箱の日記
DiaryINDEXpastwill


2013年09月15日(日) ヒトデを抱いた夜




今夜わたしはヒトデを抱いた

折れ重なってわたしたちは泣いた

海の底は音もなく

流れ

遠い場所から難破船のがらくたや

鯨の死骸が運ばれてきた

時々は生きているものも通っていった

不確かで はかない糸を頼りに

上下に揺れている半透明の三角形

クラゲのようだが足はなく

そのかわりに大きな目玉をふたつ持つ

まるで人のように



最初は夢でも見ているのかと思ったが

そうではなかった

わたしは死んでいるのだ

死んだせいで世界と

自分の区別がつかなくなってしまった

あらゆる境界が消えて

自分と呼んでいたはずのものが

見当たらなかった



今夜わたしはヒトデを抱いた

ヒトデも息をしていなかった

悲しくないのにわたしたちは泣いていた

陸上では人々が祈りを捧げているはずだったが

なにも聞こえなかった



箱 |MailPhotoMy追加