酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年05月31日(土) 蛇行する川のほとり2 恩田陸

 少女らしい少女・毬子が、美しい先輩・香澄と芳野たちと過ごす夏。彼女たちの過去、あの夏、あの川のほとりで少女たちになにが起きたのか・・・・・・。
 毬子が封印していた過去を思い出し、運命の歯車が回り始める。美しい少女たちに忍び寄る破滅の死の影。

 絶賛放置プレイ堪能中です(涙)。こんな終り方で8月まで待てだなんて。ワンワンワンッ!←抗議の吼え �,鯑匹鵑聖�に、��が出揃ってから読もうと心に決めていたのに、今日ついに自分で禁を破ってしまいました。ううう。
 恩田陸が描けばはずれるはずのない少年少女たちの閉鎖された美しいひとつの季節ものです。あやうくてまぶしくてその瞬間をとどめてしまいたいと読者にまで思わせてしまううまさ。�,離薀好箸皸嫐�深でしたが、�△離薀好箸楼嫐�深な上に酷すぎる・・・。ここは耐えて8月を待つといたしましょう。

 あたしたちは離れられないのだ。本人の望むと望まないとに関わらず、二人は結び付けられてしまった。

『蛇行する川のほとり�◆戞�2003.4.10. 恩田陸 中央公論新社



2003年05月30日(金) 秘密2 清水玲子

 科学警察研究所法医学第九研究室、通称‘第九’では、凶悪犯罪に関わった者の脳(犯罪被害者もしくは凶悪犯罪容疑者など)をMRIにかける。その脳から脳の持ち主が生前に「見た」映像全てをスクリーンに再現できる。その映像から犯人を割り出していく。その‘第九’の泣く子も黙る天下の室長、薪警視正は若くて美人(男)で超意地悪でガキ。薪に忠実に従う青木捜査員の前にまたもや猟奇事件被害者の脳が届く。今回の被害者の脳が生前見たものとは・・・。

 ひゃぁ〜っ、またもややってくれました。恐るべし、清水玲子! 清水玲子さんの描くミュシャを彷彿させる緻密で美しい絵も大好きですが、残酷極まりない物語も最高に好きです。いえ、愛しています。じーん。←恍惚としている
 この『秘密』シリーズは、脳が見ていた記憶していたものをスクリーンで見せてしまうというところがえぐいです。強靭な神経の持ち主以外は続かない職場。エリートで傷つきやすい薪を青木ほかスタッフが大切にしているところはほのぼのとします。マゾ入ってるとしか思えないけど(笑)。
 今回は、薪さんより青木が主人公なのでちょっとだけ物足りないかな。薪さんのクールビューティな極悪魔人っぷりをもっともっと描いて欲しいなー。

『秘密2』 2003.6.3. 清水玲子 白泉社



2003年05月29日(木) 4TEEN 石田衣良

 秀才で冷静沈着で外人巨乳マニアなジュン、家庭内暴力をふるう父親に悩む大きくて太っているダイ、人より速い速度で老いていく早期老化症候群のナオト、そして清純そうな女の子が好きな心優しいテツロー。そんな4人がさまざまな人と関わり合い、悩み傷つき少しずつおとなになっていく。

 石田衣良という人は着実に書きたい物を書いていけるようになったんだな、と言うのが一番の感想。心優しい4人の14歳の少年たちが瑞々しく思春期に悩みあがき、でもやさしさを忘れない。そういうふうに少年たちを描ける目線の優しさに何度も目の奥が熱くなってしまいました。人を思いやることができる14歳が生きている限り、日本もまだまだ捨てたものじゃないわ。
 
 8つの物語の中で私が一番好きなのは、「ぼくたちがセックスについて話すこと」です。4人にファッショナブルなカズヤという少年が近づいてくる。彼は学年でも有名な美少女に告白されるのだけれど・・・。
 どうも私は、性のありようってテーマに惹かれてしまいます。14歳で自分に正直でいられるカズヤが人気者になるのもよくわかる。人はあるがまま自然に生きていくのが美しい。それを応援している石田衣良のやさしさがじーんと伝わってきますv

 不思議なのは、みんなにどれほど悪く言われても、ぼくにはそれがぜんぜん悪いことに感じられないってことなんだ。

『4TEEN』 2003.5.20. 石田衣良 新潮社



2003年05月28日(水) 映画 CHICAGO

 罪が罪でなくなる街、1920年代のシカゴはそんなスキャンダラスで猥雑で退廃した街だった。日々、刺激を求める人々は犯罪者(殺人者)すらスターにしてしまっていた。
 舞台女優ヴェルマは、共に舞台に立っていた妹と自分の亭主を殺し、そのまま舞台へ立つ。ふたりはヴェルマを裏切り密通していた。興奮したヴェルマはいつもはふたりでこなすステージを見事にひとりで演じきり、その場で逮捕される。そのドラマティックなシーンを見ていたスター志望のロキシー・ハートは、ショウに出させる段取りをつけてやると嘘をついていた愛人を射殺してしまう。
 そんなヴェルマとロキシーは、奇しくも留置所で顔をあわせる。悪徳敏腕弁護士ビリーによって、悪女の歌姫としてシカゴのスターになっていたヴェルマ。ロキシーは自分もヴェルマのようなスターになるべく、ビリーを雇うのだが・・・。

 うわぁ、噂どおりわくわくのミュージカルでした。なにより出てくる女性たちの魅惑のボディにはうっとり。中でも悪女ヴェルマ役のキャサリン・ゼタ=ジョーンズの肉感的な肉体は女の目から見ても生唾ごっくんの垂涎ボディ。演技も悪女っぷりが素晴らしかった。ヴェルマを蹴落としスターダムに乗るロキシー役のレニー・ゼルヴィガーもとってもキュート。でも「ブリジッド・ジョーンズの日記」の時よりかなりウエイトが落としているため、肉体的には見劣りします。ダンスも歌もキャサリンが最高にいいっ。あと女看守ママ・モートン役のクイーン・ラティファも大迫力BODY & シャウトで魅せます。
 つくづく編みタイツに官能的な姿をする女性というものは痩せているよりも肉感的な肉付きのよい方が色艶が数段上。美しく野心のあるしたたかな悪女たちのシニカルな物語でした。サイコー。



2003年05月27日(火) 低俗霊DAYDREAM 原作:奥瀬サキ/漫画:目黒三吉

 19歳の深小姫(みさき)は、霊の口寄屋。父の勤務する都の生活対策課からまわされてくる様々な珍現象の原因究明と除去をしている。それ以外に生活の糧にSMの女王様なんぞもやっていて、高校生にストーキングされていたりする・・・。

 えーっと、まずは18歳未満は読んじゃダメダメです! かなりエロティック。漫画を描いている目黒さんがそっち系(アダルティ漫画)出身だと教えていただきました。でもただのエロ漫画ではなくひとつひとつの物語のテーマが、自殺だったり、ストーカーだったり、レズビアンだったり、現代のさまざまな人間の心の闇をテーマにしていてとても面白い。おとなでエロティック満載な幽霊漫画(読めばわかります)お好きな方にはオススメ。
 私のお気に入りは�4�の『カミングアウト』です。深小姫の友人のシズエ(編集部勤め)はレズビアンであることをカミングアウトしている。彼女がかかわった家出少女が自殺をして・・・。性の問題はこの漫画の一貫したテーマなんだと思います。自分の性癖を隠さず生きていく勇気はすごいなー。シズエ好き。

 あなたは小さな柔らかい箱の中で身内を切り裂くことしかできなかった
 あなたが傷つけたのはあなたを心から愛している人達よ
 (��巻『デイドリーム』 自殺した子への深小姫の言葉) 

『低俗霊 DAYDREAM� 銑ぁ戞仝矯遏П�瀬サキ/漫画:目黒三吉 角川書店



2003年05月26日(月) りかさん 梨木香歩

 ようこは、おばぁちゃんからお雛祭りに『りかさん』という真っ黒の髪の市松人形をいただく。でもようこが本当に欲しかったのはみんなが持っているリカちゃん人形だった。けなげなようこは不満そうな顔をしてはおばぁちゃんに悪いと思いぐっと我慢をする。そしておばぁちゃんからの説明書どおりにりかさんのお世話をするうちにりかさんに夢中になっていく。そしてりかさんを大切にして七日目の夜にりかさんが話し掛けてきたっ!
 これは、『からくりからくさ』と言う物語と続く物語。ただし、時代的には蓉子の少女時代にあたり、りかさんと蓉子の心の交流、『からくりからくさ』でキィとなるマーガレットとの因縁が描かれています。『からくりからくさ』では素敵な気配だけになっているおばぁちゃんも元気です。
 少女時代の蓉子が、りかさんに話し掛けられて自然に受け入れる姿や、草や木を愛する心がのびやかに描かれていて『からくりからくさ』をますますよいものに仕上げている感じがします。『りかさん』は児童書かもしれませんが、『からくりからくさ』と見事に呼応していて大人が読むにもよい物語です。

 価値観というのはね、簡単にいえばその人がどういうことをいちばん大事に思うかってこと。

『りかさん』 1999.12月 梨木香歩 偕成社



2003年05月25日(日) ボイス 吉村達也(映画とはちょっと違うノベライズ)

 ジウォンは雑誌記者。携帯電話で気軽に行われている援助交際を取り上げ、世論の注目を浴びる。そんなジウォンにストーキングが繰り返され、恐れを抱いたジウォンは親友ホジョンの夫チャンフンの好意で彼の持ち家に避難する。
 ホジャンは夫の提案が内心面白くない。なぜならば美しく完璧主義な彼女はどうしても子供が出来ず、ジウォンから卵子提供を受け、ヨンジュという可愛い娘を得た負い目があるから。またジウォンとチャンフンが惹かれあっていることにも感づいている。卵子提供を受け自分は代理母として使われたような被害妄想に陥るホジョン。
 ジウォンは、ストーキングのひとついやがらせ電話を回避するべく携帯電話を変えるのだが、その番号を選んだ者たちは次々と死んでいた。ジウォンの周りで不可思議な現象がおこりはじめ・・・。

 これは韓国発ホラー映画『ボイス』を、吉村達也さんがノベライズしたものです。しかしながら大元の軸は大切にしながらもラストなど映画とは違うらしいです。作家吉村達也さんの書くことへのこだわりが感じられました。
 映画のCMでヨンジュ役の女の子の表情の怖さに規制がかかってしまったほどの映像版も気にかかります。この小説とは違うラストと言うものも見てみたい。
 吉村達也さんは、卵子提供など女性によっては敏感に反応するテーマなので最初は違うアプローチを試みようかと考えたそうです。そういうところに吉村達也さんのお人柄が出ているなぁと好ましく思いました。
 私は子供をなしていないので、そしておそらく子供を持たずに生きていくと思うので主人公のひとりホジョンの苦悩を理解してあげられないのです。子供がいないと一人前ではないという風潮はまだまだ世の中に根強いのでしょうか。私は自分らしく生きているからあんまり問題にしていないのですけどね。

 
 ときに真実というものは、隠してこそ、よき人生を送れることもある。真実はつねに知るべきもの、それこそが人権と思い込む人たちは、人生の機微を知らなさすぎますね。

『ボイス』 2003.4.25. 吉村達也 角川書店



2003年05月24日(土) PAY DAY!!! 山田詠美

 ハーモニーとロビンは16歳の双子。ニューヨークのダウンタウンで育ったふたりは両親の離婚により離れ離れになる。兄ハーモニーはアフリカ系の父と南部へ、妹ロビンはイタリア系の母とニューヨークで暮らすことに。バラバラになった4人の家族にある日突然思いもよらない悲劇が襲う。母、ソフィアが働くビルがテロ(2001年9月11日)に巻き込まれ死亡。大切な人を失った3人が、壊れた自分の心をどうやって再生していくのか。

 大切な人を永遠に失うという予期せぬ出来事は、心を破壊します。私は好きでたまらなかった恋旦那が26歳で死んだ時、ゆるゆると気がふれていく自分を見つめていました。でも再生していけるものでした。それは私に家族が友人がそして今では恋人がいるからです。そしてこの物語のテーマとも言うべき、一瞬の大切さ尊さを身をもって知ったと思います。はらはらと涙を流しながら、そしてその涙は清清しく、読了しました。山田詠美さんもすごいや。感動。

 
 大切な人の死は、魂を成長させる。その事実を認めることは、とてもやるせないことだけど。

『PAY DAY!!!』 2003.3.20. 山田詠美 新潮社



2003年05月23日(金) あのころの宝もの 加納朋子、近藤史恵ほか

 12人の女性作家が描く心の奥にそっとしまわれた、忘れられない気持ち、忘れたくない気持ち。12人のそれぞれの宝もの。
 こういうショートストーリーは通勤とか、待ち合わせとかにちょうどいい。この企画は雑誌ダ・ヴィンチのWEB上で展開されていたらしい(知らなかった)。加納朋子さん、近藤史恵さん、中山加穂さんというお気に入り作家さんの名前が連なっていたので興味深く読みました。またこういう企画もので未読の作家さんで気になる文章と出会えるもまた楽しい。今回発見したのは島村洋子さんの『ルージュ』。毒があるけどなんだか同調してしまう物語でした。また今まで読んでいたけれどそんなに集中していなかった久美沙織さんの『賢者のオークション』もショートならではのうまさを感じました。しかしあえてひとつ選べと言われると加納朋子さんの『モノレール猫』か近藤史恵さんの『窓の下には』のどちらかになってしまう。うーん僅差で近藤史恵さんWINNERかな。どんなにショートでも近藤史恵ワールドなり。
 気軽に手にとって読んでみるにはぴったりのショートストーリーたちだと思います。

 もう会うこともない人なのに、わたしたちは一対の棘を、共有している。

『あのころの宝もの ほんのり心が温まる12のショートストーリー』 2003.3.30.
 メディアファクトリー 



2003年05月22日(木) ラッシュライフ 伊坂幸太郎

 「金でかえないものはない」と豪語する画商の戸田と、恩人を裏切り戸田と契約を結んだ画家の志奈子。美学を持っている泥棒の黒澤。名探偵(?)の教祖を信じ、その神(教祖)を解体しようとする塚本。愛人の妻を殺そうと企む京子。リストラされ途方にくれる豊田。5つのバラバラな物語が、表紙にも使用されているエッシャーの騙し絵のようにどこかが錯綜しリンクし、最後に・・・。

 いやー、伊坂幸太郎さん、よいですねー。去年のこのミスにランクインした時に本気でチェックしておけばよかった。結局伊坂幸太郎さんの本は、『オーデュポンの祈り』→『重力ピエロ』→『陽気なギャングが地球を回す』→『ラッシュライフ』と妙な読み方になってしまいました。でもどれもこれも噂にたがわぬ面白さ!
 今回の『ラッシュライフ』にも、『オーデュポンの祈り』のアノカタがちらりと登場します。伊坂さんはよっぽどアノカタがお気に入りなのですね。
 5つの物語が交錯して物語は進み、最後に読者は綺麗な伊坂幸太郎さんの騙し絵に騙されます。5つの物語がそれぞれ単独でもおもしろいので、もっと分厚くなってもいいところなのでしょうが、伊坂幸太郎さんはそれを潔しとしなかったのでしょう。そのあたりもとても好感の持てる作家さんです。
 この『ラッシュライフ』の中では、泥棒の黒澤さんがすっごく素敵。めろりんでした。いろんな事件がありますが、文章にやさしさを感じます。ラッシュライフー豊潤な人生に乾杯。最高でしたv

 「Lushは酔払いという意味で、飲んだくれのやけっぱち人生ということらしい。おまえに必要なのはむしろそういった開き直った生き方かもしれないな」

『ラッシュライフ』 2002.7.30. 伊坂幸太郎 新潮社 



2003年05月20日(火) ぼくんち 西原理恵子

 一太とニ太のもとに三年前出て行ったきりだったかあちゃんが戻ってきた。綺麗で乳の大きなかのこねぇちゃんを連れて。そうしているうちにまたかあちゃんは消えてしまい、一太とニ太とかのこの三人の生活がはじまった。

 ううーん。つらすぎます。笑えるとこなんだろうなぁと思っても泣けてしまう始末。ううう、参りました。かのこはキュートで可愛いし、優しいし、聖母みたいな存在。他のキャラクターも魅力的。人気が出たこともすごくよくわかります。でも私は笑えない。泣ける。心が痛い。さらりと毒気をまじえて描いていることが深すぎました。よくも悪くもノックアウトです。

 なくすもんがありすぎると人もやっておれん。両手で持てるもんだけで、よしとしとかんとな。

『ぼくんち』 2003.6.1. 西原理恵子 小学館



2003年05月19日(月) 緩やかな反転 新津きよみ

 亜紀子は訪ねてきた見知らぬ女性に玄関先の鏡の前で殴り倒される。気が付いた時、亜紀子は傷つき突っ伏していた。ではそれを見ている私は・・・亜紀子なのに見知らぬ女性の中にいる! 被害者でありながら加害者の中に入り込んでしまった亜紀子は、殴られた動機を探ろうとするのだが・・・。

 入れ替わった人間が見知らぬ他人の中で家族として生活していく。これは考えただけでも恐ろしいことですね。そんな中に身を置きながら、少しずつ情報収集をする亜紀子は強い女性だなぁ。最後まで不思議な謎が残されますが、その謎を受け入れるかどうかで感想もかなり違ってくるでしょう。
 私としては、SFかホラーかどちらかへもう少し偏ってくれた方がすんなり受け入れられた気がします。


 黙って食べればみんな平和なのに、その場の雰囲気を壊す困った人なんだよね。だからこそ、一言多いって言われちゃうんだよ。

『緩やかな反転』 2003.3.30. 新津きよみ 角川書店



2003年05月18日(日) からくりからくさ 梨木香歩

 蓉子は、亡くなった祖母の家で暮らすことにする。蓉子に多大な影響とりかさんをたくした大好きな祖母の気配の残る古い家に。同居人は、すぐに見つかった。鍼灸師を目指す日本的なものを愛する異邦人(あえて)マーガレット。機を織る音がうるさいと苦情がでて困っていた神秘的な紀久。テキスタイルの図案研究をしているはきはきした与希子。4人とりかさんの生きることを慈しむような生活がはじまった。そんな4人とりかさんの織り成す生活の中に神崎と言う男が流れ込んできて・・・。

 ある方の企画に参加させていただきたいなぁと思い、久しぶりに読み返しました。何度読んでも梨木さんの文章から滲み出る美しさ暖かさに涙が止まりません。たまたま個人的に落ち込んでしまっていたところへ、命が連綿と受け継がれていく素晴らしさを再確認させてもらえたようで、不思議な巡り合わせに感謝したい感じです。
 私はこの物語の中では蓉子は別格として不器用な異邦人マーガレットのことがすごくスキなのです。神崎がマギーと呼んでいいかと言うと、マーガレットはきっぱりと「私はそういうマーガレットではない」と答えるところがなんとも言えずスキで。また、マーガレットが今の自分の性質を作り上げた少女時代を語るとき、同調して泣けて泣けて。
 うまく言えないけれど、いつこの物語を読んでも感じることは《受け継がれていく命の尊さ》みたいなものなのかしら、と思います。もし読んだことのない方がおられたら是非読んでいただきたい、そんな宝物のような物語です。

 
 流れをただ見つめていたら、そのうち流されているものも落ち着くところに落ち着くわ。

『からくりからくさ』 1999.5.20. 梨木香歩 新潮社



2003年05月17日(土) 感染夢 Carrier 明野照葉

 阿波隼人の従兄が妻と子供を道連れに死んだ。従兄の残したメモには支離滅裂な不穏な書き残しがあった。従兄はノイローゼだったのか。結婚を意識している恋人理恵子はその異様な事件を気にせずにいてくれる。それが救いの隼人であったが、隼人と理恵子は同じ悪夢に魘されるようになっていく。この悪夢からふたりは醒めることができるのか?

 待ちに待った明野照葉さんの書き下ろしホラーです。いやぁ、明野節健在なり。話の運びと納めはまさしく明野照葉です。嬉しくなってしまう。
 明野照葉さんに注目するようになったのは、大好きな高橋克彦さんが見出された方という点にあります。高橋克彦さんの描かれる良質な日本ならではの土着的恐怖が明野照葉さんの世界にもあると思うのです。高橋克彦さんの亜流ではなく、明野照葉さん独自の怪しい恐怖は是非ご一読いただきたい。オススメですv

 また“私”の境界線が曖昧になりはじめている。

『感染夢 Carrier』 2003.5.25. 明野照葉 実業之日本社



2003年05月16日(金) 陽気なギャングが地球を回す 伊坂幸太郎

 ギャングの仲間割れを防ぐには、メンバーは4人がいい。嘘を見分けてしまう能力を持ち自閉症の息子を愛する成瀬、銀行強盗をしながら人質に演説をかまして去る妙な響野、鮮やかなスリテクニックを持つ心優しい動物大好きな若者久遠、物事に動じない体内時計を持つドライバー雪子。ひょんな騒ぎで知り合った4人が陽気にギャング行為を繰り返す。ある日、シンプルな作戦途中に邪魔が入り、せっかく強奪したお金を奪われてしまう。4人はお金奪還のために動き出す・・・。

 うわー、伊坂幸太郎っておもしろーい。こんなに面白かったんだぁ。感動。先日読んだ『重力ピエロ』とはまた違う角度。登場する4人と4人に関わる人たちとのわやわや交わされる会話が本当に楽しい。良質なコメディ映画を観ているような感じでした。重いテーマもところどころ顔を出しますが、全体的にやさしく暖かい物語です。勿論やっていることは犯罪なんですけどネ。とってもとってもオススメです。今年は伊坂幸太郎さんイヤーとなるかもしれないなぁ。

 「感じたこと全部をわざわざ口に出す必要はないんだよ。誰もが心の中で思っているいるだけならば、世界は平和だ」

『陽気なギャングが地球を回す』 2003.2.25. 伊坂幸太郎 NON NOVEL 



2003年05月14日(水) タイムスリップ森鴎外 鯨統一郎

 1922年(大正11年)、渋谷道玄坂で森鴎外は突如80年後にタイムスリップしてしまう。どうやら何者かに暗殺をされかけた模様。迷い込んだ現代でキュートな女子高生、麓うららに助けられ、モリリン(とうららに名づけられる)は暗殺者が誰なのかを突き止めるようとするのだがっ・・・!?

 鯨統一郎さんのすちゃらか物語ナンバー1は、なんと言ってもこの『タイムスリップ森鴎外』。現代にタイムスリップした森鴎外の奮闘振りや順応ぶりが微笑ましくも涙ぐましい。でも才能のある人っていつの時代でも輝いてしまうものだなぁと感心もしてしまったり。意外な犯人にどうぞ驚いて笑ってください。必読です。

 
「ミステリマニアというのは、どうなんだろう? “一般の人”なのかな」

『タイムスリップ森鴎外』 2002.3.5. 鯨統一郎 講談社ノベルス



2003年05月13日(火) みなとみらいで捕まえて 鯨統一郎

 半任(はんにん)刑事は、ある事情から警視庁から神奈川県警へ出向した。そこにはショーットカットにミニスカ刑事、南登野洋子(みなとのようこ)若手刑事がいた。半任は、洋子に連れられメイタンテイに出会う。それは、中華街《酩淡亭》の明丹延(めい・たんてい)と言う不思議な老人だった。ふたりは明老人のお言葉から数々の珍事件を解明していくのだが・・・。

 まったくもう鯨統一郎さんらしいすちゃらか物語です。この手のお笑い解決ものも笑えるし、面白いけれど、『鬼のすべて』のような路線もまた書いて欲しい。まぁそう言いながら鯨統一郎マイベスト1は『タイムスリップ森鴎外』ですけどね。
 さらさらっと面白く読みたい方にはオススメです。おちもうまいv・・・かな(笑)

 名探偵は名探偵を知るということか。

『みなとみらいで捕まえて』 2003.4.25. 鯨統一郎 JOY NOVELS



2003年05月12日(月) 共犯マジック 北森鴻

 読んだ者の中から自殺が続出してしまう救いのない預言書《フォーチュンブック》、全国の書店は販売自粛の動きを見せた。しかし、長野県松本市にある本屋で在庫の中から出てきた《フォーチュンブック》を店頭に置き、売り切ってしまう。その時その本を手に入れた人たちがその後の人生においてさまざまに絡み合い、破滅していく・・・。

 この作品は、北森鴻さん的ある意味ホラーだと思います。だからたまに読み返してはうなってしまう。それぞれの事件が最後に編みこまれる時は、ぞーっとしてしまう。扱った事件の大きさには度肝を抜かれますが。なんにしても読ませてしまう作家さんです。
 北見隆さんの装丁も好みだわv

『共犯マジック』 2001.7.31. 北森鴻 徳間書店



2003年05月11日(日) 琴歌奇談 椹野道流

 敏生(としき)は絵のお師匠さんと出雲へ一泊旅行へ。たった一泊旅行でも森(しん)と離れた敏生は寂しくてたまらない。帰ってみると森がいない。式神の小一郎の気配もない。どうやら森は早川から「組織」の依頼を受け、なにかに巻き込まれてしまったらしい。べそべそ甘ったれ敏生が森を救うためのたったひとりの戦いが始まった!

 えーっとこの奇談シリーズは、いわゆる《ボブ》ですよね。ボブ=ボーイズラブ(笑)。男性同士の恋愛ものはヴィジュアルが美しいならまぁ許せます。←勝手
 椹野道流さんの描く不思議な世界が好きです。この奇談シリーズより、鬼籍通覧シリーズの方がよりシビアで好きですが。
 今回の奇談には、気になる新しいキャラクターが登場しますよっ。(あ、けっこう好きなんじゃん) 森さんに負けず劣らずいい男です〜。今後が楽しみv

 
 けれど、心は最初から万能ではない。俺たちは皆、それを育てていかなくてはならないんだ。

『琴歌奇談』 2003.4.5. 椹野道流 講談社



2003年05月10日(土) 映画 ハリー・ポッターと賢者の石 J・K・ローリング原作

 ハリー・ポッターは交通事故で両親を亡くし、母の妹夫婦の家でいじめられながら育つ。11歳の誕生日を迎えたハリーのもとに魔法の手紙が届く。それはホグワーツ魔術学校入学許可書だった。ハリーの両親は交通事故ではなく、名前を言ってはいけないアノ人と戦って敗れたのだった。ハリーはホグワーツで、冒険と共に成長しながら、かけがえのない仲間と自分の生きていく道を見つける!

 うーん、あらすじを簡単に書いてみると陳腐ですねー。原作は勿論、映画も最高級に素晴らしいこの物語。今更私などが言うに及ばずって感じですね。
 私は、小さい子たちの頑張る姿に弱くて、しかも友情のために自分の身を犠牲にしようとするところなんて涙がとまりませんっ。いやはや今回は映画のほうで書いていますが、映像も夢とスリルにあふれていて世界中をとりこにしたのも当然。何度でも観てしまう映画です。 



2003年05月09日(金) 重力ピエロ 伊坂幸太郎

 泉水の母は情熱的な美しい人。泉水が一歳の時に男に襲われてしまう。泉水に危害を及ぼすぞと脅迫し、強姦するという未成年の割には卑劣きわまる熟練した強姦魔だったらしい。春はその結果生まれた泉水の弟。ふたりの父は春を自分の息子と言い切る。心に悲しみを抱えながら春も20代となる。母は亡くなり、父は癌におかされ入院をしている。そんな三人の周りで放火事件が続発。春は現場の近くにいつも書かれている落書きに着目。三人三様の事件へのアプローチがはじまった。

 いやー、いいものを読ませていただきました。春がレイプされて生まれた子供と言うことが物語全体からいろんな問いかけとなっていて、春自身物語の内外(と言うのもおかしな書き方ですが)で悩みぬいたであろうことがわかります。その春を愛する父・母・兄がまことにいい。物語の謎もまたうまいv これは読んでください。
 伊坂幸太郎さんの作品は『オーデュポンの祈り』しか読んでいなかったので、他の作品も読みたいと思います。そう言えばこの作品にオーデュポンのアノ方(?)がちらりと出てきてそれは嬉しい。

 「ピエロが空中ブランコから飛ぶ時、みんな重力のことを忘れているんだ」

『重力ピエロ』 2003.4.20. 伊坂幸太郎 新潮社



2003年05月08日(木) クレイジー・クレイマー 黒田研二

 袖山剛史は、大型スーパーのマネージャー。彼の悩みは、異常なクレイマー岬と万引き常習犯マンビー。岬の執拗なクレームは、ストーカーまがい。マンビーは、鮮やかな手口で万引きを繰り返す。岬とマンビーがエスカレートしていき、ついに袖山は・・・。

 怖いですね、人間って。ストレスの発散をクレームにしていたり、万引きをしたりする人もいるかもしれないなと思ってしまった。展開はそうくるよねと思いましたが、ちょっと物足りなかったかな。うーん。

『クレイジー・クレイマー』 2003.4.25. 黒田研二 ジョイ・ネベルス



2003年05月07日(水) 映画 DREAM CATCHER スティーブン・キング原作

 メイン州の小さな町に住む少年、ヘンリー、ジョーンジー、ビーヴァー、ピートの少年4人は、いじめられている少年ダディッツを助ける。人より知能の遅れが見られるダディッツは、心の美しい、不思議な能力を持つ少年だった。4人の少年は、それぞれダディッツから不思議な能力を授けられる。
 20年後、大人になった4人は与えられた不思議な能力ゆえに悩み苦しむようになっていた。そんな4人が集まった時、悲劇の幕が下ろされた! かつて勇気ある少年だった4人は、ダディッツとともに人類の命運をかけて身の毛もよだつ恐怖に立ち向かっていくのだっ!!

 いやはや、まさか物語がこういう展開になるとは想像だにしていなかったため、かなりかなり驚いてしまいました。最初少年たちが出てきたときには、大好きな「スタンドバイミー」を彷彿とさせて嬉しかったのですが・・・ちょっと路線は違います(苦笑)。まったく先入観なく観たため驚きも素直でよかったかもしれない。
 観ていくうちに物語のラストの予想がつくことと、そのラストのつじつまが合わないような気がする点さえのぞけば、非常にどきどきさせていただきました。でも誤解を恐れずに言うならば、いろんな映画のミックスという感覚もありました(笑)。



2003年05月06日(火) 幸福の軛(くびき) 清水義範

 殺人者が、被害者の生首の口に《鬼面羅大魔王》という文字を噛ませて残した。これは、かつての酒鬼薔薇聖斗事件のコピーキャットなのか。自殺に連続殺人が相次ぐ。
 大学助教授であり、実践的な教育カウンセラー中原雅之は壊れていくこどもたちに関わりながら、どう対処していくのか・・・。

 いやぁー不謹慎な感想を承知で書きますが、かなり面白かったです。人の心の闇や生まれてしまう鬼と、人はどう向き合っていけばいいのか。親子や周りの人間との愛情やかかわりは一生続く限り、その闇に目をそむけることはしてはならないのだろうと思います。そしてやはり人が人として生きていくならば、やってはいけないことがある。やってはいけないことをしてしまった時に人は人でなく鬼になるのかもしれません。私的には超オススメです。

 あなたも、心に傷を負い、人間として壊れかけていたのだろうか。

『幸福の軛』 2003.3.30. 清水義範 幻冬社



2003年05月05日(月) プリズムの夏 関口尚

 僕と今井はとある映画館のチケット売りをしている松下さんにほのかな恋心を抱く。松下さんにどきどきしている僕たちは、あるサイト「やめていく日記」にはまる。彼女は“わたしはわたしをやめたい”と望んでいるようだ。ある日の日記を読んだ僕たちは、日記に書かれた状況に遭遇していたことからその管理人が松下さんではないかと疑問を持つ・・・。

 高校三年生の多感な少年が、悩み傷つく姿が気持ちよく描かれています。現実から逃げだしたい気持ちであるとか、神様はいないのかとか、救いってなんだろうとかなど、純粋な年代だけが持てる感情だと思う。
 去年の第15回小説すばる新人賞受賞作品だそうです。

『プリズムの夏』 2003.1.10. 関口尚 集英社



2003年05月04日(日) 桜宵 北森鴻

 東急田園都市線三軒茶屋の駅から商店街を抜け、いくつかの路地の闇を踏みしめたところにぽってりと等身大の白い提灯が浮かぶ。それはビアバー《香菜里屋》の目印。そこのマスター工藤哲也の出す料理は最高らしい。その上この工藤と言う男は、客の運んでくる謎を料理することも得意らしいv

 北森鴻さんファンの間でも熱烈な支持を受けているバー香菜里屋シリーズです。この物語は謎解きは勿論、工藤の手による料理の美味しそうなことに生唾ごっくんな人も多い。私の友人などは自分のサイトの中でキッチンというコーナーを設け、物語に出てくる美味しい料理を紹介していますが、工藤の料理は必ずあがります。
 呑みすけの私としては、香菜里屋でロックスタイルの麦酒を呑みたいものv 特に読んでいた今日の昼間は暑いくらいだったので涎が出そうなくらいでした。
 今回の5つの謎もとても面白かった。私が個人的に一番好きな物語は、珍しく工藤が香菜里屋から離れる『約束』です。人の心に巣食う闇の深さに慄然とします。いやしかし店を離れても料理する工藤ってなんだか笑える。呑みたい。食べたい。

『桜宵』 2003.4.15. 北森鴻 講談社



2003年05月03日(土) 秋に墓標を 大沢在昌

 松原は、かつて相棒ケインと六本木に店を構え成功するが、ある女性との気詰まりな別れ方から千葉の海辺に隠遁してしまう。仕事は漫画の脚本、新しい相棒はカール(犬)。心を閉ざし、人とのかかわりを絶って生きようとする松原の前に美しい女性杏奈が現れる。なにかから追われている杏奈に出逢った瞬間から松原の人生は過去の後悔やしがらみと立ち向かうこととなる。

 これぞ大沢親分のハードボイルド〜です。ストイックな過去に傷つく男、松原も、かつての相棒ケインもとってもよい。杏奈も魅力的。しかしながら、重要なネタバレが途中でわかってしまう。これだけが残念かしら。まぁ、大沢親分としてはそんなことなぞ確信犯なのでしょうけれどもv
 CIAに中国マフィアにアメリカの殺し屋、そして日本警察に公安と出るわ出るわのオンパレード。フィクションの冒険を素直に楽しめる方にはオススメです。

『秋に墓標を』 2003.4.5. 大沢在昌 角川書店



2003年05月01日(木) 九十九十九 舞城王太郎

 生まれた瞬間から美しすぎて見るものを失神させ、誘拐され、美貌を破壊される九十九十九。生まれながらの才能で聖書などの見立て殺人事件を次々と解明していくのだが・・・。

 うーん、参った。悪い方に。舞城王太郎節は個人的には好みであるし、この物語も半ばぐらいまでは面白く読みすすみました。が、しかし・・・半分辺りから訳がわからなくなってしまう。(私の頭が理解できないだけかもしれないけれど)
 入れ子構造が複雑で、結局なにがどうしたのかわからない。ひとつひとつの単独の物語はそれぞれ残酷でエログロで面白いだけにとても残念な気がする。
 やはり清涼院流水のJDCワールドを未読であるためなのかしら。不完全燃焼。

『九十九十九』 2003.4.5. 舞城王太郎 講談社ノベルス



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