酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年03月31日(月) 天使はモップを持って 近藤史恵

 若くてお洒落な女の子がビルの清掃員!? 掃除の天才キリコは、ビルや人の曇った心やこんがらがった謎を文字通りクリーンにしていくv

 うまいですねー、近藤史恵さん。大好きな作家さんのおひとりですが、今回の物語もとってもいいです。タイトルがいいし、チャプターをCLEANとしたところもうまい。清掃員のキリコは、芯の通ったとても魅力的な女の子です。読んでいて自分の心もクリーンになっていく感じでした。オススメv

『天使はモップを持って』 2003.3.25. 近藤史恵 JOY NOVELS



2003年03月30日(日) ミステリアス学園 鯨統一郎

 ミステリ学園に入学した湾田乱人(わんだらんど)は、松本清張の『砂の器』に感動してミステリアス学園ミステリ研究会→ミスミス研に入部する。そこで乱人が遭遇する事件の数々・・・。

 いつもながら鯨統一郎さんの変幻自在な作風には驚かされてしまいます。今回は劇団LEDさんをヴィジュアル・スタッフに迎え、素晴らしい装丁になっているところも魅力のひとつ。また推理小説のおおまかな変遷や用語、ジャンル分けの説明などが作中でなされていて勉強になります。作中にお気に入りの推理作家さんの名前を見つけることも楽しみのひとつv
 しかし・・・ラストの〆の言葉はうまいなぁ。さすが鯨統一郎って感じ。

『ミステリアス学園』 2003.3.25. 鯨統一郎 光文社



2003年03月29日(土) 感情教育 中山可穂

 「あなたには感情教育が必要みたいだね」
 育った環境から自分を押さえて生きる性質になった那智に、愛人の理緒はそう説教をする。
 女同士の恋愛(肉体を伴う)は、はまると抜け出すことは出来ない甘美な蟻地獄のようなものなのかもしれない。中山可穂さんの描く女性同士の恋愛には心がきしむほどせつなさを感じる。美しい女性同士の恋愛に憧れているからかもしれない。

『感情教育』 2000.2.5. 中山可穂 講談社



2003年03月26日(水) 観覧車 柴田よしき

 下澤唯は、失踪した夫の探偵事務所を継いでいる。唯のもとへさまざまな事件が持ち込まれ解決されていく。そんな中、唯は失踪した夫の姿を見かける。唯の夫は見つかるのか。どうして失踪してしまったのか。
 柴田よしきさんらしい物語で読みやすいです。それぞれの事件に哀しい事情や人間模様や柴田さんの目線が現れていてとても面白かった。中でも肌を露出しすぎな若い女性への警告は同感。肌を露出して男性の視線が集まることはもててることじゃないと言い切る柴田よしき。読み手の若い女性たちはそこにちゃんと気づく賢い女性であって欲しいなぁと思います。
 この物語は、夫探しと言う難事件が解決しない限り続いていきそうです。

『観覧車』 2003.2.20. 柴田よしき 詳伝社



2003年03月25日(火) 愛がなんだ 角田光代

 テルコはマモちゃん依存症。マモちゃんのためなら仕事だって辞めちゃった。マモちゃんのお使いをするためにいつでも待機。でもマモちゃんに捨てられた・・・。

 ぬー、なんなんでしょうね。このテルコって女。なんだか一歩間違うと自分の中にテルコがいそうでいやでいやでしょうがない。要するに都合のいい女を嬉々としてやっているテルコなのです。
 こういう形を愛と呼びたければ呼べばいいけれど、付き合う男は選びましょう。歪んでるなぁと思いつつ、あっと言う間に読んじゃいました。

『愛がなんだ』 2003.3.14. 角田光代 メディアファクトリー



2003年03月24日(月) リアルワールド 桐野夏生

 4人の少女(ホリニンナ・ユウザン・キラリン・テラウチ)が、母親殺しの少年ミミズと好奇心から関わった時、彼女たちの世界は崩壊していく・・・。

 うー、桐野夏生らしい毒の小説を読ませていただけて満足満足。この物語の少年少女の心模様を誉められるものではないけれど、共感できる部分があります。破滅していく10代って感じでしょうか。装丁も素敵だし、私的には◎でした。

『リアルワールド』 2003.2.28. 桐野夏生 集英社



2003年03月23日(日) 死日記 桂望実

 中学三年生の田口潤の日記。愚かな母親の恋愛に振り回されながら、母親を愛してやまない男の子・・・。
 いまどきこんな純な男の子がいるのかしら。母親と愛人に殺されそうになっても母親を愛するなんて。潤の母親を愛する気持ちのせつなさよりも、子供より男に振り回される母親陽子の方に怒りが湧きます。でも母親の陽子も母親に愛されていなかった。こういう悪循環が悲劇を呼ぶのでしょうか。

 この物語は保険金殺人と母親の愛人への殺意と言う二点で貴志祐介の『黒い家』と『青の炎』のブレンドのような感がぬぐえません。そのニ作品を読んでいなければもっと哀しく読めたかもしれません。

『死日記』 2003.1.10. 桂望実 エクスナレッジ



2003年03月22日(土) おこう紅絵暦 高橋克彦

 与力・仙波一之進の妻おこうは、舅・左門にかわいがられながら共に数々の事件の謎を紐解いていく。
 昔ばくれん(今でいうレディースみたいなものかな)で芸者だったおこうは、人の裏も表も見て生きてきた。そんなおこうが心に疑問を思ったちょっとしたきっかけから事件が解明されていく。人情あふるる時代物です。

『おこう紅絵日記』 2003.02.15. 高橋克彦 文藝春秋



2003年03月21日(金) あなた 乃南アサ

 あなたは軽薄で女ったらしで誠実さのかけらもない男。でも私はあなたが好き。あなたが好きなの。なのにあなたったらカンナなんて女が現れた途端、人が変わったようになってしまった。許さない。許さないわ。私は絶対にあなたのそばから離れない!
 まぁ私が『あなた』を要約するとこんな感じです。うーん乃南アサさんの初の長編ホラーと言うことでかなり期待していたのですが、いかがなものか。執念深い女の恋物語(ストーカー)でした。確かにっせつなくはなりました・・・。
 人を好きになると言う事は、相手を思いやるが基本だと思うのですが、時として自分を見て見て愛して好きだと言ってvみたいな自己愛的なものに横滑りすることがあるようです。愛するって難しいものですね。

『あなた』 2003.2.25. 乃南アサ 新潮社



2003年03月18日(火) 鎮火報 日明恩

 ちんたらと消防士をやっていたい雄大、クールでアバンギャルドなリアリスト裕二、黒ずくめの中年ヒッキー守。妙な三人の男たちは妙な友情を根底に、それぞれの生きている苦しみをさりげなく抱えながら生きている。消防士と言う仕事をいい加減にやってやろうとする雄大の本音がいいです。いい物語ですv

 生きるということや、人を思いやると言うことを丁寧に優しく軽やかに語られています。日明恩さんという作家さんはこの持ち味を生かしたまま書いていっていただきたい。好き嫌いはあるかもしれませんが、暖かさを感じることができて私はオススメです。暖かくて泣けます。

『鎮火報』 2003.01.20. 日明恩 講談社



2003年03月16日(日) K・Nの悲劇 高野和明

 夏樹修平・果波は、修平の出版した本の売れ行きでマンションへ引越しをする。幸せの絶頂にいる愛し合う二人に果波の妊娠をきっかけに不可思議な現象が起こり始める・・・。
 妊娠・不妊・中絶と女性の体が抱える問題は精神的疲労を招くものであるとよくわかります。不妊で悩む人、中絶で心のバランスを崩す人、さまざまです。
 この物語の面白いところは、科学であろうとするあまり不可解な現象に説明をつけようとする精神医学のあり方でした。世の中には科学では説明できない不可思議なことがたくさんあるんだなぁと思いましたよ。
 私的にはかなりオススメ。ラストが感動的だし、途中のホラーサイコなくだりもかなり面白い。

『K・Nの悲劇』 2003.2.4. 高野和明 講談社



2003年03月14日(金) リドル・ロマンス 迷宮浪漫 西澤保彦

 愛する保彦せんせー(笑)のクリーンヒット! うーん、時間が経てば場外ホームランになるかもしれません。淡々としながらも人間の心を深くえぐるような連作短篇集です。暴くのは美貌の悪魔(かなぁ)ハーレクイン。
 この物語は是非読んでいただきたいので、あらすじ的なことは一切書きません。人間誰しも抱えている心の中の迷宮。それを冷たくも優しくハーレクインがとくほぐしていきます。ハーレクインに会いたいか?と言う問いかけに私は迷わず会いたいですね。無償でいいから助手になりたいくらい。
 そしてこれは贅沢なオマケと言うか、作家の篠田真由美さんが最後にパロディをプレゼントしてくださいます。これが憎いほどうまくて笑わせてしまう。篠田真由美さんは本当に西澤保彦さんをお好きなのだなぁと嬉しくなってしまいますv
 これは西澤保彦さんを未読の方もチャレンジしやすい物語だと思います。超オススメです。是非是非保彦せんせーラブな私の心を感じ取ってみてくださいまし。

『リドル・ロマンス』 2003.3.10. 西澤保彦 集英社



2003年03月12日(水) 深爪 中山可穂

 人妻ふぶき(ハンドルネーム)は、バイセクシャルで奔放な女性。ふぶきの女性たちとの愛の遍歴と、最終的に女性へ走る物語が、「深爪」「落花」「魔王」の順番で、ふぶきを愛する女なつめ、ふぶき自身、ふぶきの旦那の視点で語られます。
 女性が女性を愛する。私はその世界にどうしようもなく惹かれます。たぶん私は恋愛として女性と関わることはなく終るだろうけれど、精神的に女性を愛する心があるのだと思います。中山可穂さんの描く女性同士の愛の世界をしばらく読んでいきたいと思っています。

『深爪』 2000.8.1. 中山可穂 朝日新聞社



2003年03月10日(月) 虚無のオペラ 小池真理子

 日本画の大家、堂島滋春の裸婦モデル結子は年下のピアニスト島津と別れるための四日間の旅に出る。
 結子が自分より年下の愛人と別れを決意した時、贅沢な別れの儀式のような旅の行き先に冬の京都を選びます。雪に閉ざされた世界で別れへのカウントダウン。
 うーん・・・悪趣味だなぁ。いやロマンチストと言うべきなのかしら。別れなんて嫌いになったらハイさよならだし、好きなのに捨てられるなら暴れ倒しますね、私ゃー。こういう風流な別れの儀式なんかやってられない。
 ただ結子が別れを決意した心の動きはなんとなくわからないでもありません。女が中年に差し掛かり、相手がまだ若さ溌剌としていたら・・・ねぇ。

『虚無のオペラ』 2003.1.10. 小池真理子 文藝春秋



2003年03月08日(土) 映画 指輪物語 THE TWO TOWERS

 去年、指輪物語(ロードオブザリング)を観たとき感動で涙がとまりませんでした。今回の「二つの塔」も前作に負けず劣らず心震わす感動作品でした。
 悪意を集め人を操る指輪を捨てるための旅。過酷で悲しい厳しい旅。もうその設定だけで泣けてしまいます。ううう。
 私がこの映画で一番好きなのは主人公フロドの忠実な僕であり友人であるサムなのです。このサムって人は人格者。暖かかくて優しくて毅然としている。友情のあり方はかくあるべきと泣かせられます。
 いろんな映画を観てきて心に残るこの映画!のひとつに間違いなくなっている映画ですv



2003年03月06日(木) 「神田川」見立て殺人 間暮警部の事件簿 鯨統一郎

 あなたはもう忘れたかしら♪
 昭和の名曲かぐや姫の「神田川」・・・この歌詞が繰り広げる日本は今はもうどこにも存在しません。あの歌が流行った頃の古きよき時代ですね。
 なんて、物語の内容とは関係の無い昔話を思い出させる鯨さんの異色作! まぁ鯨さんの作風は本当にさまざまだから、異色でもないのでしょうか。
 とにかく笑えます。もうそれしか感想は言えない。あと歌詞の節を知っているかどうかも、よんどころのない事情で言えません(大笑)。鯨さんならではの抱腹絶倒こじつけ解釈ミステリーを是非お読みください。ほんととにかく笑えますv

『「神田川」見立て殺人 間暮警部の事件簿』 2003.2.20. 鯨統一郎 小学館



2003年03月01日(土) 撓田村事件(しおなだむら事件) 小川勝己

 『まどろむベイビーキッス』で気になる作家さんのひとりになった小川勝己さんが料理する岡山が舞台の凄惨な連続殺人事件。下半身が噛み切られている死体は三十年前の事件と伝説を髣髴とさせる。妙な探偵寺沢響は事件の謎を解明できるのか?

 うーん、うまいですねぇ。小川勝己さん。まさしく横溝正史の世界であって非なる世界を作り上げています。背筋が凍る怖さはありませんが、物語の運びと収め方は見事でした。このひと面白いなぁ。

『撓田村事件 iの遠近法的倒錯』 2002.10.20. 小川勝己 新潮社



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