[ 天河砂粒-Diary? ]

2005年06月11日(土) 置き手紙(お知らせ)

マイエンピツで更新確認されてる皆様へ。
梅雨入り致しました。そんなわけで、週明けから、冥王星に行ってきます。
今年こそは、冥王星名物、空飛ぶ金魚を捕まえてみせます!
きっと! 多分! ……わかんないけど。
でも、去年は結局挫折して帰ってきたから。
今年こそは……!!

つまり何よ? と思った方は、お手数ですがgooブログをご確認ください。

行ってきます。



2005年06月05日(日) 【春色は、青だと四月の風は言う】 第4話

第4話 梨佳の日記01

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 6月6日(月)
 中学時代の悪事がバレたらもう明日登校する勇気がありません。
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 学校生活には結構慣れました。
 私は他の人とはどうも少し感覚がずれているようで、相変わらず突拍子もないことを言って小島さんをびっくりさせてしまっているみたいですが、小島さんはいい人、というか、少し変わった人みたいで、こんな私にも仲良くしてくれています。
 沢木くんも面倒見のよい人で、私が困っているといつも助けてくれます。
 入学式のあの日、ぶつかった相手が沢木くんで本当に良かった。
 でも、沢木くんの友だちの坂下くんは少し苦手です。金色の髪はきれいだと思うけど、いつも何かつっかかってきます。苺ジャムがそんなに嫌いだったのかしら。
 それに、今日は坂下くんに「お前中学ん時、どんな問題起こしたんだよ?」って聞かれました。「別に何も問題なんて起こしてない」って答えたけど。きちんと、嘘だってばれないように答えられたかどうか、自信がありません。
 どうしたらいいのでしょうか。どんな問題を起こしたのかと聞かれたのだから、まだ内容については知らないのだと思います。ただ、どこかで噂を聞いたのでしょう。内容まで知ったら、今以上につっかかってこられるのでしょうか。それとも……。
 言い訳するわけじゃないけど。あれは、ほんの出来心だったのです。
 今日みたいに、朝は晴れていたのに昼前から急に雨が降り出すような、そんな日でした。
 天気予報で雨が降ると言っていたからと祖母に渡された、祖父に買って貰ったばかりのお気に入りの傘を持って登校して、午前中の授業を受けている途中で気分が悪くなって、保健室に行ったら熱があって、早退することになって。
 その頃には雨が降っていたので、持ってきた傘をさして帰ろうと、昇降口の傘立てをのぞいたら、私の傘がなかったのです。
 買って貰ったばかりの、お気に入りの傘なのに。誰かが勝手に持っていってしまったのだと思います。すごくすごくショックで。
 でも、誰が持っていったのかなんて判らないし。
 でも、すごく悔しくて。
 静まりかえった、時折、どこかの教室で授業をしている先生の声だけが響いてくるような静かな昇降口で、私は、傘立てに入っている傘を、一本一本取り出しては、足で骨の真ん中を折って、また傘立てに戻して。ということを繰り返したのです。
 なんであんなことしたんだろう。今でもよく分かりません。
 ただ、すごく悔しくて、悲しかったことだけは覚えてます。
 誰にも見られなかったし。後で先生に呼び出されたりすることもなかったから、私が折ったんだとは、疑われてはいても決定づけられてはいないと思うんだけど。
 でも、みんなの傘を全部折ったなんてバレたら、優しい小島さんも、私のこと嫌いになるかな。どうしよう。そればかりが気がかりです。
 坂下くんは、苦手だけど、でも悪い人ではないと思うから。
 あの人が、これ以上深く追及してこないといいな。
 その為なら、しばらくトーストにはジャム無しのバターだけでもがまんします。

→ 05.盗まれたスクール水着を捜し出せたら、そいつが犯人ってことにしておこう。 へ続く。



2005年06月04日(土) お題バトル

テーマ:8月の空を思う愛憎
お 題:「夕立」「夏休み」「飛行機雲」「蝉」「風鈴」
お時間:45分

 煙草から、細く長く煙がのぼり、風に揺らぐ。
 庭木に溜まった雨の滴を払い落とすように吹く風が、軒先に吊してある風鈴を撫でた。
 夕立が去った後の庭はしっとりと濡れ、庭木の緑と土の黒を、より一層深いものにしている。しばしの静寂。幽かな一時(ひととき)の涼。
 木目張りの縁側にあぐらをかき、スラックスにだらけた半袖開襟シャツという姿で庭を眺めていた正隆は、その胸深くに煙を吸い込むと、濡れた庭に向かって長く息を吐き出した。灰色の煙が風に絡まり、庭に溶けていく。
 夕立によって黙らされていた蝉たちが、思い出したように一斉に鳴き始める。
 庭は一気に夏色を増し、縁側に押し寄せる蝉の声とともに、空から再び太陽が容赦ない光を地上に投げ込んできた。
 灰色に包まれていた空に、8月特有の、深く澄んだ青が広がり始める。
 正隆は忌々しげにフィルターを噛みつぶすと、短くなった煙草を、傍らで転がっていたビールの空き缶に押しつけ、火を消した。
「そろそろ、か」
 呟いて立ち上がる。
 それを見計らったかのように、玄関から軽いインターフォンの音と、声変わり前の子供特有の、透き通るような高い声が響いてきた。
 のろのろと、わざとゆっくり歩いて玄関へと向かう。
 たたきに降りて草履を足先にひっかけ、引き戸を開けると、大きなリュックサックを背負った小柄な少年が一人、ひまわりを思わせる笑顔で立っていた。
「こんにちは!」
 元気な声で挨拶されて、正隆は「ああ」とだけ曖昧に答えた。
「雨、大丈夫だったか?」
 ふと思いついてたずねると、少年はその笑顔をより一層輝かせて、
「はい! 駅で雨宿りしましたから、大丈夫です!」
 まるで会話のすべてが嬉しいとでも言うように、答える。
「そうか……」
 眩しすぎる笑顔に、思わず顔をそらして、ぽつりとそれだけ呟く正隆を、わずかに不安げな瞳で見上げて、少年は控えめに玄関から中をのぞき込んだ。
「あの。入っても、良いですか?」
 問われて、我に返る。
「ああ、もちろんだ。広いだけで古い家だが」
 正隆の言葉途中で、引き戸にかけた手の下を抜けて、少年は玄関へと足をすすめる。
 薄暗い部屋を見上げて、「すごい、かっこいい」とだけ呟いた。
 靴を脱ぎ、部屋に上がっていく少年の後ろ姿を眺めて、正隆は密かにため息をつく。
 厄介なことを引き受けてしまったかもしれないと、今更ながらに、改めて深く後悔してしまう。
 姉の忘れ形見である少年を、夏休みの間だけ預かることになった。
 親友であり、姉の結婚相手であり、長年思い続けて未だに諦めきれない男から頼み込まれての、仕方なくの承諾だった。
 軽い足音をたてて進んでいく少年の後を、のろのろとついて歩きながら。
 その後ろ姿に、姉と親友の影を見る。
「あ、庭があるんですね!」
 嬉しそうに振り返り、駆け足で縁側へと向かうその姿に、目眩のような感覚を覚えながら、正隆は胸ポケットから煙草を取り出してくわえる。
 思いが不安定に揺れる。
 まるで、夕立を受け、夏色を深める庭のように。
 容赦ない太陽にさらされ、再び熱を取り戻す、庭のように。
 明るい声を上げて空を見上げる少年の、視線の先を辿ってみれば、残酷なほどに深く黒い青空を、悔しいくらい純白で汚れなき飛行機雲が、心を切り裂くように横切っていた。
 火のついていない煙草を、口から外して、無意識に握りつぶす。
 蝉の鳴き声が、庭と、部屋と、そして正隆自身を、騒々しく包み込んでいた。

 おわり。




おわり。の文字が虚しいくらい終わってないけど、良いのです。
45分で4枚半。10分で1枚計算? ということは、長編は3500分で書けるってことですね!(虚しい)


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