酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2007年09月28日(金) 『メタボラ』 桐野夏生

 ココニイテハイケナイ・・・そんな強迫観念で逃げ惑う<僕>には記憶が無かった。偶然出逢ったやはり逃げている俺をジェイクと呼んでくれと言う男からギンジと命名される。妙な男ふたりの旅が始まった。一緒に女の家に転がり込むも、いつしか別れるふたり。そして再会した時に・・・

 いやはやこれはなんと言っていいのやら(お手上げ)。桐野さんの作品を読む時にはアル種の覚悟がいる。たぶんおそらく綺麗にまとめてはくれないから。なんやそれ!?的なエンディングに何度突き放され放心したことか。んで今回は覚悟を持って挑むも・・・あのあっけないラストにはヤッパリ参っちゃったなぁ。そらないぜー。なんと言うか逃げる男の今と過去をフラッシュバックさせて見せるロードムービーのようだった。ウマイはウマイ。限りなく力がある。でもやっぱりなんか呆けると言うか奪われた感が残る。悲しいんだよなぁ。

 僕は薄闇の中で、額の汗を拭った。僕の脳味噌がまたも蠢きだしたのだ。何と薄気味悪いことだろう。僕は自分自身を持て余して、溜息を吐いた。

『メタボラ』 2007.5.30. 桐野夏生 朝日新聞社



2007年09月27日(木) 『片耳うさぎ』 大崎梢

 蔵波奈都は崖っぷちにいた(精神的に)。諸事情で父の実家に居候しているのだが、父は仕事のことで奔走し、母は自分の親の具合が悪くなり看病に行ってしまった。・・・奈都は居候している屋敷にひとりきりになってしまうのだ。あんな古くて大きな屋敷にひとり。親戚や御手伝いさんがいるものの、居候の身としては頼る人もいない。そんな奈都に助っ人が現れた。その人はトテモ美人な‘さゆり’さん。中学生のおねぇさんの‘さゆり’さんは奈都には頼もしい存在になるはずだったのだが、実はコノ‘さゆり’さん・・・

 にゃはは。可愛い小学生とお騒がせな中学生の美少女が古くて大きなお屋敷を探検するの! なんとまぁ魅力的な設定であろうか。想像してドキドキわくわくしちゃったわ。無条件にスキ。想像の翼が思う存分に広がった〜。この大崎さんて作家さんは外せないなぁ。もう少し毒があってもいいのだケレドモね。でもまぁこの作家さんの持ち味はハートウォーミングだろうから。

 行けそうで行けない。拒絶されているようで、くやしいような、もどかしいような。手を伸ばせば届きそうなのに、ここからはどこにも通じていない。

『片耳うさぎ』 2007.8.25. 大崎梢 光文社



2007年09月24日(月) 『聖なる黒夜』 柴田よしき

 柴田よしきさんの小説をハジメテ読んだのは『RIKO』だった。ハードな女刑事にメロメロ。正直、作者が女性だとは知らなかった頃のこと(笑)。そのまま柴田作品を読むようになり、練ちゃん(山内練)に出会った。練ちゃんは美形のワルで男でも女でも喰っちゃう見境の無い淫乱魔人。なのに何故だか魅力を感じてしまった。その練ちゃんがそんな練ちゃんになってしまった人生を壮絶に描いたのがコノ『聖なる黒夜』だー! 夜中にふと練ちゃんに逢いたくなって久しぶりに読み返した。読み返してドップリその世界にはまり込んでいた。練ちゃんってのは悪に染まったからこそ美しく映えてしまった。ごくたまにそんな奴がいる。不思議だよねぇ。それにしても麻生さんて生粋のマゾだよねぇ・・・。

おまえらの関係は、いびつ過ぎる

『聖なる黒夜』 2002.10.5. 柴田よしき 角川書店



2007年09月22日(土) 『退職刑事』 永瀬隼介

 刑事とか先生とか、その昔、聖職と言うイメージだった。それが昨今では聖なるイメージは地に墜ちている。そういう立場にある人のスキャンダルは人の目を引き、叩きやすいから気の毒と言えば気の毒。特に警察の不祥事は世界一安全な国という神話すら自分の手で崩してしまっている。すごく残念。
 この『退職刑事』は様々な理由で退職した元刑事たちの物語。人間臭くてやりきれないものが多かった。なんだか胸に痛かった〜。やるせないなぁ。一番面白かったのは「神隠しの夜に」だった。日本独特の背景と事件。あったかもしれない事件だ。悲しい事件。真相を知らずにいたほうがいいこともあるように思ってしまった。

「生徒たちが、都会からやってくるホラー映画や怪談話に盛り上がっているのを見ると、背中を押してやりたくなりますよ。周りの山へ行ってみたらいい。生身の人間による怖い話がいっぱい転がっているから、と」

『退職刑事』 2007.8.10. 永瀬隼介 文藝春秋



2007年09月21日(金) 『オトシモノ』 福澤徹三

 高飛車な女王様っぷりが似合う若手女優の沢尻エリカ様、言葉使いに時々「ん?」と感じるものの、姿カタチの美しさに今一番メロメロ〜なの。そのエリカ様が主演したホラー映画『オトシモノ』はトッテモ観たい!のだケレドモ、いつもレンタルされていてまだ観れずx なので原作を読んでみた。
 ここ最近ずっと集中してホラーを読みつつ、なかなか怖いと思える作品は少なく、これもたいして期待してなかった。そのいい加減っぷりがかえって良かったのか、結構面白かった。ちょっと引っかかる点はあったケレドモね。
 自殺の多い路線・・・この設定が既に不気味。こういうのありそう。主人公の奈々の周りで自殺や失踪が相次ぎ、共通していることは利用する駅でオトシモノを拾っていること。そしてそのオトシモノは同じものなのである。ありがちな設定なのだケレドモ、何年も同じオトシモノを利用者が次々と拾得するってなんだかかなり不気味。そのオトシモノを拾ったばかりにヘンなモノに引き寄せられてしまう。
 そのオトシモノの持ち主になにかがある・・・なんて当然の流れ。でもそれだけじゃなかったところが面白くもあり、引っかかる点でもあった訳なの。その引っかかった大元の不気味を流してしまった点が小説ではまずかった! あれは解明しなきゃー! そして解明してあんな大雑把な始末のつけ方ではなくキッチリしなきゃ駄目ダメだめー。
 なーんてここまで語るほどには面白かったのである。うむ満足v

 べつにオカルト好きなわけでもないし、なにかを信仰しているわけでもない。
 けれども、この世界に人間の理解を超えたものがあるのは、当然のような気がする。


『オトシモノ』 2006.9.10. 福澤徹三 角川ホラー文庫



2007年09月20日(木) 『コールドゲーム』 荻原浩

 高3の夏休み、光也は進む道が見つからない。甲子園の夢破れ、野球部を引退。母には進学を勧められているが決められない。久しぶりに幼馴染・亮太に呼び出された光也は厭な話を聞く。中学生の時の同級生が次々と襲われている。亮太が言うにはトロ吉の復讐ではないかと。トロ吉は亮太を筆頭にいじめに壮絶な遭っていた少年だった。亮太と共にトロ吉を探しはじめる光也が辿り着く真実とは・・・。

 なんともぎちぎちと心に痛い物語。おそらく読む人は主人公の光也にかなり感情移入出来るのではなかろうか。光也は亮太のようにいじめをしてはいなかった。だがいじめを止める事も出来なかったのだから・・・。このことに対する作者の糾弾は的を射ていると思う。またいじめられた少年に対する作者の批判(意見)もソノ通りだと思う。誰だってスケープゴートの代わりにはなりたくない。その心根が問題なのだとは思う。思うケレドモ・・・壮絶ないじめの対象にはなりたくない。堂堂巡りだ。主人公の光也が最後に自分の罪を自覚して誓うシーンがあって、その言葉の強さには違和感が・・・。もう少し違うカタチにおさめられなかったのか、と。若さゆえのあの語気の強さなのか? 本当に痛みを感じたのであればもう少しもう少し柔らかな言葉になるのではないか、と思ったのだった。

 トンボの羽根をむしるのと人の命を奪うことの区別がつかない、頭の中味はガキで、体だけ鍛え上げられた完全武装の兵士。そんな人間を想像して光也の心臓はスピードを速めた。しかもそうしてしまったのは、自分たちなのだ。

『コールドゲーム』 荻原浩 新潮文庫



2007年09月18日(火) 『顔なし子』 高田侑

 父が連れてきた美しい女と女の息子。母の喪も明けぬうちに美しい女に狂った父親に反発を覚えるが、美しい女に少年らしい憧れを抱く。しかし、その女の息子は表情の少ない不気味な少年だった・・・。その美しさゆえに男たちから卑猥な欲望の的に晒された女を待つ運命は。そしてそのために女の息子は・・・!?

 昭和と言う時代がもう懐かしいものになってしまった。特に昭和の初期なんてものすごく昔のことなのだろうなぁ。郷愁を誘う物語の中で悲しくも恐ろしい事件が起こるのだケレドモ・・・怖いと言うよりも哀しい切ないなのかもしれない。こういうことあったかもしれないなって、そんな哀しい日本のある時代の物語。

「女のいじめはこえぇんだ。上っ面で優しいような顔をして、深いところを抉るんだで」

『顔なし子』 2007.8.25. 高田侑 幻冬舎



2007年09月17日(月) 『禍家(まがや)』 三津田信三 

 貢太郎は事故で両親を亡くし、祖母に連れられ引っ越してきた。この町は初めてのはずなのに何故だか知っている気がするのは何故だろう。なにか異様なオーラを放つ森、そして初めて会ったはずのお爺さんに言われたのだった。「ぼうず、おかえり・・・・・・」と。混乱する貢太郎を待っていたのは貢太郎がひとりになると怪異の起こる家だった・・・!?

 怖い目に遭いたい訳ではないのだケレドモ、ホラーな世界には何故だかものすごく惹かれてしまう。でもなかなか満足する怖さにはお目にかかれない。そんな不満の中で読んだ『禍家』は優れものだと思った。最初からセピア色した懐かしい怖さ満載で。主人公が理不尽な目に遭うことがホラーの王道なのかもしれないなぁ。貢太郎は頑張ったよー。

 しかし、ここにあるのは、救いようのない絶望、理不尽なまでの優越、底無しの悪意、圧倒的な狂気、身の毛もよだつ憎悪、あまりにも身勝手な殺意・・・・・・。

『禍家』 2007.7.20. 三津田信三 光文社文庫



2007年09月16日(日) 『ハッピーエンドにさよならを』 歌野晶午

 歌野晶午さんの珠玉の短篇集〜v イエーイv 次は?次は?とワクワクしながらページをめくったわ。面白かったなぁ。本タイトルの『ハッピーエンドにさよならを』は短篇に通じるハッピーエンドの無さのこと。いやぁツライくらいに容赦のないエンディングでベリーグー。中でも「死面」の情景が頭の中に浮かんで不気味でたまらなかった〜。やっぱり短篇で力を見せ付ける作家さんていいなぁ。オススメv

 そうかもしれないし、そうでないかもしれない。今となってはどうでもいいことだ。

『ハッピーエンドにさよならを』 2007.8.31. 歌野晶午 角川書店



2007年09月15日(土) 『六月の桜 −伊集院大介のレクイエム』 栗本薫


※思いっきり内容に触れますのでご注意ください!

 いやぁ・・・伊集院大介と言うだけで読まずにいられない。それくらいの魔力を持っている作家さんである。が、しかし・・・これはどーだ(謎)。孤独な11歳の少女が孤独な老人と出会い互いの存在に癒される。そしてふたりは淫らな関係になるんだよ? 11歳の少女が77歳の老人に・・・だよ? それは想像するにおぞましかった。しかも事件は犯人も動機もまるわかりなのだもの。これはどーだぁ?と口に出しながら読んだー。伊集院さんの口を借りて栗本さんが言いたいことはワカル。それはもうよーくワカル。でもこれっていいのかなぁ。

 孤独は・・・・・・孤独はひとを腐らせるから、怖いんです。なんで腐らせるかというと、腐ってしまったことが、わからないからです。

『六月の桜 −伊集院大介のレクイエム』 2007.6.28. 栗本薫 講談社



2007年09月14日(金) 『月触島の魔物』 田中芳樹

 ヴィクトリア朝イギリスで大手会員制貸本屋に勤めるニーダムとメープル(叔父と姪)は、大作家ディケンズとディケンズの元に滞在しているアンデルセンの世話をすることになる。超大物作家ふたりは凸凹コンビでマイペース。ふたりに振り回されてニーダムとメープルは不気味な噂が絶えない月触島へ渡ることになるのだが・・・

 理論社のミステリーYA!シリーズは若い人向け。ターゲットは10代らしいのだケレドモ、私も充分に楽しめたv イラストが入っていたり、想像力を喚起しやすくなっている。ここまで至れり尽くせりになっているんだなぁ。贅沢だこと。今って漫画や映像で物語を容易く丸飲み傾向であるため活字は苦戦している。でもでも活字だからこそ頭と心で大きく想像の世界を遊べると思うのだがなぁ。私は活字から離れないわっ(決意)。この物語はメープルという魅力的なヒロインを筆頭に愛すべきキャラクターがいっぱいで楽しめる。オススメv

『月触島の魔物』 2007.7. 田中芳樹 理論社



2007年09月13日(木) DVD『ゆれる』

 いつもオール・レンタルで借りられなかったDVDをやっとレンタルできた。オダジョー主演の『ゆれる』である。原作と映像とどう違うのかワクワクだったのだケレドモ・・・うーん、かなり問題作。ラストをどう解釈するか悩むところ。
 原作では、タケル・ミノル・チエコの三人の視点で物語が語られていた。映像ではほぼタケル視点。原作を読んだ時にも感じたことだケレドモ、チエコが惨めで憐れなんだー。田舎でそのまま朽ちていけたものを都会からちょっと帰省してきた男に全てを奪われてしまう。選んだのはチエコなのだケレドモ、あれってタケルが奪って壊して捨てたようなもんだわ。ミノルの葛藤もコンプレックスもすごくよくわかる。そのタケルをオダジョーが、ミノルを香川照之さんが。俳優の真っ向勝負が伝わってきた。香川さん圧勝だー。



2007年09月11日(火) 『夜は一緒に散歩しょ』 黒史郎

 ホラーってのは簡単そうでスゴク難しいジャンルだと思う。読んでいてなにかデジャヴュを感じる物語が多いのもいたしかたのないこと。かつて怖かったなにかの焼きまわしなのだもの。そんな中、久々に丁寧なホラーを読めた。まぁ、内容的には焼きまわし感は否めない。否めないのだケレドモ面白かったの。じわじわと気持ちの悪い不安定な読み心地で黒い正体が現れるときに「あ、なるほどな」と。幼くして母を亡くした少女を使うことがうまかった。こういう新しい才能を読めるとなんだか嬉しい。次回作にも期待しちゃう。

『夜は一緒に散歩しょ』 2007.5.18. 黒史郎 メディア・ファクトリー



2007年09月08日(土) TVドラマ『坂道の家』 原作:松本清張

 昭和30年代、こつこつと金を貯める事が生きがいの小間物屋の寺島(いかりや長介)は、店にふらりと現れた美女リエ(黒木瞳)に一目で魅せられる。リエに欲しそうに見ていた財布を渡し、後日、香水や口紅を持ってアパートに押しかける。リエの勤めるキャバレーに通い、どんどんとリエの魔性の魅力に虜にされていく寺島。貯めに貯めた金を全てリエのために使いこみ、坂道の上にある家にリエを囲い、リエを独占しようと狂ったように・・・

 10年以上の作品ですが、今見てもなんの遜色もない面白さでありました。長さんが黒木瞳の妖しい色香に絡め取られていき、狂っていく様は見ごたえがありました〜。また黒木瞳がちょこっととろいふりして舌ったらずに喋るさまがいじましいくらいに色っぽいの!!! やられちゃった〜。松本清張さんモノは数えるほどしか読んでいないのですケレドモ、なんだかずっかり読み込みたい気分になりました。こんなにもオトコとオンナを表現されていたのですねぇ。感激v



2007年09月07日(金) 『妖花一夜契』 森真沙子

 「あやしばな ひとよのちぎり」・・・タイトルから想像がつくように妖しいエロティックな一夜の出来事が語られている。森真沙子さんの描く物語は小粒ながら質の良いものが多い。特に妖しいエロスは女性ならではの感性で共感しつつ読めてなかなかなものだったv 不思議な妖しい何かとエロスってのは相性がいいんだよねぇ。「竜胆杯を傾けて」は妖しく美しい女性が想像力をかきたてられてかなりオススメv

ふふふ、嬉しいわ、一緒に地獄に落ちて下さるなんて

『妖花一夜契』 2007.7.31. 森真沙子 徳間書店



2007年09月06日(木) 『いっぺんさん』 朱川湊人

 朱川湊人さんの本領発揮! ノスタルジック・ホラー短編集にございまーすv 朱川さんの持ち味は昔懐かしい想いを掘り起こす郷愁ホラー。そして短編。この良さは失わないでいただきたいなと一ファンは思うのでございます。昭和の香りがするって不思議感覚。都市伝説で聞いたことのあるような題材を元にした、本当にありそうなお話がずらずら。中でも「逆井水」は人間の根源的な欲望をネタにしているので妙に理解できてしまう。落ちはもっと残虐でもよいのだケレドモ。晩夏に上質な日本的なホラーはいかが。オススメです。

 これを天国と言わず、何て言う? この村は、まさしくこの世の楽園だ。

『いっぺんさん』 2007.8.25. 朱川湊人 実業之日本社



2007年09月05日(水) 『青年のための読書クラブ』 桜庭一樹

 修道女マリアナによって設立された聖マリアナ学園。清楚な乙女達の女の園に風変わりなクラブがあった。哲学者たり、理学者たり、詩人、剣客、音楽家たる「読書クラブ」・・・。清楚な乙女達の枠からはみだしてしまった少女たちが集う異形の部屋。

 こんな↑あらすじじゃワカラナイよなぁ(笑)。あらすじなんて書いたところで実際に最初から最後まで物語を読まなきゃワカラナイもんだしー。←無責任 まぁ、要するにはみだしっこ達の集まりである読書クラブが関わった時代時代の事件の真相を記者記す・・・みたいな隠れた真相暴露ものとでも言っておこうか。いつの時代にもその場に馴染めない人間はいるものだなぁ。若さゆえ愚かな勘違いをして暴走する魂・・・ナンテ痛いイタイ。自分の痛い部分に思い当たる物語があるのじゃないかしらん。私が一番気に入った話は「一番星」かな。なんて言うか魂の暴走と落ち着き先がワカルわかると思えてしまって。映像化もしやすい。これは物語全編を通して感じたことだケレドモ。映像化すると面白いんじゃないのかなー。ただ好き嫌いは分かれそうな物語。桜庭さんてそんな作家さんだよね。

 一人の生徒の内面で暴れだし、学園を席捲した、つまりは個性というものの暴力性に恐れをなしたのだろう。しかしいつの時代も、どこの土地でも、子羊の群れには常に一匹の狼が潜んでいるものではあるが。 

『青年のための読書クラブ』 2007.6.30. 桜庭一樹 新潮社



2007年09月04日(火) 『球形の季節』 恩田陸

 新しい本を読むにはパワー不足。そんな時にはいつだって身体と心に馴染んでいる本を読む。だいたい陸ちゃんになるんだよなぁ。無人島に何か一冊・・・なんて話題によくなるケレドモ、私は陸ちゃんの本を選ぶ気がする。
 そんな訳で久しぶりに『球形の季節』を読んだ。これも何度読んだことやら。陸ちゃん御得意の不思議な土地モノ。これが小夜子に続く2冊目だってんだからヤッパリその才たるやスゴイ。ラストの落ちの「えっ、だからどうなるの!?」感がたまらないんだよね。綺麗に落ちをつけるでなく、物語は終らないって気を持たせるところがいいんだよねぇ。
 土地が持つ不思議ってのは人間の根源的な感覚なのではなかろうか。近づいてはいけない場所とか、なにか起こる場所とか、聖なる場所とか・・・人知を超えた存在だものなぁ。人間以前からそこにあるのだもの。
 あ、本の内容に触れてないや。ま、いっか(笑)。オススメv

 しかし、明け方というのはまた別の不安がある。何かいけないものを見ているような罪悪感が、息をひそめてじっとしていなくてはならないような緊張感が、ああまた一日が始まってしまったという不思議な後悔がある。

『球形の季節』 恩田陸 新潮文庫



2007年09月03日(月) DVD『ライアー・ガール』主演:小池栄子

 「やっと結婚してもらえた」なんて可愛らしい言葉で結婚報告をした小池栄子の初舞台&初主演『ライアー・ガール』!なのだケレドモ、実は森山未來クン目当てで購入していたのであった。物語は若返りの薬を飲んだオヤジがナイスバディなギャルに若返っちゃうというコメディ。素晴らしい肉体を持つ小池栄子が、あの見事なカラダでオヤジっぷりを演じてみせるギャップが面白かったv
 小池栄子がグラビアでぶいぶい言わせていた頃をあまり知らない。私が彼女を知ったのは芸能人社交ダンス部。ぶよぶよしていた豊満な身体がどんどん引き締まって本当に美しくなっていく過程を尊敬とともに見ていたの。あの根性と会話の回転の良さを見るにつけファンになっていた。
 だから今回の好きで好きでたまらない人との結婚を「おめでとう」と思ったの。良かったね〜。昨日のメントレGでは思わず泣いてしまったよ。しかし・・・サトエリがかわいそうだった・・・。幸あれ。



2007年09月02日(日) DVD『スクールデイズ schooldaze』主演:森山未來

 相沢晴生は、0歳で芸能界デビューをし、天才子役として一世風靡してしまった。しかし、自分の人気ゆえに両親の間に溝が入り、普通の生活をしたいと願い、8歳で芸能界を引退。普通の子供に戻って生活していた晴生は高校生になりイジメに遭っていた。普通の生活でいいことなんて無いと痛感した晴生は芸能界復活を目指すのだが・・・!?

 森山未來クンは全く好みではないのに気になる俳優さん。独特の存在感があって妙に惹きつけられている。このスクールデイズ(英語表記はda‘z’e)の主人公は若くして人生に途方にくれている少年。理不尽なイジメに遭う時の表情がすごくうまい。未來クンの魅力は泥臭い役を演じ切れるところにあるのかもしれない。
 物語は、元天才子役だった晴生の現実と、人気テレビ「はみだし!スクール☆デイズ」とが微妙にクロスし、リンクし、入り乱れてしまう・・・という非常にシュールな展開となっている。よくこんな難しい内容を学園モノとして銘打ったものだなぁと感心してしまう。シニカルな目線で撮影されているので、オススメするにはかなり微妙。観ていて心に痛いから。優れた作品ではあるのだケレドモ。



2007年09月01日(土) 『収穫祭』 西澤保彦

 西澤保彦と言う作家さんの暗黒面が如実に表現された久々の一冊。暗黒三部作が四部作になったわー。私は西澤先生のこういう暗黒のドロドロの救いようのない物語がことのほか好きなのでございます。ウフ。でも惹句にあるように『依存』を越えたとは思えなかった。『収獲祭』は『収獲祭』の良さ(悪さ?)があり、魔女みたいな女が登場するケレドモ・・・タックのかぁちゃん(by恩田陸)とタカチを越える魔女っていないんだよなぁ。そっか、陸ちゃんにもよく魔女が登場するんだった。だから陸ちゃんの作品も好きなんだな、私。暗黒の世界へようこそ。西澤保彦の貌の一面がここに凝縮しておりますわよん。驚愕の真実と最後の落ちに素直に騙されていただきたいものであります。

 自分が蒔いた種が芽吹き、そして育ってゆく実感にひたりながら。着実に収穫のときが迫ってきている、その悦楽にうち震えながら。

『収穫祭』 西澤保彦 2007.7.10. 幻冬舎



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