|
|
■■■
■■
■ SS
風が女の横を通り抜ける。
黒と緋を基調にした下地に金糸の蝶。 金の帯に紅の帯留めと言う格好は、襦袢顔負けと言った女の白い肌に良く映えている。
「どうぞ」
男の声と共に差し出された一輪のコスモス。 綺麗な赤紫色は、着物を着た女の世界に溶け込む。 一つの完成された世界。
「ありがとう」
鈴の鳴るような声でお礼を言う女の表情は何処か哀しげだ。
「やはり気に入りませんか?」
少し、影を落としたような声で問う男に女は慌てて頭を振る。 そして視線を男に合わせると口を開く。 そっと、まるで呼吸をするかのように声を発する女。
「可哀想だと思って」 「可哀想?」 「私なんかの為に手折られたコスモスが・・・」
そう言って俯いてしまった女を男は包み込むように抱きしめる。 温めるかのように、何かから守るかのように・・・。 そしてそのまま耳元で囁く。
「私なら、貴方の為に手折られるのなら幸せです」
その男の言葉に女はその綺麗な顔を歪める。 大きな黒い瞳には、雫が溜まっている。
ハラリと零れる一滴の涙。
「泣かないで下さい」
そう言って男は女を抱きしめる腕に一層力をこめた。 それに気付き女も男の背中に腕を回す。
手にしていた一輪のコスモスは、今度は男と女で作られた世界から身を引くように重力のまま地面へと舞い落ちる。
女には分かってしまったから。 男の言葉の裏にある本当の言葉が。
『貴方の為に死ねたら幸せだ』
その男の真意に気づいてしまったから・・・。
「赦しませんから」 「え?」 「私の為なんかに死んだら、絶対赦しません」
そう言って顔を上げた女の瞳には、強い光が宿っていた。 そして、その光りの裏の陰に男は気付いていた。
「私のような汚い世界に住む人間の為に、貴方のような綺麗な世界に住む人間が命を落とすなんて・・・」
唇を噛み締めて、突き放すように縋るように言葉を綴る女。
「さようなら」
そう言って力一杯男の身体を押し返し、腕から逃れると女は走ってその場を去った。 引き止めようと伸ばされた男の腕は、力無く下されるとそのまま地に落ちていた一輪のコスモスを拾い上げる。
しそてそっと男は花弁に接吻けた。 願うように、何かを伝えるように・・・。
しばらく走った後、女は立ち止まる。
「・・・コスモス」
視線の先のコスモス。 男に貰ったコスモスを置いて来たことを少し後悔した。 が、すぐにその想いは打ち消した。
男は知っていたのだろうか? コスモスの花言葉を・・・。
"乙女の純情"
「私には、とてつもなく程遠い花だな」
一人そう呟き、コスモスに近付くと、そっと接吻けた。 祈るように、何かを誓うように・・・。
アナタヲアイシテイマス・・・・・―――――
決して叶うことは無いと分かっているけど・・・ せめて、心は届いて欲しい
*************************
後書き
・・・・・・。 何でしょうコレは(汗) 今回は長めです。
この話しの背景分かりますか? て言うか、分かったら凄いですね(死) コレはちょっと小説で書きたいな〜と思っているネタの一つ。 因みに何気に極道モノです(滝汗) 管理人には多分無理だと思ったんでコッチに。 意味不明ですみません。
2002年10月05日(土)
|
|
|