酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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ニューヨーク在住映画編集者のデイヴィッドが偶然(?)手に入れてしまった一本のフィルム。ラストカットは《スナッフ》なのか!? 魅入られたデイヴィッドは悪夢へと彷徨いこんでいく。
何年か前にスナッフか?と思わせる映画が話題になったことがありました。スナッフ、生きている人間が死ぬところ(殺されるところ)を録画したもの。今でこそアンダーグラウンドでは本当に存在すると言われています。 この物語の面白いところは、デイヴィッドの歪んだ記憶だと思います。人間って<忘れ去ること>ができるから生きていけるってとこあるよなぁと思いますから。
『フレームアウト』 2003.1.7. 生垣真太郎 講談社ノベルス
2003年02月21日(金) |
緋友禅 旗師・冬狐堂 |
宇佐美陶子こと冬狐堂シリーズ。陶子が巻き込まれる4つの事件。陶子の友人カメラマン横尾硝子の登場も嬉しい。骨董の世界には魑魅魍魎が蠢いている。その世界を踏ん張って生きている陶子の根性は見習いたいもの・・・。
「陶鬼」 陶子のかつての師匠が自殺をした。自殺の原因は萩焼きの《七化け》? 陶子は師匠の自殺の原因に辿り着けるのか。
「永久の笑み」の少女 古墳などを発掘(盗掘)する掘り師が陶子につきつけた埴輪。この埴輪が堀り師の孫娘の失踪の謎を解く。
「緋友禅」 陶子が出会った友禅の緋色のタペストリー。陶子は商売抜きでこの緋色の友禅を買い付けるが、緋色のタペストリーは送られてこず、作者も死亡してしまう。緋友禅の行方は。陶子をとりこにした緋友禅の秘密は。
「奇縁円空」 放浪しながら土地土地で仏像を彫り残したと言われる円空の仏像を円空仏の贋作に陶子は真っ向勝負をかける。
北森鴻さんという作家さんは本当に懐の深い方で、なにを読んでもおもしろい。この冬狐堂シリーズは、宇佐美陶子と横尾硝子の奮闘が楽しい。今回もふたりのタフな美女が敢然と悪に(?)立ち向かうのである(笑)。
『緋友禅』 2003.1.30. 北森鴻 文藝春秋
平川佳乃は、大手化粧品メーカーの広報に勤める美女。美しく見栄っぱりな佳乃は、人知れず努力や画策を重ね自分をよく見せることに余念がない。とくに高校時代からの美しき友人神山沙耶との水面下での戦いは壮絶を極める。そんな虚構の人生を女優として生きる佳乃の周りで次々と事件が起こり、破綻していく・・・。 これは壮絶な見栄の物語です。女性の方必読の物語でございます。物語りも共感したり、嫌悪したりと面白く読み進めていけます。もしも読んだとき佳乃に共感できるとしたら、自分の人生見つめなおしましょう。素のままの自分で生きることの大切さに気づかせてくれる物語です。オススメv
『女優』 2003.1.25. 春口裕子 幻冬舎
赤光宝霊会の教祖;外之原(とのはら)久江はを次々と人を殺し、逮捕される。殺人ではなく、邪光を放ち汚れた心を持つ犯罪予備者の生命を浄めるための浄命行為だったのだと言う。 樋口真琴は主人の転勤で東京から大阪へ移り住んでくる。彼女の住むことになったマンションの隣には、外之原久江の娘、黎子が引き取られてくる。日本人形のように美しく老成した12歳の黎子と関わるうちに真琴は心の迷宮に迷い込んでしまう。そして・・・。
この物語は、第三回ホラーサスペンス大賞の特別賞受賞作品です。(昨日酩酊本処にとりげた『ギニョル』が大賞受賞作品です。) この『邪光』は、淡々とした日本ならではの怖さがじわじわ押し寄せてくる秀作です。なによりラストのホラーであってホラーでない終わり方がとてもいい。おそらくヒロインの樋口真琴がとても魅力的だからではないかと思う。真琴の苦悩や決断はいいですよーっ。オススメですv
『邪光』 2003.2.10. 牧村泉 幻冬舎
第三回ホラーサスペンス大賞を受賞したマレーシア在住の佐藤ラギさんのホラー(?)です。うーん、このホラーサスペンス大賞の選考基準が今ひとつよくわからないなぁ。 この物語は、エロ小説を書いている男がギニョルと呼ばれる少年と出会い翻弄されていくお話。物語ではギニョルをこの男が翻弄している形を取りますが、実際翻弄されるのは男たちの方。 このギニョルと呼ばれる少年は、男の中に眠る嗜虐嗜好を呼び覚ます魔性を持っている。ギニョルをいたぶることで快感を得る・・・。うーんなかなか興味深い物語でしたよ。エロエロしすぎてもいませんし。 性的嗜好は本当に人それぞれだと思うし、それをそのまま表現でき体現できる人はいいと思う。自分の欲望に素直になれずに悶々とするよりは、赴くままに野獣のようにいきましょうvなんちゃって。ただし合意のもとでネ。ふふ。
『人形 ギニョル』 2003.1.20. 佐藤ラギ 新潮社
お騒がせ岩井志麻子さんの岡山を舞台にしたセクシャルホラー(?)短編集です。うーむ、やはりこれが岩井志麻子さんなのだろうなぁ。 たまたま舞台を岡山にしていますが、おそらく場所を変えても起こっていた昔のセクシャルホラーだと思います。岡山だから、ではないと思う。 エロチックな話がお好きな方にはオススメです。昔ながらの淫靡な世界です。
『魔羅節』 2002.1.20. 岩井志麻子 新潮社
今邑彩さんの蛇神シリーズの完結編です。 蛇を神様として祭る風習はとても気になります。蛇ってホラーの要素になりやすい生理的嫌悪感を催すと言われていますが、私は根源的な生まれる前の前世の記憶的怖さのような気がします。 この物語は蛇神様を祭る日の本村で起こる事件。奇祭であるがゆえに残酷なこともたくさん起こる。そこから逃げ出すものもいれば、そこへ望んで行くものもいる。 4つの物語で完結しましたが、最初から読まれることをオススメします。
『暗黒祭』 2003.1.10. 今邑彩 角川ホラー文庫
噂のホラービデオ「呪怨」と「呪怨2」を見たとき、さすがのホラーマニアの私も怖かった・・・。このビデオは発禁寸前になったといういわく付のもの(恐ろしさゆえ)。理不尽で切れ切れな物語が妙に怖かったのです。 今回の小説はそのビデオをノベライズしたものです。ビデオや映画を観てこの小説を読むとまさに怖さ倍増! 映像のつながりのなさが補足されるため怖さの密度が増す感じでした。 ひとりの人間の身勝手な呪いが怨念が、関わった人たちを否応なく地獄へ突き落としてしまう。ホラーならではの理不尽な怖さをご堪能くださいませ。でも読む前に映像を観てくださいねー。
「呪怨」 2003.1.10. 大石圭 角川ホラー文庫
奇談シリーズは、ミステリー作家でありながら、霊障を祓う追儺師(ついなし)の天本森(あまもとしん)と蔦の精霊と人間との間に生まれた少年、琴平敏生(ことひらとしき)のラブストーリーであります(いいのかな、書ききって)。 このシリーズには、鬼籍通覧シリーズでもいい味を出している監察医、龍村泰彦も準レギュラーで登場します。 今回は、とあるテーマパークをパークごと除霊しながら天本森の式神「小一郎」誕生秘話や、天本をルシファーと呼ぶ父親が絡んできます。 椹野道流さんが書くボーイズラブは私には許容できる世界。いつまでも清い関係で愛を育んで欲しいなぁ。
『楽園奇談』 2002.12.5. 椹野道流 講談社X文庫
5年生の母親から虐待にあっている気弱な少年;祐市が学校行事で合宿した先で巻き込まれてしまう悪夢。 どこを切っても金太郎飴のように、栗本薫が書けばなんであろうと栗本薫の小説の特徴。小学生の男の子の目線で書かれているので漢字も小学生5年生程度の漢字しか使われていません。少年の悶々とした一人がたりが栗本薫ならではのホラー観を現します。虐待にあってるうえに元々性質が自虐的なんだよねー。
『指』 2003.01.10. 栗本薫 角川ホラー文庫
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