箱の日記
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工場から この家の分まで かろうじて届くから 生きているんだ 忘れかけていたよ 深みの足りない植木鉢のなかは こわいくらい すき間もなくなって のばされた手足でいっぱい だから 欠かすことがないようにしないと いけないんだ 枯れないだけの 毎日の水を
指に力を込めて 助けようとしてるなにか それを救えたのなら てのひらにおいて 涙を垂らそう と思う
ていう架空の話について君は話す 僕はまた、うんうんと頷いて 君の手を握っている 僕らはあの列の最後に並んで 待つかい?
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古びた匂いのする運河に沿って 倉庫のある曲がり角でタクシーを拾った 狭くはない後部座席で僕らはくっついて座ると 握っていた手を離して うしろを振り返った
もう日が暮れて ネオンが点り始めていた。
うすい戸のむこうで 正座している君は 万年筆から垂らすインク ぽとり と ぽとりぽとり と
僕もちょうどそのことで 泣こうとしていたんだ
泣いてなんかいないね
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