本の感想その3 |
*「症例A」 ★★★☆ 3.5点 ある病院に新しい精神科医が入ってきた。彼は美少女・亜左美を患者診ることになるのだが、彼女は敏感に周囲の人間関係を読み取り、巧みに病院の人間関係を操作してゆく。医者は境界例の診断を下そうとするが、臨床心理士は解離性同一性障害(DID)の疑いを持ち対立する・・・。 と言ったあらすじなんですが、平行して進んで行く博物館の謎の物語とどうやって繋がるのかが気になってすいすい読み進みました。精神科医が主人公の物語だと劇的な心理分析や猟奇的な描写が想像されますが、そういったものは一切なく、淡々と物語が進んでいくのに登場人物たちに対しての思い入れは深くなる。これがリアルって事なのでしょうか。医者が患者を治すんじゃなくて、一緒に治っていく。人には人が必要なんだねえ。 境界例って高校のときに習ったけど(確か保体)こんなに重篤な症状なんだって事は初めて知りました。 一番興味深かったのは精神科医と臨床心理士の考え方が根本から違うってこと。もっと知りたくなりました。 ただテーマが多重人格で、さらに様々なエピソードが加わってくるので少し物足りない結末でもありました。消化不良です。もっとじっくり描いて欲しかったです。
*「慟哭」 貫井 徳郎 ★★★☆☆ 3点 連続幼女誘拐殺人事件を追う捜査一課長、捜査は行き詰まり、異例の昇進を遂げたキャリアの捜査一課長へのねたみもあり捜査陣も不協和音だ。 そして新興宗教にのめりこんで行く男。彼は救いを求めて狂気に沈み込んで行く。 二人の男がこの事件にどう関わって行くのか、が見ものです。 あーこの本は重かった。何って内容がですよ。最初からうすうす先は見えていたんですけど(どうやら煽りでは意外な結末!ってことですが・・)、途中に挿入される寂しげな風景(冬の公園など)の描写が、あまりにも孤独で、後から胸が締め付けられたのです。 最後の最後になって慟哭の意味を思い知った。最後の方は信じがたくてページをめくるのがつらかったです。でも読まずにはいられない。これが筆力なんですね。推理物として読まずにドラマとして読むことをお奨めします。
つづきは次回に。
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2004年01月29日(木)
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