酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2005年08月30日(火) |
『東京DOLL』 石田衣良 |
MG(マスター・オブ・ゲーム)と呼ばれる相楽は、コンビニで次のゲームに登場する妖精のイメージぴったりの女の子を見つける。彼女の名前はヨリ。背中に翼のタトゥを背負う、不思議な力のある子だった。MGはヨリと出逢ったことで人生の新しい局面を迎えることとなる・・・
石田衣良さんと言えば、『池袋ウエストゲートパーク』、そう思われることに御本人はどう感じていらっしゃるのだろう?と思ったけれど、コメンテーターなどでテレビ出演している様子を拝見するに、そう考えてらっしゃらないのかしら?? 今回はちょっと不思議な恋愛小説。さらりと読めるけれど、だからなになのかしら、と言うところ。厳しいですね。あまりにも大きなヒットを出しちゃうと、それを乗り越えることがいかに大変かと言う証ですねー。可もなく不可もなく。
『東京DOLL』 2005.7.28. 石田衣良 講談社
2005年08月29日(月) |
『鏡陥穽』 飛鳥部勝則 |
葉子は、飲み会の帰り道に襲われ、反撃する。だが、始末したはずの男と同じ顔をした男・久遠に付きまとわれるようになり、婚約者・水谷に誤解をされてしまい・・・
うーむぅ、ハジメテ飛鳥部さんを読みきることが出来たのですが、なんと申し上げましょうか・・・「グロイ」とでも言えばいいんでしょうかね(悩)。ホラーと言えば限りなくホラーでありますが。あ、いや、ワタクシ個人的にはかなり面白かったのでございます。とんでもなく鬼畜な人間がちらほら登場しますし、「鏡」が恐ろしいことをやってのけますし。ただ、さすがにこれは拒否反応を示す人もかなり多いだろうなぁ、と。ここまでの迷宮のような世界を描ききられたことは天晴れと申しておきます。ホラー・エロ・グロがお好きな方は是非どうぞ。それ以外の方は表紙をご覧になっただけでやめられることでしょう(笑)v
『鏡陥穽』 2005.7.15. 飛鳥部勝則 文藝春秋
2005年08月27日(土) |
『犬はどこだ』 米澤穂信 |
25歳の紺屋は、<紺屋S&R>という‘犬探し専門’の調査事務所を開いた。しかしやってくる客は人探しに古文書解読と想定外。押しかけ探偵志望のハンペーと別々に捜査を始めるが、事件が微妙にリンクしてきて・・・?
主人公の紺屋は、順風満帆だったはずの仕事を想定外のどうしようもない理由で辞め、無気力になってしまいます。その彼をとりあえず表の世界へ出るように薦めてくれた、ネット仲間の《GEN》。(※紺屋は《白袴》という皮肉なハンドル) 紺屋を心配して客を斡旋してくれる友人の大南。押しかけ探偵になる剣道部後輩のハンペー。口は悪いが頼りになる妹・・・、と登場人物の人間模様が非常に温かく優しい気持ちにさせてくれました。そして真逆な事件の真相の禍々しさがナカナカよかったです。これぞ人間の光と影と言うか。 紺屋が、仕事を辞める原因になったことと言うのが、たまたま今の自分に重なるものを感じ、感情移入をいっぱいしちゃいました。どうやらシリーズ化らしいので、紺屋が次もまた「犬はどこだ」とぶつぶつ言うのを楽しみに待つことにします。
「こいつは貸しとくぜ、ボス!」
『犬はどこだ』 2005.7.25. 米澤穂信 東京創元社
2005年08月25日(木) |
『サウスバウンド』 奥田英朗 |
上原二郎は小学6年生。元過激派の父親は働きもしない自称小説家。年金の支払いを督促されると「国民をやめた」と言うような男である。そんな型にハマラナイ父親に振り回されながら、二郎は成長していく・・・
これねー、面白いんですよ。最初は伊良部センセの世界をイメージしすぎていたので、「なんでまた過激派なの?」と戸惑ったのですが、一旦イメージが浮かぶとガッチリ上原一郎(二郎くんのお茶目なパパ)にオルグされまくり〜。この男はファンタジーですね。ありえない。ありえないほど男の魅力満載。さくら(一郎さんの妻で二郎くんのママ)さんの気持ちがよくわかっちゃいました(はぁと)v 父親の破天荒っぷりに付き合わされて、東京から南の島へ引っ越ししなくてはならない小学6年生の戸惑いと不安。でも子供は逞しい。不条理を自分の目で見つめながら、自分で考える頭を鍛え上げていく。そっか、一郎さんが素敵なだけでなく、二郎くんの成長っぷりにメロメロなんだ〜。いいものを読みました。オススメ。
「これはちがうと思ったらとことん戦え。負けてもいいから戦え。人とちがってもいい。孤独を恐れるな。理解者は必ずいる」
『サウスバウンド』 2005.6.30. 奥田英朗 角川書店
2005年08月23日(火) |
『スタンレーの犬』 東直己 |
東直己さんは北海道在住の作家さんで、北海道を舞台に(特にススキノなど盛り場)することにこだわられています。探偵はBARにいるシリーズと畝原シリーズは特に好きです。 今回の『スタンレーの犬』は大好きな東さん作品なのにツルリと読めない違和感がありました。内容は面白いと思います。不思議な力を持つ「ユビ」の性格もよかったし・・・。だけど、なにか違う。やはり固定観念なのかもしれません。 ただ基本的に行き詰まる作品はとりあえずSTOP(いつか読むかも)する私なのですが、やはり最後まで読まずにはいられませんでした。不思議なロードムービーって感じでいいのかなぁ。
だが、哀しくない人生なんかないし、もしもあったとしたら、それはバカの人生だ。そして、哀しい人生の話は、誰かに話してもどうなるものでもない。だいたい、この哀しみは、そこにあるだけのもので、つまりただ単に存在しているだけのもので、どうにかすれば消える、という筋合いのものではない。 いや、哀しみというものは、全てそういうものだ。哀しみは、取り返しがつかないから、だから哀しみなのだ。
『スタンレーの犬』 2005.8.8. 東直己 角川書店
2005年08月21日(日) |
『戦国自衛隊1549』 福井春敏 |
元幹部自衛官の鹿島勇祐は、三十代半ばを越えて零細企業営業サラリーマンの身に甘んじていた。そんな鹿島に防衛庁技術研究本部の神埼怜という女性が接触してきた。六年前に殉職した的場一佐を捕捉するミッションに参加して欲しいと言う。死んだはずの的場が《過去から攻撃》をしかけてきていると言うのだ。鹿島は怜たちとともに平成の世の中を守るために戦国時代へ突入するのだが・・・!?
邦画の中でも強く印象に残っている作品がいくつかあって、その中に『戦国自衛隊』があります。あの戦国自衛隊は、偶然戦国の世にタイムスリップしてしまった自衛隊の人間たちの物語で、主演の千葉真一さんが強烈に鮮烈にカッコよかったです。今の世では生き辛い人間が戦国時代で生き生きと生きる・・・ものすごく辛辣な話だけれども。 今回の物語は、前回とは違い、タイムスリップした人間が確信犯的に歴史へ関与する。自分が生きている平成の時代を変えてやるとばかりに。そして歴史は果たしてその暴挙を許すのか?・・・とハラハラドキドキ。前回があって今回があると言う感じでダブルに面白いと思います。今回の映画を見損なっているので観てみたいものであります。
「なにかに依存しすぎると、それがなくなった時に壊れてしまう・・・・・・。そんなふうにはなりたくなかったから。自分をこの世界に繋ぎ止めておくなら、もっと揺るぎのないものでないと」 「揺るぎのないもの?」 「キャリアとか、仕事とか。主観に左右されない、客観的な価値のあるもの。・・・・・・親の愛情で満たされなかった子供が考えそうなことです」
『戦国自衛隊1549』 2005.5.20. 福井春敏(原作:半村良) 角川書店
2005年08月20日(土) |
『ポセイドンの涙』 安東能明 |
昭和52年北海道松前郡吉岡村は、青函トンネル建設のために人で溢れ、標準語が喋られていた。小学生の由貴と政人と連は子供ゴコロに親の行動に苦しめられていた。青函トンネルゆえに賑わった村は、トンネル建設が終れば人も去り、賑わいも消えてしまう。そんな時、ウェンカムイとあだ名をつけられ、嫌われていた由貴の父親が消えた・・・そして平成16年、青函トンネルから死体が見つかり・・・?
大きな公共事業の裏には利権の争いがあり、笑う人も泣く人もいる。そんな悲哀を感じさせる壮大な物語でした。ただ個人的に残念だったのは、主要登場人物の3人の心情が克明に描かれていなかったこと。それが出来ていれば読後に「浅い」と感じず、すっごく感動できたのではないかしら。こういうドラマは人間の心を読みたいと願ってしまうのでありました。
『ポセイドンの涙』 2005.7.10. 安東能明 幻冬舎
2005年08月19日(金) |
『ストーミーマンディ』 牧村泉 |
5歳の時に母親、11歳の時に姉を殺した倉田諒子。31歳になる諒子は、惰性で生きていたつもりだった。しかし、執拗ないたずら電話に悩まされ、不倫を清算した途端、不思議な家出娘ミチルを拾ってしまう。ただ余生を生きていたつもりの諒子だったが、ミチルとの出会いによって本当の破滅へ導かれてしまう・・・
うー、えぐかった。鬼畜系も平気で読んでしまうワタクシでありますが、これはかなりのものでした。ここまで諒子を追い詰めるの?と気の毒に思えてしまう残酷っぷり。人生に翻弄されてる哀しい女だったなぁ・・・。
誰もきっと自分の人生を、少しずつ隠しながら生きているだろう。ちょうど月そのものは同じなのに、その表面に落ちる影のせいで、姿が変わって見えるように。
『ストーミーマンディ』 2005.7.10. 牧村泉 幻冬舎
2005年08月18日(木) |
『2005年のロケットボーイズ』 五十嵐貴久 |
カジシンは文系の男なのだが、運命に翻弄され工業高校に入学。ツマラナイツマラナイと毎日を過ごしていたカジシンが、キューブサット設計コンテストに参加することになる。友人のゴタンダに相談し、ヘンコツ変わり者の大先生を巻き込み、なんとか参加。すると何故だか入賞してしまい、キューブサットカムバック・コンテストに参加することになり・・・
これねぇ、いいんですよ。すごく。言葉のノリのよさにのっけられて訳のわかんないキューブサットなんちゃらなんてものをサラ〜っとうまく読ませてしまうの。うまいなぁ。 簡単に言えばオチこぼれクンたちの青春奮闘サクセスストーリーでしょうか。カジシンの元に集まってくる風変わりな仲間たちがいいんですv 中でも翔さんは最高にいい男で泣かされました。こういう男が好きだっ! カジシンと家族との関わりも考えさせられるものでした。
だけど現実はシビアで、おれはここにいる。学校は学校だし、家は家だ。彼女はいないし、いいことはないし、どっちにしたって何も変わらない。そう思っていた。でも、そうでもなかった。おれがいるのは同じ場所だけど、スタンスを変えたらちょっぴり違う風景が見えた。そういうことなのかもしれない。
『2005年のロケットボーイズ』 2005.8.5. 五十嵐貴久 双葉社
夏休みでお母さんに連れられたチビッコギャングたちに混じって(笑)『妖怪大戦争』を観て来ました! 主役の天才子役・神木隆之介くんが最高に可愛かった〜。少年が頑張っちゃう物語は今も昔もひどく弱いのであります。両親の離婚のために姉と父と離れ、東京から鳥取へ母と引っ越した少年・ただし。田舎のヤンチャ坊主たちにいじめられながら、少年が愛と勇気と友情で逞しく成長していくのだ! く〜ぅ、いいですねぇ。ベタだけどメロメロv 少年以外の主要登場が妖怪ばかりと言うことで、この人は誰だろう?と悩む妖怪さんも多々(笑)。当然出てくる京極の旦那はお約束としても宮部はん(妖怪じゃないけれど)が出てきた時には噴出してしまった。びっくり。お茶目な作家さんが多いものよのう。神木くん以外では河太郎役の阿部サダヲがいい味だしまくり。ナイナイの岡村君も出てるのだけど、今は阿部サダヲの方が面白い。さすがに今をときめくクドカンファミリィ、勢いが違います。そして裏切り者の妖怪アギを演じた栗山千秋(あれ、明か?)ちゃんのコスプレが涎もん〜。パンチラ衣装はドキドキよー。河姫役の女の子の素敵な太股もたまりまへん。やっぱ女の子は熟しきる前がよいですのう。ふぉっふぉっふぉ(スケベ親父だな)。 残念だったのは、どうしちゃったの豊川さま、でありました。豊川さまが魔人役で出ていると知り、観に行ったのに・・・。出番が少ないし、出ていてもオーラがないし、なんだかなぁ。豊川さま役者として停滞中? もっとギトギトに悪役演ってくれているものと期待していただけに残念なのでありました。 神秘的で「鳥取へ行こう」と思わされる夢いっぱいの映画なのでしたよ。ふふふ。
2005年08月16日(火) |
『かたみ歌』 朱川湊人 |
今から三十年近い昔、東京の下町にあるアカシア商店街に住んでいた人たちが体験した懐かしく心に温かくせつない不思議の数々・・・
先だって、『花まんま』で直木賞を受賞された朱川湊人さんの受賞後第一作を少し早くに読ませていただく光栄に預かりました。朱川さんは、この物語たちを書かれた時期が『花まんま』と近かったため、兄弟のような感じとおっしゃっています。『花まんま』は関西の下町での不思議。『かたみ歌』は関東の下町での不思議ですね。『花まんま』にも泣かされましたが、『かたみ歌』にも感動しました。こんなふうに心にダイレクトに温かい物語は最早‘癒し’です。読めたことを感謝する物語で、オススメですv 7つの不思議の中からあえて何かを選ぶことが難しいけれど・・・個人的には「夏の落とし文」と「栞の恋」がよかった。そして7つの物語をリンクさせた「枯葉の天使」は、ひとりの登場人物の謎が明かされるとともに、一緒に救われた気分になります。うーん、結局、7つとも全部好きですねぇ。たまらない贅沢さでした。朱川さんはもっともっと素敵になられる気がします。
「だから、向こうで会えるのを楽しみにしてますって。でも、なるべく、ゆっくりゆっくり、来てくださいって」
『かたみ歌』 2005.8.20. 朱川湊人 新潮社
2005年08月15日(月) |
『世界中が雨だったら』 市川拓司 |
「循環不安」 おとなしく真面目な男が、成功と愛を手に入れるために犯してしまった罪とは・・・
「琥珀の中に」・「世界中が雨だったら」・「循環不安」、3つの物語に通じる静かなる絶望。いつもならちょこっとなにかで掬い上げてくれる市川さんが、今回は突き放したまんまで終る。ちょっとビックリ。いや、物語としては、ありだと思うのだけれど、書いた人が市川さんなので驚いちゃった。 善良でただ普通に生きたいと願っている人間が、周囲の悪意に翻弄され、道を誤ってしまう。なんだか哀しかったですよ・・・。
きっと、人は時と引き換えに宝石のようにきらめく思い出を得るんだと思う。命と思い出は同じ重さを持っているのよ。
『世界中が雨だったら』 2005.6.30. 市川拓司 新潮社
2005年08月14日(日) |
『死神の精度』 伊坂幸太郎 |
変わり者の(?)死神・千葉が、死に行く人間とのかかわりで様々なことを感じる・・・
うーん(悩)。大ブレイクの伊坂さんもさすがにちょっとトーンダウンかしらん。死神の千葉がいい味出してるし、設定も悪くはないと思うのだけれど、うーん、伊坂さんだからもっとより上を期待しちゃうんだよねぇ。個人的には残念。
人生なんていつ終ってしまうか分からないんだから、話は交わせる時に交わしておくべきだ。
『死神の精度』 2005.6.30. 伊坂幸太郎 文藝春秋
2005年08月13日(土) |
舞台『COMPOSER 響き続ける旋律の調べ』 TEAM−NACS |
博多(福岡と言うより、博多なのよね。あの街は)へ、TEAM-NACSの舞台を観に行って来ました。大泉洋というけったいな北海道限定タレントに目を引かれ、友人から見せてもらった大泉洋所属TEAM-NACSの舞台に引き込まれ、いつの間にやら大好きな存在になっていた大泉洋とTEAM-NACS。生で舞台を観ることは難しいと思っていましたが、もうひとりのNACS好きの友人の好意で観ることが出来ましたv 舞台は、ベートーヴェンを軸に彼と彼に関わった人たちの人生模様を描いてました。彼らの魅力は、個人個人が持つキャラクターの強さと5人に共通する人柄の温かさ、舞台を愛する心にあると感じました。シリアスな人間関係を描きながらも、随所に笑えるポイントがあり、心から楽しめる舞台でした。NACSはいったいどこへ行ってしまうんだろう。どんどんと高みに上っていってるんだろうなぁ。すごかった。
森崎博之 TEAM-NACSの舞台のほぼ全ての脚本・演出担当のTEAM-NACSのリーダー。彼の魅力は大きな声とデカイ顔(笑)。表現者としては切っても切っても金太郎飴なのだけど(引き出しがひとつ)、物語を創る才は素晴らしいものがあります。彼の本の視点や発想の転換には、どの舞台でも圧倒されてしまう。欠かすことのできないNACSの軸ですね。
佐藤重幸 勝手な想像ですが、おそらくTEAM-NACSで一番悩める男ではないかと。NACSではオトコマエと謳われる彼だケレドモ、それはどうしたってNACSの中だけのことで。真面目でかっこよさ追求して頑張ってる感がひしひしと伝わってくる。だから見ていて息苦しい。(勿論そこが可愛い、そこに惹かれる人も多いでしょうが) 彼の人間としての成長がNACSの今後を左右する気がしました。
音尾琢真 SMAPで例えるならば(笑)、誰からも愛される慎吾ちゃん的ポジションにいる男。ふたりとも男は顔じゃないと(慎吾ちゃん&琢ちゃんファンの皆様ごめんなさい)言う立派な証拠。今回の役は誰よりも大変だったろうなぁ。そして重要な役を琢ちゃんだからこそこなせた、成功したと言える気がしました。音尾琢真、きっとものすごく伸びゆく役者。
安田顕 異色のキャラクター。平成の怪物は、そこに存在するだけで変でした(大笑)。のっけっから彼の変さにノックアウト。「死人役を生き生きと演じます」と言う妙な言葉もアノヒトが言うとありなんだなぁ。完全なる主役は無理としても、気になって仕方の無い名脇役になれると人だと実感しました。危ない役、極悪非道な役、どうしようもなく駄目な役・・・助演男優賞とか取れる人だと思っちゃった。
大泉洋 大泉洋ありき。正直言ってどの場面であろうと、彼が舞台の上にいると彼を追わずにはいられなかった。面白い顔でしかない彼が、たまに‘なまらかっこいい’瞬間がある・・・。そこが不思議。破天荒におおらかで温かくて我侭で、B型ならではの魅力を全開に放つ人ですね。彼の人気が今のNACS人気に比例したことは言うまでもないけれど、彼の人気が今以上に独り歩きしてしまうとTEAMの危機となりかねない。そこが大きな問題となるのでしょう。彼自身が、TEAM-NACSを北海道をどう位置付けていくのか、・・・これから大変だろうなぁ、洋ちゃん。
2005年08月12日(金) |
『お喋り鳥の呪縛』 北川歩実 |
人間の言葉を理解するオウム<パル>。パルを研究する機関で働き、シナリオを共同で書いた妹が事故で眠ったままになってしまう。そんな兄・倉橋にシナリオ映像化の話が舞い込み、パルを巡り次々と殺人事件が発生する・・・
面白いんですよ、北川歩実さん。でも北川さんの本って、まず装丁で損をしている気がするんだけど・・・。どうも手にとって買い!って思わせる風貌じゃないんだよなぁ。装丁が変われば手にする人も増えると思うんだけど。最近、北川さんの本の表紙を眺めて憂えてしまうことなのでありました。 さて、今回も二転三転し、翻弄されました。一筋縄ではいかない書き手さんで嬉しくなってしまう。いい意味で必ず裏切ってくださるから。個人的には<買い>だし、《オススメ》なのだけど、好き嫌いでちゃうのかしらん。
「ロリコン男の話を聞いて思ったんだよ。俺がオウムやインコに執着するのって、理屈じゃどうにもなんない感情なんだよね。友部なんかさ、精神分析でも受けた方がいいなんて言うんだ。きっと何かインコにかかわるトラウマがあるに違いないって。だけど俺はむしろ、生まれながらのインコフェチなんじゃないかと思ってるんだ。赤ちゃんがかわいいって感情は本能的にプログラムされてるだろう。男は女を好きっていうのもそうだよな。そういうプログラムが、ちょっと間違ってるんだよ。たぶん他人から見ればこれって、ある意味変態なわけじゃない。だけど、ふつうはまあ、身内には鬱陶しがられるにしても。わりと微笑ましい趣味だと思ってもらえる。だけどこれがロリコンだったら」
『お喋り鳥の呪縛』 2002.2.28. 北川歩実 徳間書店
2005年08月11日(木) |
『真理 MARI』 加門七海 |
亮子は、実家のマンション建て替えを期に地元へ戻ってきた。親のマンションの一室で自立して働く・・・少しばかり刺激が欲しい。そんな時、幼馴染の森本に再会し、昔の仲間と呑み会などをするように。それなりに楽しんでいた亮子だったが、いきなりいやがらせが始まった。匿名の手紙、繰り返される非通知電話、その上食べ物に混入された異物・・・。亮子の生活が何者かによって歪み始め、亮子は悪夢に取り込まれてしまう・・・!?
タイトルの『真理』に惹かれて読んでみました。これがなかなか優れもののホラー。自分に非は無いのに、相手の勝手な思い込み勘違いで執拗に狙われる亮子。こんなこと繰り返されれば、気丈な人間でもおかしくなっちゃう。理不尽なストーキングと恐怖に壊れていく亮子がすごかった! 夏にオススメのホラーでありまする。
何度も、何度も、考えた。 私は悪くない。 私は悪くない。 私は悪くない。
『真理 MARI』 2005.7.20. 加門七海 光文社文庫
2005年08月09日(火) |
『QED 〜ventus〜 熊野の残照』 高田嵩史 |
棚旗奈々は、学薬旅行で和歌山県へ。珍しく桑原崇も参加。しかも行く先の順番を変更させたらしい? そしてもうひとり珍しく参加表明をしたらしい神山禮子という女性が、なにかと奈々の側から離れず、必然的に三人で行動するようになり、崇の奇天烈な(?)言動に驚く禮子なのだったが・・・
高田先生の物語の紹介(あらすじ)は書けません(逆ギレ)。私には難しすぎる(泣)。さて(気を取り直して)今回の舞台は熊野古道。八咫烏の不思議をずっと感じていたので絶好のテーマにございました。いつもながら歴史の闇と言うのは、光を当てる角度を変えれば、ずいぶんと違う表情を見せるものだなぁと思います。 今回はゲストヒロインの神山禮子さんの視点に惑わされ、なかなか不気味なトーンを醸し出していて、面白かったですね。崇くんのクールな快刀乱麻っぷりは健在。あのふたりも関係ないのにキッチリ顔を出します。こういうお約束は読んでいて楽しい。オマケをいただいた気分で。 あらすじも内容にもうまく触れられないけれど・・・なんだか哀しいなぁと言うのが読後感。あと禮子って人に妙に同族嫌悪を感じてしまったなぁ・・・。暗いよ、神山禮子さん。ま、仕方ないんだけど。シンクロっぽいなぁ。うーん。
この世のできごとは、何につけても一筋縄ではいかない。
『QED 〜ventus〜 熊野の残照』 2005.8.4. 高田嵩史 講談社ノベルス
2005年08月08日(月) |
『いつか、虹の向こうへ』 伊岡瞬 |
柳原ジュンペイと石渡久則と村下恭子。性別も年齢もバラバラは訳あり同居人を抱える辞めデカの尾木。今回は酔っぱっらっている時に出逢った少女を拾ってしまう。高瀬早希。妙な少女の早希が来て4人の生活に変化が生まれる。そして早希を巡ったトラブルが発生し・・・
個人的には読み進めづらい文章だったのですが、内容がトッテモ魅力的でありました。過去に訳ありな人間たちが身を寄せ合って生きる・・・なんだかわかる気がしちゃうんですよね。そしてきっとそれは刹那的な関係で決して永遠に続くものではなく。だからいいんだよなぁって思えてしまう。それぞれの過去が浮き彫りになるところがうまい具合に登場します。中でも石渡さんは最高に素敵v ・・・なのに、先日テレビ化されたものを見たらガッカリ。そこまで内容をコンパクトに小さく纏めなくてもいいじゃないのー(怒)。配役ミスもいいとこだし。キャラクターを変えすぎ。あんな映像化失敗としか言いようがなくってよ。ぷんぷん。これだけの作品ならもう少しじっくり丁寧に原作を大切に映像化すべきでしたね。
明日になれば、と淡い期待が沸いた。 路傍で眠る我が身を、間違えてゴミ収集車がさらってくれないものか、と考えているような毎日は終るかもしれない。週に一度くらいは、酒を呑まずに眠れるようになるかもしれない。自分を必要とする人間がひとりでも存在するのだとしたら、その間だけは踏ん張ってみよう。
『いつか、虹の向こうへ』 2005.5.25. 伊岡瞬 角川書店
2005年08月07日(日) |
『天の前庭』 ほしおさなえ |
九年間眠り続け、目覚めた柚乃は記憶を失っていた。パソコンに残された自分の日記に書かれた日常の中に、ドッペルゲンガーに会ったらしい記述を見つけ・・・
謎と青春と苦悩。よいですなぁ。前作の『ヘビイチゴ・サナトリウム』も良かったけれど、今回は数倍好みでありました。この物語の行き着く先に「え?」と言うヤラレタ感はなかなかに快感。この人うまいわ。
「小さい頃、よく考えたの。宇宙の果てってどこにあるのかな、って。で、もし果てがあるとしたら、その外にはなにがあるんだろう、って。宇宙が始まる前はなにがあったんだろう、って」
『天の前庭』 2005.7.15. ほしおさなえ 東京創元社
2005年08月05日(金) |
『下妻物語 完 ヤンキーちゃんとロリータちゃんと殺人事件』 嶽本野ばら |
茨城県下妻市でロリータに命を懸ける桃子とヤンキー実は美少女イチゴが、今度ハ殺人事件に巻き込まれた!?
泣きました。どえらい泣かされました。前作も良かったけれど、今回も良かったなぁ。いいなぁ、お馬鹿で美女なイチゴv こういう馬鹿なまっすぐさなら愛してしまうなぁ。うん、確かに感動するわ。桃子は頭も良くて才能もある素敵な子。今回の読みドコロはラストの桃子のヤンキー魂っぷりですね。あれはかなわんくらいにやられまくってしまった。感動の嵐。やはり私にはヤンキーの血が流れているような気がする(大笑)v あと桃子のばぁちゃんサイコー! 前作も新作も超オススメ。
「おやおや。一晩中やりまくりかい。若いコはいいねぇ」
『下妻物語 完』 2005.7.20. 嶽本野ばら 小学館
2005年08月04日(木) |
『5年目の魔女』 乃南アサ |
景子は、同僚の貴世美と言う女の不倫問題に巻き込まれ、退職する羽目になる。魔性の女とも言うべき貴世美に恐怖を感じ、付き合いを遮断。そして5年後、景子は新しい仕事に燃え、充実した毎日を送っていた。そこに突如割り込んできた不審な電話の音。3コールして切れる電話。このやり口はかつて貴世美が不倫相手の家庭に執拗にかけた電話のかけ方だった・・・?
す・ご・いv 乃南アサさんならではのドロドロの女の戦い&ホラーでございます。うまい展開とオチだった。あぁ落としますか。想像つかなかった。蓋を開ければ、なるほどーと思うオチなんですけどネ。 とりたてて顔が綺麗な訳ではないのに妙に惹き付ける魔性の女っていますよね。関わると人生なにかが狂っちゃうぞ、みたいな。私の中で魔性の女のイメージは、今は亡きタイチキワコさん(漢字失念)。あの色っぽさっていったいなんなんだぁ〜と子供心に怖かった女優さんです。あれになら狂わされてしまうわいなぁ。 この物語の中に貴世美もまさにそういう女。美女ではないのに禍々しい毒のような魅力で周りを破滅させてしまう。なかなかしたたかだし、すごい奴ですぜ。
「いいお酒といいベッドがあれば、それだけで女は生きていかれるものなのよ」
『5年目の魔女』 2005.7.1. 乃南アサ 新潮社文庫
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