箱の日記
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今夜わたしはヒトデを抱いた
折れ重なってわたしたちは泣いた
海の底は音もなく
流れ
遠い場所から難破船のがらくたや
鯨の死骸が運ばれてきた
時々は生きているものも通っていった
不確かで はかない糸を頼りに
上下に揺れている半透明の三角形
クラゲのようだが足はなく
そのかわりに大きな目玉をふたつ持つ
まるで人のように
最初は夢でも見ているのかと思ったが
そうではなかった
わたしは死んでいるのだ
死んだせいで世界と
自分の区別がつかなくなってしまった
あらゆる境界が消えて
自分と呼んでいたはずのものが
見当たらなかった
今夜わたしはヒトデを抱いた
ヒトデも息をしていなかった
悲しくないのにわたしたちは泣いていた
陸上では人々が祈りを捧げているはずだったが
なにも聞こえなかった
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