箱の日記
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ありきたりの窓
通り過ぎる人の靴音、端々にある喜びのさえずり、
宅配トラックのサイドブレーキ、一瞬 ひらりはためく洗濯物
風に乗り やってくる
午後窓を開ければ 届く
肩からおろして
顔面と両腕と右足指の力を抜けば きっと届く
音のすべては わたしだ
なので
わたしは あなただ (言葉はない)
目の前にいるあらゆる人びとは あなたではない
あなたは その人びとではない (人びとはいつも求めている)
春は耳に届く
言葉というものがつくられるずっと前から
風のように海を 陸を渡り
南から北へと 西から東へと
ありきたりの窓をひらき
耳を澄ませていれば
届く
音のすべては あなただ
なので
あなたは わたしだ (言葉はない)
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