酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2005年05月30日(月) 『黒笑小説』 東野圭吾

「インポグラ」
 広告代理店に勤める‘おれ’は友人から開発した薬を売り出してくれと頼まれる。その薬とは飲めば二十四時間は何があっても勃起しないというシロモノ。そんなモノが売れるかい、と思ったものの、いろいろ使用法とはあるもので・・・

 本当に東野圭吾さんって人は怪物みたいな作家さんですよね。シリアスでダークなものからSFほろりのうえにこんなバカっぱなしまで(いい意味ですよ?)! 文壇のネタまで惜しげなく披露してくださってます。新人作家と過去の人と呼ばれる作家さんの話は心がさむーくなりました。なんて怖い世界なんだ(汗)・・・
 文壇ネタも面白かったのですが、男の悲しい性ネタが私はお気に入りです。男と女はそう違わない生物だけど、こういうとこは男のほうが切ない気がする(苦笑)。アノ東野圭吾がこんな話も書くのねシリーズの新刊。オススメです。

 男ってのはまったく、脆い生き物だなあ。

『黒笑小説』 2005.4.30. 東野圭吾 集英社



2005年05月27日(金) 『小説以外』 恩田陸

 エッセイが苦手・・・と言う陸ちゃんが、さまざまな場所でちょこちょこ書かれたエッセイや解説をまとめられたものです。これが陸ちゃんファンには垂涎の一冊。本当に読めて嬉しい、ファン心理。あとがきでしばらくエッセイは出ないから、小説でお会いしましょうと締め括られていますが、陸ちゃーん、エッセイも書いてくださーい! あなたの人柄に触れることのできる至福の文章なのでありますよ。面白かった〜。

『小説外』 2005.4.30. 恩田陸 新潮社



2005年05月25日(水) 酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記 恩田陸

 飛行機嫌い(と言うより恐怖症)の作家・恩田陸さんが、イギリス・アイルランドへ取材旅行に行く事になり、その恐怖心を抑えるために書き始めたものをエッセイとしたそうです。これは今まで読んだ中でも最高に面白いエッセイでございました。抱腹絶倒ですわよv 陸ちゃん(個人的には勝手にこう呼んでいる)の恐怖心がよーくわかるし、お酒好き(陸ちゃんはビール党)っぷりが痛いほど(笑)わかっちゃって、ファンにはたまらない一品となっておりますです。はい。陸ちゃん曰くエッセイは苦手だそうですが、癖になる味わいを堪能できます。超オススメvv

 ところで、よく言われることだが、笑いと恐怖は紙一重である。

酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記 2005.4.25. 恩田陸 講談社



2005年05月23日(月) 『花まんま』 朱川湊人

「花まんま」
 俊樹の妹フミ子が生まれた日、お父ちゃんは大喜びだった。しかし、事故に巻き込まれあっさり他界。そのあとはお母ちゃんが苦労して僕たち二人を育ててくれた。四歳の時、フミ子は高熱を出し、それを境に変わってしまった。自分より子供のはずのフミ子がやたらおとなびた行動を始めたのだ・・・

 お兄ちゃんっていいですね。妹への複雑な思いやりがすごくよく伝わってきました。幼いフミ子の大胆な行動に振り回され、自分もまだまだ子供なのに必死で守ろうとする姿がよかった・・・。フミ子の謎の行動のことはトテモトテモせつなかったけれど。
 今回の朱川さんの短篇は実は全部よくてどれを取り上げるか悩みに悩んだのです。「妖精生物」の淫靡さも捨てがたかった! 「摩訶不思議」には笑えたし、「送りん婆」の落ちなんて賛否両論あろうともそーだそーだと声を出してしまったくらい。全体的に昔懐かしいセピアなトーンで非常に好みなのです。オススメ。

(市立病院やから、きつい病気の人も入院してはるのに・・・・・・アホな親子やな)

『花まんま』 2005.4.25. 朱川湊人 文藝春秋



2005年05月22日(日) 水曜どうでしょうドラマ『四国R-14』

 札幌のしがないローカルタレント大沼陽は、藤木Dと上島Dに呼び出され‘また’四国へ行く事になった。藤木は編成部の小宮からドラマ作りを勧められ、以前の四国ロケでの怪奇現象をドラマにしたいと考えたのだ。その怪奇現象の一部をあまりに不気味だったため藤木と上島は大沼に隠していた。旅先で不信感を抱いた大沼は、ふたりに何を隠しているのか詰め寄る。そして撮影が始まり、写る筈の無い写りこんでいた風景とはいったい・・・。

 これは驚きました! 今や社会現象となりつつある「水曜どうでしょう」の全国への広がり。あなたも私もどうでしょう馬鹿に!?・・・そんなお笑い系のノリのバラエティ陣が作り出したドラマはすごいものでした。ホラーと言うより、感動しました。そういう落としにくるとは思いもよらなかったから。脚本を担当した上島こと嬉野Dの才能には脱帽。あのラストは泣けました。R−14はロール14のこと。このドラマの元になったロケのテープの14本目のことです。
 さてさて、このドラマの中で上島を演じた音尾琢真が素晴らしかったです〜。TEAM−NACSの中で俳優としてはたくちゃんが一番すごいかもしれない。地味だけど暖かくて確かな存在感があるのです。目は離れているけれどファンの心は離しません(笑)。もうひとり敢闘賞は全てのエキストラをこなした佐藤重幸さん。いつもハンサム、ハンサムと持ち上げられ、ナルシストっぽい人だと感じていましたけど、このエキストラっぷりは拍手もんです。不気味で怖いトーンなのに何故だかエンドロールの三人とシゲさんの絡みが最高。これってそのうち火曜サスペンス劇場とかで取り上げたらいいのになぁ。あ、ビデオ化したから次はDVDか〜。



2005年05月21日(土) 『傀儡奇談』 椹野道流

 USJに遊びに行った敏生(森さん抜き)は、かつて関わった事のある少女ふたりに再会する。当時、女子高生だったふたりは美しい女性に成長していた。森さんに淡い思いを抱いた桐枝(森さんの亡き恋人・霞波に生き写し)は、ライブハウスでプレイをしていて、ファンからあるものを預けられていたのだが、そのものがものだけに不気味な影を落とし・・・

 夏には滅法弱い森さんを置いて敏生がUSJでヴァカンス。そこで厄災の種を拾ってしまうあたり、さすが敏生クンであります(笑)。今回はファンというもの、表現をするものの責任感を強く訴えかけられました。
 まずはファン。ファンと言ってもさまざまで傍迷惑なストーカーなのにファンと勘違いしている人たちもいる! 本当にたくさんいる!! ファンならば好きな人を困らせたり、付きまとったり、わずらわしくすべきじゃないのに、お構いなし! ま、結局あんまり程度の良くない人間がなりがちなのですねぇ。ファンならどう応援すれば好きな人が喜ぶかを考えるべきであって、自分の好きな思いをぶつけるもんじゃなーい。声を大にして言いたいね、私ゃ。
 そしてこれは感心したのですが、椹野道流さんの表現者の覚悟をひしひしと感じ取れますよ。自分が発したものへの反応を受け入れる覚悟がいる。それがなければ表現者でいられない・・・素晴らしいプロ意識だ! だから好きなんだなぁ、椹野道流さんのこと。

 ・・・・・・あるいは、どんな形であれ表現者であり続けるつもりなら、自分の言葉や行動が引き起こすすべてのものを受け止め、立ち向かう覚悟が必要だ。

『傀儡奇談』 2005.1.5. 椹野道流 講談社



2005年05月20日(金) 『HEARTBEAT』 小路幸也

 「十年後に会おう」、高校時代に成績優秀真面目な委員長と美しき不良少女(ヤオ)の間で交わされた約束。そして僕は<暗闇>から帰って来た。ヤオに一億円を渡すために。しかし約束のその場所に現れたヤオの夫からヤオが失踪している事を知らされる。ヤオを探すために協力してくれそうな男を思い出した。僕にカッコいいブックマッチの擦り方を教えてくれた巡矢(めぐりや)・・・

 東京創元社さんのミステリ・フロンティアには当たりの作品が多くて、新刊を心待ちにするシリーズとなっています。そのミステリ・フロンティアに小路幸也さんが参戦! はらはらどきどきしてしまいました。そして泣きながら読み終わり(小路さんの物語には泣いてばっかり)、「大当たりだ」とポツリ。どうして小路さんの描く物語はこうも私の心を鷲づかみにするのだろう。優しくてせつなくて、もういやってくらいに泣かされます。
 今回強く感じた事は恋心は報われるものばかりじゃないってことのせつなさかしら。あと医療に携わる人間の心構えには同感しました。タイトルの意味に気づいたとき、気づかされたとき、鳥肌が立ちました。あの展開は想像できなかった。ネタバレになっちゃうから詳しく踏み込んで書きません。是非に読んでください。大当たりですからv

「長かったな。お帰り」

『HEARTBEAT』 2005.4.28. 小路幸也 東京創元社



2005年05月19日(木) 『透明な旅路を』 あさのあつこ

 女の白い首をしめ、逃亡する吉行明敬。闇夜を車で走りぬけ、トンネルを抜けたところで少年と少女にヒッチハイクされる。‘かこ’という幼女と白兎(はくと)と名乗る少年を乗せ、妙な逃避行になってしまい・・・

 あさのあつこさんのミステリー(とは言えないような)は、さすがの力技でぐいぐいと読ませてくださいました。なにを書かせてもうまいわ、あさのさつこさんってば。しかも、不思議と少年が妖しくセクシー。なぜなのかしら。あさのあつこさんの描く少年にはものすごくどぎまぎしちゃう。
 ジャンルとして分けるならば、ファンタジーに近い気がしました。不思議な素敵な怖い物語。ただ個人的にはラスト3ページは不要。あれがない方が終り方に余韻が残っていいと思うのだけど、いかがかしら。

 忘れてなんかいないさ。一日だって、忘れたことなかった。諦めることはできても、忘れることなんてできないんだよ。

『透明な旅路を』 2005.4.28. あさのあつこ 講談社



2005年05月18日(水) 『LOOSER 失い続けてしまうアルバム』 TEAM−NACS

 現代ニッポン、佐藤重幸は平凡な毎日を生きている。ある日、奇妙な男から時を行き来できるという薬を手に入れる。そして10の時を遡るという白き薬を何錠も服薬し、彼が辿り付いた先は幕末、新選組の活躍する動乱の世だった。彼が見た動乱の世の中や、新選組の隊士たちは彼が知っていた歴史とは違うもので・・・

 TEAM-NACSが北海道を飛び出して、東京公演を行った舞台です。私がTEAM-NACSを知ったのは、去年辺りから全国区に露出しはじめた大泉洋さんを好きな友人からでした。彼らの舞台って素敵だなぁ〜と熱中しはじめると、あれよあれよと言う間に大人気TEAMとなってしまわれました!(唖然) 今年は全国公演をされてる真っ最中にございます。チケットはたやすく手に入りません(涙)・・・
 さて、この『LOOSER』は、現代人がタイムスリップして幕末の新選組や倒幕派をどちらのサイドからも見ることが出来るという、脚本を書いたリーダー森崎さんの視点が優れもののお芝居であります。これを観たからこそTEAM−NACSを大好きになったと言えましょう。若者の心は時を遡ろうが、越えようが、変わらないものはあるのだと思いましたもの。
 中でも悪人として名高い芹沢鴨を演じた安田顕さんの怪演っぷりは素晴らしい。このお芝居に関して言えば、芹沢鴨=安田顕あってこその成功と思っています。これからますます目が離せない(音尾くんの目は離れていようとも)TEAM−NACSさんなのであります。DVDを是非観ていただきたいv オススメです。



2005年05月17日(火) 映画『river』 監督;鈴井貴之 出演;TEAM−NACS

 警察官の佐々木耕一は警邏中に通り魔に遭遇。拳銃に弾を入れない主義の佐々木は通り魔に人質を殺されてしまう。藤沢聡は結婚間近だった婚約者を通り魔に殺害され、犯人と取り逃がした警官を恨んでいた。ふたりは小学校の同窓会で再会し、いじめられっこだった横井茂に誘われ、オリンピックに出場したことのある同級生の九重達也のバーで酒を酌み交わす。九重は交通事故で足を怪我し、過去の栄光に縛られて生きていた。過去に囚われた三人の男が記憶を消す薬を盗み出す事になるのだが・・・

 大泉洋人気が一人歩きしている感のある今日この頃ですが、実は元々は鈴井貴之という一人の男の存在あってこそ。その鈴井さん監督の第二回作品です。過去に苦しむ男達が、もっと大昔の子供の頃のいじめを苦にした男の復讐に巻き込まれていく秀逸なサスペンスです。裏の主人公は小学生の頃に友達に裏切られ心が崩壊した音尾琢真扮する横井茂です。この役は美味しい。心理サスペンス好きさんにはかなりオススメの映画です!

「藤沢くん、見〜っけ」



2005年05月16日(月) 薬師寺涼子の怪奇事件簿『夜光曲』 田中芳樹

 ドラキュラさえも避けて通ると言う異名‘ドラよけお涼’さま、今回は生物化学兵器テロに立ち向かうっ!?

 体調最悪で寝たきりの合い間に読む本は、こういうものがいい。麗しき魔女・お涼さまの傍若無人っぷりと内容の漫画ちっくさに気楽に読める。集中して一気に読まなきゃいけないわけでもないので、寝て起きてるわずかな合い間に読みました。お涼さまに元気を与えていただいた気分。うっとり。

 ファンの心理とは微妙なものなのだなあ。

薬師寺涼子の怪奇事件簿『夜光曲』 2005.2.20. 田中芳樹 NON NOVEL



2005年05月15日(日) 韓国映画『僕の彼女を紹介します』

 恋は誤認逮捕から始まった。婦警のヨ・ギョンジンは決して「ごめん」と言わない熱血漢。誤認逮捕をしようとも相手に詫びすらしない。ある日、引ったくりを善意で追っかけていた高校教師コ・ミョンウを追っかけの現行犯で逮捕してしまう。すぐ暴力をふるい、勘違いだらけの彼女だが、どこかキュートで不思議な魅力にあふれ、いつしかふたりは恋に落ちる・・・

 えーっと韓国が送る暴力的ファンタジーとでも申しましょうか(笑)。DVDの装丁のヒロインの婦警コスプレがかわいくてかわいくて。映画の中でも婦警スタイルの大サービス。サラサラロングヘアとキュートな顔と美しい足を惜しげもなくさらしまくり、それだけで見ていてよかった〜と思えるシロモノv 内容としては韓国ものらしく、とんでもない展開を盛り込んでいてラブコメディ一転悲劇&ファンタジーへなだれ込む。うーん、悲しい展開だったから、ラブコメだけでぶっちぎってくれてもよかったんだけどなー。



2005年05月14日(土) 『犬夜叉』21〜25 高橋留美子

 ひとりひとりの宿命の重さと戦いながら、宿敵・奈落を倒すべく旅を続ける犬夜叉とかごめたち。かごめを巡って犬夜叉とライバル関係にある狼族の鋼牙。犬夜叉を巡ってかごめとライバル関係にあるかごめの先祖で甦りの桔梗。犬夜叉と同じ妖怪を父に持つ殺生丸。微妙な関係を保ちながら、犬夜叉たちを援護していて・・・?

 お気に入りキャラ 9:3匹の子猿(小妖怪) 七宝ちゃんと同じくキュート
 お気にいりキャラ10:蛇骨         オカマキャラ好きv

 奈落という最も不気味で忌まわしい妖怪(半妖?)は、かつて桔梗にあさましい欲望を抱いていた鬼蜘蛛と言う人間だった。己の欲望を果たすため、妖怪に身を喰らわせ転じ、奈落となるも、心のうちに桔梗への思いをかかえたまま。そこに奈落の苦悩がある・・・。半妖の犬夜叉は偉大な妖怪の血ゆえ暴走する。奈落も犬夜叉も苦しみの根は似ているのかもしれないなぁ。



2005年05月13日(金) 『犬夜叉』16〜20 高橋留美子

 完全なる美しき妖怪・殺生丸(犬夜叉の兄)、人間と妖怪の間に生まれた半妖怪の犬夜叉、半妖・犬夜叉に恋した巫女・桔梗(今は死人返り)、桔梗を思うがゆえ妖怪に我が身を食らわせた鬼蜘蛛の果て・奈落、奈落に穿たれた手を持つ坊主・弥勒、奈落に身内を殺され弟琥珀を捕われた珊瑚・・・桔梗の生まれ変わりであるかごめは様々な敵や味方や仲間とともに四魂の玉を集め続けるが・・・

 お気に入りキャラ8:黒巫女 椿 女って妖怪になっても哀しい


 現代の少女かごめが戦国時代へタイムスリップ。美しき巫女・桔梗の生まれ変わりと言われるが、かごめはかごめ。そして犬夜叉を挟んで死人・桔梗と恋の鞘当まで繰り広げる・・・。うーん、私の愛したアノ漫画と激似ではあるものの、このラブストーリーの部分が全く違う。ここが作者の性別の違いのなせるわざだろうか。しかし、殺生丸がいいわー。たまらないー。



2005年05月11日(水) 『夜離れ(よがれ)』 乃南アサ

「髪」
 芙沙子はコンプレックスだった髪にストレートパーマをかけ、つややかな髪に変身。それに自信を持ち、「髪は女の生命」と思い込んでいる。会社では憧れの社員を髪の魅力でモノにしようと狙っているのだ。同僚の硝子は化粧気もなく天然パーマの髪をひっ詰めている。あるパーティで自分の引き立て役だと思っていた硝子が艶やかに装ってきて・・・

 髪の毛。本当にそれは悩みであり、綺麗に決まればなんとなく綺麗になったように錯覚させるパーツ。髪に命をかけて奔走する芙沙子の行動は笑えないなぁ。コンプレックスが美しい武器に変わり、錯覚に浮かれていた時、思いがけぬ方向から伏兵が出現し、自分以上に美しい髪を手に入れてしまう。そして「壊れる」・・・
 たぶん自分の髪になんらかの悩みやコンプレックスを持った人間なら、芙沙子の狂気も理解できてしまって怖いんじゃないかしらー。とても面白い短編集でした。

「後ろから見たら、どんな美人だろうと思われちゃうわけよね、きっと。まあ、最近、そういう女の人ばっかりだけど」

『夜離れ』 2005.4.1. 乃南アサ 新潮社文庫



2005年05月10日(火) 『ルーム』 新津きよみ

 あることをきっかけに姉は家族と縁を切った。妹の友美は姉の死を知らされ、姉の人生の後始末を担当する事になる。見たくなかった姉の秘密? 姉のマンションに幼児の白骨が眠っていた。いったい姉はどんな人生を送ってきたのか?

 うーん(困惑)。姉が家族と縁を切る出来事というのがとても身につまされてしまったのです。これって誰が悪いで済ませちゃうなら、私的には母親が問題。結局母の勝手な思いが姉を壊しちゃったようなものだから・・・。でも二十歳過ぎたら人生自分の責任だから。自分を知り、自分と折り合って生きていくしかないはずです。誰かと比べたり、誰かの顔色を見たり、そういうのから抜け出さなくちゃ。しかしやはり猫は怖いにゃぁ・・・

『ルーム』 2005.3.10. 新津きよみ 角川ホラー文庫



2005年05月09日(月) 『袋小路の男』 絲山秋子

 私はあなたに恋をした。高校二年生で、成績が良くて、彼女がいるのにソープランドばっかり行っていると噂の小田切孝さん。それから十二年の間、私はひたすらあなたに恋をする・・・

 「袋小路の男」と「小田切孝の言い分」が呼応しています。小田切孝が住んでいる場所が袋小路。互いが互いを微妙な距離で縛りあっている・・・。それを恋と呼ぶのか、愛と呼ぶのか。こういうカタチを恋愛と言うのかしら。不器用なふたりの勝手なすれ違いが不思議なせつなさを感じさせてくれます。なかなかいいのよねぇ。

「どうして作家になろうと思ったんですか」
「そりゃ、俺にしか書けないものがあるって気がついたからさ」

『袋小路の男』 2004.10.29. 絲山秋子 講談社



2005年05月08日(日) 『逃亡くそたわけ』 絲山秋子

 あたしは福岡タワーに近い百道(ももち)病院から脱走した。二十一歳の夏をプリズン(と、わたしは病棟を呼んでいた)で過ごすわけに行かなかったのだ。なごやんという二十四歳の茶髪を道連れに・・・

 精神を病んで入院している若い女性を主人公にしたロードムービー。タイトルに惹かれたのですが、設定と内容にぶっ飛んじゃいました! ハイテンションなあたしと巻き込まれ型の青年なごやんのふたりの田舎へ田舎へ逃げていくだけの物語。でも九州大好き人間としては方言と風景にめろめろ。また心をちょっとばかし病んでいる人にシンパシーもあり。妙な物語なんだけど面白いんだよねぇ。
 ・・・個人的に言えば旦那と行って素敵だった秋月の風景を一気に思い出してちょっと泣けたりもした。

 一人では絶対に来たくなかったけれど、一度ほかの誰かと行っておかないと、もう行けなくなるような気がしたのだ。何にもないけれど、あたしは秋月のしみじみした雰囲気が好きだったから、捨てたくなかった。

『逃亡くそたわけ』 2005.2.25. 絲山秋子 中央公論新社



2005年05月07日(土) 『孤虫症』 真梨幸子

 高級マンションに住む主婦。外からは幸せそうに見える彼女は娘との関係に悩み、妹に鬱憤を晴らしていた。そして妹は妹で姉には言えない思いを抱えていた。そんなふたりの周りで紫色の瘤が出来て死んでしまう奇病発生。そして姉の失踪・・・

 とても不気味なホラーでした。やはり‘虫’が出てくると生理的嫌悪感を呼び起こす。父親の違う姉妹の微妙な心理やセックスに狂った女の心のブラックホールなど、これでもかーとばかりに畳み掛けてきました。ただ最後のほうにある説明文の羅列になるけれど、あれはなんとかすんなり抜けられないものか? もう少しあの部分を噛み砕いてくれれば言うことなかったんだけど、残念。

「あたしが言うのもなんだけどさ、女の幸せは男で決まるもんじゃないよ? あたしをご覧よ、男に幸せにしてもらおうと思って、このザマだよ。あんたは、自分の足で、歩いていけばいいんだよ、そうすれば、いろんなものが見えてくるよ」

『孤虫症』 2005.4.1 真梨幸子 講談社 



2005年05月06日(金) 『ユグノーの呪い』 新井政彦

 人の記憶空間に入り込み、トラウマの記憶を消してしまうヴァーチャル治療士。入り込んだ相手の記憶に飲み込まれるキケンの伴う治療。高見健吾はブラックホールに取り込まれ、治療できなくなりアルコールへ逃げていた。そんな彼を美しい女性・礼子が相方として仕事してくれと依頼してくる。礼子と金に釣られ、治療士に復活した健吾は美少女ルチアと会う。彼女はメディチ家の末裔。彼女のトラウマは
16世紀に先祖が大量虐殺した新教徒・ユグノーの呪い?

 これは最高に面白かったです! ゲームをする人ならばもっと面白いのかもしれません。人の記憶に自分をヴァーチャル化して入り込むと言う設定が映像向きで頭の中に場面が浮かぶところが楽しくて。はらはらどきどきさせられて十二分に楽しめること請合います。オススメ。かなりオススメv

「酔っぱらうと勘がよくなるんだ」

『ユグノーの呪い』 2005.3.25. 新井政彦 光文社



2005年05月04日(水) 『古道具 中野商店』 川上弘美

 骨董屋さんではなくて古道具店に働くヒトミ。風変わりな店主・インパクトの強い店主の姉・バイト仲間の男の子・それぞれ独特なオーラを振りまく客達。新しかったり、きれいだったりすることが、価値を減らす、へんな世界でさりげない日常と人々の生活やコイゴコロが懐かしく切なく語られる・・・

 なんて言うんだろう。人が生きて関われば生まれる人間関係のしみじみさをしっかり感じました。いろんな恋があり、正しい事ばかりではなくて、なんだか生きているってこういう世界のことなんだよなぁって思いました。こういう日常が続いていく、それが人生なのですね。大好きな一冊。オススメv

 マサヨさんの声はへんなふうに心地よかった。あらあらどうしたのよヒトミちゃん、というマサヨさんの声を聞きながら、わたしははらはらと涙を膝の上に落とした。この気持ちよさは何かに似ている、と思った。そうだ、ふつかよいの朝、吐く元気もないときに何かの拍子で思わず吐けてしまったとき、みたいだった。

『古道具 中野商店』 2005.4.1. 川上弘美 新潮社



2005年05月03日(火) 『ギブソン』 藤岡真

 日下部はゴルフのお迎えに早朝上司の家までお迎えに。しかし上司は現れない。高城を慕う日下部は失踪の謎を追いかけることになる。上司が向ったのは右?左?それとも正面の道? 謎の消防車、拳銃の発射音、ストーカー、消えた老人、上司の愛した女の娘・・・さまざまな不思議なピースを拾い集め、日下部が見つけた真実とは?

 あぁ、これは面白いです。東京創元社さんのミステリ・フロンティアシリーズはあなどれないですねぇ。上司の身にいったいなにが起こったのか? 不思議な出来事や奇妙な人々に振り回されながら、日下部の辿り着く真実は意外なものでした。テンポもいいし、翻弄されまわったと言う感じ。悪くないねぇv

「なにもかもが信じられなくなったとき、呑むのに相応しいものがいいな」

『ギブソン』 2005.4.15. 藤岡真 東京創元社  



2005年05月02日(月) 漫画『ハチミツとクローバー』 羽海野チカ

 友人に薦められて7巻まで一気に読みました。登場人物たちのキャラクターが非常によくて、エピソードになつかしさを感じて大ヒットのわけがよくわかりました。あの頃の若くて真っ直ぐで悩みだらけな毎日が愛しく思い出されました・・・。不覚にも泣ける漫画。かなりオススメですv



2005年05月01日(日) 『へんないきもの』 早川いくを

 へんなものズキにはたまらない図鑑です。本当に生存する珍妙な生き物をイラストと軽快なトーク(?)で紹介していて笑える。笑える。ベストセラーになったことも頷けるし、第二弾もかなり期待して待ってしまうv
 異様な生き物のイラストに添えられた文章で笑えたものをいくつかあげてみましょう。まずはタコブネ。貝殻入りのタコで交尾の時にペニス足を挿入すると「挿入後ブツリと切断されてしまう」んですって(笑)。いやタコブネさん♂には切ないことなんですが、妙に笑けちゃいました。これがファーストなので掴みはOKと言うところ。ちまたで大人気のウミウシですが、仲間のウミウシを食べちゃうと言うイシガキリュウグウウミウシを「軟体の鬼畜」とネーミング。うまいっ。しかもこの生物なんて見たことないわよう。面白い造詣だなぁ。しみじみ。最高に笑ったのはトビイカの紹介文。このイカは酔狂で飛んでいるのではなく、飛びでもしなければマグロに食われちゃう! しかも飛んだら飛んだでアホウドリにさらわれたりしちゃうんですって(笑)v 笑っちゃいけないが過酷な自然の現実。妙に癒される図鑑なのであった。オススメ。
 あられさん、教えてくださってありがとー。かなり受けました〜v

『へんないきもの』 2004.11.9. 早川いくを バジリコ株式会社



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