既にジャンは俺の傍で丸くなって寝ていた。
2002年12月04日(水) |
魔法使いの丘(スティーブ・ジャクソン/創元推理文庫) 冒険3日目 |
3日目の夜も野宿だ。 ダンパスという村で夕食をとったあと、村外れの森に寝床を作る。 今日の昼間にアリアンナという奇妙な女に出会った。自宅の中で檻に閉じ込められていたのだ。どうやら昨日の妖精どものせいらしい。 剣で鍵を叩き壊して助けてやると、女から感謝の気持ちとして「剣術熟達の腕輪」をもらった。 これを装着すると、剣さばきの技量が+2もあがるという魔法の品らしい。 しかしあの女、「ただで褒美はあげませんわ」と、呪文を唱えて俺にウッドゴーレムをけしかけやがった。 ゴーレムを叩き割って逃げ出したが、一体なんだったのだあの女は。
(この日の日記には、さらに翌日になって書き込まれたような跡がある)
深夜にウルフハウンドが、襲い掛かってきた。油断せずに眠りを浅くしていたので、遅れをとることなく撃退する。 ただ「剣術熟達の腕輪」の効果は確かなようだが、鍵を壊した時に剣がなまってしまったようで切れ味が悪い。 ダンパスで店を探し、新たな剣を買い求めておくべきだったかもしれないが、後戻りは出来ないのがつらいところだ。
2002年12月03日(火) |
魔法使いの丘(スティーブ・ジャクソン/創元推理文庫) 冒険2日目 |
川岸に急場でこしらえた寝床の中で、俺はウトウトしていたが、妙な声で目がさめた。 見ると小さな妖精が3人、川魚めがけて石を投げては遊んでいる。 息を殺していると、運が良かったのか妖精たちはこちらに気がつかずにそのうち行ってしまった。
朝になり、寝不足のまま立ち上がって旅を再開する。 しばらく歩くと人気のない小さな村にたどり着いた。妙だ。 ある小屋を物色していると、心地よい音楽が聞こえてくる。音楽に魔法でもかかっていたのだろうか、それとも寝不足のせいなのか?不覚にも俺はいつの間にか寝入ってしまった。
気が付くと俺は手をしばられ、昨日出合った妖精の仲間達に囲まれていた。 冷や汗がでるが、幸い妖精たちは俺を無害な人間だと判断したらしく、ほどなく自由の身にしてくれる。ただし買い込んだ食料は、全て没収されたうえでだ。 さらに村を出て森に入ったところで、妖精たちがドングリを雨嵐と投げつけてきた。両手で頭をかばいながら前進する。
森を抜ける頃にはさすがに妖精の姿は消え、やがて人の住む村にやってきた。 酒場で休憩をしたあと、野宿に適当な場所を探す。宿に泊まりたいが金貨も節約したかった。 食料を取られたので、すきっ腹を抱えたまま木の下で落ち着くことにする。 まったく、今日はひどい目にあった。恐ろしい怪物を相手にするのも避けたいところだが、妖精にからかわれるのもそれ以上に嫌な気分だな。
2002年12月02日(月) |
魔法使いの丘(スティーブ・ジャクソン/創元推理文庫) 冒険初日 |
目がさめた俺は着替えをすませ、山羊の乳とパンの食事をとり、支度を済ませた。 持ち物は剣と皮鎧。食料2食分が入った背負い袋。支度金として金貨20枚も用意した。 アナランドの前哨部隊がいる居留地に向うと、見張り役のサイトマスターの軍曹が正義の女神リーブラの加護を祈ってくれた。
さあ、いよいよ出発だ。 今日は晴れ渡って遠くの丘を美しく朝日が染めていた。とても死地に赴く冒険には思えない光景だ。 俺は皆と別れ、一人で道を歩き始めた。
小一時間ほど歩き小さな集落で、昼食をとり食料を買い込んだ後は、谷に沿っている道を選んで進む。 そのまま日が暮れるまで歩き、野宿の支度をした。 道中で木から降りられなくなった老人を助けるパプニングがあった以外は、平穏な初日だった。この調子で続けばよいが。 それから老人から礼にと、魔法の書の1ページを貰ったが役にたつのだろうか。
2002年12月01日(日) |
魔法使いの丘(スティーブ・ジャクソン/創元推理文庫) 冒険前夜 |
(ある冒険者の残した手記より)
今夜、俺は小さな小屋の中で、この日記をしたためている。 明日から俺は、はるか遠い───“シャムタンティの丘”を越え、“城塞都市カーレ”の橋を渡り、広大な荒地の“バクランド”の向こう───“マンパン砦”まで出向き、奪われたアナランドの宝「王たちの冠」を取り戻す旅に出るのだ。 それは、おそらく今まで経験したのどの旅よりも、格段に危険なものになるだろう。 それでも俺は失敗できない。そうなれば「王たちの冠」の力の加護を失った、アナランドの平和は間も無く崩壊する。 俺は戦士だから、面倒な魔法の復讐など必要ない。 これを書き終えたら。英気を養う為にすぐに毛布にくるまって寝るつもりだ。 机のそばの羊皮紙をチラリと見る。 俺がこの冒険に志願したときの試験の結果が書いてあった。
────── 技量点 9 体力点 18 運勢点 9 ──────
そう素晴らしい成績でもなかったな。しかし、能力値が高い奴が一番でもないだろう。 そう、選ばれたのは俺だ。必ず成功させるよ。 生きて帰ったら、ふふっ。この日記は吟遊詩人たちがさぞ読みたがって、奪い合いになるだろうな。
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